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Deck Remember Vol.3 「Hulk Smash」 
 
text by Iwa-Show




ニコル・ボーラス「矮小なる人間の男よ。中々面白いことをやっておるではないか。お前が記しておるものなど、多元宇宙のあらゆる記憶をこの頭脳に収める我にとっては常識であり、何も目新しいものではない。しかし、この全知全能なる我が頭脳にあえて挑まんとするその様を観ていると、お前たちが社会性を持つ下等生物…アリなどを見て『まるで人間社会のようで面白い』と言っておるのと似た感覚を覚えるのだ。他愛もないその…」




あの、すんません。人の夢に出てきて難しいこと言うのやめてもらっていいすか? もっとわかりやすくお願いします。明日も仕事なんで安眠させてください。

ニコル・ボーラス「…ええ感じや思うで。頑張ってな」


こんな夢を見たとか見てないとか。なるべくおもろいもん提供できるように精進せねば。というわけで、今回もいってみよう。












Vol.3 「Hulk Smash」


 マジックを長いこと遊ばれているプレイヤー、特にレガシーを遊ばれている方はピンときたデッキ名ではないだろうか。「あーあの極悪瞬殺デッキね!」いや、それはフラッシュ/Flash(※)。今回紹介するのはスマッシュ/Smashだ。

「Hulk, smash!」某アメコミでの決め台詞に因んだこのデッキの記憶を振り返っていきたいと思う。


極悪コンビは今回お呼びではない






1.
詳細


 ハルクスマッシュ。デッキ名だけだと、緑のビートダウンの様に聞こえるかもしれないが、実はその真逆のコントロールに分類されるデッキだ。古き良き、青と黒の手札破壊とカウンター、クリーチャー除去に加えて大量展開には《破滅的な行為/Pernicious Deed》でリセットを行う。え、「ディードスティル」じゃないのそれ?  では、ハルクスマッシュがハルクスマッシュたる所以をお見せしよう。



 このデッキの巨人の一撃とは、そのフィニッシングムーブのことである。上述したコントロール戦略を行っていれば、必ず相手は疲弊し隙が出来る。ここに叩き込むのが《サイカトグ/Psychatog》のワンパンチだ。

 オデッセイブロックが存在したスタンダードを遊んでいたプレイヤーならおわかりかと思うが、このパワー1のエイトグはワンパンチで10点与えるなどということはザラにあったものだ。「でも言うても10点でしょ?20への道は遠いぞ…」とお思いのあなた!これを一発で20点に膨れ上がらせるインスタントがあるじゃあないですか。それは…





 《Berserk》!バーサク!ベルセルク!20点!ハルクスマッシュ!という大興奮な動きをするわけだが、コントロールにそう何枚も《Berserk》なんて入れられないじゃないですか。勿論そうよというわけで、この「凶暴化」(PCゲームでの日本語訳はこうだった)はあくまで《狡猾な願い/Cunning Wish》でのシルバーバレットに過ぎない。この願いは、各種除去呪文やカウンター・ドローをサーチしたりと大車輪の活躍を見せてくれるのだ。











2.
サンプル


 ちょうど実績を残しつつ、一昔前のリストがあったのでこれを参考にしてみよう

ヴィンテージ選手権05  TOP8
18land
1 《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》
4 《島/Island》
4 《汚染された三角州/Polluted Delta》
1 《沼/Swamp》
4 《Tropical Island》
4 《Underground Sea》

3creature
3 《サイカトグ/Psychatog》

39spell
4 《蓄積した知識/Accumulated Knowledge》
1 《Ancestral Recall》
1 《Black Lotus》
4 《渦まく知識/Brainstorm》
2 《狡猾な願い/Cunning Wish》
1 《Demonic Tutor》
1 《残響する真実/Echoing Truth》
1 《嘘か真か/Fact or Fiction》
4 《Force of Will》
1 《噴出/Gush》
2 《直観/Intuition》
1 《Mana Crypt》
4 《Mana Drain》
4 《商人の巻物/Merchant Scroll》
1 《Mox Emerald》
1 《Mox Jet》
1 《Mox Ruby》
1 《Mox Sapphire》
1 《Mox Pearl》
1 《神秘の教示者/Mystical Tutor》
1 《Time Walk》
1 《ヨーグモスの意志/Yawgmoth's Will》
15sideboard
1 《Berserk》
1 《青霊破/Blue Elemental Blast》
3 《強迫/Duress》
2 《魔力流出/Energy Flux》
2 《地の封印/Ground Seal》
1 《ハーキルの召還術/Hurkyl's Recall》
2 《帰化/Naturalize》
2 《破滅的な行為/Pernicious Deed》
1 《占骨術/Skeletal Scrying》
 「Power9」テンコ盛りのヴィンテージのデッキだ。ちなみに《Time Twister》は当たり前の様に入っていない。サイカとの相性が終わってるからね。まあそれを抜きにしてもTwisterさんはPower9から降ろせとよく言われる1枚ではあるが(最近ではコマンダーのおかげで盛り返しているけども。「戦場がお前らと違うだけ」と喜んでいるとか)。

 話をデッキに戻すと、《蓄積した知識/Accumulated Knowledge》に時代を感じる。《渦まく知識/Brainstorm》が制限かかる前というのも、2005年がいかに遠い時代なのかというのを再認識させてくれるだろう。基本的にサイカ以外で勝つ気が全くないリストである。男気は感じるが、今の時代やっていこうと思うともう少し工夫が必要だ。







3.
リブート


 さて、このデッキは現代風にアレンジするならスペルが諸々アップデートされることになるだろう。まずは、そのままコントロール路線のハルクスマッシュver.2013。これは脇を固める呪文を現在の最高水準のものに変更すれば良い。除去は《突然の衰微/Abrupt Decay》、カウンターは《呪文貫き/Spell Pierce》、ハンデスは《思考囲い/Thoughtseize》、追加の勝ち手段として《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》といった具合により強力なカードに置き換えれば良い。むしろヴィンテージではなく、レガシーでこの動きをしても良いかもしれない。

 「The Fear」と呼ばれた、《けちな贈り物/Gifts Ungiven》《壌土からの生命/Life from the Loam》をアドバンテージエンジンに据えた相殺独楽コントロールの一種だ。5,6年ほど前のレガシーでその姿を見せたコントロールデッキだが、今ならけちで持ってくるカードも《壌土からの生命/Life from the Loam》、《燃え柳の木立ち/Grove of the Burnwillows》、《罰する火/Punishing Fire》あと何かとかやってりゃ現在でも対応できるんじゃないかな。

 《狡猾な願い/Cunning Wish》でサーチするのも《Berserk》でなくても良いかもしれない。《壌土からの生命/Life from the Loam》および《罰する火》を回転させてサイカのパワーを9オーバーにしたら、《汚れた一撃/Tainted Strike》という新種の《Berserk》で感染パンチをドカン!というのも面白いのではないかな。





  さらにリブートの枠を越えてネクストレヴェルへの到達をさせるのであれば…《Berserk》でズドンと決める路線だけは踏襲しつつ、よりアグレッシブな方向へ進化してみよう

フォーマット:モダン
Sample Deck
8land
4《Tropical Island》
4《Taiga》

12creature
4《ニヴメイガスの精霊/Nivmagus Elemental》
4《膨れコイルの奇魔/Blistercoil Weird》
4《ぎらつかせのエルフ/Glistener Elf》

40spell

4《Berserk》
4《魔力変/Manamorphose》
4《激励/Invigorate》
4《水蓮の花びら/Lotus Petal》
4《変異原性の成長/Mutagenic Growth》
4《渦まく知識/Brainstorm》
4《思案/Ponder》
4《目くらまし/Daze》
4《土地譲渡/Land Grant》
4《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》
 モダンであったニヴメイガスデッキに敬意を表したパターン。もっとも多い勝ちパターンは《ぎらつかせのエルフ/Glistener Elf》を《激励/Invigorate》して《Berserk》だ。土地1枚含むカード4枚で勝てるというのは、レガシーであってもそうそうないレベルだ。…うん、「ベルチャー」やね。






4.
終わりに

 《Berserk》は誰もが1度は使ってみたい1枚だろう。確かに、入手難度は高めではあるが…是非とも一発で終わらせるその膂力を存分に味わって欲しい。いつも同じデッキばかりでは、どれだけでも遊べるフォーマットをすぐに飽きてしまってもったいないぞ、というところで今回はここらで。








ニコル・ボーラス「てっきりニコルシュートとかやってくれると思ったのに…」









 
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