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「安田マサユキの実物提示教育致します」第2回 デッキ構築で失敗しない為に~サイドボード論~ 
 
 みなさんこんにちは!
 BIGMAGICのホームページがオープンして早くも一ヶ月が経とうとしています。コンテンツも充実してきていますし、各ライターの皆さんも面白い記事をUPされています。私も彼らに負けないように、記事を頑張って書かないといけませんね!

 というわけで早速今回も主観だらけのデッキ構築論、始めましょう!


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前回はメインボードの調整について、普段私が意識している点を纏めました。
要点は以下の3点。

● 採用するカードへの理由付けをする
● カードごとに点数を付ける
● デッキと使うカードのコンセプトを一致させる



 ここからはサイドボードの大切さについて。そしてその調整について書いていきたいと思います。


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~サイドボードとは~

 「サイドボードはメインボードの一部です。」
 いきなり何言っているんだ? と思われるかもしれませんがこれは私の持論です。なぜならマジックはサイドボーディング後こそが互いにフィフティ・フィフティに戦う本番であり、そこでの勝率を高める為に75枚の総合力を高める、これこそが構築の真髄だと考えているからです。


 レガシーは他のフォーマットに比べ、アーキタイプごとの相性がはっきりしています。特にメインボードだけではほぼ勝てないマッチアップもあります。例えば愚直なビートダウンならばいわゆるコンボデッキにはメインボードで勝つことは難しいです。墓地を利用するデッキ相手には対策無しに勝負するのはハンデがあり過ぎます。だからこそマッチに勝つ為にはサイドボードの重要性は非常に高いのです。



~まさに、ジャンケンのグー・チョキ・パー~


 その一方、何十何百のデッキが存在するレガシーで、全てのデッキを対策するのは不可能に近いものがあります。それ故、そのサイドボード15枚を選ぶ為には、メインボードの弱点を理解し、メタゲームを把握した上で、最適なカードを選ばなければいけません。
 この選択こそが構築の最も難しい部分で、センスと知識と経験が問われる部分だと思います。

 ではその15枚をどのように選ぶのか、その指針となる点を洗い出しましょう。


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~サイドボードの役割~


一般的にサイドボードの役割は


 この3パターンがほとんどです。
 ①は最も一般的なサイドボードです。対ビートダウン相手への除去などの対抗策、ドレッジやリアニメイトへの《トーモッドの墓所/Tormod's Crypt》や《安らかなる眠り/Rest in Peace》、ストームデッキへの《エーテル宣誓会の法学者/Ethersworn Canonist》や《狼狽の嵐/Flusterstorm》、赤単バーンへの《赤の防御円/Circle of Protection: Red》といったクリティカルになり得るカードです。




対処



出来なければ



負ける!!


 ②は上記の対策される側のデッキが、そのクリティカルなカードを対処する為のカードです。例えば《真髄の針/Pithing Needle》《蒸気の連鎖/Chain of Vapor》《ザンティッドの大群/Xantid Swarm》など、相手の対策カードさえ止めれば勝ちに近づくコンボデッキがこのサイドボードを採用しています。これらで対処した後の1ターンで一気に仕掛けて勝負を決めるのです。


全部止めるよ!


戻せばどうということはない!


動くな!!


 ③は②とも少し似ていますが、相手のサイドボードを無視したゲームプランを組み立てる事が可能なカードです。
 古くはMOMAのミラーマッチ対策に搭載された《新緑の魔力/Verdant Force》がこれに当たり、現在ではリアニメイトのサイドボードにある《実物提示教育/Show and Tell》がこれに当たりますね。相手の墓地対策カードを無視して手札から脅威を直接出せるので、ゲームプランの二択を相手に突きつけることができるのです。


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~サイドボードを考える上での注意点~

●元のコンセプトを壊さない

 これは前回のメインボード構築でも考えた、カードのコンセプトをしっかり吟味する点と同じです。自らのデッキに合うカードを選択するのが最良です。
 例えば上でも述べた墓地対策には様々ありますが、《トーモッドの墓所/Tormod's Crypt》《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》《安らかなる眠り/Rest in Peace》《外科的摘出/Surgical Extraction》《ボジューカの沼/Bojuka Bog》の各カードから、それぞれをどんなデッキで選択するのが適切かを考えてみましょう。

 《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》を使っているなら、2度使いまわせる《外科的摘出》はシナジーがあると言えるでしょう。一方《安らかなる眠り/Rest in Peace》は《瞬唱の魔導師》を大幅に弱体化させるので、何か理由でもない限りは共存させるべきではありません。




 一方《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》を使っているならば、その能力で《ボジューカの沼》をサーチできます。シナジーがあると言えるので採用の価値はあるでしょう。
 しかし《安らかな眠り》や《大祖始の遺産》は《聖遺の騎士》自身を弱体化させるので、共存は難しいですね。この場合は相手だけに影響する《トーモッドの墓所》の方が適切といえます。
 サイドボードを行って自らのデッキパワーを弱体化させるのはナンセンスです。






●必要最低限の枚数で対策する

 「私はコンボデッキが嫌いだから、サイドボード15枚全てをコンボ対策にする」
 その気持ちは良く分かりますが、現実的ではありませんね。やり過ぎたサイドボードはメインデッキのコンセプトを壊します。何よりコンボ以外との対戦においてハンデがあるだけです。



コンボが嫌いならメインから有利なデッキを探しましょう。


 しかし実際には不利な相手の対策を優先的に取るものです。特定のデッキを意識した専用のサイドボードは、4枚までに抑えるのが良いでしょう。それ以上は元のコンセプトを壊しかねません。


●受けの広いカードで汎用性を増す

 サイドボードは15枚という非常に限られた余白をより効果的になるよう活用しなければいけません。その余白を省スペース化する一つの案として、特定の相手にクリティカルなカードではなく、様々な相手に投入できる、いわゆる「丸いカード」を選ぶという手法があります。

 例えば私がよく採用するカードに《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》があります。



 ビートダウンの低マナ域、《敏捷なマングース/Nimble Mongoose》《聖トラフトの霊/Geist of Saint Traft》などの対処し辛いクリティカルなパーマネント、ストームデッキの《巣穴からの総出/Empty the Warrens》から《闇の腹心/Dark Confidant》、その他エルフやマーフォーク等のマナ域が固まったデッキ相手など、有効範囲が非常に広いカードです。


全て一枚で対処!

 クリティカルで無い分パンチ力は下がりますが、そこはサイドに空いたスペースでさらに補完できるので、デッキの受けを広くしたい際にこの手法を取ります。


●メインのコンセプトを強化する

 メインボードに《Hymn to Tourach》や《思考囲い/Thoughtseize》等の手札破壊を4枚未満で採用している場合や、《呪文貫き/Spell Pierce》等の限定的な打消し呪文を搭載している場合など、その部分を増量してやることで元からあるコンセプトを壊すことなく強化させるサイドボーディングです。
 手札破壊や限定的な打消し・除去スペルは相手のデッキや先手後手によって価値が変わってくるので、サイドボーディングで枚数を調整して最適化する手法です。



相手のデッキ、先手後手、相手のサイドボーディング等に応じて枚数を調整

 状況に応じたサイドボーディングを行えるので、私はこの手法を多用しています。


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 以上がサイドボード調整の時に意識している事とその手法の一例です。

 と色々述べてみたものの、デッキを作った時は絶対に「あーサイド30枚欲しいなぁ」と思ってしまいます。ダメですけど。

 その候補達から絶対に必要なカードを抜き出します。そして似た役割のカードを削り、時にはメインボードとの枚数を調整し、17枚くらいまで絞り、残りの2枚を本番直前まで悩む。毎回そんな調子です。

 ではここからは実際に私が調整をしたデッキを、実例を挙げて見てみましょう。


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●デッキ調整の実演

まずはこのデッキを見てください。
トーナメント:StarCityGames.com Legacy Open 2013/03/17
順位:57位(初日全勝)
Player:Chris Schafer
Deck Name:
Deck Designer:
23land
4《汚染された三角州/Polluted Delta》
3《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》
2《湿地の干潟/Marsh Flats》
3《Underground Sea》
2《Tundra》
1《Scrubland》
1《Tropical Island》
1《Karakas》
1《忍び寄るタール坑/Creeping Tar Pit》
2《不毛の大地/Wasteland》
1《平地/Plains》
1《島/Island》
1《沼/Swamp》

16creature
4《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》
4《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》
2 《闇の腹心/Dark Confidant》
2《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》
4《聖トラフトの霊/Geist of Saint Traft》

21spell
1《梅澤の十手/Umezawa’s Jitte》
1《殴打頭蓋/Batterskull》
3《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》
2《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》
4《渦まく知識/Brainstorm》
1《思案/Ponder》
4《剣を鍬に/Swords to Plowshares》
3《思考囲い/Thoughtseize》
2《コジレックの審問/Inquisition of Kozilek》
15sideboard
1《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》
2《対抗呪文/Counterspell》
1《解呪/Disenchant》
3《Force of Will》》
2《外科的摘出/Surgical Extraction》
2《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》
2《至高の評決/Supreme Verdict》
1《思考囲い/Thoughtseize》 
1《名誉回復/Vindicate》
  エスパーカラーの石鍛冶デッキに《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》をスプラッシュしたデッキです。
 元々エスパーブレードというアーキタイプはトーナメント上位に存在するデッキです。故に基本的な強さは約束されていました。
 そこにこれまでありそうで無かったコンセプトをプラスしたものだったので、ブラッシュアップする価値があると考え調整を施しました。

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 まずは前回のおさらいを踏まえながら、メインデッキのコンセプトをきっちりと固めていきましょう。


●死儀礼のシャーマンを最大限生かす

 まずこのカードの強いところは、2Tに3マナのアクションができるマナクリーチャーの役割が(緑を使わずとも)できる点です。
 元のレシピは3マナのアクションが聖トラフトの霊と、《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》の二つです。
ここでまず、デッキのコンセプトを突き詰めてみます。

 トラフトを採用しているこのデッキは、他のレシピに比べても攻撃的なデッキであることが伺えます。
一方リリアナというカードは防御的な側面が強く、特にこのデッキにおける2Tリリアナというアクションは、クロックが無い状態では決して強いと言えません。もちろん、対コンボデッキにはすさまじい強さですが。

 故に私はこの枠を、《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》変更しました。《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》が《梅澤の十手/Umezawa’s Jitte》などの装備品を手札に持ってくる為、後半でも場にクロックを残せる点も重要です。
 さらに《Karakas》とのシナジーも小さいながらあります。そしてコンセプトをクロック重視に寄せることで、死儀礼のシャーマンが持つ2点ルーズの能力、これがより一層生きてきます。





●Force of Willの採用

 元のデッキには《Force of Will》が入っていません。(サイドボードに3枚)
これは序盤からヴェールのリリアナを含めた消耗戦を意識しているからだと思います。
ですが、手札を奪い合う消耗戦よりも、



といった展開の方が、攻め手が合理的になると考えました。
 その消耗戦を避けた代わりに、《闇の腹心》を抜くことにしました。




●土地の調整(23枚→22枚)

 原型は土地が23枚です。
 しかし死儀礼を採用してマナ生物として使用できるデッキであることと、最大5マナしか必要としないデッキ構成であることを考えると、土地の数はもう少し減らすことが出来ると考えました。
 また《不毛の大地/Wasteland》を中途半端に2枚取る必要性が感じられなかったので、これを《ミシュラの工廠/Mishra's Factory》に。継続的に攻撃を続けたいデッキなので、中盤以降の装備先やクロックとしての役割も重要です。




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それでは改めて、サイドボードを考えてみましょう。


●サイドボード

 まず意識したのは、このデッキはコンボデッキと中長期を意識したコントロールデッキにそれ程相性が良くない点です。それ故サイドボードではそこを重点的に補強しました。
 ヴェールのリリアナは、攻撃的なデッキから除去コントロールへの変形サイドボードを取る際に、他の除去と共に投入します。もちろん、コンボデッキに対しても非常に強力です。


 さらにヴェンデリオン三人衆を対コンボと対コントロールの為に追加、神ジェイスが2枚では心許ない対コントロールへの補強として追加。



 今回は他のコンボデッキを意識した為、墓地対策は少なめに。瞬唱とのシナジーがあり対コンボデッキとしても使える外科的摘出を2枚。自分の死儀礼との相性は悪いものの、相手側の死儀礼の対策にもなる大祖始の遺産を1枚の計3枚。



 残りの枠は
・除去兼実物提示教育を意識した《忘却の輪/Oblivion Ring》
・除去兼エルフを意識した《非業の死/Perish》
・同型を意識しつつ瞬唱の魔導師で使いまわせる《解呪/Disenchant》
・万能カードの《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》
等等、様々なデッキを相手にサイドボーディングが5枚前後に収まるよう枚数を調整しました。




 そして完成したデッキレシピ。そしてそれを使い参加した大会の結果が以下のものです。
トーナメント:BM池袋2周年記念大会 2013/03/31
順位:優勝
Player:Yasuda Masayuki
Deck Name:
Deck Designer:
22land
4《汚染された三角州/Polluted Delta》
3《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》
2《湿地の干潟/Marsh Flats》
3《Underground Sea》
2《Tundra》
1《Scrubland》
1《Karakas》
1《忍び寄るタール坑/Creeping Tar Pit》
2《ミシュラの工廠/Mishra’s Factory》
1《平地/Plains》
1《島/Island》
1《沼/Swamp》

16creature
4《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》
4《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》
2《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》
4《聖トラフトの霊/Geist of Saint Traft》
2《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》

22spell

1《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》/umezawa’s jitte
1《殴打頭蓋/Batterskull》
2《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》
4《渦まく知識/Brainstorm》
1《思案/Ponder》
4《剣を鍬に/Swords to Plowshares》
3《思考囲い/Thoughtseize》
2《コジレックの審問/Inquisition of Kozilek》
4《Force of Will》
15sideboard
2《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》
2《外科的摘出/Surgical Extraction》
2《忘却の輪/Oblivion Ring》
2《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》
1《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》
1《真髄の針/Pithing Needle》
1《狼狽の嵐/Flusterstorm》
1《解呪/Disenchant》
1《非業の死/Perish》
1《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》
1《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》
 自分が調整したデッキで結果を残せると、非常に嬉しいですね!

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  以上、前後半の二部に分けて書いたデッキ調整論はいかがでしたでしょうか?自分なりのノウハウを実際の調整を踏まえて記載してみました。
 今回は成功した調整ですが、この影には数多くの失敗調整があります。その経験があってこその成功なので、皆さんも失敗を恐れず、どんどんデッキ調整に挑戦してみてください。

 上にも書きましたが、自分が調整したデッキが結果を残すと、本当に嬉しいし気持ちいいですよ!

 ではでは皆様、これからも良きレガシーライフを!
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