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by Keita Okamoto
前編はこちら!
・フィニッシュ手段
一概にフィニッシュ手段と言っても幅広く、細かいことを言えば1/1のクリーチャーでさえもフィニッシュ手段になり得てしまいます。
ここでは、「中盤以降に引いてくれば一気に盤面をひっくり返して自分有利の流れに持ち込めるカード」の意味で見ていきます。
《孔蹄のビヒモス/Craterhoof Behemoth》
非常に分かりやすいフィニッシュ手段ですね。TOP8の緑のデッキ7人中3人がフィニッシュ手段に採用しています。
トップ4までのデッキリストはこちらで参照できます。
個人的には《略奪の母、汁婆/Wort, the Raidmother》にも入れて良さそうな気もしますが、実際に回して調整した結果に抜けたのかもしれません。
緑絡みとはいえ《浄火の戦術家、デリーヴィー/Derevi,
Empyrial Tactician》はクリーチャーが横に並びにくいためか今回のTOP8では採用されていません。
(注:TOP8の《浄火の戦術家、デリーヴィー/Derevi,
Empyrial Tactician》と《結界師ズアー/Zur
the Enchanter》は2014/1/14の時点で統率者に指定することが禁止されました)
統率者戦の時と同じぐらい盤面にクリーチャーが並ぶのに削るべきライフはたった30点なので、4体ぐらいしか展開できていない時でも無理やり勝負を決めてしまえるカードパワーが魅力的です。
他の《踏み荒らし/Overrun》系統のカードと違って、緑でサーチしやすいクリーチャーという点も評価が高いです。1枚ずつしか入れられないものの、《孔蹄のビヒモス/Craterhoof
Behemoth》を探せるカードの分だけ水増しできるようなものなので、ほとんど自分の好きなタイミングに呼んで来られる、頼れるフィニッシャーです。
主に緑のトークンデッキやエルフデッキのフィニッシュ手段として採用されています。
逆にこれらのデッキと戦う時は常に《孔蹄のビヒモス/Craterhoof
Behemoth》を警戒しながら動く必要があります。青いデッキなら打消しを構え、それ以外のデッキであればこまめにクリーチャーを破壊して相手に盤面を整えさせない事が肝要です。
《歯と爪/Tooth and Nail》
これ自体はフィニッシュ手段ではありませんが、ここから持ってくるクリーチャー(大抵は《孔蹄のビヒモス/Craterhoof
Behemoth》)が非常に強力なため、これも実質的にフィニッシュ手段とカウント出来ます。
また、これらはソーサリー呪文なので、対策が非常に困難です。青いデッキならば打消しで、黒いデッキならば手札破壊で手札に抱えているものを先に落としておくことで対策できますが、後でトップデッキしてきたものには対処できません。
とはいっても青で打ち消す以外はクリーチャーをこまめに除去していくかライブラリーサーチを禁止する(《疑念の影/Shadow
of Doubt》《エイヴンの思考検閲者/Aven Mindcensor》《締め付け/Stranglehold》など)事、《孔蹄のビヒモス/Craterhoof
Behemoth》に関しては《倦怠の宝珠/Torpor
Orb》を置いておくぐらいしか対抗策がないのでデッキによっては注意しようがありません。
《歯と爪/Tooth and Nail》はマナコストは重いものの、通ってしまえば大抵勝利出来ます。《孔蹄のビヒモス/Craterhoof
Behemoth》を持ってきても良いですし、《鏡割りのキキジキ/Kiki-Jiki,
Mirror Breaker》+《士気溢れる徴集兵/Zealous
Conscripts》の無限コンボをそろえても良いですし、もう何をしても大丈夫です。
《大軍の功績/Triumph of the
Hordes》
《踏み荒らし/Overrun》系統は数多くありますが、実際にTOP8で《孔蹄のビヒモス/Craterhoof
Behemoth》と大体セットで採用されていたのはこのカードだけです。
このカードは他の《踏み荒らし/Overrun》と違って1マナ軽い4マナで撃てる事と感染を持たせるために必要打点が少なくて済む事が長所です。その反面、修正値が+1だけなので突破しづらい事が短所として挙げられます。
これは《孔蹄のビヒモス/Craterhoof Behemoth》と同様にあまり脅威でない質と量のクリーチャー群でも一気に致死量のダメージをたたき出す可能性があるため、警戒を怠る事はできません。
また、《孔蹄のビヒモス/Craterhoof Behemoth》と違って《倦怠の宝珠/Torpor
Orb》では予防できないソーサリー呪文なので、念には念を入れてこまめにクリーチャーを除去していく必要があります。
もし自分のデッキが《シルヴォクののけ者、メリーラ/Melira,
Sylvok Outcast》頑強コンボを採用出来るようであれば、あらかじめ戦場に出しておく事でこのカードによる突然死は防ぐ事が出来ます。
他にも《数多のラフィーク/Rafiq of the Many》デッキの《化膿獣/Putrefax》や《荒廃のドラゴン、スキジリクス/Skithiryx,
the Blight Dragon》デッキなどにも耐性がつくので色が許すのであれば積極的に採用するべきでしょう。
その場合は《孔蹄のビヒモス/Craterhoof Behemoth》にだけ意識をむけていれば良いので多少は楽になるはずです。
《大修道士、エリシュ・ノーン/Elesh
Norn, Grand Cenobite》
これだけのマナクリーチャー環境であれば、このクリーチャーは絶大な威力を発揮してくれる事は容易に想像がつくと思います。
デュエルコマンダー公式で《忠臣/Loyal Retainers》を禁止にした理由の一つとしてこのクリーチャーの存在を挙げているぐらい、デュエルコマンダーでこのカードは危険です。
一旦戦場に出られればその瞬間に対戦相手の軍勢の大半を消滅させる事が出来るため、特に緑のエルフデッキに対して強力です。
もちろん除去耐性は無いので、黒や青絡みのデッキに対しては少々心もとない所があります。
出た後の事はあまり考える必要は無いので、出すまでの事を考えましょう。
TOP8でこのカードを採用していたのは《幽霊の酋長、カラドール/Karador,
Ghost Chieftain》だけでした。
デッキの主な動きであるリアニメイト戦術+マナクリーチャーによるマナ加速がこのクリーチャーを早出しする事に合致しているからで、《浄火の戦術家、デリーヴィー/Derevi,
Empyrial Tactician》や《結界師ズアー/Zur
the Enchanter》はその片方もしくは両方が欠けているため、採用していないのだと考えられます。
このカードを対策するのは困難です。もちろんずっと戦場に居座られたらゲームにならないので、このクリーチャーを除去するカードを採用するのは当然です。
自分がマナクリーチャーを多用するデッキであれば、このクリーチャーが出てくる前に対戦相手を倒してしまうか、全体的にサイズアップするカード(エルフデッキなら《運命の扉/Door
of Destinies》、そうでないなら《獣使いの昇天/Beastmaster
Ascension》など)をあらかじめ出しましょう。白も入っているなら自分も《大修道士、エリシュ・ノーン/Elesh
Norn, Grand Cenobite》を使うか《集団的祝福/Collective
Blessing》を使うと良いでしょう。
また、このカードに限らずデュエルコマンダーでの大型クリーチャーは緑でなければ墓地からリアニメイトして出すのが一番現実的な方法です。なぜなら墓地対策は通常の戦闘などにはほとんど関与する事がなく、効果を発揮するタイミングが限定的になってしまうために枚数が少ないもしくはまったくとられない事が多いからです。
従って、多少のカードパワーの低下には目を瞑って墓地対策を入れる事がこのカードの遠回りではあるものの対策になります。
もちろん《トーモッドの墓所/Tormod’s Crypt》などの墓地対策しかできないカードよりは1ドローがついている《大祖始の遺産/Relic
of Progenitus》《虚無の呪文爆弾/Nihil
Spellbomb》、《俗世の教示者/Worldly Tutor》などの教示者対策にもなる《外科的摘出/Surgical
Extraction》、変成もついている《引き裂かれた記憶/Shred
Memory》、クリーチャーとして役割をもてる《漁る軟泥/Scavenging
Ooze》《萎縮した卑劣漢/Withered Wretch》といったように、墓地対策以外の役割も持てるカードを優先的に採用しましょう。
しかし、墓地対策だけしていて、順調に土地が伸びて手札から出されただけでしまうといった事にだけはならないように気を付けましょう。
《グリセルブランド/Griselbrand》
《大修道士、エリシュ・ノーン/Elesh Norn, Grand
Cenobite》は細かいクリーチャーに頼ったデッキに対して非常に強力ですが、逆に受け身なデッキに対してはそこまで強くありません。。
そういう受け身なデッキに対しては《グリセルブランド/Griselbrand》のカードアドバンテージでもって圧殺しましょう。
仮にすぐに除去されたとしてもそれに対応して7点やら14点やらライフを支払って雑にハンドを増やしてやれば、墓地からまた《グリセルブランド/Griselbrand》を釣り上げてきたり、また別の脅威を繰り出したりとやりたい放題できます。
また、速いデッキに対しても7/7飛行絆魂という強大なブロッカーとして十分仕事をしてくれるので、腐る相手がいません。
統率者戦で禁止されているのもうなずけるほどの強さです。
このカードは《大修道士、エリシュ・ノーン/Elesh Norn,
Grand Cenobite》と同様、墓地からリアニメイトしてくる事が多いので、墓地対策を怠らないようにする事がまず先決です。
また、マナクリーチャー対策の時に紹介した《呪われたトーテム像/Cursed
Totem》でもこのクリーチャーの最大の強みであるドロー能力を封じる事が出来るので対策になります。もちろんドロー能力を封じるだけなので、7/7飛行絆魂に殴り倒されないように気をつけてください。
他に対策と言えるようなカードはあまりありませんが、強いていえばこのカードが出されるまでに十分に相手のライフを減らしておけば容易に起動できなくなるので、結果として対策になります。これは対策カードというよりもプレイングやデッキ構築自体の問題になりますね。
《ハルマゲドン/Armageddon》《戦の惨害/Ravages
of War》
古の白ウィニーの必殺技としても知られている《ハルマゲドン/Armageddon》シリーズもこれ自体でフィニッシュするわけではありませんが、有利な盤面をそのまま固定してしまうので強力なフィニッシャーと言えます。
統率者戦と違って土地を全て破壊した後に殴る先が一方向しか無いためリカバリーする前に殴りきる事が容易ですし、マナアーティファクトの採用数が少ない事もこの土地リセット呪文の強さを底上げしています。
ウィニーだけでなくある程度クリーチャーを展開する白絡みのデッキなら、こちらの場が優勢な時に撃てばこれだけでイージーウィン出来てしまうので採用しておくといいでしょう。
このカードの対策としては、相手にとって有利な場を構築させないように除去をしていったり、こちらも無視できないほどの強力なクリーチャーをどんどん展開していくプレイングが対策になります。
後はマナアーティファクトでマナ加速する事を重視していけばリカバリーも比較的容易に進められるので、もしこれらの土地破壊を意識するのであれば積極的に採用しましょう。
一応土地破壊対策として《聖なる場/Sacred Ground》などカード自体は存在しますが、あまりにも汎用性がなさすぎるのでおすすめできません。
《金輪際/Nevermore》
このカードもこれ自体でフィニッシュするカードではありません。
こういったカード名を指定するカードは普通は相手がそのカードを引いているかどうかで強さが変わってしまい、少し不安定な対策カード止まりですが、統率者戦やデュエルコマンダーでは統率者の名前がすでに明かされているため、指定が容易です。
統率者戦では3人いる相手のうちどれを指定すればいいのか状況によってしまうので微妙な扱いですが、デュエルコマンダーでは堂々と対戦相手の統率者の名前を指定しましょう。
エンチャントに触れるカードはそもそも白か緑にしか存在せず、しかも直接盤面に影響しづらいためあまり枚数がとられていません。そんな環境で統率者が突然使えなくなったら相当つらい戦いを強いられる事になります。デッキによっては完全に機能不全に陥ってしまう事もあります。
対策はエンチャント破壊か、統率者に頼り切らない構成にするしかありません。色的にエンチャントを破壊できない場合は、3色デッキなら《仕組まれた爆薬/Engineered
Explosives》ですぐに破壊する事が出来るので、どうしても無理だと感じたら採用しましょう。《漸増爆弾/Ratchet
Bomb》《火薬樽/Powder Keg》はタイムラグが生じてしまうのでおすすめできません。
・その他TOP8で採用されていたデュエルコマンダーならではのカード
《不毛の大地/Wasteland》
環境がレガシーに近いので、対戦相手の特殊土地を破壊して事故らせる事は十分可能です。
また、大半の軽いマナ加速は禁止になっているものの、《ガイアの揺籃の地/Gaea’s
Cradle》は禁止になっていません。マナクリーチャーを展開してからの《ガイアの揺籃の地/Gaea’s
Cradle》はとんでもない量のマナを生み出してしまうため、これは速やかに破壊しないといけません。
色マナシンボルも含まないのでどのデッキにも入れる事が出来、特に理由がない限りは採用するべきカードです。
《原始のタイタン/Primeval Titan》
特別にデュエルコマンダーだからこその動きなどはありませんが、純粋にタダ強カードとして採用されています。強いて言えば、マナ加速が大事な環境なのでマナ差を一気に広げる事が出来るので強さに磨きがかかっていますね。上の《不毛の大地/Wasteland》を探してきて更に差を広げる動きもよく見られる事でしょう。
《Stunted Growth》
自分で選ぶことはできないものの、手札のうち3枚もライブラリートップに置いてしまうこのカードは、デュエルコマンダーでは非常に強力です。
手札が3枚も一時的になくなるので一時的な手札破壊としてはもちろん、次の3ターンのドローが決まってしまうため、事実上3ターン分ドローを止めているような事になります。その間にどんどん展開していけば圧倒的な差をつける事が出来るでしょう。
《魔力の乱れ/Force Spike》《目くらまし/Daze》
統率者戦ではすぐにマナが伸びてしまうので1マナ要求するカウンター呪文はほとんど役に立ちません。しかし、テンポが重要視されるデュエルコマンダーでは少し話が変わってきます。
序盤では1マナ要求は致命的なテンポロスになりますし、そもそもマナを支払えずに打ち消せる事が多いのでちゃんと仕事をしてくれます。
中盤以降のマナが安定して伸びた後はもちろん効果が薄れてしまい、せいぜい《Force
of Will》《誤った指図/Misdirection》のコストにするぐらいしか主な使い道はありません。しかし、このカードがデッキに入っていると相手に一度意識させるとフルタップで動きづらくなり、遠回しに相手の行動の抑制につながります。
使って強いタイミングよりも使っていないからこそ強いタイミングの方が重要になるトリッキーなカードです。
《潮の虚ろの漕ぎ手》《思考囲い》《コジレックの審問》等の手札破壊
統率者戦では手札を見なければいけない対戦相手が3人もいるため、あまり採用される事はないこれらの手札破壊ですが、デュエルコマンダーでは話は別です。
何度も似たような事を言っているような気がしますが、この環境は統率者戦よりはレガシーに近い環境です。対処するべき/対処してくる対戦相手は1人しかいないため、これらの「手札を見て捨てさせる」カードは重要です。
普段の構築での強さに加えていくつかデュエルコマンダーならではの強さが追加されています。
デュエルコマンダーではISD-RTR期のスタンダードに存在していた「ナヤブリッツ」やSOM-ZEN期のスタンダードに存在していた「カルドーサレッド」のような超速攻デッキはほとんど存在しないため、「手札破壊は撃てるが相手はもう十分展開しきっており、そもそも盤面の対処をしないとゲームにならない」という典型的な手札破壊の腐る状況が発生しづらくなっています。
もう一つの手札破壊の強さは、デュエルコマンダーではカードを1枚ずつしか入れられないため、「手札破壊で致命的なものを捨てさせた返しに同じカードを引かれた」という手札破壊特有のジレンマが解消されている点です。
1枚ずつしかカードを入れられないという制限から、同じ役割のカードを複数枚デッキに入れる事が難しくなっています。
そこで、例えば緑のデッキと対峙している時に《思考囲い/Thoughtseize》を撃ち、たまたま手札に握っていた《歯と爪/Tooth
and Nail》を捨てさせたとしましょう。《歯と爪/Tooth
and Nail》はもちろんデッキに1枚しか入れられないですし、他に軽いコストでライブラリーから《孔蹄のビヒモス/Craterhoof
Behemoth》を戦場に出すカードはほとんどありません。つまり《永遠の証人/Eternal
Witness》《Regrowth》を引かれて回収されたりしない限りはしばらくの間は《歯と爪/Tooth
and Nail》からの《孔蹄のビヒモス/Craterhoof
Behemoth》での突然死におびえる事なくゲームを進められる事になります。
ここまで極端な例でなくとも、1ターン目《強迫/Duress》で相手のマナ加速を落としたらそのまま土地事故をしてしまうような単純なケースもあり得ます。
もちろん普段通りコンボ始動前、フィニッシャーや統率者登場前の前方確認として使うだけでも十分強く、黒という色の強さの一つです。黒いデッキであれば《思考囲い/Thoughtseize》《強迫/Duress》だけでも良いので採用しましょう。
プレインズウォーカー各種
統率者戦の時は出してしまうと他三人に集中的に攻撃されてすぐに破壊されてあまり仕事をしないプレインズウォーカーですが、デュエルコマンダーでは1人にしか攻撃されないので維持するのが比較的容易です。従って、統率者戦の時よりも採用率が上がっています。
中でも特にデュエルコマンダーで使われているのは《ヴェールのリリアナ/Liliana
of the Veil》です。手札破壊はもちろん、生け贄要求除去としても優秀なカードです。《聖トラフトの霊/Geist
of Saint Traft》などの単体を強くして殴る系統のデッキの活躍が最近イマイチなのは黒いデッキが必ずこのカードを取るようになったからかもしれませんね。
逆に言えば黒いデッキと対峙する時はフィニッシャーを単体で戦場に出しておくことは非常に危険です。《鷺群れのシガルダ/Sigarda,
Host of Herons》であれば問題はありませんが、《霧を歩むもの、ウリル/Uril,
the Miststalker》や《聖トラフトの霊/Geist
of Saint Traft》は横にクリーチャーを展開しておくようにしましょう。
《真の名の宿敵/True-Name Nemesis》
レガシーのような環境と言えばこのカードですね。
レガシーと違って削るべきライフが多くなっていますが、その分このカードに対処できるカードも枚数が少なくなっているのでより対処されづらくなっていますね。
カード自体も統率者2013のセットに入っていますし、本来の使われ方と言っても間違いではないのでは?
後編に続きます。
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