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Deck Remember Vol.2 「エンプティハンド・ロック」 
 
text by Iwa-Show

 Vol.1を書き終わった時。大体夕方の6時過ぎだったか。もうお腹が減って減って。お腹が鳴るときに、胃が空っぽで何もない空間になってるように感じないだろうか? 筆者は思いっきりその様に感じる人間で、この日も《虚空/Void》を撃ち込まれた様に感じていた。この「空っぽ」を満たすために思いっきり食ってやろうという食事への信心を高めていたのだが、この時の「空っぽ」感がふとあるデッキを思い起こさせた。よし、次回はあのデッキにしよう。








Vol.2  「エンプティハンド・ロック」





 前回よりは知っている方が増えるデッキ名だとは思うが、それでもマジックを始めたのが2000年代後半に入ってからという人にとっては初見である可能性が圧倒的に高いだろう。


1.
詳細

 このデッキ、やることはデッキ名のまんま「手札を空にしてロックする」だ。またロックデッキか!と言われそうだが、またである。方向性は違うから、許しておくんなまし。

 「手札を空に」ってことはハンデス撃ちまくって相手を行動不能にするってことね、と思いがちだが、これは実は真逆で「自分の」手札を空にして勝利を目指すのである。マジックでは手札が多ければ多いほど(選択肢も手数も増えるので)有利になっていくが、それとは逆に手札がなければないほど有利になるという戦術をとることも出来るのだ。こういうところがこのゲームの最高に面白いポイントやね。

 このエンプティハンド・ロック(以下エンプティ)は、テンペスト・ブロックにこれら「手札が少なければ有利」という特性を持つカード、および「能動的に手札を減らしていく」というベクトルのカードが多く、これらを組み合わせれば自ずとデッキになりましたという構造をしている。ブロック構築でもスタンダードでも、ほぼ同じ形のデッキを組むことが出来るこのデッキのキーパーツを見て行こう。



 《罠の橋/Ensnaring Bridge》は現在でもレガシーで見る機会が割と多い1枚(エムラクールやグリセルブランドをだまらせるためにね)。極端な話、手札が空ならば攻撃されることはなくなる。当時のスタンダード環境には「スライ(赤単速攻)」「セニョール・ストンピィ(緑単高速ビートダウン)」「アーマースキン(白ウィニー)」「nWo(5色クリーチャーコントロール)」「スパイクの誓い(緑中速ビートダウン)」などのデッキが蔓延っていた。これらのデッキの勝ち手段はクリーチャーであり、それを完全にシャットアウトできる橋は鉄壁の防護壁だったのだ。

 また「テンペスト」のトップレアであった《呪われた巻物/Cursed Scroll》を忘れてはいけない。このカードも、手札を消費していけばいくほど命中率が上がっていく。手札が空の状態で自分のターンを迎え、ドロー→起動して引いたカードを指定。これで2点のダメージを確実に飛ばすのだ。序盤は防御に・橋を設置したら相手本体を焼いていって勝とう!がこのデッキの目指すところだ。



 では、手札をゼロにするための方法を紹介しよう。まずは「エクソダス」から《無のブローチ/Null Brooch》。手札をすべて捨てることで、相手のクリーチャー以外の呪文をシャットアウト。《罠の橋/Ensnaring Bridge》との役割分担・相互補完っぷりは「一緒に使ってね!と開発が言っているようにさえ思える。 

 しかしタップ能力であるため、貯めこんだ手札からハイニイヤッっと呪文を連打されてしまってはロックもへったくれもない。設置から起動に至るまでの間に、ある程度相手の手札を削っておく必要があるだろう。その露払いを請け負うのが、《底なしの奈落/Bottomless Pit》だ。これを貼っておけば、相手は毎ターン手札が1枚無作為に削り取られる。こちらも削り取られるが、このデッキでは何の問題にもならない。
 
 これで相手の手札が空になれば…相手はクリーチャーを引いても《罠の橋/Ensnaring Bridge》、橋への対抗策を引いても《無のブローチ/Null Brooch》というハメ技をくらうわけだ。素晴らしい。


2.
サンプル

大丈夫、今回はしっかりとしたサンプルがある。それも日本選手権というステージで結果を残したレシピなので、実力は証明済み。早速見てみよう

Sample Deck
22land
4《沼/Swamp》
4《流砂/Quicksand》
4《ルートウォーターの深淵/Rootwater Depths》
3《地底の大河/Underground River》
4《不毛の大地/Wasteland》
2《ヴォルラスの要塞/Volrath's Stronghold》
1《シャドーの迷路/Maze of Shadows》

4creature
4《ボトルのノーム/Bottle Gnomes》

34spell
4《暗黒の儀式/Dark Ritual》
4《底なしの奈落/Bottomless Pit》
4《罠の橋/Ensnaring Bridge》
4《無のブローチ/Null Brooch》
4《呪われた巻物/Cursed Scroll》
4《持たざる者の檻/Paupers' Cage》
2《モックス・ダイアモンド/Mox Diamond》
2《吐き気/Nausea》
2《プロパガンダ/Propaganda》
2《恐怖/Terror》
1《吸血の教示者/Vampiric Tutor》
1《ファイレクシアの炉/Phyrexian Furnace》
15sideboard
4《寒け/Chill》 
3《夜の戦慄/Dread of Night》
3《非業の死/Perish》 
2《ロボトミー/Lobotomy》 
1《憂鬱/Gloom》 
1《道化の帽子/Jester's Cap》 
1《ファイレクシアの炉/Phyrexian Furnace》


 青をタッチすることで追加の橋と言える《プロパガンダ/Propaganda》を入れより防御力を高め、サイド後は比較的苦手な赤のバーン系に対抗するための《寒け/Chill》や、橋ロックが関係ない「プロスブルーム」などのコンボデッキを1枚で仕留める《ロボトミー/Lobotomy》が採用されている。見るからに「鉄壁」なデッキだ。





3.リブート
 さて、この鉄壁が現代でも通用するものになるか否か。いろいろ考えながらいってみよう
フォーマット:モダン
Sample Deck
22land
3 《黒割れの崖/Blackcleave Cliffs》
3 《血の墓所/Blood Crypt》
4 《沼/Swamp》
1 《山/Mountain》
2 《溶岩爪の辺境/Lavaclaw Reaches》
4 《湿地の干潟/Marsh Flats》
4 《新緑の地下墓地/Verdant Catacombs》
1 《偶像の石塚/Graven Cairns》

12creature
4 《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer》
4 《大爆発の魔道士/Fulminator Mage》
4 《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》

26spell

4 《罠の橋/Ensnaring Bridge》
4 《隆盛/下落/Rise/Fall》
4 《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》
4 《思考囲い/Thoughtseize》
4 《稲妻/Lightning Bolt》
2 《精神ねじ切り/Wrench Mind》
2 《炎の印章/Seal of Fire》
2 《戦慄掘り/Dreadbore》


今回はモダンで組んでみた。最初はエンプティの決め技の正統後継者《巻物の大魔術師/Magus of the Scroll》で組む予定だったのだが…ちょっとね。やっぱりカードパワーが落ちるというか…序盤全く機能しないのが苦しいところなので、同じ2点砲台となる《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer》と《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》にお願いすることにした。



《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》で毎ターン手札を削りながら墓地も肥やし、橋の向こう側から狙撃をするスナイパー達。良い絵である。あえて《炎の印章/Seal of Fire》を使っているのは、橋があり手札を消費したいという状況でトップしても、とりあえず置いておくことが出来るから。うん、前回の「ふるードスター2013」よりはデッキになっている。ええぞ!






4.
終わりに

今回はチョイスしたデッキ自体が正解だった。《罠の橋/Ensnaring Bridge》《無のブローチ/Null Brooch》というカードは筆者が大好きなカードであり、すぐにでも…「基本セット2015」にでも再録して欲しいと願ってやまない。手札を握っていなければいないほど強いという、マジックの根底に真っ向からアゲインストするデッキというのがかっこいい。次回もこういうかっこいいデッキを…やりたいな。やれたらいいな。
 
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