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Deck Remember Vol.4 「Death Goblin Wish」 
 
text by Iwa-Show




「DIIIIIIIE」


 え!?何々!?


「DIIIIE(死ねぇぇぇぇ)」




 うわ、危な!


「DIE(死ね)」


 ちょっと待って欲しい、地を赤く染める者さん!(※スラクジムンダールの名前の意味)あんたに殺されなきゃならん理由がわからん!


「Die.(死ね)」


 ん、手紙?何々…


「拝啓・非力な人間へ。前回は余がゲスト出演したにもかかわらず、全く関係のないデッキを紹介したことを忘れたとは言わせぬ。たかが虫けらの行い、さして気にはしておらんが、報いを与えないのも余のやり方には反しているように思う。しかし直接手を下すほどのことでもないし、何よりそんな時間がない。どいつもこいつも言うことを聞かんのでな。故に、余の親衛隊をそちらの次元へ送った。地を赤く染め上げれば、そやつは満足して引き上げるであろう。貴様にそれが出来るか、見ものである。ニコル・ボーラス」



 八つ当たりですねわかります。じゃあ今週は地を赤く染め上げたデッキを紹介しよう。


「DIE?」
























Vol.4 Death Goblin Wish

1.詳細

 「部族超推し」だったオンスロート・ブロック。クレリック・エルフ・ゾンビ・ビースト…と多くの部族デッキをトーナメントシーンに輩出したが、僕個人が最も活躍した・最強の部族だと思ったのは「ゴブリン」だった。特に「スカージ」にて《ゴブリンの戦長/Goblin Warchief》が登場したことにより、ゴブリンは他の部族を頭1つ、いや2つほど抜けて最強の部族になったように思う。全体への速攻付与とマナコスト削減の組み合わせははっきり言って異常だ。



 勿論、横に並んでナンボなゴブリンはウジャウジャと展開していくことが基本戦略となる。これに対抗する際、何を用いれば良いのかというのは簡単なことで《神の怒り/Wrath of God》などの全体除去を使用すれば良い。相手の攻め手が尽きれば、アドバンテージの差がそのまま勝利をもたらすであろう。ゴブリン達に最も嫌いなものを訪ねれば「カミ」と返ってきそうなものである。食べられないしね。

 ゴブリン使い達はこのことに頭を悩ませたわけだが、彼らが達した結論は「死んだなら蘇らせればいい」というシンプルな答えであった。ちょうど同環境には《総帥の召集/Patriarch’s Bidding》が存在していたのだ。このカード、実質「墓地の全てのカードを場に出す」と書いているようなものである。相手が《神の怒り/Wrath of God》などを使ってくる場合、そのデッキにはほとんどクリーチャーは入っていないため相手も墓地から釣り上げられるというのはデメリットにならない。こうして生まれたデッキが「ゴブリン召集」であった。




 相手が全体除去を使っていなくても、ゴブリンは同族を生け贄に捧げることでメリットを得る能力を持っているものが多数いる。彼らをデッキのエンジンとし、生け贄による恩恵を最大限に受けてからの《総帥の召集/Patriarch’s Bidding》で盤面を制圧する、一種のコンボデッキのような動きが出来るのがこの「ゴブリン召集」の強さだ。





 このデッキはスタンダードシーンを駆け巡り、大小様々な大会で好成績を残した。そのポテンシャルの高さは、スタンダードに留まるレベルのものではなかった。ゴブリンの部族・生け贄シナジーと《総帥の召集/Patriarch’s Bidding》で盤面を一気に自分のものとする戦略は、戦場を「エクステンデッド」にまで広げるようになった。

 エクステンデッドまでカードプールが拡がると、1つの問題が発生する。それは《総帥の召集/Patriarch’s Bidding》という重いカードを4枚デッキに入れることのリスクが跳ね上がることだ。マナコストが軽ければ軽いほど優先される環境において、例え「撃てれば勝ち」でも状況が限定される5マナのカードを4枚積む余裕はない。

 さらに言えば、「もっと様々なカードをデッキに入れたいが60枚の中に納まりきらない…どうにかならないのか!」というプレイヤーの「願い」は、あっさり解決することとなった。《燃え立つ願い/Burning Wish》という軽くて状況にあった1枚を持ってこられる最高のカードがエクステンデッドには存在していたのだ。




 これにより「ゴブリンによる部族・生け贄シナジー」「《総帥の召集/Patriarch’s Bidding》によるリカバリー、決定打」「《燃え立つ願い/Burning Wish》によるシルバーバレット戦略※」という3本柱を獲得した赤黒のデッキ、
それが「Death Goblin Wish」だ!

(※「吸血鬼に対する銀の弾丸」のような、特定の状況で高い効果を発揮するカードを多種類、1・2枚ずつ採用してサーチすることで戦況を有利に進める戦略およびデッキ構築スタイル)



「DIIIE(死ねぇぇぇぇ)」





2.サンプル

 ゴブリンが死に、蘇りまた死ぬ。そうすることで相手も死ぬ。まさに地を赤く染め上げるこのデッキのサンプルを見れば、きっとスラクジの野郎も満足するはずだ。


「DIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIEEE(死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ)」


Pro Tour Columbus04 Top8
22land
2 《沼/Swamp》
4 《山/Mountain》
4 《血染めのぬかるみ/Bloodstained Mire》
4 《硫黄泉/Sulfurous Springs》
4 《リシャーダの港/Rishadan Port》
4 《シャドーブラッドの尾根/Shadowblood Ridge》

26creature
3 《モグの狂信者/Mogg Fanatic》
4 《スカークの探鉱者/Skirk Prospector》
1 《火花鍛冶/Sparksmith》
4 《ゴブリンの女看守/Goblin Matron》
4 《ゴブリンの群衆追い/Goblin Piledriver》
1 《ゴブリンの名手/Goblin Sharpshooter》
4 《ゴブリンの首謀者/Goblin Ringleader》
4 《ゴブリンの戦長/Goblin Warchief》
1 《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》

12spell
2 《金属モックス/Chrome Mox》
4 《燃え立つ願い/Burning Wish》
2 《総帥の召集/Patriarch's Bidding》/patriarch’s bidding》
4 《陰謀団式療法/Cabal Therapy》
15sideboard
1 《非業の死/Perish》
1 《総帥の召集/Patriarch's Bidding》/patriarch’s bidding》
3 《強迫/Duress》
3 《頭蓋の摘出/Cranial Extraction》
1 《腐朽/Decompose》
1 《苦悶の触手/Tendrils of Agony》
1 《溶融/Meltdown》
1 《再活性/Reanimate》
1 《紅蓮地獄/Pyroclasm》
1 《落盤/Cave-In》
1 《チェイナーの布告/Chainer's Edict》
 非常に完成度が高く、美しいデッキである。《燃え立つ願い/Burning Wish》によるシルバーバレットの内容を解説しよう。
《非業の死/Perish》はわかりやすく、緑のデカブツや敵対する部族・エルフを根絶やしにするためだ。

「Diiie(死ねぇぇ)」

 《強迫/Duress》は各種コンボデッキの阻害や、青いデッキ相手に本命のカードを通すための露払いとして。

「DIIIIEE(死ねええええええ)」

  《頭蓋の摘出/Cranial Extraction》も同様にコンボ殺しであり、また「ここでこれを引かれなければ勝てる」という状況で勝利を確定するためのダメ押しである。

「DIE(死ね)」

  《腐朽/Decompose》はリアニメイトなどの墓地活用デッキへの阻害である。

「DIIIIE(死ーねぇぇ)」

  《苦悶の触手/Tendrils of Agony》は《スカークの探鉱者/Skirk Prospector》や《ゴブリンの首謀者/Goblin Ringleader》でストームが稼ぎまくってからのフィニッシュに。《崇拝/Worship》に逃げているやつも蹴散らせる。

「DIIE DIIE DIIE(死ね死ね死ねぇぇぇ)」

 《溶融/Meltdown》は当時隆盛を極めていた親和へのアンチテーゼだ。

「DIIIE,DIIIIIIEEE(死ね、死ねぇぇぇぇぇ)」

 《再活性/Reanimate》は召集よりも軽い釣竿として、また相手の墓地のクリーチャーを釣り上げたり、リアニメイトとの「友情コンボ」にもなる。

「DIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIE(死ぃぃぃぃぃねぇぇぇ)」

 《紅蓮地獄/Pyroclasm》及び《落盤/Cave-In》はゴブリン同系やウィニーが先にズラリと展開してきた盤面では有効な1枚となるだろう。

「DIE DIE DIE DIE DIE(死ね死ね死ね死ね死ね)」

 《チェイナーの布告/Chainer’s Edict》は単騎で勝負を決めるデッキや、どうしてもブロッカーをどけたい時に。

「DIIIIIIIIIIEEEEEEEE(死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ)」





3.リブート

 自ずとフォーマットはレガシーとなる。石鍛冶やジェイスやエムラクールやグリセルなんかのブイブイ言わせている連中が生まれるよりも前の話だが、僕はこのデッキのレガシー版を使用していたので、今回のリブートは楽なものだ。

フォーマット:レガシー

Sample Deck
23land
2 《Badlands》
2 《Taiga》
1 《魂の洞窟/Cavern of Souls》
4 《不毛の大地/Wasteland》
4 《樹木茂る山麓/Wooded Foothills》
4 《血染めのぬかるみ/Bloodstained Mire》
4 《山/Mountain》
1 《沼/Swamp》
1 《ガイアの揺籃の地/Gaea's Cradle》

29creature
4 《ゴブリンの従僕/Goblin Lackey》
1 《スカークの探鉱者/Skirk Prospector》
2 《モグの戦争司令官/Mogg War Marshal》
4 《ゴブリン/Goblin》の群集追い
1 《棘鞭使い/Stingscourger》
4 《ゴブリンの女看守/Goblin Matron》
3 《ゴブリンの戦長/Goblin Warchief》
1 《ゴブリンの酋長/Goblin Chieftain》
1 《ゴブリンの名手/Goblin Sharpshooter》
3 《宝石の手の焼却者/Gempalm Incinerator》
4 《ゴブリンの首謀者/Goblin Ringleader》
1 《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》

8spell
4 《霊気の薬瓶/AEther Vial》
4 《燃え立つ願い/Burning Wish》
15sideboard
1 《非業の死/Perish》
4 《陰謀団式療法/Cabal Therapy》
1 《総帥の召集/Patriarch's Bidding》/patriarch’s bidding》
1 《Anarchy》
1 《再活性/Reanimate》
1 《巣穴の運命支配/Warren Weirding》
1 《思考囲い/Thoughtseize》
2 《外殻貫通/Hull Breach》
1 《一族の誇示/Clan Defiance》
1 《殺戮遊戯/Slaughter Games》
1 《軍勢の整列/Marshaling the Troops》
 エクステンデッドでは禁止だった《ゴブリンの従僕/Goblin Lackey》が使えるのは非常に大きい。立ち回りとしては、序盤は無理して攻めなくても良い。重視すべきは土地を伸ばすことと《霊気の薬瓶/AEther Vial》を育てること。これらを行いながら、「死なない」プレイングを心がけること。

 勝ちに行くのは態勢が整えばいくらでも勝てるデッキなのがゴブリンだ。大事なのは、その整える段階なのである。勿論瞬殺パターンもあるが、それは偶々いろんな要素が噛み合った末に起こることだ。

 ウィッシュボードは、正直言って好みの世界である。これだけカードプールが広いと選び甲斐があるものだ。今回は結構無難な形でまとめてみたつもりだが、もっと《ゴブリンの手投げ弾/Goblin Grenade》《ゴブリンの集中攻撃/Goblin War Strike》とか入れてライフしか見えない仕様にしても楽しいだろう。普通のゴブリンを使った方が安定するのは確かだが、《ガイアの揺籃の地/Gaea’s Cradle》と《スカークの探鉱者/Skirk Prospector》でマナブーストしまくって《一族の誇示/Clan Defiance》をドカーンとぶっ放してみたくないかい?決め台詞は


「DIIIIEEEE(死ねぇぇぇぇぇぇぇ)」



 いや、そんなこと言ったら秒速で大会から追放です。





4.終わりに

 デッキの柱というものは一本だと脆くなってしまうが、多すぎても一本一本が細いものになってしまうと思う。Death Goblin Wishは個人的に丁度良い柱を持ったデッキであると思う。それぞれがお互いの良さを支え合っていてバランスも良い。皆も、今使っているデッキに柱となる戦略を一本追加して、苦手なものを克服するアプローチをとってみてはいかがだろうか。それでは今回はこのへんで。









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「DIIIIIEEEEE(死ねぇぇぇぇぇ)」








ニコル・ボーラス「うるさいのが帰ってきおった…」









 
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