text by Yasuda Masayuki
みなさんこんにちは、ヤスダマサユキと申します。初めましての方はどうぞよしなに。
まずは簡単な自己紹介を致します。
普段はBIGMAGIC日本橋店を始め大阪近辺の大会や、GPT・PTQといったイベントに参加していて、エターナルパーティー等のイベント、日本のグランプリ、海外のグランプリ、プロツアー等、楽しそうなイベントがあればどこにでも顔を出しています。要はマジック大好きです。フォーマットはレガシーを中心に遊んでいて、スタンダード・モダンなどそれぞれのシーズンに合わせて構築をメインにやっています。
個人のblogで何度かレガシーに関する記事を書いていたのですが、この度BIGMAGIC様のホームページにて記事を執筆させていただく運びとなりました。これからは主にレガシーの記事を、たまに違うフォーマットの記事を書いていきます。
遅筆かつ恥筆ではありますが、お付き合いの程宜しくお願いします。
1.イントロダクション
~デッキ構築と調整とは~
昨今、様々な情報サイトや個人Blog等のお陰で、気になったデッキのリストがすぐ見つかるようになっています。もちろん私もこれらの情報は活用しており、新しいアイデアやコンセプトをこれらの情報源から拾い集めています。
特に大きなトーナメントが開催された後や新エキスパンションが発売された後など、玉石混合のリストを眺めるのはとても楽しいですからね。
デッキを作る方法、というのは大きく分けて、
・特定のカードや新しいコンセプトからデッキを新規構築するか
・元々存在するデッキに調整を加えるか
の二通りあります。
一般的に前者を好む人が「デッキデザイナー」と呼ばれ、後者は「デッキチューナー」と呼ばれているのを耳にしたことはあるのではないでしょうか。マジックというゲームを楽しむには、どちらの方法でデッキを作成しても良いと思います。自らデッキを作る楽しみ、気になったデッキを使ってみる楽しみ、それぞれマジックの魅力なのですから。
しかし前者の「新規構築」をトーナメントレベルで実践するのは非常に難しく、実際結果を残しているのはほんの一部のプレイヤーだけです。
なぜ難しいのか、それは「デッキのコンセプトを決める創造力」「幅広いカードの知識」「それを纏め上げるバランス能力」これら全てが高いレベルで必要となるからです。特にレガシーの環境は、数多くのデッキが既に作られており、それぞれの基本的な型も完成しているので、新しいコンセプトを考え出すのは至難の技です。それ故、一般的なトーナメントで結果を残しているほとんどは後者の「既存のデッキやコンセプト」に調整を加えたデッキであり、選んだデッキをどれだけ洗練させトーナメントに臨めるか、それが各プレイヤーの持つ構築理論やセンスが問われる部分であるといえましょう。
今回は上記のデッキを調整するに当たっての、コンセプト決めやカード選択の考え方について、私個人の構築や考えを交えて書いていきたいと思います。
2.カード選択、カードへの点数付け
~《稲妻/Lightning Bolt》か《剣を鍬に/Swords
to Plowshares》か~
デッキを考える時、そこに入れたいカードの選択肢は沢山あります。
スタンダードやモダンですら絞り切れない程のカードがあるのだから、レガシーに至っては言わずもがな。しかし幸いなことに、一般的に使われるカードというのはある程度選抜されていて、アーキタイプを決めたならば、その選ばれたエリート達からさらに選別してカードの取捨選択を行う。これが一般的なデッキ調整かと思います。
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例えばレガシーでよく見かける1マナのスペル、
《稲妻/Lightning Bolt》
《剣を鍬に/Swords to Plowshares》
を例に取って考えてみましょう。
この二枚は多くのデッキに使用実績があり、何も考えず色が合うからというだけでこれらを採用しても、もちろん十分に強いカードです。ですがより適切なカードを選択すれば、デッキの強さは格段に向上します。
ライフを高速で削ることを念頭に於いているアグロ系デッキでは、稲妻は最高のカードです。除去としてだけでなくフィニッシュブローの役割をわずか1マナでこなすのだから、これは当然と言えるでしょう。
しかし中速にシフトしたボードコントロールにおいては、稲妻よりも罰する火の方が優れている場面が多くなります。これは《罰する火/Punishing
Fire》が《燃え柳の木立ち/Grove of the
Burnwillows》と組み合わさると、繰り返し使える除去になるからです。ライフを削ることよりも盤面のコントロールを優先したいデッキの場合、カードの点数が逆転するのです。
また同様に、剣を鍬にと似た除去カードに《流刑への道/Path
to Exile》というカードがあります。
それぞれに「ライフゲイン」と「基本土地を与える」というデメリットがあります。
それぞれのデメリットを吟味すると
この対比となります。
アグロデッキならば、ライフを削り切るまでの時間が遅くなるのは致命的と言えます。
その一方、相手からの脅威が少し早いターンに出ようと、その上から勝負を決めることが可能なデッキです。
故にデッキのコンセプトに則しているのは、流刑への道だと言えるでしょう。
これがコンロトールデッキならば、ライフの勝負ではなく盤面の脅威を捌く勝負になる為、相手のライフがいくら増えようとも関係ありません。
しかし、相手が高マナ域にアクセスすることによって起こる脅威の連打、こうなると対処し切れなくなる可能性が非常に高くなります。それ故にコントロールデッキにおける流刑への道の点数は相対的に低くなりより適したカードは剣を鍬にである、と結論付けることが出来ます。
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簡単な例を挙げてみましたが、これ以外全てのカードもデッキやコンセプトに合致するかどうかで点数が大きく変わります。
3.デッキコンセプトを理解し、それを強化する
~デッキとカードの方向性を一致させる~
上に出てきたデッキコンセプトという単語ですが、これは自らのデッキが何をしたいのか、勝ち筋は何か、ということを主に示します。
これら全てどこかで見たことがあるデッキではないでしょうか?
もちろんこれ以外にも多数のコンセプトがあり、その数だけデッキが存在します。
コンセプトはいくつかが複合しているデッキも多く、その場合は対戦状況に応じてその何れかを選択してプレイを進めるのが定石です。
そして上で論じた通り、このコンセプトを理解した上でカードを選択しなければ正しいデッキの調整になりえません。
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では、近年最も「コンセプト通りに強化された調整」に成功したと私が考える、《秘密を掘り下げる者/Delver
of Secrets》を使用したデッキについて考えてみましょう。
《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》は最速で2Tに3/2飛行という大きなクロックになり、対処できなければあっと言う間に試合が終わります。
しかし構築の前提条件として、インスタント/ソーサリーを多めに入れておかなければいけず、ライブラリートップにスペルが無ければただのさまようものです。その為、Delverを使うデッキには多くのドロー操作・ライブラリ操作が積まれています。
少し前のスタンダードでも猛威を振るっていたので、記憶に新しい方も多いのでは無いでしょうか。
また元々除去に耐性が無いこともあり、後半になればなる程このカードの価値が下がります。これから読み取れるコンセプトは、
1:「マナ域が低くて高いクロックで攻める、序~中盤に強いデッキ」かつ、
2:「インスタント/ソーサリーがデッキ内に多く入っている」こと、です。
そしてこれに合致したデッキの例が「RUG Delver」や「URバーン」です。
*Delverの「軽くて高いクロック」を最大限生かせる構成で、デッキ内のカードと互いにシナジーがあります。(*注1RUGは赤青緑の省略、URは青赤の省略
W=白、U=青、B=黒、R=赤、G=緑)
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トーナメント:GP
Strasbourg 2013
順位:3位
Player:Alexander Hayne
Deck Name:
Deck Designer:
アーキタイプ:RUGデルバー |
18land
3 《Tropical Island》
3 《Volcanic Island》
4 《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》
4 《汚染された三角州/Polluted Delta》
4 《不毛の大地/Wasteland》
13creature
1 《瞬唱の魔道士/Snapcaster
Mage》
4 《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》
4 《敏捷なマングース/Nimble Mongoose》
4 《タルモゴイフ/Tarmogoyf》
29spell
1 《四肢切断/Dismember》
1 《狼狽の嵐/Flusterstorm》
1 《呪文嵌め/Spell Snare》
2 《思考掃き/Thought Scour》
3 《呪文貫き/Spell Pierce》
4 《渦まく知識/Brainstorm》
4 《目くらまし/Daze》
4 《Force of Will》
4 《稲妻/Lightning Bolt》
1 《二股の稲妻/Forked Bolt》
4 《思案/Ponder》
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15
Sideboard
1 《古えの遺恨/Ancient Grudge》
2 《狼狽の嵐/Flusterstorm》
1 《墓掘りの檻/Grafdigger's Cage》
1 《クローサの掌握/Krosan Grip》
2 《紅蓮破/Pyroblast》
1 《赤霊破/Red Elemental Blast》
2 《乱暴/Rough // 転落/Tumble》
3 《水没/Submerge》
2 《硫黄の精霊/Sulfur Elemental》
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このデッキの動きを簡単に言うと、Delverを含む低マナで優秀なクロックを展開し、こちらは最低限の展開と行動で相手を阻害して勝つ、クロックパーミッションと呼ばれるアーキタイプの典型例です。
そしてこれをさらに攻撃的にしたのが、URバーン。
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トーナメント:SCG
Invitational - Atlanta
順位:8位
Player:Andrew Schneider
Deck Name:
Deck Designer:
アーキタイプ:URバーン |
19land
1 《血染めのぬかるみ/Bloodstained Mire》
1 《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》
1 《霧深い雨林/Misty Rainforest》
1 《汚染された三角州/Polluted Delta》
1 《樹木茂る山麓/Wooded Foothills》
2 《乾燥台地/Arid Mesa》
2 《島/Island》
2 《山/Mountain》
4 《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
4 《Volcanic Island》
15creature
3 《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer》
4 《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》
4 《ゴブリンの先達/Goblin Guide》
4 《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》
26spell
2 《目くらまし/Daze》
2 《発展の代価/Price of Progress》
3 《呪文貫き/Spell Pierce》
4 《渦まく知識/Brainstorm》
4 《Force of Will》
4 《稲妻/Lightning Bolt》
3 《思案/Ponder》
4 《Chain Lightning》
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15
Sideboard
2 《硫黄の渦/Sulfuric Vortex》
1 《発展の代価/Price of Progress》
2 《紅蓮破/Pyroblast》
2 《溶解/Smelt》
1 《呪文貫き/Spell Pierce》
3 《外科的摘出/Surgical Extraction》
4 《溶岩の撃ち込み/Lava Spike》 |
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速やかにライフを20点削るコンセプトで、それに合わせ高威力の《Chain
Lightning》や《発展の代価/Price of Progress》までもが搭載されています。
どちらもDelverのクロックを生かしつつ、スペルを多く搭載しながら序盤の少ないターン数で勝てるという条件を満たした、コンセプト通りの構成です。
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元々「RUG Delver」には「カナディアンスレッショルド」と呼ばれる前身があり、Delverの前には他のカードが入っていました。
しかしここにコンセプトが完全に合致したDelverが入ったことでデッキが急激に引き締まり、そこから数多くの調整が施されたことで、現在でもトップメタを走り続けるデッキに変身したのです。
これこそが以前のコンセプトを崩さず、方向性の合ったカードを採用したことでデッキの強化を図る調整が成功した良い例と言えるでしょう。
このように効果的な調整を行うには、デッキとカードのコンセプトを理解した上で、それぞれの役割を一致させる必要があります。
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そしてメインボードの調整がひと段落した次は、サイドボードの調整です。
サイドボードはデッキ調整の中でも最も重要かつ難しい部分だと考えていますので、次回じっくりと論じていきたいと思います。
では今回のおさらい
●そのカードを採用している理由をはっきりさせましょう(なんとなく強そう、はダメゼッタイ。)
●カードの点数付けはしっかりと(そのカード、弱くね?)
●調整の際はデッキとカードのコンセプトを一致させましょう(なんか違うデッキになったゾ?)
それでは今回はここまで。
皆様、良いレガシーライフを
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