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by Ishida Hiroshi
さて二回目となります今回はモミール・ベーシックで勝つための戦略記事……ではなく、まずはモミール・ベーシックのゲームがどんなものなのか、実際に紹介していこうと思います。
ちょうど先日、二人構築戦での賞品が「ラヴニカへの回帰」のパックになったこともあって、MOでモミールを遊ぶ機会がありました。
そこでの試合がとても面白く、『これぞモミール!』という展開だったので紹介していこうと思います。
二人構築戦なので通常のマッチと同じ二本先取制です。いちおうサイドボードもありますが実際意味はありませんよね(笑)
あと、マリガンも意味がありません……というかマリガンすると負けます(笑)
今回のデッキはこちらです。
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dds-Momir
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1avatar
1《Momir Vig, Simic Visionary》
17creature
23《山/Mountain》
15《沼/Swamp》
9《平地/Plains》
9《島/Island》
4《森/Forest》
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sideboard
none |
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各基本地形の枚数は結構雑ですが(笑)
一応それぞれ意味があります。この辺の構築の理由に関しては、次回以降で説明しようと思います。
それでは早速ゲームを見て行きましょう!
ちなみにモミール用語として「◯モミ(◯は数字)」と言うものがあります。これは、アバターの能力をX=◯で起動するという意味です。
例えば2モミと言えばX=2でモミールの能力を起動すること、及びその結果を意味します。アバター名のモミールと、日本語の『揉む』のダブルミーニングですね。文中でもその表現が出てきますのでご理解の程を。
・R1:ゲームスタート
こちら後手でスタートです。
① 対戦相手は1ターン目山セットで何もせずエンド。こちらも同様のアクションで返します。
プレイヤーによりますが、基本的に1モミはしないのが無難ですし、先手だったらもう一度何もしないターンを挟む事が多いです。この辺りの理由についても、次回以降の戦略記事で詳しく説明します。
② さて2ターン目。対戦相手が出したのは《アヴァシン教の僧侶/Avacynian
Priest》。
リミテでもそうですが、クリーチャー戦主体のゲームにおけるタッパーは強力です。思うように除去ができないモミール・ベーシックではシステムクリーチャーの価値は尚更高く、こちらの最強の1体を常にタップし続けられるこいつはかなりの当たりと言えるでしょう。
対してこちらの2モミは……《海の占術師/Sea Scryer》!
今では珍しい青のマナクリーチャーです。
モミールにおいてマナ加速は極めて強力で、1ターン早く重クリーチャーを出せるアドバンテージは凄まじいものがあります。
そもそも低マナ域での起動はほとんどがマナクリーチャーを狙ってのものです。というわけで、これも大当たりです。
お互い良い出だしです。
③ 相手は3ターン目、モミールを起動しませんでした。
この辺りの戦略はまた次回の記事で書きますが、先手は2回ほど起動を飛ばす必要があります。ここでは『アヴァシン教の僧侶』のタップ能力起動にもマナを使うのでちょうどいいという感じでしょうか。
当然こちらのマナクリはタップされましたが、それでも3マナ使えるので起動。出てきたのは《山羊さらい/Goatnapper》。普通のバニラです。
④ 相手の4ターン目……出てきたのは古のレジェンドクリーチャー《Gwendlyn Di Corci》!!
昔のレジェンドはゴミのような弱い生物が多いのですが、こいつは別格です。
4マナ3/5という優れたマナレシオに加え、タップだけで相手のハンドをランダムディスカードする能力の持ち主。こんなものを毎回起動されていては、こちらが高マナ域に達する前にハンドが尽きてしまいます。
ここにきて大きく戦況は変わったと言えるでしょう。
ですがこちらの4ターン目。相手は《アヴァシン教の僧侶/Avacynian Priest》の起動マナがありません。ここはマナクリ含めて5モミで一気に相手の先を行くぜ!
……出てきたのは《突進するサイ/Charging Rhino》。まぁこんなもんでしょう。
⑤ 5ターン目。相手はタッパーの起動マナを残して4モミ。グウェンドリンとタッパーでこちらを抑えこんで、ゆっくり場を有利にして勝利する戦略みたいですね。
出てきたのは最近モダンマスターズでも再録された《タール投げ/Tar
Pitcher》。これで《海の占術師》もやられてしまいそうです。さらに当然《Gwendlyn Di Corci》起動でこちらのハンドは削られました。
こちら5ターン目。アップキープでマナクリ寝かせられると思ったのに何もされませんでした。
よし、ならば6マナ起動! まだまだここからです。6マナは強力クリーチャーの宝庫。ドラゴンなりタイタンなり出れば勝てる!
……出たのは《Sir Shandlar of Eberyn》。白緑のレジェンドで6マナ4/7バニラです。いわゆる昔の弱いレジェンドの一つですね……同じエクスパンション収録なのに相手とのこの格差は一体……。
R1中盤、相手の場の左にいるのが《Gwendlyn Di Corci》、こちらの場のにいるのが《Sir Shandlar of Eberyn》です。
試合はそのまま《アヴァシン教の僧侶/Avacynian Priest》と《Gwendlyn Di Corci》に抑えこまれ、こちらは6マナまで置いた時点でハンドが尽きてしまったので戦いになりませんでした。
最後は《テラストドン/Terastodon》でランドまで破壊しつくされて負けました。
・R2:ゲームスタート
さて気を取り直して2戦目。今度はこちらが先手です。
① お互い1ターン目は何もなし。
② 2モミはこちらが《ジェスの監視人/Jhessian Lookout》、相手が《ジャンドの斬刃/Jund Hackblade》。奇しくもアラーラブロック同士の対決ですが、バニラクリーチャー同士なので相打ちしてエンドです。
③ 3ターン目ですが、先手のこちらは何もしません。
相手の3モミは《銛撃ちの狙撃者/Harpoon Sniper》。タップ能力を持っているので悪くはないですが、そこまで強くはありません。
そして、事件は4ターン目で起きました。
④ こちらの4モミ……出てきたのは《オリヴィア・ヴォルダーレン/Olivia
Voldaren》!!
スタンダードでもそのボード制圧力は圧倒的ですが、思うように除去が出来ないモミールベーシックではその凶悪さは折り紙つき。まごうことなき神クリーチャーです。
しかも自分のデッキは山と沼が多い構成ですので遺憾なく能力を発揮します。(*注1:冒頭デッキリスト参照)
相手は4モミで《カメレオン・スピリット/Chameleon
Spirit》、5モミ《炎異種/Torchling》、6モミ《黒曜石のゴーレム/Obsianus
Golem》と出して来ましたが全てオリヴィアの餌食。
R2、こちらの6ターン目。今にもオリヴィアによって《炎異種》が破壊されようとしているところ。無双状態です。
11/11にまで成長した吸血鬼の女王の攻撃によって一瞬でゲームセットしました。
ゴッドクリーチャーによる一方的な蹂躙で幕を閉じたR2。
こういう理不尽な展開もモミールにはよくある事。今回は強運と吸血鬼の女王に感謝しましょう。
・R3:ゲームスタート
お互い負けられない最終ラウンド。相手が先行です。
① お互いに1モミはなし。
② 相手2モミで出たのは《野戦外科医/Field Surgeon》!
こいつはモミールではかなり強力なシステムクリーチャーで、実質的に全員が軽減能力を持つことになります。
相手はコンバットをかなり有利に進められるようになるので、2マナ域としてはかなり当たりの部類になります。
負けじと出したコチラの2モミは《光舞い/Shinewend》。まぁ、飛んでいるだけいいかなぁ……。
③ 3ターン目、相手は3モミを飛ばします。
こちら3マナは《菅草スリヴァー/Sedge Sliver》。当然沼はあるので能力ONになっています。マナレシオも良いし再生もあるので悪くありません。
そういえばM14ではスリヴァー復活とのことですね、好きな部族なので楽しみです。
などと言っている余裕はありません。
④ 4ターン目、相手が出したのは《難題のスフィンクス/Conundrum
Sphinx》! 飛行の4/4は言うまでもなく強力でかなり相手が有利になったと言えるでしょう。
こちら4マナは……《火の咆哮の神/Kami of Fire's
Roar》。名前はすごいけど実質は2/3バニラ、ハズレですね……これはまずい。
⑤ 5ターン目、相手の5モミは《カープルーザンのイエティ/Karplusan Yeti》。タップで相手と格闘できるという除去内蔵のシステム生物です。しかも格闘は《野戦外科医/Field Surgeon》と噛み合っているので、このコンビでかなりの生物が無償でやられてしまいます。これは本格的にヤバイ!
対するこちら5モミは《堕天使/Fallen Angel》。飛行だし悪くはないのですが、《野戦外科医/Field Surgeon》と《カープルーザンのイエティ/Karplusan Yeti》のせいで《難題のスフィンクス/Conundrum Sphinx》を倒すためには2体以上の生贄が必要……つまりこっちの場は壊滅必死です。
それでもスフィンクスを止められるならまぁ……と思っていたらここでまた事件発生!
⑥ 6ターン目、相手の6モミは《隆盛なるエヴィンカー/Ascendant
Evincar》!
この能力により《野戦外科医/Field Surgeon》は即・墓地送り。《難題のスフィンクス/Conundrum Sphinx》も《カープルーザンのイエティ/Karplusan Yeti》も小さくなって、逆にこちらの《堕天使/Fallen Angel》は大きくなるという事態が発生。
これで相手は殴れません。
いやー、思いっきり相手に助けられて有利になりました(笑)
R3、相手の6ターン目。
この試合の転換となったターンで、相手が出したエヴィンカーによって相手の場が一気に弱体化した瞬間です。
ランダム性に支配されたモミールでは、こうした『自爆』もよく起きます。こういう展開もモミールならではの面白さです。
勢いに乗ったこちらの6モミは《つまみ食い貯め/Morselhoarder》。マナ加速できるファッティ生物なのでかなり良いです。次のターンに2マナジャンプして9モミ出来ますからね。9マナにはゲームを決められる生物もたくさんいます。
⑦ 7ターン目。相手の7モミは《氷河屠り/Jokulmorder》。CIPで土地5枚を生贄にしないと自分が死んでしまう巨大生物で、流石にランド5枚は重いと考えてか即生贄にされました。
これはラッキーな展開が続いていますよ!
さぁさぁお待ちかねのこちら7ターン目。《つまみ食い貯め/Morselhoarder》の2マナも合わせて9モミ……出てきたのは《ティーカのドラゴン/Teeka's
Dragon》でした。まぁ9マナの中ではあまり強い方ではありませんが、それでも単純サイズで悪くはありません。
ここで《つまみ食い貯め/Morselhoarder》がアタックし《難題のスフィンクス/Conundrum Sphinx》と相打ちになりましたが《堕天使/Fallen Angel》、《ティーカのドラゴン/Teeka's Dragon》健在のこちらが大きくリードしていると言えるでしょう。
⑧ 8ターン目。相手ランドセットからの8モミですが、ここでハンドがなくなります。つまり9マナに達するためにはもう一回モミール起動を諦めなければならないわけで、そうなると9モミ連打できるこちらのほうが有利です。
で、出てきたのは《死のとぐろのワーム/Deathcoil Wurm》。レベッカ女史の綺麗なイラストが印象的なワームクリーチャーで、サイズも能力も強力。
対するこちら8モミは《精神ヒルの塊/Mindleech Mass》。もはや能力は関係ないですがサイズだけで十分でしょう。
今回のアタックでは《ティーカのドラゴン/Teeka's Dragon》が《隆盛なるエヴィンカー/Ascendant Evincar》にブロックされ、さらに《カープルーザンのイエティ/Karplusan Yeti》の格闘と合わせて破壊されました。まぁ2体1取引なら問題ないでしょう。相手の場に残ったのは《死のとぐろのワーム/Deathcoil Wurm》だけなので、《精神ヒルの塊/Mindleech Mass》と相打ちさせれば俄然有利です
……などという見通しも一枚で逆転されるのがモミールの怖さ。
⑨ 相手8モミで出てきたのが《ボロスの大天使、ラジア/Razia,
Boros Archangel》! 単独でゲームを支配してしまえるスペックを持った、8マナ域でも間違いなくゴッド級の生物です。
こいつの反射能力のせいで《死のとぐろのワーム/Deathcoil Wurm》を《精神ヒルの塊/Mindleech Mass》で倒せなくなってしまったので、なくなく《菅草スリヴァー/Sedge Sliver》とのダブルブロックで対処します。
ここで相手が《堕天使/Fallen Angel》を焼いてこなかったのはラッキーなんですが、それでもラジアは強すぎる……。
こちらは9モミ。出てきたのは《白の夜明けの運び手/Bringer
of the White Dawn》……バニラです。
このままでは誰もラジアに勝てるものがいなく、アタックもブロックも出来ずに単騎無双が始まってしまいます。
⑩ 10ターン目。相手の8モミは《墓忍び/Tombstalker》。悪くない生物……どころか残り数ターンで飛行だけによってやられてしまいます!
さてついに後が無い。10ターン目、こちらの選択は……。
これもまた後の記事で説明しますが、この状況で9モミして勝てるカードはあまりありません。一発逆転狙うなら8モミです!
……祈りに応えてくれたのか、出たのは《銀の熾天使/Silver Seraph》! スレッショルドは当然達成しているので全員パワーアップ、これでラジアも止められるし相打ちにもできます。
ただし結局は殴れませんが、この状況ならそれだけで十分です。
というわけで戦況が膠着し、お見合い状態になりました。場に大天使、堕天使、熾天使と並んだのはかなり熱い光景ですね。
こういう怪獣大決戦も、モミールの醍醐味です。
⑪ 11ターン目。相手8モミは……《軽蔑する利己主義者/Scornful
Egotist》! 8マナ域でも高名なハズレ生物です。いやー助かった。
場が安定してきたら、安定して強い9モミ連打するのがセオリーです。こちらの9モミで現れたのは《サルディアの巨像/Colossus
of Sardia》。《銀の熾天使/Silver Seraph》の効果で11/11という凄まじいサイズです。
⑫ 12ターン目、相手の8モミは《沸血の巨像/Bloodfire
Colossus》。
天使VS天使に続き巨像VS巨像とは……こんなデカブツ同士の戦いが見られるのはモミールだけです。
しかしこの《沸血の巨像/Bloodfire Colossus》、パワーではサルディアの圧勝ですがこいつはテクニック系。起動能力で全員に6ダメージをばらまく生物で、次のターンまで生かしておいたら《ボロスの大天使、ラジア/Razia, Boros Archangel》とのコンボでこちらの場が壊滅してしまいそうです。
これはマズイということで、勝負を決めるべくこちらはまた9モミではなく8モミ。
出たのは有名なエルダー・ドラゴン・レジェンドの《アルカデス・サボス/Arcades
Sabboth》。これでサルディアが更にパンプされて11/13になりました(笑)
R3,こちらの最終ターン。そうそうたる顔ぶれです。
とりあえずこれで返しの防御は出来るから死なないし、《サルディアの巨像/Colossus of Sardia》のトランプルのおかげで相手も《沸血の巨像/Bloodfire Colossus》をブロックに回さざるをえないはず。つまりブロックを強制させて除去るしかないわけです。
というわけでフルパンチすると……相手は《白の夜明けの運び手/Bringer of the White Dawn》のトランプルを見落としていたようでそのまま勝ってしまいました(笑)
このR3では、逆転に次ぐ逆転で終盤までもつれ込みました。
こうしたダイナミックな展開はモミールの醍醐味。超大型クリーチャー同士の肉弾戦はモミールならではです。
ただしこの試合展開、相手の自爆も何度かあったので正直こちらの運も良かったのですが、ただ運だけで決まったわけではありません。
基本的な話ではアタック/ブロックの選択や、モミールの起動の是非。またモミールを起動するにしても、アタック前にするか後にするかの選択。
そして、9マナあるのに敢えての8モミ起動などなど……いくつかのプレイングテクニックが織り込まれています。
次回以降では、その辺りに焦点をおいて、勝つためのモミールのプレイングを紹介していきます!
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