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石田龍一郎の最新スタンダード解説 第3回 現在のスタンダードのメタを読み解く 
 
 GP北九州で使うデッキは皆さんお決まりでしょうか?  今回の記事は『環境速度』をテーマに現スタンでのメタゲームの傾向と特徴について、自分の考察記事になります。
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現スタンダードで使われているデッキについて


 現スタンダードで最も使われているアーキタイプは、ジャンド(赤黒緑ミッドレンジ)とグルール(赤緑中速ビート。通称:キブラーグルール)の2種類だと思っています。


 ジャンドはM14発売直後から最も隆盛し、赤黒緑各色の強力なカード陣をフル活用しているデッキです。M14で《漁る軟泥/Scavenging Ooze》を手に入れたことでデッキパワーが底上げされ、かつ苦手であったリアニメイト(《堀葬の儀式/Unburial Rites》デッキ)が環境から激減したことで環境上の多くのデッキに対し不利が付きにくく抜群の安定感を得たデッキです。





 ジャンドはどんなデッキかというと、「大技の連打」に長けたデッキです。

 序盤は《突然の衰微/Abrupt Decay》を初めとする低コスト除去呪文で盤面をコントロールし、《高原の狩りの達人/Huntmaster of the Fells》、《オリヴィア・ヴォルダーレン/Olivia Voldaren》、《スラーグ牙/Thragtusk》ら3種の強力クリーチャー達で盤面を制圧していくデッキです。他にも《忌むべき者のかがり火/Bonfire of the Damned》と《ラクドスの復活/Rakdos's Return》で相手のアドバンテージを大きく損なわせることで一気にゲームを優勢に向かわせることも出来る必殺技だらけのデッキです。



 対してグルールは、「スピード勝負に長けた中・低速デッキキラー」と言えます。

 殿堂プレイヤーのブライアン・キブラーが発案したデッキは8月11日のGPワルシャワでの優勝デッキであり、人気急上昇な強力デッキです。

 ジャンドを始めとする中・低速デッキは序盤の動きが遅いので、そこに4種16枚の速攻クリーチャーが非常に強力です。またマナ加速から出る《ドムリ・ラーデ/Domri Rade》やサイドボードの《燃え立つ大地/Burning Earth》は相手に対処に迫りつつ攻撃に転じることができるので、受動的なデッキにとっては致命的な負けパターンとなります。





 これらジャンドとグルールが頭一つ飛び抜けている印象です。次点でトリコ(白青赤コントロール)、呪禁バント(白青緑オーラ)、その次に貴種デッキ(白黒+@生け贄システムデッキ)、ゴルガリ(黒タッチ緑コントロール)、赤系アグロ、リアニメイト、その他ローグといったところでしょうか。


 ここ最近のGP・SCG・MOの大会結果から見える傾向として、中速デッキのTOP8率がとても高いです。

割と極端な参考結果サンプル:StarCityGames.com Standard Classic Albany 2013/08/11
http://www.bigmagic.net/list/standard/tournament/0028.html


 中速デッキが多くなると中速デッキによる同型戦が多くなり、同型で有利に戦うために幾つかの変化が生まれました。そういった理由で環境速度が低速化していった傾向にありました。

 中速同士の戦いでは如何に強力カードを使えるかが重要になりやすいです。細かな除去よりもより強力なカードや相手が対処不能なカードを数多く積み、それらに対処できるか否かが重要になります。

 例えばジャンドならばサイドボードにより多くの重い強力スペルを用意したり、青を含むデッキならばそれらに対処できるよう《雲散霧消/Dissipate》や《対抗変転/Counterflux》などの確定カウンターの使用率が上がっていました。


 その流れで最遅デッキのポジションを担っていたのがトリコロールカラーのコントロールデッキでした。

 序盤は《火柱/Pillar of Flame》などで細かく捌き、大振りな動きにはカウンターを合わせ、間に《熟慮/Think Twice》や《アゾリウスの魔除け/Azorius Charm》で手札を整理し、《スフィンクスの啓示/Sphinx's Revelation》で大量のアドバンテージを得る。フィニッシュ手段が少なく線が細い印象ですが、どんなデッキに対しても丸く戦えるデッキです。マジックワールドカップでのトリコの使用率の高さからも伺えるように、人気のアーキタイプです。

 他にも遅いコントロールデッキでは、ゴルガリ(黒タッチ緑)、エスパー(青白黒)、アゾリウス(青白)などがあり、いずれも《スフィンクスの啓示/Sphinx's Revelation》や《スラーグ牙/Thragtusk》などアドバンテージを稼ぎ易さが重視されています。また、後述する《燃え立つ大地/Burning Earth》への対策が出来ているかが鍵になります。




 中速から低速への流れに見えていたのですが、この流れを断ち切ったのがグルールデッキでした。

 グルールデッキの最大の強みは対中・低速デッキに対する最高のカードである《燃え立つ大地/Burning Earth》と《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》の2種をマナ加速から展開できることだと思います。

 《燃え立つ大地/Burning Earth》は多色系の中低速デッキに対するアンチカードで、ダメージ効率が非常に高く永続的にダメージを与えられます。トリコロールやジャンドはこれに対処しつつ、後続や盤面にも対応できないとほぼ負けと言っても過言ではありません。
 
 《燃え立つ大地/Burning Earth》はエンチャントなので専用に対策カードを取らねばならず、コントロール側にとってみれば厄介極まりない存在です。


 《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》は打点効率が凄まじく高く、1体だけでもマストで対応を迫ります。加えて、能力で出たターンは飛行生物との戦闘は不可。

 インスタントタイミングで対応できないと仮定すれば5点ダメーズは確定。《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》が手札に2枚あれば後は土地を5枚並べて相手のライフを10点削れば良いだけ。そう考えると凄まじい打点効率の高さです。

 ビートだけでなく、トリココントロールなどの中・低速デッキでも速やかに勝負が決められるので《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》採用するパターンが最近増えてきました。先ほどの低速化の話とは逆方向の発想になりますが、環境に合わせたフィニッシャーの選択という点では合点がいきます。



 これらは中・低速デッキに対し非常に強力で、受けに回りきることが困難なカードです。他にも受け身に回りすぎると対処しにくいカードとして《ドムリ・ラーデ/Domri Rade》などの各種PWがあります。それらをデッキの軸として攻撃的に運用できるグルールは8月11日のGPの時点ではメタに合致した強力なデッキだったと思います。


 GP北九州攻略のヒントの際の自分の一推しデッキはグルールなのですが、GP北九州ではどうなのでしょうか?

 グルールに相性の良いデッキが見つかって、グルールが思ったより活躍していないのかもしれません。その辺りは蓋を開けてのお楽しみといったところでしょう。

 現時点でのデッキの選択肢として、相手との相性差で不利が付きにくく勝率が安定し易いトリコやジャンド、そしてグルールは上位にいるものだと思っています。



中速デッキが多いよ
中速デッキ同士の対決が増えると、大技・必殺技対決になり易いよ
グルールデッキは中低速な大振りのデッキに強いよ
遅いデッキは《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》と《燃え立つ大地/Burning Eart》対策しておきたいよ

 もの凄く大雑把に纏めるとこんなところでしょうか。




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 如何でしたでしょうか?今回の記事では環境速度に注目して、M14発売からGPワルシャワまでの流れで纏めてみました。

 自身の使うデッキがデッキの速度域でどこに属しているのか?そこから苦手なデッキを如何に対応できるか?GPでどのデッキタイプが増えて何が有利になり易いか? これらを考えるのはとても面白いと思います。

 少しでも読んでくれた方にとって有益なものとなり、調整の役に立てれば幸いです。
それでは、次の機会に―――

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