統率者2013参入により激変したレガシー環境。
リストが公開されたときから「小さい大祖始」、「青いタルモゴイフ」の二つ名を与えられ、昨今のトーナメントを席捲したカード―《真の名の宿敵/True-Name
Nemesis》
あらゆる青いデッキに投入できるといっても過言ではないこの新しい青い悪魔は早速結果を残しました。発売週に行われたヨーロッパ最大級のエターナルのトーナメント、BoM(Bazaar
of Moxen)の前哨戦にあたるCoupe de
France において、宿敵が4枚フル投入されたBUGデルバーが優勝、また、宿敵が2枚投入されたエスパー石鍛冶が4位に入賞するという華々しいデビューを飾りました。
①
そして宿敵はやって来た
収録が確定した時から様々な対処法が考えられ、そこまでの脅威とまで考えない方もおられたはず。しかし蓋を開けてみればなるほど、見た目通りの強さを発揮し、ほとんどの地上戦を制圧し始めました。
レガシーの地上戦の主役と言えば《タルモゴイフ/Tarmogoyf》でしょう。
《タルモゴイフ/Tarmogoyf》は白兵戦最強のクリーチャーです。この単なるバニラ生物がなぜレガシーの中心に居座ることができるのか?
宿敵と違ってあらゆる除去で簡単に倒すことができますが、2マナという軽さのためにテンポを失うことはほとんどなく、デッキにも枚数を投入することが出来るため次の弾にも期待が高まります。
《剣を鍬に/Swords to Plowshares》によりタルモゴイフは簡単に退場させることができますが、第2、第3のタルモゴイフに対応していくことは容易ではありません。呪文を唱えていくというMTGの根本的な行動により、さらに巨大化していくこともタルモゴイフの強さに拍車をかけています。
レガシーの環境では4マナ以上のクリーチャーを唱えることは容認できません。それはあらゆる打消し呪文と《剣を鍬に/Swords
to Plowshares》といった除去、そして《不毛の大地/Wasteland》の存在です。それらのカードと併用することによりタルモゴイフはますます強さを増していきます。
では《真の名の宿敵/True-Name Nemesis》の強さはどこにあるのか。目玉であるプロテクション能力はもちろんのこと、プレイ可能なマナコスト、それに見合った最低限のパワーを持っています。デッキは一番強い動きを理想とする為、各カードの役割は最低限に削ぎ落とされていきます。4枚の除去なら4枚のタルモゴイフに対応することができますが、対戦相手が8枚のタルモゴイフを使えたなら―?
②宿敵に打ち勝つために
この《真の名の宿敵》に対して、現時点で対策といえるカードは無きに等しいでしょう。厳密にはエディクト系、マイナス修正、打消しといったもので対処可能ですがそれらのカードはあくまで宿敵用となってしまいます。例えば相手のデッキが宿敵と土地だけならそれらの対策カードを使用するだけで事足りますが、多種多様なパワーカードに加えての宿敵です。デッキを歪めることなく、この無敵のマーフォークを打ち倒すにはどうすればよいのでしょうか?
《セファリッドの女帝ラワン/Llawan, Cephalid Empress》
以前よりマーフォーク対策としてサイドボードに採用されてきたこのカードは宿敵を根本的に対処することができます。並んだ宿敵もすべて手札に封じ込めることができ、一見理想の対処手段にも思えますが、実際のところマナコストの重さと限定的な対処法がネックになります。上記で述べた通り、世界が宿敵だけなら全てはラワンで解決ですが、世の中には《タルモゴイフ/Tarmogoyf》から《秘密を掘り下げる者/Delver
of Secrets》に加え、《グリセルブランド/Griselbrand》、《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul,
the Aeons Torn》といった怪物たちで溢れています。レガシーのトーナメントを勝ち抜くにはそれらすべてを薙ぎ払う必要があるのです。
《毒の濁流/Toxic Deluge》
先日のプレビューでも紹介しましたが、一番現実的な対処法かもしれません。問題はコストの支払いと、現状プレイ可能なデッキがあるかどうかです。黒をタッチするデッキはこちらも生物を展開している為、綺麗な使い方とは言い難いでしょう。全体除去に関して言えば、《終末/Terminus》の入った奇跡コントロールなどは容易に対処できそうですが、もともと流し損ねたクリーチャーは《剣を鍬に/Swords
to Plowshares》で対処してきたので、その《剣を鍬に/Swords
to Plowshares》で対応不可となると話は別です。では具体的にどう対応していくのでしょうか。
真の名の宿敵の対応手段は非常に限られています。
・打消し
《Force of Will》を始めとするカード群で一見丸く収まりそうですが、打ち消さなければいけないのは宿敵だけではありません。現在の打消しをかいくぐってくるデッキにマストカウンターが水増しされると考えれば、完璧な対処でないということは一目瞭然ではないでしょうか。
また打消しではありませんが、《誤った指図/Misdirection》などによる対象変更呪文で対戦相手のコントロールする《剣を鍬に/Swords
to Plowshares》などの対象を宿敵に変更することができます。少し直観的なプレイングではないので覚えておいても役に立つことがあると思います。
・布告系、いわゆるエディクトで対処する。
《ヴェールのリリアナ/Liliana of the
Veil》をはじめとする布告系の対応手段ですが、多くの宿敵は《死儀礼のシャーマン/Deathrite
Shaman》、《貴族の教主/Noble Hierarch》の援護を受けて登場します。これらマナクリーチャーの存在が宿敵の対応力を高めています。
・全体におけるマイナス修正
最新の毒の濁流や虐殺によるマイナス修正も狙えますが、《タルモゴイフ/Tarmogoyf》や《殴打頭蓋/Batterskull》などの中型クリーチャーには無力なときが多いです。3マナコストだけで全体マイナス5くらいあれば話は別ですが…。
・飛行クリーチャーによる猛攻
宿敵は無敵のブロッカーですが空を飛ぶことはできません。《秘密を掘り下げる者/Delver
of Secrets》や《聖トラフトの霊/Geist
of Saint Traft》などがあげられますが、クロックスピードの勝負になります。
・能力を失わせる、攻撃を封じる
《謙虚/Humility》や《平和の番人/Peacekeeper》などで横のクリーチャーも対処してしまいます。ただ、そういったデッキは往々にしてベクトルが大雑把なため、慎重なプレイを求められるレガシーでは間に合わないことが多々あります。
・こちらも宿敵を使う
目には目を、といったもので解答が見つからなければ使うしかありません。クローンの系譜である《幻影の像/Phantasmal
Image》でコピーするとデメリットも回避でき一石二鳥ですね。
・環境が遅くなることによる新たなデッキの台頭
一番期待したいのがこれです。レガシーではアンプレイアブルとされた《神の怒り/Wrath
of God》や《至高の評決/Supreme Verdict》といったカードたちが使用され始めれば、自ずと環境は遅くなり、今まで日の目を浴びなかったカードたちが注目されたら、と思います。
2013年の残りのグランプリではレガシー大会が2度あります。
年内で現実的に宿敵に対処可能なカードを挙げていきます。
布告系
《悪魔の布告/Diabolic Edict》
《無垢の血/Innocent Blood》
《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》
《マラキールの門番/Gatekeeper of Malakir》
マイナス修正
《毒の濁流/Toxic Deluge》
《虐殺/Massacre》
《仕組まれた疫病/Engineered Plague》
《ゴルガリの魔除け/Golgari Charm》
能力、攻撃の制限その他
《謙虚/Humility》
《平和の番人/Peacekeeper》
《Moat》
《罠の橋/Ensnaring Bridge》
《セファリッドの女帝ラワン/Llawan, Cephalid
Empress》
《幻影の像/Phantasmal Image》
宿敵の出現によって、もしかしたら今までに使用されたことのないカードが注目され始めるかもしれません。そのようなところもレガシーの醍醐味と言えますね。
今のところ、真の名の宿敵に対して妥当な対策としては《毒の濁流/Toxic
Deluge》が有力かと思われます。
最後に毒の濁流を使用したデッキをご紹介して締めさせて頂きます。
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Sample Deck: |
25land
4《暗黒の深部/Dark Depths》
4《演劇の舞台/Thespian's Stage》
4《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ/Urborg, Tomb
of Yawgmoth》
4《Lake of the Dead》
1《The Tabernacle at Pendrell
Vale》
8《沼/Swamp》
4creature
3《墓所のタイタン/Grave Titan》
1《グリセルブランド/Griselbrand》
32spell
4《毒の濁流/Toxic Deluge》
4《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》
1《リリアナ・ヴェス/Liliana Vess》
3《Oubliette》
4《暗黒の儀式/Dark Ritual》
4《厳かなモノリス/Grim Monolith》
1《Nether Void》
4《思考囲い/Thoughtseize》
4《Hymn to Tourach》
2《世界のるつぼ/Crucible of Worlds》
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注目カード紹介!
《Oubliette》
黒い忘却の輪とも言えるこのカードは昔のカードらしくつけられているオーラごと追放します。黒の数ある除去の中でもこの軽さで無条件で追放というのは珍しく、かの実物提示教育に対しての解答とも成り得ます。信心、エンチャント、オーラごと追放、と現在のスタンダードにぴったりあてはまっていてますが、残念ながら再録の予定はなさそうです…
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