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by Ryuji Murae
初めまして。村栄龍司です。
カードショップでフラフラしているところを拾われて記事を書かせていただけることになりました。捨てる神あれば拾う神ありですね。ありがたい話です。
ここではバーン道場のタイトル通り、毎回赤いデッキやカードについて書いていきたいと思います。
というわけで今回スポットを当てるのは、みんな大好き(断言)《ファルケンラスの貴種/Falkenrath
Aristocrat》です。
・貴族貴種もしくは貴族B
闇の隆盛の神話レアとして誕生したこの吸血鬼、他者を犠牲にして生き残る感じが殺伐とした感じを出していてとてもいいですね。人間を生贄にすると強くなるのも吸血鬼っぽくて好印象。
しかし、破壊されないという除去耐性を持ってはいたものの、当時は《迫撃鞘/Mortarpod》や《はらわた撃ち/Gut
Shot》など、タフネス1が辛い環境だったこともあり、当初はその強さよりも誤訳が注目されていました。強いカードも環境次第ですね。
それでもその奇襲性と打点の高さから、ラクドスカラーのゾンビビートダウンで徐々にその存在感を現してきました。
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トーナメント:GP
Minneapolis12 2012/05/19-20
順位:57位(初日全勝)
Player:Chris Schafer
Deck Name:
Deck Designer:
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23land
4 《黒割れの崖/Blackcleave Cliffs》
3 《魂の洞窟/Cavern of Souls》
3 《竜髑髏の山頂/Dragonskull
Summit》
10 《沼/Swamp》
3 《森林の墓地/Woodland Cemetery》
28creature
4 《血の芸術家/Blood
Artist》
4 《戦墓のグール/Diregraf Ghoul》
1 《ファルケンラスの貴種/Falkenrath
Aristocrat》
2 《煙霧吐き/Fume Spitter》
4 《ゲラルフの伝書使/Geralf's Messenger》
4 《鬱外科医/Gloom Surgeon》
4 《墓所這い/Gravecrawler》
1 《危険なマイア/Perilous Myr》
3 《ファイレクシアの変形者/Phyrexian
Metamorph》
1 《士気溢れる徴集兵/Zealous Conscripts》
9spell
2 《喉首狙い/Go for the Throat》
3 《悲劇的な過ち/Tragic Slip》
4 《出産の殻/Birthing Pod》
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15sideboard
4 《墓所を歩くもの/Crypt Creeper》
2 《ヴェールのリリアナ/Liliana of
the Veil》
2 《躁の蛮人/Manic Vandal》
3 《ファイレクシアの抹消者/Phyrexian
Obliterator》
1 《漸増爆弾/Ratchet Bomb》
2 《ソリンの渇き/Sorin's Thirst》
1 《士気溢れる徴集兵/Zealous Conscripts》
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当時猛威を奮っていたUWデルバーのキーカードである《蒸気の絡みつき/Vapor
Snag》には弱かったものの、《ゲラルフの伝書使/Geralf's
Messenger》を贄に突如現れ、空をかけるその姿に恐怖した人も少なくないのではないでしょうか。飛行に対処できないデッキが多かったため、一度殴り始めると手がつけられませんでした。
・ミラディンの傷痕からラヴニカの回帰へ
ローテーション。苦手なカードがスタンダード環境から軒並み退場した当時、《ファルケンラスの貴種/Falkenrath
Aristocrat》が環境で最強のクリーチャーだったと言える時期が確かにありました。
グランプリ名古屋ではTop8に4人を送り込んだラクドスビートダウン。黒メインと赤メインでタイプこそ違ったものの、《雷口のヘルカイト/Thundermaw
Hellkite》と《ファルケンラスの貴種/Falkenrath
Aristocrat》はすべてのデッキの要として存在しており、特に貴種はすべてのデッキに4枚の居場所を確保していました。
《スラーグ牙/Thragtusk》を飛び越え、《至高の評決/Supreme
Verdict》にも屈さず。《未練ある魂/Lingering
Souls》のスピリットは《雷口のヘルカイト/Thundermaw
Hellkite》や《忌むべき者のかがり火/Bonfire
of the Damned》で露払い。レアやアンコモンより神話レアの方が強いのは当然の摂理。強いカードを使えばいいのです。
当時貴種に対処できるカードは《悲劇的な過ち/Tragic
Slip》と《イゼットの静電術師/Izzet
Staticaster》くらいで、貴種が隆盛するのは当然の結果だったのでしょう。
僕自身も彼女の恩恵に預かり、このグランプリ名古屋で自身初となるプロツアーへの切符を手に入れることができました。
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トーナメント:GP
Nagoya12 2012/12/09-10
順位:4位
Player:Murae Ryuji
Deck Name:
Deck Designer: |
24land
4 《血の墓所/Blood Crypt》
3 《戦の大聖堂/Cathedral of
War》
4 《魂の洞窟/Cavern of Souls》
4 《竜髑髏の山頂/Dragonskull
Summit》
8 《山/Mountain》
1 《沼/Swamp》
26creature
4 《灰の盲信者/Ash Zealot》
4 《ファルケンラスの貴種/Falkenrath
Aristocrat》
3 《地獄乗り/Hellrider》
4 《悪名の騎士/Knight of Infamy》
4 《ラクドスの哄笑者/Rakdos Cackler》
4 《流城の貴族/Stromkirk Noble》
3 《雷口のヘルカイト/Thundermaw
Hellkite》
10spell
2 《忌むべき者のかがり火/Bonfire
of the Damned》
4 《火柱/Pillar of Flame》
4 《灼熱の槍/Searing Spear》
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15sideboard
2 《滅殺の火/Annihilating Fire》
1 《脳食願望/Appetite for Brains》
1 《忌むべき者のかがり火/Bonfire
of the Damned》
1 《戦慄掘り/Dreadbore》
1 《強迫/Duress》
2 《ミジウムの迫撃砲/Mizzium Mortars》
2 《トーモッドの墓所/Tormod's Crypt》
2 《悲劇的な過ち/Tragic Slip》
1 《究極の価格/Ultimate Price》
2 《火山の力/Volcanic Strength》
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・ふたつの“貴種“
ラクドスミッドレンジの要としての存在感を示した彼女ですが、環境が変わっても絶頂期はまだまだ終わりませんでした。むしろ“貴種“としての絶頂期はここからスタートしたと言えます。
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トーナメント:Pro
Tour Gatecrash 2013/02/15-17
順位:優勝
Player:Tom Martell
Deck Name:The Aristocrats
Deck Designer: |
24land
4 《血の墓所/Blood Crypt》
3 《魂の洞窟/Cavern of Souls》
1 《断崖の避難所/Clifftop Retreat》
4 《神無き祭殿/Godless Shrine》
4 《孤立した礼拝堂/Isolated Chapel》
3 《平地/Plains》
4 《聖なる鋳造所/Sacred Foundry》
1 《大天使の霊堂/Vault of the
Archangel》
30creature
4 《ボロスの反攻者/Boros
Reckoner》
4 《カルテルの貴種/Cartel Aristocrat》
4 《教区の勇者/Champion of the
Parish》
4 《宿命の旅人/Doomed Traveler》
4 《ファルケンラスの貴種/Falkenrath
Aristocrat》
3 《悪名の騎士/Knight of Infamy》
1 《修復の天使/Restoration Angel》
2 《銀刃の聖騎士/Silverblade
Paladin》
2 《スカースダグの高僧/Skirsdag
High Priest》
2 《士気溢れる徴集兵/Zealous Conscripts》
6spell
2 《未練ある魂/Lingering Souls》
4 《オルゾフの魔除け/Orzhov Charm》
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15sideboard
2 《冒涜の行動/Blasphemous Act》
2 《未練ある魂/Lingering Souls》
1 《弱者の師/Mentor of the
Meek》
2 《幽霊議員オブゼダート/Obzedat,
Ghost Council》
2 《安らかなる眠り/Rest in Peace》
1 《スカースダグの高僧/Skirsdag
High Priest》
2 《イニストラードの君主、ソリン/Sorin,
Lord of Innistrad》
3 《悲劇的な過ち/Tragic Slip》
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このプロツアーギルド門侵犯で実際にデザイナーであるSam
Black氏と対戦したのですが、貴種の名を冠するこのデッキと初めて対峙した時の驚きは今でも覚えています。
正直に言うと、初めて《カルテルの貴種/Cartel
Aristocrat》を出されたときは何かの冗談だと思いましたが、一度場に出てしまえば除去できないブロックできない、陰鬱を達成してくるいやらしさに気付き、その考えはすぐに覆されました。
どちらの貴種も持つ回避能力と、生贄に捧げる能力によるシナジーを最大限に生かしたデッキは驚きの連続でした。
このデッキがタイトルを獲ったことを知った瞬間も、驚きと納得が入り混じった妙な気分だったのを覚えています。
・貴種の運命は続く
先日行われたワールドマジックカップ名古屋予選。日下部氏が最後の代表として勝ち名乗りを受けたのは記憶に新しいですが、使用デッキは前述と同じAristocratsの名を持ちながらも、従来の人間ビートダウンからその形を大きく変えたものでした。
《教区の勇者/Champion of the
Parish》等が抜けたことにより人間シナジーが減ってはいますが、《ボロスの反攻者/Boros
Reckoner》、《冒涜の行動/Blasphemous
Act》による突然死。《反逆の印/Mark
of Mutiny》と貴種による「レイコマ・ハスク」(※1)コンボを搭載し、ビートダウンを強烈に意識した“act2”と呼ばれる形になっています。
従来のものには《士気溢れる徴集兵/Zealous
Conscripts》がレイコマ枠として投入されていましたが、現在のスタンダードは立ち回りの軽さが重要になってくるので、《復活の声/Voice
of Resurgence》、《スラーグ牙/Thragtusk》を出された返しに対処しやすい《反逆の印/Mark
of Mutiny》の方が僕好みでもあります。
リアニメイトやGW系まで、クリーチャーが強いデッキが蔓延していたワールドマジックカップ名古屋予選において、《反逆の印/Mark
of Mutiny》は非常にメタにマッチした選択でしたね。
この環境によって柔軟に形を変えることのできる“貴種“デッキで、日下部氏は4人目の日本代表の座を勝ち取ったのです。
※1:語源は《命令の光/Ray
of Command》、《ナントゥーコの鞘虫/Nantuko
Husk》の英語表記より
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トーナメント:WMCQ13
Nagoya 2013/06/01-02
順位:優勝
Player:Kusakabe Kyouhei
Deck Name:The Aristocrats
act2
Deck Designer: |
24land
1《魂の洞窟/Cavern of Souls》
2《平地/Plains》
4《聖なる鋳造所/Sacred Foundry》
1《断崖の避難所/Clifftop Retreat》
4《神無き祭殿/Godless Shrine》
4《孤立した礼拝堂/Isolated Chapel》
4《血の墓所/Blood Crypt》
4《竜髑髏の山頂/Dragonskull Summit》
20creature
4《血の芸術家/Blood
Artist》
4《宿命の旅人/Doomed Traveler》
4《ファルケンラスの貴種/Falkenrath
Aristocrat》
4《カルテルの貴種/Cartel Aristocrat》
4《ボロスの反攻者/Boros Reckoner》
16spell
3《イニストラードの君主、ソリン/Sorin,
Lord of Innistrad》
1《オルゾフの魔除け/Orzhov Charm》
3《反逆の印/Mark of Mutiny》
4《未練ある魂/Lingering Souls》
3《悲劇的な過ち/Tragic Slip》
2《冒涜の行動/Blasphemous Act》
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15sideboard
1《軍勢の集結/Assemble the Legion》
3《ヴェールのリリアナ/Liliana of
the Veil》
2《ミジウムの迫撃砲/Mizzium Mortars》
1《悲劇的な過ち/Tragic Slip》
2《罪の収集者/Sin Collector》
1《冒涜の行動/Blasphemous Act》
1《墓場からの復活/Rise from the
Grave》
1《オリヴィア・ヴォルダーレン/Olivia
Voldaren》
2《幻月/Paraselene》
1《戦慄掘り/Dreadbore》
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・貴種は死なず
カードの能力通り、貴種は死なず。貴種はスタンダード環境から退場することなくその姿を残し続けています。これまでも、そしてこれからも。きっとスタンダード環境が変わっても、その名を刻み続けてくれるのではないでしょうか。
最近徐々にその数を増やしてきた、《縞痕のヴァロルズ/Varolz,
the Scar-Striped》を使用したJunk
Aristocratsは、《カルテルの貴種/Cartel
Aristocrat》がとても強いデッキですね。
全体的に線が細く、もう少し突破力が欲しいなと感じる時もありますが、まだまだ練り甲斐のある可能性を感じるデッキだと思います。ただ、デッキが全く赤くないので細かいところは割愛します!
いきなり「最後赤いカードじゃねえじゃん!」という突っ込みが入りそうですが、大体赤いカードについてなので大丈夫です。
というわけで今回は《ファルケンラスの貴種/Falkenrath
Aristocrat》というか“貴種“に焦点を当ててみました。
ネタが切れない限り、次回も赤い何かについて書きたいと思います。
それではまた次回!
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