text by Ryuichiro
Ishida
お久しぶりです!
GP京都が終わり、次はGP静岡!一月後にまた国内GPがあるとは何とも幸せな限りですね!
静岡に向けて現スタンダードの簡単な傾向と注目のデッキを紹介していきたいと思います。今回はGP京都のスタンダードサイドイベントで体験などのレポなどを挟んでの紹介になります。
まず今までのGP京都までのメタゲームで、確実に上位に食い込んでいるアーキタイプは黒単信心と青単。規模の大きな大会では必ず上位にいるアーキタイプです。
実際日曜のサイドイベントでこの二種類のアーキタイプを見かけることは多かったです。更にはGP京都と同日アメリカで開催されていたスタンダードのGPではTOP8に黒単4人青単3人という極端な結果まで出ているので、誰もが注目しているアーキタイプでしょう。
まずは黒単の紹介。
黒単は《アスフォデルの灰色商人/Gray Merchant
of Asphodel》の信心シナジーを持ちつつも、全体的に高いカードパワーで圧殺することのできるデッキです。
細かいところを説明すると、《英雄の破滅/Hero's Downfall》や《思考囲い/Thoughtseize》などの優秀な相手に干渉できるカード達でコントロールし、《夜帷の死霊/Nightveil
Specter》と《地下世界の人脈/Underworld
Connections》でアドバンテージと同時に信心も稼ぎます。
一度機能し始めると盤面の制圧力の高い《群れネズミ/Pack
Rat》と、4マナ6/6飛行と単体性能の高い《冒涜の悪魔/Desecration
Demon》、信心能力が高まるとレア級の性能となる《アスフォデルの灰色商人/Gray
Merchant of Asphodel》がフィニッシャーといったところですね。
次に青単の紹介。
デッキの核になるのが《海の神、タッサ/Thassa, God
of the Sea》と《波使い/Master of Waves》。
黒単と比べると単体のカードパワーは若干低い印象なのですが、代わりに上記の二種の制圧力はとても高く、色によっては対処しにくいので一度決まると簡単にゲームが終わります。
《思考を築く者、ジェイス/Jace,
Architect of Thought》、《夜帷の死霊/Nightveil
Specter》、《タッサの二叉槍/Bident of
Thassa》の3種が信心を稼ぎながらアドバンテージを稼ぐ役目を担います。
また《潮縛りの魔道士/Tidebinder Mage》と《凍結燃焼の奇魔/Frostburn
Weird》がビート系の生物に全般に対して耐性があるのも強みですね。一マナの飛行クリーチャーなど、足回りのクリーチャー達は弱くないけど特定のデッキやパターンで嫌らしい働きをするという感じです。
青単の動きを動画で確認したい方はこちら↓
これに対抗するアーキタイプとして、赤単系ビートダウンがあります。他にも白系のビートダウンやラクドスアグロなどがビートダウンの選択肢にはありますが、いずれにも共通している二つの傾向があります。
『質では無く数(面)で攻める傾向』と『4ターン目には大勢が決するようなキルターン早めの構成にしている』ことです。
これらは4マナ以降の生物スペックの差とピン除去の性能の高さから、青単と黒単に対しワンテンポ早く攻め切ることを主眼に置いているからです。
そういった理由で大型生物を1マナで対処できる《岩への繋ぎ止め/Chained
to the Rocks》、前のめりで攻撃的なデッキでは強力で腐りにくい《ボロスの魔除け/Boros
Charm》がビートで使い勝手がよく、これらを採用するために白単や赤単がタッチカラーするのは理に適っていると思います。
一方コントロールは主に《至高の評決/Supreme Verdict》や《拘留の宝球/Detention
Sphere》の採用されているエスパーや白青コントロール、《神々の憤怒/Anger
Gods》にプラス単体除去性能の高い呪文を合わせナヤなどが一般的でしょう。先述したビートダウンに対し面で対応でき、かつ大型生物にも対処可能なデッキがコントロールでは主流となっています。
《スフィンクスの啓示/Sphin‘s Revelation》にまで繋げられれば安定なのですが、土地基盤が前環境より弱いのと占術土地シリーズがまだ全種類でていないことが不安材料ではあります。
その他に《ニクスの祭殿、ニクソス/Nykthos, Shrine
to Nyx》の緑系の大量マナのコンボデッキもあります。《潮縛りの魔道士/Tidebinder
Mage》や除去で要所を抑えられると脆く、《獣の統率者、ガラク/Garruk,
Caller of Beasts》が間に合わないパターンも多いです。素点は高いのですが如何せんポテンシャルを発揮しきれていない印象もあります。
さて、ひとまずここまでの挙げたアーキタイプを纏めてみます。
Tier
1.0
・黒系信心
・青系信心
Tier
1.5
・赤系アグロ
・エスパーコントロール
Tier
2.0
・青白コントロール
・白系アグロ
・緑系信心(orランプ)
・ナヤコントロール
・ラクドスアグロ
使われているデッキは主にこんな感じでしょうかね。
黒単と青単が頭一つ抜けていて、それらに対し全体除去とアドバンテージ手段をもつコントロールと、ワンテンポ早く面で攻めるビートが追随しているといった印象です。
これら以外の注目デッキでまずご紹介したいのはゴルガリミッドレンジです。
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トーナメント:Standard
MOCS #6303751 2013/11/17
成績:7位
Player:_Nukesaku_
Deck Name:
Deck Designer: |
24land
9 《森/Forest》
3 《ゴルガリのギルド門/Golgari Guildgate》
4 《草むした墓/Overgrown Tomb》
8 《沼/Swamp》
27creature
4 《加護のサテュロス/Boon Satyr》
4 《屑肉の刻み獣/Dreg Mangler》
4 《エルフの神秘家/Elvish Mystic》
4 《ロッテスのトロール/Lotleth Troll》
2 《世界を喰らう者、ポルクラノス/Polukranos,
World Eater》
4 《荒野の収穫者/Reaper
of the Wilds》
3 《漁る軟泥/Scavenging Ooze》
2 《縞痕のヴァロルズ/Varolz, the Scar-Striped》
9spell
3 《突然の衰微/Abrupt Decay》
2 《英雄の破滅/Hero's Downfall》
4 《思考囲い/Thoughtseize》
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15sideboard
2 《破滅の刃/Doom Blade》
3 《強迫/Duress》
2 《オルゾヴァの贈り物/Gift of Orzhova》
2 《ゴルガリの魔除け/Golgari Charm》
4 《霧裂きのハイドラ/Mistcutter Hydra》
2 《究極の価格/Ultimate Price》
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一番に注目するのは4枚搭載されている《荒野の収穫者/Reaper
of the Wilds》。《世界を喰らう者、ポルクラノス/Polukranos,
World Eater》を2枚に押しのけての採用ですからね。
4マナ4/5のサイズは3マナ以下の生物を止めるには十分なサイズ。起動型能力の呪禁で一応除去耐性があるのですが、それ以上に黒を含む多色カードは《破滅の刃/Doom
Blade》と《究極の価格/Ultimate Price》で除去できないので好評価です。
《荒野の収穫者/Reaper
of the Wilds》以外にも《屑肉の刻み獣/Dreg
Mangler》、《ロッテスのトロール/Lotleth
Troll》、《縞痕のヴァロルズ/Varolz, the
Scar-Striped》などナチュラルに除去耐性の高いクリーチャーで構成されています。基本的にクリーチャーでゴリ押すタイプのデッキですね。
メインで生物以外の呪文は《英雄の破滅/Hero's Downfall》や《突然の衰微/Abrupt
Decay》の優秀な除去と《思考囲い/Thoughtseize》と必要最低限。他のレシピでは全体除去耐性、エンチャント除去、白ウィニー対策と用途の幅の広い《ゴルガリの魔除け/Golgari
Charm》や追加の除去として《化膿/Putrefy》などが採用されています。
特にエンチャントは《拘留の宝球/Detention Sphere》や《地下世界の人脈/Underworld
Connections》など使用率が高いので、《ゴルガリの魔除け/Golgari
Charm》は使い勝手が良さそうですね。エスパーコントロールや黒単が多いならメインに採用してもいいと思います。
青単には序盤抑えられるとテンポ差でメインは不利だと思われます。
サイドボードの《霧裂きのハイドラ/Mistcutter
Hydra》4枚は苦手な青単に対する強い意志を感じます。難点は3マナ域がやや膨れ上がってマナカーブがモッサリしているところでしょうか。ゴルガリカラーの占術土地がまだないのも残念ですね。
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さて、ここからはGP京都のサイドイベントで実際に見かけた面白いデッキの紹介をしていこうと思います。
大会で実際にデッキを見ると、ネットで見たリスト以上にそれぞれの特色や工夫を感じ取れるので面白かったです!何人かの人にはお話を伺わせて頂き、ご協力してくださりありがとうございました。
まずはTier1.0の青単・黒単の微妙な差異について紹介していこうと思います。
■黒単の場合
同型戦を見据えた時、タッチカラーをすることでカードパワーを上げるというのは良くある風潮。その中でもMOでリストが上がっているのがタッチ緑のパターンが多いです。《突然の衰微/Abrupt
Decay》や《見えざる者、ヴラスカ/Vraska the
Unseen》などが使われていましたね。
《夜帷の死霊/Nightveil Specter》をキャストするために《神秘の神殿/Temple
of Mystery》青緑の土地を利用することで黒緑の土地が少ないところをカバーしていたります。《突然の衰微/Abrupt
Decay》はクリーチャーだけでなく《地下世界の人脈/Underworld
Connections》などのエンチャントに触れるのがタッチ緑のメリットとなります。
他にも会場ではタッチ青をして《遠隔+不在/Far+Away》を利用しているタイプなどもありましたが、日曜のベスト4に残っていた中村主税さんのレシピが黒単の中でも印象的でした。
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トーメント:スーパーサンデーシリーズスタンダード
2013/11/24
成績:4位
Player:Nakajima Chikara
Deck Name:
Deck Designer: |
25land
13《沼/Swamp》
4《変わり谷/Mutavault》
4《欺瞞の神殿/Temple of Deceit》
4《静寂の神殿/Temple of Silence》
16creature
4《群れネズミ/Pack Rat》
4《夜帷の死霊/Nightveil Specter》
4《冒涜の悪魔/Desecration Demon》
4《アスフォデルの灰色商人/Gray Merchant
of Asphodel》
19spell
4《地下世界の人脈/Underworld
Connections》
4《破滅の刃/Doom Blade》
4《英雄の破滅/Hero's Downfall》
4《思考囲い/Thoughtseize》
2《エレボスの鞭/Whip of Erebos》
1《死者の神、エレボス/Erebos, God
of the Dead》
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15Sideboard
3《生命散らしのゾンビ/Lifebane Zombie》
1《死者の神、エレボス/Erebos, God
of the Dead》
3《ヴィズコーパの血男爵/Blood
Baron of Vizkopa》
2《強迫/Duress》
4《ファリカの療法/Pharika's Cure》
2《肉貪り/Devour Flesh》 |
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タッチカラーの部分はサイドボードの《ヴィズコーパの血男爵/Blood
Baron of Vizkopa》3枚だけで、白マナも《静寂の神殿/Temple
of Silence》の4枚だけ。ですが一度戦場に出てしまえば同型戦や対コントロールに置いてはプロテクション白黒と絆魂で大抵勝負はついてしまいます。白のカードならば他にも《罪の収集者/Sin
Collector》などがあるので、タッチカラーの方向性として白は結構有効かもしれませんね。
■青単の場合
こちらは黒単と違い序盤から青マナを必要とするビートダウン戦略なので、タッチカラーを目論むと1,2マナ域のカード選択にシワ寄せがきてあまり安定しない印象です。
《海の神、タッサ/Thassa, God of the Sea》と《波使い/Master
of Waves》を如何に安定して運用できるか、それらを引けないときに軽量クリーチャーでビートしきれるか否かの戦略の見極めが重要なデッキです。
『サイドボードの《家畜化/Domestication》が使い勝手がよく利用価値が高くなったかな?』と思ったくらいで、大抵のリストがほぼ同じだと思っていました。
その中で《生体材料の突然変異/Biomass Mutation》と《風乗りスリヴァー/Galerider
Sliver》を利用するという面白いプランを見かけたのでそちらを今回ご紹介したいと思います。
プランは至って単純で、軽量クリーチャーでのビートプランをより強固にしたものです。自分が実際に対戦を見た時は、先手5ターン目に相手の《世界を喰らう者、ポルクラノス/Polukranos,
World Eater》を無視して飛行クリーチャー陣営がX=3の修正を受けて一撃必殺して勝っていました。チラっと見て何事かと思わず二度見してしまいましたね。
《風乗りスリヴァー/Galerider Sliver》まで利用するのはサイド後の方針で、《潮縛りの魔道士/Tidebinder
Mage》が効かない相手に速度勝負を仕掛ける時に使うそうです。まだまだ荒削りな印象も強かったっですが、《生体材料の突然変異/Biomass
Mutation》が青い《踏み荒らし/Overrun》としての活躍するときがくる…かも?
-爆発力はバカにできない-
■その他のデッキ
上記2種以外ではナヤオーラやバントフラッシュなどの気になるデッキもあったのですが、信心デッキの緑タッチ青赤が色々と面白い試みをしていたデッキだったのでそちらをご紹介したいと思います。
基本的には《クルフィックスの預言者/Prophet of Kruphix》や《首席議長ゼガーナ/Prime
Speaker Zegana》を使用した《ニクスの祭殿、ニクソス/Nykthos,
Shrine to Nyx》によるランプデッキなのですが、細かいパーツの選定が興味深いものだったのでそれぞれ説明していきたいと思います。
・《水深の魔道士/Fathom Mage》
青緑だと4マナのアクションが《世界を喰らう者、ポルクラノス/Polukranos,
World Eater》のみしかなく、またコンボの潤滑油となるクリーチャーを求めて採用してみたそうです。確かにこのデッキならば機能し始めれば強いことは言わずもがな。そうでなくても対処が遅れれば2,3枚はドローが見込めます。潤滑油としては申し分なかったそうです。
・《トリトンの戦術/Triton Tactics》
《旅するサテュロス/Voyaging Satyr》と《ニクスの祭殿、ニクソス/Nykthos,
Shrine to Nyx》が合わさると更にマナ加速できる隠れコンボパーツ。《潮縛りの魔道士/Tidebinder
Mage》で動けなくなったところに合わせれば一時的にマナ加速ができるようになるのも利点で、《神々の憤怒/Anger
of the Gods》対策にもなるので意外と汎用性の高いカードだったようです。
今回はサイドボードだったそうですが、メインで1.2枚仕込んでも面白い働きをしてくれそうですね。
・《ドムリ・ラーデ/Domri Rade》
デッキ内の唯一の赤いカードであり、今回の失敗点だったカード。盤面に触れるカードが少ないので、デッキの構成上で邪魔にならず擬似ドロー効果を期待しての採用だったそうです。しかし先にこちらの格闘相手を用意できない場合や、+1能力の不安定さ、更にはタップイン土地が増えすぎてしまったなどの理由から使いにくかったとのこと。
ビートダウンの速度に格闘能力が間に合わなかった点などは、実際に使ってみながら試してみた方がわかり易いですね。
-《水深の魔道士/Fathom Mage》は採用に値するのか?-
アイディアを形にし、デッキの完成度を高めようと色々と試行錯誤している姿自体も含めて魅力的に感じたので紹介させて頂きました。インタビューに答えて頂きありがとうございました。
GP静岡に向けて細かい調整や新しい挑戦をやれる内にどんどん試していきたいですね!
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如何でしたでしょうか?現在はメタが若干固まりつつあり、静岡では青単or黒単を使うのか?それとも青単・黒単に有利をつけられるデッキが現れるのか?
といった視点でまず考えています。
次のGPはもうすぐ!京都が終わったばかりですが、楽しみが続いて嬉しい限りですね!
この記事がGP静岡を楽しむための参考になれば幸いです。
それでは、次の機会に―――
*今回GP京都で色々取材したもの掲載しようとした結果、サイドイベントのスーパーサンデーシリーズTOP4のデッキをご紹介しきれませんでした。これらのデッキリストも参考になるので是非ご覧ください。
2013/11/24
スーパーサンデーシリーズスタンダードTOP4デッキリスト
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