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瀬畑太郎の紙とMOのあいだ 第3回 
 
text by Sebata Tarou

『ある日のGPの事である。一人の競技プレイヤーが、初日の下で2日目を待っていた。
~青白コントロール調整録~』


 お久しぶりです、瀬畑です。
先週末(※執筆時)はGP静岡に参加して来ました。
使用したデッキは青白コントロールです、この記事はなぜ青白コントロールを私は使用したのか、また、それの調整過程について綴ろうと思います。よろしくお願いします。


1.動機


 なぜ青白コントロールを使用するに至ったか?  大まかな理由は3つです。

①青単信心、黒単信心と同じ土俵で戦うデッキは、彼らのデッキパワーに押しつぶされてしまうから
②単純なデッキパワーの高さ
③プレイングの簡単さ



順に説明していきます。


①青単信心、黒単信心と同じ土俵で戦うデッキは、彼らのデッキパワーに押しつぶされてしまうから


 私はGP前、赤単信心からセレズニアアグロなどのメジャーなデッキは勿論、BUGコントロールやバントコントロールなどの思いつくデッキ、様々なデッキを試しました。
しかし、どうしてなかなか、青単信心、黒単信心二つに有利のつくデッキは見つかりませんでした。



 青単信心は優秀な軽量クリーチャーから始まり、《海の神、タッサ/Thassa, God of the Sea》《波使い/Master of Waves》などの、触れないと即負けになるフィニッシャーを擁するビートダウンを持ち味としていながら、サイド後は《思考を築く者、ジェイス/Jace, Architect of Thought》や《タッサの二叉槍/Bident of Thassa》などの非クリーチャーパーマネントと、《解消/Dissolve》、《否認/Negate》などの各種打消し呪文を用いてロングゲームを見据えることも可能な柔軟性を持っています。


 一方黒単信心は、各種カードの役割にバラツキがありますが、どのデッキに対しても《アスフォデルの灰色商人/Gray Merchant of Asphodel》で得たライフをリソースに《地下世界の人脈/Underworld Connections》などでハンドに変換するギミックは有効的で、更にそのハンドに溜まってきた不要牌を《群れネズミ/Pack Rat》トークンにしてフィニッシャーに変える動きは黒単信心の弱点である引きムラを解消して余りあるものがあります。

 この二つのデッキの柔軟性や、システムの完成度は他の環境に存在するデッキより一段上に存在し、同じような速度や、デッキコンセプトを持つデッキはこれらに太刀打ち出来ない。と、テストプレイをした結果感じました。



 上記の感想から一時期は完全にベクトルの違うデッキ、オロスバーンを躍起になって弄っていましたが・・・・・・・。



②単純なデッキパワーの高さ

 デッキパワーはGPに出るデッキを選択することに於いて非常に重要な要素の一つです。
仮に青単信心がトップメタで20%会場に存在するとして、青単信心に絶対に勝てるデッキ(MTGにおいて絶対など有り得ませんが、仮定の話です)を持ち込んだとします。しかし、上記に書いた通りトップメタとしてもせいぜい20%程度、初日9回戦として当たるとしても1回か2回でしょう。
その1回か2回の為に貴方は様々なマッチで灰色熊になる可能性のある《空殴り/Skylasher》をメインから投入しますか?私の答えはノーです。


 オロスバーンにはその『ローグデッキや、メタってないデッキに勝てるパワー』が無く、青白コントロールはそれを有していました。
これが私が青白コントロールをGPで使用した一番決定的な理由と言えます。





③プレイングの簡単さ


『とにかく捌いてでっかい《スフィンクスの啓示/Sphinx's Revelation》や《太陽の勇者、エルズペス/Elspeth, Sun's Champion》に辿り着く』

 使った事がない方からすると『え?』って感じだと思いますが、本当にこれだけです。
自分より重いアーキタイプが環境に存在しないので、捌くことだけに注力すれば良いのです。デッキコンセプトが明快であればあるほど、プレイングは簡単になります。
GP は15回戦と長丁場、疲労からミスプレイを誘発して負けてしまわないよう、簡単なデッキを選択するのも大事だと思います。






2.調整


 まずは強いプレイヤーにあやかろう!!と、言うことで直近のGPでTOP8に入っていた青白コントロールをベースに調整を始めました。
Grand Prix Dallas Fort Worth(United States of America) 2013/12/07-12/08
成績:2位
Player:William Jensen
26land
4 《アゾリウスのギルド門/Azorius Guildgate》
4 《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
8 《島/Island》
2 《変わり谷/Mutavault》
8 《平地/Plains》

34spell
1 《太陽の勇者、エルズペス/Elspeth, Sun's Champion》
3 《思考を築く者、ジェイス/Jace, Architect of Thought》
4 《アゾリウスの魔除け/Azorius Charm》
4 《拘留の宝球/Detention Sphere》
4 《解消/Dissolve》
4 《予言/Divination》
1 《不死の霊薬/Elixir of Immortality》
2 《急かし/Quicken》
1 《漸増爆弾/Ratchet Bomb》
4 《スフィンクスの啓示/Sphinx's Revelation》
4 《至高の評決/Supreme Verdict》
2 《中略/Syncopate》
15sideboard
1 《盲従/Blind Obedience》
3 《鬼斬の聖騎士/Fiendslayer Paladin》
3 《反論/Gainsay》
1 《記憶の熟達者、ジェイス/Jace, Memory Adept》
3 《今わの際/Last Breath》
2 《否認/Negate》
1 《真髄の針/Pithing Needle》
1 《漸増爆弾/Ratchet Bomb》
そして私が当日出たリストはこれ
Grand Prix Shizuoka 2013/12/21-22
成績:16位
Player:Ichikawa Yuuki
26land
6 《平地/Plains》
5 《島/Island》
4 《アゾリウスのギルド門/Azorius Guildgate》
4 《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
4 《変わり谷/Mutavault》
3 《欺瞞の神殿/Temple of Deceit》

34spell

2 《急かし/Quicken》
1 《不死の霊薬/Elixir of Immortality》
4 《アゾリウスの魔除け/Azorius Charm》
1 《今わの際/Last Breath》
1 《漸増爆弾/Ratchet Bomb》
1 《中略/Syncopate》
4 《拘留の宝球/Detention Sphere》
4 《解消/Dissolve》
2 《予言/Divination》
1 《アゾリウスの魔鍵/Azorius Keyrune》
4 《スフィンクスの啓示/Sphinx's Revelation》
4 《至高の評決/Supreme Verdict》
3 《思考を築く者、ジェイス/Jace, Architect of Thought》
2 《太陽の勇者、エルズペス/Elspeth, Sun's Champion》
15sideboard
1 《真髄の針/Pithing Needle》
4 《反論/Gainsay》
3 《今わの際/Last Breath》
2 《否認/Negate》
1 《盲従/Blind Obedience》
1 《異端の輝き/Glare of Heresy》
3 《鬼斬の聖騎士/Fiendslayer Paladin》

 え? あんまり変わって無くない?
仰通りです、William Jensenの青白を試したところ、かなり手ごたえがあり、大幅な調整はしていません。
細かくはありますが、なぜこのカードを減らした、増やした、などの理由を書いていきたいと思います。



・減らしたカード


・《予言/Divination》
 流石に多すぎます、アグロに対して《予言/Divination》で《予言/Divination》を引いてホクホクしてる間にライフを削りきられてしまいます。しかし、黒単や青白コントロール同系では強力なカードなので2枚。
逆に《思考を築く者、ジェイス/Jace, Architect of Thought》は殆どのリストでも4枚積まれていますし、非常に強力なカードですが、4枚積むとハンドでダブつく印象は私自身前から感じていたので3枚のまま増減無し。



・《中略/Syncopate》

 ハマると非常に強いカードなのですが、黒単信心などに《思考囲い/Thoughtseize》などから入られるとケアされてしまったり、対ニクソスデッキなど、後半引くと腐ってしまったりするので、1枚に。メインのカウンターの枚数が多いと感じたのも理由です。
《解消/Dissolve》は『このカードはミニ《謎めいた命令/Cryptic Command》だ!!!』と吹聴する程度には愛しているカードなので、消去法で減ったところもあります。




・増やしたカード

・《今わの際/Last Breath(THS)》



 そうなると、2マナ以下のスペルが減ってしまったので2マナの除去を増量。
この環境を鑑みた時に、《今わの際/Last Breath》は除去スペルとして非常に信頼性が高く、もっとメインボードに入れても良いレベルなのですが、ミラーマッチで腐ってしまうのを嫌って1枚で我慢しました。
ミラーマッチはそのデッキの特性上、非常に時間が掛かり、2G目の途中でタイムアップになることもしばしばあります。それゆえにメインの構成はミラーマッチで勝てるようにしておくべきだという判断です。



・《太陽の勇者、エルズペス/Elspeth, Sun's Champion(THS)》


上記にも書きましたが、このデッキ、本当にゲームが終わりません。
《夜帷の死霊/Nightveil Specter》で《太陽の勇者、エルズペス/Elspeth, Sun's Champion》をリムーブされたものなら、《思考を築く者、ジェイス/Jace, Architect of Thought》の忠誠度を8まで持っていくか、それも叶わないなら《不死の霊薬/Elixir of Immortality》を起動しつつ、相手のライブラリーアウトを待つことになります。
MagicOnlineならドンと来いと胸を張って言える筆者ですが、リアルだとまた別の話、GP初日に於いて引き分けは負けと同義なので、勝ち筋を増やす意味合いで2枚に。
また、黒単信心に《ヴィズコーパの血男爵/Blood Baron of Vizkopa》をタッチした形が台頭して来ていたので、それの処理方法として適していたのも増量の追い風となりました。



・《アゾリウスの魔鍵/Azorius Keyrune》


 ここまで様々なカードを増減してきたわけですが、それを噛み合わせる1枚。
《予言/Divination》の削減によって減った3マナ域のスペルで、かつ《太陽の勇者、エルズペス/Elspeth, Sun's Champion》を早いターンに出せる可能性のあるカードとして。
《変わり谷/Mutavault》と一緒にミラーマッチでの《思考を築く者、ジェイス/Jace, Architect of Thought》のけん制なども兼ねます。



・《変わり谷/Mutavault》



 《アゾリウスの魔鍵/Azorius Keyrune》を投入したことにより、マナベースを緩くとることが出来るようになりました。
ミラーマッチでは《変わり谷/Mutavault》を引いた枚数によってゲームが決まることが多く、コロッサスグルールの《霧裂きのハイドラ/Mistcutter Hydra》を1Tチャンプブロック出来るかも勝ち負けに大きく関わります。
あと勿論ですが、様々なデッキの《変わり谷/Mutavault》にも有効ですね。マナベースが許すのであれば、多く採用するに越したことはありません。



・《欺瞞の神殿/Temple of Deceit》


 ただの占術目的のカードです。序盤殆ど動かないのでタップインの弊害も軽微でしょう。ただ4枚採用すると3T目に《予言/Divination》が打ちづらくなったり、ちょっと動き辛いところもあったので、3枚に抑えました。
この辺の枚数は感覚的な調整なので、数を回してそのときの印象に頼りました。3T目にUUを要求するカードがあり、4T目にWWを要求するカードがあり。サイドに《盲従/Blind Obedience》を取っているので《欺瞞の神殿/Temple of Deceit》に統一。



・《異端の輝き/Glare of Heresy》


 ミラーマッチの《拘留の宝球/Detention Sphere》や《太陽の勇者、エルズペス/Elspeth, Sun's Champion》対策、また白単ウィニーにも入れれるところも加点されて採用。
とは言っても、用途の狭いカードなのでお守り程度にサイドに1枚。




・他に採用を検討したカード

・《霊異種/AEtherling》

 コントロールデッキのフィニッシャーの定番! なのですが、試してみた所あまり強くなかったです。
黒単信心や赤単信心などにはライフを詰められてて、出てきたときにはもうゲームが決まっていたり、ミラーマッチでは結局《スフィンクスの啓示/Sphinx's Revelation》を如何に通すかのゲームになるのでこれが無くても別に問題無し。
相手の場に霊異種が出た状態でも、こちらだけでっかい啓示を通しているのであれば、霊異種の攻撃を《アゾリウスの魔除け/Azorius Charm》で凌ぎながら、《不死の霊薬/Elixir of Immortality》ループで相手のライブラリーアウトまで耐えることだって出来ます。



・《テューンの大天使/Archangel of Thune》
 サイドカードとして採用を検討。
《鬼斬の聖騎士/Fiendslayer Paladin》と比較すると、サイドインするマッチが多く、用途の広いカードなのですが、早い赤単やオロスバーンなどに間に合ってないゲームも多く、狭い所を対象にすると《鬼斬の聖騎士/Fiendslayer Paladin》に軍配が上がりました。



・《本質の散乱/Essence Scatter》、《無効/Annul》
 対象の狭い打消し呪文は黒単信心やエスパーコントロールなどのハンデスを擁するデッキに対して裏目が強く、極力入れない方向で構築。



・《天界のほとばしり/Celestial Flare》
 《霧裂きのハイドラ/Mistcutter Hydra》、《嵐の息吹のドラゴン/Stormbreath Dragon》対策に検討。マナベース的にアグロに対して入れられるカードでも無く、裏目も強い為採用を見送り。
《急かし/Quicken》+《至高の評決/Supreme Verdict》で上記のクリーチャーには対応しましょう!(都合良い?)



・《管区の隊長/Precinct Captain》、《万神殿の兵士/Soldier of the Pantheon》
 どちらも序盤に引くと強いカードですが、後半に引くとイマイチだったり、マナベース的に序盤に出なかったりするので採用せず。
青白コントロールは人によってサイド後アグロに行く構築だったりしますが、私はメインの方向性を貫くサイドにしました。

《本質の散乱/Essence Scatter》、《無効/Annul》、《天界のほとばしり/Celestial Flare》、《管区の隊長/Precinct Captain》、《万神殿の兵士/Soldier of the Pantheon》などに共通して言えることですが、


・カードとして限定的
・トップした時に弱い



カードは青白コントロールという長丁場を想定しているデッキにとって、有効的なサイドカードと言えないと思います。








3.出場 ~おわりに

 以上の調整を経て、いざGP静岡へ。
結果は初日8勝1敗、二日目4勝2敗のトータル12勝3敗(2bye含む)で16位でした。オポが高く、16位に滑り込めたのは幸運でした、プロポイント3点と550$ゲット。
PTQを2期連続で突破していたり、レガシー選手権を2連覇したりしている私ですが、GPでは初日落ちをひたすら繰り返していた為、なんとマネーフィニッシュは競技プレイヤー人生初だったりします。


wow・・・これがMoney・・・Finish・・・(感涙)


年の瀬になんとかGP雑魚の名を返上できました、良かった良かった。



 構築に対しての不満は特に無く、後悔はありません。
TOP8に残れなかったのは残念ですが、負けたラウンドのうち2つはミスプレイから負けてしまったので、もう少しプレイヤーとして鍛錬が必要かなと言ったところ。


 GP静岡も終わってPTテーロスから続いたスタン環境も一休み・・・と思いきや、1月からスタンダードフォーマットのPTQがいよいよ本格的に始まります。
筆者自身、次のPTの権利が無いのでまたPTQへの挑戦が始まります、まだまだこの環境をやり続けなければいけません。



 この記事が私と似たような境遇の競技プレイヤーをはじめ、誰かの参考になれば幸いです。
拙い文章ではありますが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました、またどこかでお会いしましょう。

 
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