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Mad Sappy Suckers 第2回 “Like A Ruling Stone” 
 

text by Ryosuke Sakamoto

 突然ですが、次のカードの共通点はなんでしょう?


《燃え立つ願い/Burning Wish》

あなたは何を持ってきますか?
《壌土からの生命/Life from the Loam》?
《苦悶の触手/Tendrils of Agony》?


《モグの狂信者/Mogg Fanatic》

わかっ…りました?まだですか。それでは次に行きましょう。


《刻印/Brand》

もうお分かりですね?


 赤い!その通り。でもあともう一声。


 これらはいずれも「M10」発売に伴うルール変更で弱体化したと言われているカードです。

  《モグの狂信者/Mogg Fanatic》はタフネス2と相打つことが出来なくなりましたし、燃え立つ願い/Burning Wish》は「追放」されたカードを回収できなくなりました。
《刻印/Brand》については言うまでもありません。Hunted Brand(※1)というデッキが環境から消えてしまったのです。そもそも元からいませんでしたが。


※1
 《狩り立てられた恐怖/Hunted Horror》等の「相手にトークンを渡す」というデメリットを《刻印/Brand》でメリットに変えるというビート・コンボ。M10ルール導入以前は、トークンのオーナー=発生させたプレイヤーであったためこれが成立していた。




 そんな訳で今回は「マジック基本セット2014」発売に伴うルール変更と、その影響についてお話したいと思います。



 まずは変更のあったポイントのおさらいから。





①「レジェンドルール」及び「プレインズウォーカーの唯一性ルール」

 異なるコントローラが同じ「伝説のパーマネント」や同じタイプのPWをコントロールしていても、それらは対消滅しなくなります。
 但し同じプレイヤーがコントロールしている場合、「どちらか一方を墓地に置く」ことになります。


 強力な「伝説のパーマネント」が多数存在するエターナル・フォーマットへの影響は非常に大きいものになりそうですね。

 具体的に言えば・・・
・《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》を《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》で壊せない

・2枚目の《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》が腐らない

・睨み合う《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn》

・2枚目の《ガイアの揺籃の地/Gaea’s Cradle》で瞬間的にマナが倍

・《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》のドロー合戦

・《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》+1、《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf》プレイ、2枚目のリリアナがめくれて着地、-2、血編みパンチ!

 こんな光景が思い浮かびます。

更には
《演劇の舞台》+《暗黒の深部/Dark Depths》=《マリット・レイジ》




 こんなコンボが成立するのです。(※2)
 海外ではすでに「青単カウンターDD」「土地単DD」なんていうデッキも開発されはじめているそうな…

※2
 《暗黒の深部》を《演劇の舞台》でコピーし、元の《暗黒の深部》を墓地におくことを選ぶと…。“氷カウンターの乗っていない《暗黒の深部》”が即・完成。



 さて、こういった諸々の要因を踏まえて、今後の活躍が見込まれるデッキをいくつか挙げてみましょう。


Punishing Jund
 対消滅が対処法として使えなくなった以上、《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》に対する《突然の衰微/Abrupt Decay》。
 各種プレインズウォーカーに対する《罰する火/Punishing Fire》。のような、「直接的に脅威を処理できる」カードは大きく評価が高まります。

 上記のとおりリリアナも強化されていますので、《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》登場後爆発的に勢力を伸ばしたものの、最近は振るわないジャンドが再び「王者のデッキ」として返り咲くのかもしれません。


Elves!
 そうはさせまい、と牽制するのがこのElves!です。
 《ガイアの揺籃の地/Gaea’s Cradle》の「流し打ち」が復活したことで爆発力に磨きがかかり、ジャンドのような中低速デッキは食い物にされてしまうことでしょう。
 同じ理由で天敵になり得る《暗黒の深部/Dark Depths》もジャンドに滅法強いカードであり、今後のメタ動向から目が離せません。


青系ミッドレンジ
 コンボが強化と聞いちゃ黙っていられない!とばかりに青もまた強化されることになります。
 とりわけその恩恵に与かるのは、《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》&《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》をたっぷりと搭載した中速のクロックパーミッション~ミッドレンジでしょう。

 私が最高のクリーチャーの1枚と信じて疑わない《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》の唯一の欠点は「2枚目以降が腐る」というポイントにありましたが、今後は「相手の手札を除きつつ、攻めを継続できる」ということで、2枚目を引く価値がぐっと高まります。

 そうなると三人衆と相性が最高であり、またジェイスにも強い《概念泥棒》のようなカードをメインから採用するプランが現実的なものになるかもしれません。



 ちなみに、最後になりましたが、今まで「対消滅要因」として広く愛用されてきた《ファイレクシアの変形者/Phyrexian Metamorph》や《幻影の像/Phantasmal Image》は残念ながらお役御免となってしまいます。



「君たちのことは忘れない・・・」



② サイドボードの枚数について

 マジックというゲームにおけるサイドボードの重要性は今更語るまでもありません。何せメインボードで戦う回数よりもサイド変更後の回数の方が基本的に多い訳ですから。

 そんなサイドボードだからこそデッキ調整において「どれをサイドに落とすか」「サイド後にどういうプランを組むか」というのはもっとも苦心する部分の一つですし、練りに練ったサイドボードで劇的な逆転劇を演じた時など胸が躍ります。


  M14以降、サイドボードは「0 or 15」ではなく、「15枚以下であれば何枚でもOK」、となります。加えて、サイド変更後のサイド枚数も「15枚まで」なら認められます。

 これに関しては公式サイトにてぱお(米村薫)氏がケーススタディを交えて詳しく解説されていますので、一度目を通しておくことをお勧めします。


 かいつまんで言うと
・「メイン60/サイド10」はOK、サイド後に「68/2」になるのもOK。
・但し「50/20」はNG、ということですね。


 サイドはあればあるほどお得ですので、敢えて少ないサイド枚数で臨むことはないでしょうが、どうしても構築段階で「サイドのイン/アウトが合わない!」とお悩みだった方には朗報かもしれません。

 枚数をいたずらに増やすと「内容の薄いデッキ」になってしまうおそれがあるので、考えもなくライブラリ総数を増やすというのはお勧めしませんが、後手番で土地を1枚抜きたい場合なんかに、代わりに有効牌を1-2枚追加するという選択肢が出来たのはなかなか興味深いポイントです。

 特定のキーカードに依存しないデッキであれば、そういうサイド変更をすることも今後きっと出てくることでしょう。



③ 土地のプレイ回数

 もう一昔前の話になりますが、《溶鉄の尖峰 ヴァラクート》を使うプレイヤー達の間で決まり文句となっていたのが
「《ムル・ダヤの巫女/Oracle of Mul Daya》能力で土地をセット」
というものでした。

 これは「通常与えられる1回より、巫女で増えた枠を先に使うことで、2枚目の土地セットまでの間に(《探検/Explore》を挟む場合などに)巫女が除去される」という事態を防ぐための宣言でした。


 しかしこれからプレイヤーは「土地をプレイ出来る枚数の上限」のみを考えることになります。

 上記の例で言えば、巫女が除去されてしまえば(何に従って1枚目の土地をプレイしたかどうかにかかわらず)土地のプレイ上限は「1枚」に戻り、「通常のランドセット」を行う機会は失われてしまいます。

 他には、小技ですが「《踏査/Exploration》を一度バウンスしてもう一度プレイ、これで土地を3枚セットできる」というテクニックは失われてしまいます。

 これがどの程度Lands(※3)使いに悲しみを背負わせることになるのか、私には見当もつきません。


※3
 エターナルに存在する「デッキのほとんどが土地」というローグ・デッキ。
《踏査/Exploration》《マナ結合/Manabond》による高速展開、《直観/Intuition》+《壌土からの生命/Life from the Loam》による必要な土地のサーチ、《宝物探し/Treasure Hunt》による膨大なドローで盤面を構築する。

 勝ち手段は《ミシュラの工廠/Mishra's Factory》などのマンランドのみだが、《The Tabernacle at Pendrell Vale》《Maze of Ith 》によるビートダウン封殺が可能、そもそも土地ばかりなので打ち消しに強い、などなど、相手にすると実に嫌らしいデッキである。





④「破壊不能」


 《ファルケンラスの貴種/Falkenrath Aristocrat》が存在するスタンダードに於いては比較的重要な変更ですが、それより下になると殆ど影響がありません。

 一応説明しておくと、ある呪文や能力によって、あるパーマネントが「破壊されなくなる」場合…

以前)
 「破壊されない」という能力はそのパーマネントが得る能力ではなく、文字通り「破壊されなくなる」だけである

今後)

 あるパーマネントは「破壊不能」という能力を得る

 つまり、「破壊不能」を持つパーマネントが何らかの呪文や能力により「能力を失った」場合、今後は破壊されるようになる、ということになります。

 《ファルケンラスの貴種/Falkenrath Aristocrat》がこれからは《変化/点火》で焼けるということですね。
 そんなことをしている暇があったら《悲劇的な過ち/Tragic Slip》をどうぞ、とは言ってはいけないお約束。




 ということで、今回のルール改定についてはこんなところです。

 この変更によってどうなるか、特に①が与えるメタゲームへの影響は未だ計り知れませんが、新しいデッキや戦略が生まれる瞬間はいつだって楽しいものです。

 みなさんもこれを機に普段使わないような何かを手に取って、大会に出かけてみてはいかがでしょうか。

 そこにもまた、新しい発見が転がっているかもしれません。

 そうやって、転がり続ける石のように、苔むさず、錆び付かず、形を変え続けて新たな世界に飛び出していこうではありませんか。




 と、大きな事を言ってみたところで今回はここまで。最後に今後組んでみたいデッキリストの一つでもまたまた置いておいておきます。

 またの機会まで、健やかなゲーム・ライフを!


サンプルリスト
Deck Name:BUG Flash
Deck Designer:Ryosuke Sakamoto
23land
4《不毛の大地/Wasteland》
4《汚染された三角州/Polluted Delta》
4《霧深い雨林/Misty Rainforest》
2《新緑の地下墓地/Verdant Catacombs》
3《Underground Sea》
3《Tropical Island》
1《Bayou》
1《島/Island》
1《沼/Swamp》


15creature
4《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》
4《タルモゴイフ/Tarmogoyf》
2《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》
3《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》
2《概念泥棒/Notion Thief》

22spell
4《渦まく知識/Brainstorm》
2《思案/Ponder》
4《思考囲い/Thoughtseize》
4《Force of Will》
2《対抗呪文/Counterspell》
4《突然の衰微/Abrupt Decay》
2《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》
15Sideboard
3《仕組まれた疫病/Engineered Plague》
2《真髄の針/Pithing Needle》
3《外科的摘出/Surgical Extraction》
2《狼狽の嵐/Flusterstorm》
2《梅澤の十手/Umezawa’s Jitte》
3《水没/Submerge》


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