text
by Keita Okamoto
こんにちは!統率者戦担当の岡本です!
いよいよ統率者セット2013の発売も間近になり、統率者戦ファンの方やこのタイミングで新規参入しようと思っている方は毎日そわそわしている事だと思います。かくいう僕も毎日テンション上がりっぱなしです!
今回の記事は統率者セットの話からはいったん離れて、最近話題になってきている
「Duel Commander(デュエルコマンダー)」という特殊なルールを用いた統率者戦について紹介したいと思います。
このルールは日本ではあまり浸透していませんが、海外のBazaar
of Moxenという大会の併催イベントで採用されていたり、海外では割と知名度のあるルールです。
Duel Commanderとは、簡単に言えば多人数ではなく1対1で戦う統率者戦の事です。
統率者を決めて、その統率者の固有色のカードだけが使えて、基本土地でないカードは1枚ずつしか入れられない、という統率者戦の基本的な所までは同じです。
しかし、今までの統率者戦のデッキをそのまま使えば良いというわけではなく、このルール独自の禁止リストが設定されています。
禁止リストの変更点について紹介する前に、その他に変更されているルールについて紹介します。
・初期ライフ30
1対1でもライフが40だと1ゲームごとの時間がどうしても長引いてしまうからですね。
削るべきライフが普段よりも少ない上に狙うプレイヤーも一人だけなので、普段のようにコンボもしくは大がかりな展開からの圧殺を狙うデッキだけでなく、序盤から細かくライフを削りに行くデッキにも生存権が生まれます。
・統率者は墓地、追放領域だけでなく、ライブラリーの中に戻りそうな時にも代わりに統率領域に戻す事が可能
一人だけ統率者が簡単には戻ってこられないライブラリーの中に潜ってしまうとすぐにワンサイドゲームになってしまいます。
多人数戦の時ならまだ統率者を引いてくるまで息をひそめて目立たないようにしていれば狙われずにいられるかもしれませんが、1対1では不可能ですね。
このルールがあるため、《糾弾/Condemn》や《神聖なる埋葬/Hallowed
Burial》などの統率者をデッキの中に埋める能力を見込んで採用されていたカードはちょっと他のカードより優先順位が下がってしまいますね。
・トーナメントにおいては以下のルールに従う
-2本先取の3本勝負
-時間制限は最低でも55分推奨
-サイドボードは使用不可
他には
・マリガンルールは普段の統率者戦と同じパリ式マリガン
・統率者ダメージや毒カウンターは普段と同じ
・1対1なので先手プレイヤーはドロー不可
など、細かい所で異なっていたり同じだったりします。
さて、気になる禁止リストは以下の通りになっています。
Duel
Commander禁止カードリスト
《Ancestral Recall》
《古えの墳墓/Ancient Tomb》
《天秤/Balance》
《基本に帰れ/Back to Basics》
《Black Lotus》
《チャネル/Channel》
《世界のるつぼ/Crucible of Worlds》
《けちな贈り物/Gifts Ungiven》
《丸砥石/Grindstone》
《隠遁ドルイド/Hermit Druid》
《謙虚/Humility》
《伝国の玉璽/Imperial Seal》
《Karakas》
《Library of Alexandria》
《忠臣/Loyal Retainers》
《Mana Crypt》
《Mana Drain》
《魔力の櫃/Mana Vault》
《精神錯乱/Mind Twist》
《Mishra’s Workshop》
《Mox Emerald》
《Mox Jet》
《Mox Pearl》
《Mox Ruby》
《Mox Sapphire》
《ネクロポーテンス/Necropotence》
《変幻の大男/Protean Hulk》
《師範の占い独楽/Sensei’s Divining
Top》
《セラの高位僧/Serra Ascendant》
《Shahrazad》
《太陽の指輪/Sol Ring》
《露天鉱床/Strip Mine》
《The Tabernacle at Pendrell
Vale》
《Time Vault》
《Time Walk》
《修繕/Tinker》
《トレイリアのアカデミー/Tolarian
Academy》
《吸血の教示者/Vampiric Tutor》
《消失/Vanishing》
《冬の宝珠/Winter Orb》
《ヨーグモスの取り引き/Yawgmoth’s
Bargain》
|
また、以下のカードを統率者として設定する事が出来ません
《陰謀団の先手ブレイズ/Braids,
Cabal Minion》
《トレストの密偵長、エドリック/Edric, Spymaster
of Trest》
《上位の空民、エラヨウ/Erayo, Soratami
Ascendant》
《ラノワールの使者ロフェロス/Rofellos, Llanowar
Emissary》
ちなみにこのリストはhttp://duelcommander.com/で更新されています。(リンク先は英語かフランス語版のみのサイトです)
まずは従来のリストに加えて禁止になったものについて見ていきましょう。
1.マナ加速
《古えの墳墓/Ancient Tomb》
《Mana Crypt》
《Mana Drain》
《魔力の櫃/Mana Vault》
《Mishra’s Workshop》
《太陽の指輪/Sol Ring》
多人数戦では一人が悪目立ちしても他の三人から袋叩きにされて結局敗北してしまう事はざらにあります。もちろんそのまま対処されずに勝利してしまう事もありますが、1対1では“逃げ切ってしまう”事が簡単に出来ます。
従って、上記の「大きなデメリット無しに爆発的にマナ差を広げるカード」は軒並み禁止になっています。
《Mana Drain》はただのマナ加速ではなく、相手のカード1枚を打消しながらのマナ加速なので更に凶悪です。
2.速やかにコンボにつながるカード
《隠遁ドルイド/Hermit Druid》
《ネクロポーテンス/Necropotence》
《伝国の玉璽/Imperial Seal》
《吸血の教示者/Vampiric Tutor》
デュエルコマンダーの公式サイトで禁止リストの説明がありますが、その中に「安定して5ターン目までにコンボが決まらないようにする」という方針があります。
マナ加速はもちろん、コストが軽く、すぐにコンボパーツにたどり着けるようなカードは禁止されていますね。
また、《ネクロポーテンス/Necropotence》はすぐにコンボパーツを探せるわけではありませんが、《暗黒の儀式/Dark
Ritual》などを経由すれば1ターン目に場に出す事は可能で、しかも場に出てしまえば1対1ではすぐには巻き返せないほどのアドバンテージ差を生み出してしまいます。
《Demonic Tutor》が禁止でないのは直接手札に入るからとはいえ2マナだからという理由じゃないかと思います。
3.1対1の勝負だと簡単にロック、ハーフロックがかかってしまう恐れのあるもの
《基本に帰れ/Back to Basics》
《世界のるつぼ/Crucible
of Worlds》
《謙虚/Humility》
《露天鉱床/Strip
Mine》
《The Tabernacle at Pendrell
Vale》
《冬の宝珠/Winter Orb》
デッキの色によってはアーティファクト、エンチャントに容易に触ることが出来ず、出てしまうと簡単にハーフロックに入ってしまうようなものが禁止になっています。
これは、従来の多人数戦なら仮に触ることが出来なくても他の人と交渉して対処する事が出来ますが、1対1だと頼れるプレイヤーがいないため、と考えられます。
4.その他
・《師範の占い独楽/Sensei’s Divining
Top》
このルールではトーナメントを開催することを目的としているので、時間がかかりすぎてしまうこのカード(と《Shahrazad》)は禁止になっています。
・《セラの高位僧/Serra Ascendant》
削るべき初期ライフが少なく、1ターン目に場に出てしまえばこれだけでゲームが速やかに終わってしまうため、禁止になっています。
・《消失/Vanishing》
対戦相手の統率者にエンチャントしてしまうと、マナが続く限りフェイズ・アウト位相にできてしまうため、禁止になっています。
次に、解禁されているもののリストが次の通りになります。
Duel
Commander用解禁リスト
《生命の律動/Biorhythm》
《合同勝利/Coalition Victory》
《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul,
the Aeons Torn》
《Fastbond》
《グリセルブランド/Griselbrand》
《限りある資源/Limited Resources》
《金属細工師/Metalworker》
《一望の鏡/Panoptic Mirror》
《絵描きの召使い/Painter’s Servant》
《原始のタイタン/Primeval Titan》
《繰り返す悪夢/Recurring Nightmare》
《隔離するタイタン/Sundering Titan》
《星の揺らぎ/Sway of the Stars》
《企業秘密/Trade Secrets》
《激動/Upheaval》
《世界火/Worldfire》
|
多人数戦特有の禁止カードが多くを占めていますね。
《グリセルブランド/Griselbrand》、《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul,
the Aeons Torn》、《Fastbond》など、本当に解禁しても大丈夫なのかリストを見ただけでは判断しかねるものもいくつかあります。
・環境
デュエルコマンダーの環境は、「マナ加速が少なく」「削るべきライフが合計120から30になっている」ため、軽いクリーチャーを展開してそれをカウンターなどで守るクロックパーミッションがまず一大勢力を築いています。
実際に海外の大会では《戦争のアスラ、ジェナーラ/Jenara,
Asura of War》や《聖トラフトの霊/Geist
of Saint Traft》がトップメタになっています。
《戦争のアスラ、ジェナーラ/Jenara, Asura
of War》はマナ加速が少ないというデメリットを緑のマナクリーチャーなどによってカバーしており、単体ですぐに手が付けられないぐらいのサイズに育ってしまうので強力です。
《聖トラフトの霊/Geist of Saint Traft》は《戦争のアスラ、ジェナーラ/Jenara,
Asura of War》に比べると緑が無い分マナ加速や打点に不安が残りますが、スタンダード当時に環境を支配した「青白Delver」が常に初手に《聖トラフトの霊/Geist
of Saint Traft》がある状態でゲームを始められる、と考えればその強さもなんとなく理解できます。
同じ青白2色のデッキでは《アウグスティン四世大判事/Grand
Arbiter Augustin IV》も比較的結果を残しています。
従来の統率者戦に比べて軽いカードが多く、1ターン中のアクションが多いこの環境では、自分の唱える呪文が軽く、対戦相手の唱える呪文が重くなるこの統率者は劇的にゲームを変えてくれます。
普段は場に出たら残り三人が目の敵にして処理してくるこのカードも、1対1ではすぐに処理できる、というわけにはいかないようです。
次に多いのが緑絡みのデッキです。
・爆発力に長けた《背教の主導者、エズーリ/Ezuri,
Renegade Leader》などのエルフデッキ
・黒の布告系の除去で《聖トラフトの霊/Geist of
Saint Traft》や《戦争のアスラ、ジェナーラ/Jenara,
Asura of War》に強くしつつ墓地経由のコンボも搭載した《幽霊の酋長、カラドール/Karador,
Ghost Chieftain》
・いったん唱える所まで持っていければ多大なアドバンテージ差を生み出す事の出来る《大渦の放浪者/Maelstrom
Wanderer》
などなど、どれも青の打消し系を採用しないor頼らない分緑のマナ加速でマナ差をつけて勝負を決めに行くような形のデッキになっています。
最速で決めるコンボデッキはトップメタのクロックパーミッション系に構造上弱くなってしまう事と、ライフが30だとすぐに削りきられてしまう事、サーチ呪文が減っているので安定性が低くなっている事からあまり結果を残せていません。
統率者戦は普通の構築戦と違って多人数でやるので覚えておかないといけないものが多く、他の三人の動きを見つつ動くことが苦手な方でもこのデュエルコマンダーならちゃんと対戦相手一人だけに集中しつつ統率者戦を楽しめるのでおすすめのフォーマットです。
また、《Mana Crypt》や《伝国の玉璽/Imperial
Seal》などの必須高額パーツが禁止になっているので新規参入する方もすぐに強めのデッキを作る事が可能です。
是非この新ルールに基づいてデッキを作って遊んでみましょう!
| |