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by Ryuji Murae
こんにちは!現環境最後の大会としてグランプリ北九州にでてきました。
結果は前回のレポートに載っているので、今回は使用したデッキについての選択理由や調整録を書こうと思います。
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Deck
Name:リュウジレッド |
21land
10《山/Mountain》
4《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》
4《根縛りの岩山/Rootbound Crag》
3《寺院の庭/Temple Garden》
30creature
4《流城の貴族/Stromkirk Noble》
4《ラクドスの哄笑者》/Rakdos Cackler》
4《炎樹族の使者/Burning-Tree Emissary》
4《火打ち蹄の猪/Flinthoof Boar》
4《ボロスの反攻者/Boros Reckoner》
4《ゴーア族の暴行者/Ghor-Clan Rampager》
3《地獄乗り/Hellrider》
2《漁る軟泥/Scavenging Ooze》
1《紅蓮心の狼/Pyreheart Wolf》
9spell
4《灼熱の槍/Searing Spear》
3《火柱/Pillar of Flame》
1《ドムリ・ラーデ/Domri Rade》
1《ミジウムの迫撃砲/Mizzium Mortars》
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15sideboard
3《頭蓋割り/Skullcrack》
3《火山の力/Volcanic Strength》
2《裏切りの血/Traitorous Blood》
2《ドムリ・ラーデ/Domri Rade》
2《ミジウムの迫撃砲/Mizzium Mortars》
1《火柱/Pillar of Flame》
1《巨大化/Giant Growth》
1《グルールの戦唄/Gruul War Chant》
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使ったデッキはグルールアグロ(以下RG)です。キブラーグルールじゃないです。
・RGを使った理由
大きくわけて3つあります。
・事故を起こしにくい
・デッキとして死んでいなかった
・やり込めていた
・事故を起こしにくい
僕は高速化した現在のスタンダード環境は「事故を起こしにくい」というのも立派な採用理由になると考えています。ですから、上手く回ったときの強さは折り紙つきのデッキ―――ナヤやジャンドのようなカードパワーが高くてもムラのあるデッキよりも、ムラが少なく安定して回るデッキを選択しました。
デッキの土地が詰まる、色が噛み合わないといったリスクを負うよりも《炎樹族の使者》のおかげで環境ほぼ唯一といっていい(進んではしませんが)1ランドキープを許容出来るマナ域の低さ、どのデッキに対しても速度勝負ができるという点を重視しました。
ダブルシンボルが無いって素晴らしい!
・デッキとして死んでいない
デッキ選択上の最低条件です。環境に存在するデッキの半数以上に不利なデッキなんかは使いたくないですね。
同じアグロデッキだと一時期猛威を奮ったナヤブリッツなんかは環境に勝てないデッキが増えすぎてしまい、存在を許されなくなってしまいました。
ギルド門侵犯後にデッキが登場してから、2シーズン通してRGがデッキとして死ななかったのはラッキーでした。
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・やり込めていた
2シーズンずっと使っていたので、ある程度反射でプレイすることができ、既存のデッキとの経験を活せるのはかなりの強みでした。
以上の理由から暫定的ではありますが、ほぼRGを使うつもりでした。ここがグランプリの二週間ほど前です。
デッキを決めてからはメタデッキをばばーっとあげて練習した結果、相性差をすごく大雑把に分けるとこんな感じでした。
不利
黒緑コントロール・トリコ・ナヤアグロ・ナヤミッドレンジ
五分くらい
ジャンド・リアニメイト・アリストクラッツ・ジャンクアリストクラッツ・緑単
有利
赤単・ジャンドアグロ・居住バント・セレズニア・同系・呪禁バント・ラクドス・青白・キブラーグルール
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現環境は誰よりもRGを練習していた自信があるので、同系有利なのは個人的な経験値の差です。グランプリの二週間前まで環境はキブラーグルール一色だったので、本戦までこのままなら相性の良いRGで大丈夫!と喜んでいたのですが、さすがにそう上手くはいきませんでした。天敵である「黒緑コントロール」の出現です。
《生命散らしのゾンビ》、《ヴェールのリリアナ》、そして《もぎとり》。こちらのリソースをガシガシ削った後に出てくる《冒涜の悪魔》や《スラーグ牙》。デッキコンセプトそのものがRGにとって辛い存在でした。
試しに回した感じだと相性は3:7程度。このデッキが流行るならRGを使うのはどうか・・・と思っていました。
第二候補に単体のカードパワーの高いキブラーグルールを用意はしていたのですが、僕自身の経験では直前で方向転換するよりも解決策を探した方がいいことが多かったので、もう少し何とかしてみることにしました。
やってみた結果、先手だと結構勝てます。じゃあ何故後手だと負けるのか?
答えは《ボロスの反攻者》でした。
こちらが先手なら先に出せるのですが、後手だと《生命散らしのゾンビ》のせいで抜かれて場に出ず、さらにこちらの《火打ち蹄の猪/Flinthoof
Boar》もゾンビで相討ちを取られてしまいます。結局そこでのリソース差が響いて負けるパターンが多かったので解雇することにしました。
ということで黒緑コントロールに対するサイドボーディングはこちら
in
3《頭蓋割り/Skullcrack》
2《裏切りの血/Traitorous Blood》
2《ミジウムの迫撃砲/Mizzium Mortars》
1《グルールの戦唄/Gruul War Chant》
out
4《ボロスの反攻者/Boros Reckoner》
4《ゴーア族の暴行者/Ghor-Clan Rampager》
湧血もゾンビの前だと構えられないので同様に解雇です。
《生命散らしのゾンビ》の能力をかわし、《火柱》で除去することでテンポを取り、立ちふさがる悪魔は《グルールの戦唄》や《裏切りの血》でなんとか対処する。立ち回りと軽いカードを入れることによって、3:7だと思っていた相性も4:6程度まで改善できたかなと思います。
改善といっても不利なことは変わらず正直これでもまだきついです。しかし、他のデッキに明確に不利がつかず経験でカバーできる範囲の方が多いと考えたので、結局RGを使うことになりました。
直前に頑張って考えたのはここくらいです。トリコとナヤは少し不利だとは思っていますが、トリコには《頭蓋割り》と《ドムリ・ラーデ》、ナヤには《火山の力》と《ミジウムの迫撃砲》きちんとサイドインできるカードもとれているので噛み合い次第で戦えると判断しました。
あとは「呪禁バントには《ボロスの反攻者》と《漁る軟泥》が弱いから《火山の力》と《頭蓋割り》と入れ替えよう」みたいな感じで各デッキ用のサイドボーディングをはっきりさせ、ひたすら練習しました。
次にメインボードで4枚入れていないカードの採用理由を。
・《紅蓮心の狼》
これは4枚目の《地獄乗り》と入れ替えました。
4枚目の《地獄乗り》は邪魔になることが多く、土地21だとすんなり4マナに届かないことも少なくなかったのでやっぱり4枚はいらないかなと思いました。
ただ《地獄乗り》が強いことに変わりはなく、もっと強く使おうと思ったときに思い出したのが《紅蓮心の狼》でした。マナ域も《地獄乗り》の一つ下。ワールドカップ予選等で使用していたので強さをよく分かっていましたし、黒緑コントロールの《冒涜の悪魔》や《もぎとり》等にも強いとなれば採用しない理由は無かったです。
これまでの経験から採用したカードですが、狼は採用して大正解でした。
・《ミジウムの迫撃砲》《火柱》
メインに4枚入っていた《火柱》と入れ替えました。《夜鷲》、生物を食べた《漁る軟泥》、《オリヴィア・ヴォルダーレン》、《ロクソドンの強打者》等々。タフネス3以上の生物を対処したい場面が多かったのが一番の理由です。
元々サイドインすることの多いカードだったのでメインに。ただ《火柱》はマナクリーチャーを使うデッキには4枚あるなしでは安心感が違いますし、《復活の声》や死亡誘発の多いアリストクラッツ相手は序盤に2枚使えるかどうかが勝敗に大きく影響すると思ったのでサイドボードに4枚目を残しています。
本当にただ入れ替えただけですが、ミジウムが一枚あるとたまにメインのマナフラッドも許容できます。たまに。
・《ドムリ・ラーデ》
サイドイン率の高いカードその2。呪禁バント以外には基本的にサイドインするカードなので1枚採用。ダブつかせなければ強いので、同系相手にも1枚サイドインとかやっていたのでメインで。1枚だとハンドで腐ることもなく強かったです。
上記の三枚は特にRGのメインボードにはあまり見かけないカードなので、意識の外から攻めることができるのも評価できる点です。軸はずらしていますがこっちの動き自体が弱くなっていないのがポイント。
・《漁る軟泥》
さすがに《タルモゴイフ》。こいつを使うために《寺院の庭》を3枚に増やしました。
1枚だと少し心許なく、3枚あると邪魔になることもあったので2枚に。相手の《漁る軟泥》の牽制にもなるので採用は正解でした。同系の長期戦にも強いですしね。
次はサイドボードのカードについてです。
・ 《燃え立つ大地》の不採用
赤系のデッキに多く採用されている《燃え立つ大地》ですが、RGを使うにあたって、早々に不採用を決めました。RGだとあんまり強くないですよ、これ。
サイドインする相手として想定するのは3色のデッキであるジャンド、トリコ、あとエスパーとかリアニメイトです。
エスパーには《ヴィズコーパの血男爵》とか出されない限り強いと思うのですがそもそもエスパーはデッキとして弱いし、ジャンド、トリコ、リアニメイトなんかは張る前に場を作っていないとそのまま《スラーグ牙》や《修復の天使》に殴り殺されることが多い印象でした。
また、近いマナ域で入れ替えるとするなら基本的に《地獄乗り》と替えることになるのですが、《地獄乗り》自体がさっき挙げたデッキに対して弱くないので抜きたくなかったです。
トリコやジャンド相手だと《地獄乗り》の前に強くない《ラクドスの哄笑者》や《火柱》をまずサイドアウトしたいのですが、ここらへんと《燃え立つ大地》を入れ替えるのってどう考えてもマナカーブを考えるとあまりよろしくないです。
ブン周り前提でデッキを軽くするのは良いと思うのですが、土地21枚で重いカードを複数増やすのは事故の元。デッキがガタガタになります。
あとはキブラーグルールが猛威を奮った結果、《燃え立つ大地》を嫌った黒緑コントロールや青白コントロールが出てきてしまいました。その結果、《燃え立つ大地》にスロットを割いてしまうとそれらのデッキにサイドインできるカードがかなり限られてしまうこともこのカードを採用しなかった理由の一つです。
・サイドボードの選択
サイドボードには対応力の高いカードを多めに採用しています。基本的に3つ以上の仮想的にサイドインできるカードばかりですね。
現在のスタンダードはデッキの種類がとても多いので、本番でどのデッキが多そうとかヤマを張るよりも、ありそうなデッキすべてに対する戦い方を覚えた方が良いと考えたのと、デッキ自体は大体完成されているので、メインの弱いパーツをサイドの受けの広いカードと入れ替える程度で十分だと判断しました。
トリコを怖がり過ぎて直前で4枚目の《ミジウムの迫撃砲》を《巨大化》にしてしまったところ以外はデッキに対する不満点はないです。長い間よくがんばってくれました。
《巨大化》はけっして弱いカードではなく、1マナで相手の計算を狂わせる非常に強力なカードなのですが、当初想定していたよりも強い場面が限定的でした。
4枚目の《ミジウムの迫撃砲》を入れる相手は
ジャンド・ナヤ・リアニメイト・アリストクラッツ・ジャンクアリストクラッツ・赤単・緑単・居住バント・セレズニア・RG・キブラーグルール
対して《巨大化》を入れる相手は
トリコ・ナヤ・リアニメイト・赤単・居住バント・セレズニア・RG・呪禁バント・青白・キブラーグルール
想定できる数があまり変わらないなら不利な相手に対して有効なカードを採用しようと考え、本当にデッキリスト提出の直前になって追加したのですが、ここで大きな落とし穴がありました。
《巨大化》はキープ基準にならないのです。
本質はクリーチャー依存のリアクションカードなので、押されているときに耐えることができるカードではなかったです。
想定ではナヤにも有効なはずだったのですが、実際にナヤと相対したときは「これがミジウムだったら・・・」と思ってしまいました。対応して《セレズニアの魔除け》を使われた日には・・・。同系に対しても同様です。
サイドインできるデッキの数よりも、使って強い場面の数をしっかり考えるべきでした。直前で変更して失敗した典型的な例です。反省。
使わなかったカード達
ここからは試してはみたものの、結局使わなかったカードを挙げていきます。
・《稲妻のやっかいもの》《火拳の打撃者》
単体で弱いので不採用です。タフネス1はいつ出ても悲劇的な過ちに引っかかるのも×。
どちらも先手で《炎樹族の使者》から展開できたときは強いのですが、それ以外であまり強い場面がなかったです。特にやっかいものは毎回サイドアウトしました。後手でめちゃくちゃ弱いです。
軽くて速いカードはRGのコンセプトに合ってはいるのですが、単体で弱いカードを多く採用してしまうとデッキとしての賞味期限が早くなってしまいます。これが長期戦のグランプリで採用を見送った理由です。結局ここの枠は単体で強い《漁る軟泥》に。
・《硫黄の流弾》
追加の3点火力枠。本体にも最大5点は魅力的だったのですが、《漁る軟泥》を意識したときに3マナという重さがネックになりました。立ち回りの軽さを重視した結果《ミジウムの迫撃砲》に。
・《ショック》
インスタントのメリットよりも追放できる《火柱》、タフネス4を除去できる《ミジウムの迫撃砲》の方が強い場面が多いと判断しました。
・《チャンドラのフェニックス》《変わり谷》
《ボロスの反攻者》を抜いて上記の二種を採用しているリストもありましたが、僕は《炎樹族の使者》と《変わり谷》の共存がどうしても許せなかったので不採用です。
《炎樹族の使者》が早いターンに出してこそ価値がある生物なのに対して、《寺院の庭》と違って色マナが出ない《変わり谷》が土地としてのキープ基準を半分しか満たしていないことが本当に不満でした。初手の土地が山、《変わり谷》とか即マリガンです。事故が少ないことが強みのデッキの事故率を上げたくありませんでした。
また、《ボロスの反攻者》を抜く事でナヤやキブラーグルール、ジャンドへの耐性が下がってしまうのもどうなのかなということでいまの形に落ち着きました。
《チャンドラのフェニックス》は黒緑コントロール等の除去が多いコントロールデッキを意識してサイドに置いてはみたものの、2点という打点があまり強くないなということで不採用に。ここは黒緑コントロールにより効果的な《裏切りの血》になりました。
・《紅蓮の達人チャンドラ》
使った時は弱くはなかったです。《チャンドラのフェニックス》とセットで入れていたのですが、チャンドラ単体だと全体にブロック制限を付与できる《グルールの戦唄》の方がいいかなという判断でした。プレインズウォーカーだと黒緑コントロールを相手にした場合《冒涜の悪魔》や《スラーグ牙》に落とされ易かったのもどうかなと。
おわりに
グランプリ本戦の結果は前回のレポートに書いた通り7-2、5-1のトータル12-3で21位でした。当たりから考えると想定内ですが、有利だと考えていたデッキにとりこぼしをすることなくきちんと勝てていたのはよかったと思います。
正直RGはそんなに強いデッキだとは思っていませんが、僕自身が会場の誰よりもこのデッキを使い込んでいたと思います。そこが今回使用する決め手になりましたし、この結果になったのかなと。現在の環境に存在するデッキはどれもそれなりに強く、全てのデッキに有利と言えるデッキがなかったので、「どのデッキも強いなら自分がちゃんと使えるデッキが一番いい」という考えが上手くはまった結果ですね。
TOP8に残れなかったのは残念でしたが、今回のグランプリはローテーション直前の総決算として、やれることはできていたかなと思います。その中で個人的に一番大切だと感じたことが「周囲の意見を聞く」ことでした。当たり前のことですが、多くの意見を聞いて考えた方がデッキもプレイングも良くなります。大会で対戦相手にサイドプランを聞いたりするのもとても勉強になりました。もちろん今回も多くの人に助けられました。感謝です。意見交換は本当に大切です!今回の記事も誰かの参考になればいいなと思います。
長くなってしまいましたがこんなところで。それではまた次回!
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