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by Hiroshi Ishida
ポックスリアニその1~誕生編~
ポックスリアニその2~デッキ解説編~
ポックスリアニその3~サイドボード編~
これまでの記事ではポックスリアニの誕生経緯や、プレイングについて解説してきました。
しかし、このデッキはまだまだ生まれたばかりのデッキです。
オリジナルデッキを考えるのは面白いですが、それだけで終わるのではなく、さらに実践を踏まえての調整をしていくのも面白いものです。
オリジナルデッキは自分だけのデッキだけに、他に参考に出来る情報が少なかったりしますが、逆に様々な可能性を秘めているとも言えます。
自分自身、今のリストに納得はいっていますが、まだまだ発展の余地はあると思います。
というわけで、今回は今後の発展やデッキ改造案について語りたいと思います。
●リアニメイト生物の選択
リアニメイトの魅力は、色指定マナコストをすべて無視してほぼどんな生物でも場に出せることです。
現状でもひと通り対応できますが、他にも採用したい魅力的な生物は多いです。
《狂気の種父》
1ターン目に釣り上げればほとんどゲームエンドですし、ジン・ギタクシアスよりもさらにコントロール/コンボに強いです。
難点は、やはり単純な戦闘力は低く、ビート相手には役に立たないこと。《剣を鋤に》を構えられているだけで仕事をしないこと。そして、中盤以降で釣っても影響力が低いことです。
刺さる相手には強力に刺さる代わり、効かない相手にはまるで効かないピーキーなクリーチャーです。サイドボードに採用するのもいいかもしれません。
《魅力的な執政官》
あらゆる生物のアタックを封殺します。
《大修道士、エリシュ・ノーン》と役割が被りますが、こちらはどんな大型生物も封殺できる分、システム生物に対処できないのが欠点です。
《テラストドン》
サイズも大きく、どんな置物にも触れるのは魅力です。このデッキではランドを破壊し尽くすプランも強そうです。
《灰塵の乗り手》と役割が若干被っています。
《虐殺のワーム》
生物対策カードであり、CIPだけで仕事ができます。
能力を含めればクロックもかなりのものですが、回避能力も除去耐性もなくサイズ自体も中途半端なのは欠点です。スタンダードでもそうでしたが、地上生物に対するだけなら《墓所のタイタン》でも間に合っている感があります。
ノーンや執政官と比べるとやはり制圧力が低く、タフネス3以上の生物に対して何の影響もありません。
6マナと比較的軽く、ノーンと違って黒マナだけで素出しできるのが最大の魅力です。
《囁く者、シェオルドレッド》
ノーンと対をなす黒の法務官。除去耐性はありませんがサイズは大きく、沼渡りもレガシー環境ではそれなりに有効でしょう。
毎ターン誘発する強力な除去能力を持ちます。クリーチャーの大群相手には効果が薄いですが、逆に単独ならどんな生物も処分する事ができます。このデッキは他にも生贄除去が多いので、うまくすれば根こそぎ殺戮することも可能かもしれません。
他の生物を蘇生する効果も、オーバーキル気味ですが決まれば勝ちでしょう。インスタント除去で捌かれてしまうと何も仕事をしないのが欠点です。黒マナだけで素出しできるのは魅力です。何よりカッコイイ(笑)。
《背くもの》
通常リアニメイトができるエルドラージの中では最大級です。
クロックも制圧力も強大ですが、何よりその常在効果がデッキと噛み合っていて魅力的です。一応無色マナだけでプレイできますが、流石に素出しは現実的ではありません(笑)。
《浄火の大天使》
かつてはリアニメイトでもよく使われていた枠で。ライフを守り切る効果を持ちます。
特にバーン相手には出せば勝ちぐらいの効果を持ちますが、かなりピーキーなクリーチャーです。
《白金の天使》
結構スゴイことの書いてあるルールブレイカーカード。
ある種のコンボデッキに対してはイオナに匹敵するエンドカードになりますし、ビート系に対しても役に立ちます。
除去耐性皆無で、サイズも小さいのが欠点です。無色7マナは軽くはありませんが素出しの可能性もあります。
《墨溜まりのリバイアサン》
除去耐性と回避能力を兼ね備えたリアニメイトデッキ御用達の魚。単純な打撃力と除去耐性はやはり強力です。
《虚無石のガーゴイル》
今回紹介する中でも特にマイナーで、そして強力な目玉カード。スペルのプレイに特殊な制限をかけるクリーチャーです。
特に《ヴェールのリリアナ》との組み合わせは一種のロック状態を形成します。その効果により、実質的にかなり強固な除去耐性も持ち合わせています。
このデッキと噛み合ったカードだと思いますが、適当に序盤に釣ってもあまり強くないのは難点です。
●マナベースの改造
黒のダブルシンボルを確実に用意するために、あまり沼を減らしたくはないのですが、単色デッキなので他に強力な特殊地形を採用できる余地はあります。
普通にポックスデッキで採用されている特殊地形は、すべて相性が良いと考えられます。
《ミシュラの工廠》
ポックスデッキではフィニッシャーを務めているマンランド。単純に強いカードなので、このデッキでももちろん有用です。
特に苦手な青白奇跡コンに対して有効なカードです。
《リシャーダの港》
マナを縛る事が可能な土地で、土地基盤を攻めるポックスプランを後押ししてくれます。
《The Tabernacle at Pendrell
Vale》
ポックスデッキでも対生物枠として採用されている強力な特殊地形です。
苦手なトークン系に特に有効で、マナを縛っていくポックスプランとの相性は抜群です。
通常マナを生み出すことは出来ませんが、《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》があれば黒マナが出るようになります。
《Lake of the dead》
コストは重いですが、大量マナを生み出せる土地。爆発力が高く、リアニメイト生物を素出しするプランもより明確になります。
土地だけでも3ターン目に6マナを捻出し、《墓所のタイタン》をプレイできる加速力は脅威的です。
他にも《ヴェールのリリアナ》プレイ→生物ディスカードからの《動く死体》、などという動きも簡単にできます。
無色地形を多く採用する場合は、黒マナ源の確保のために《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》の増量も考えたほうがいいでしょう。
元祖ポックスデッキのようにアーボーグ4枚積みもありかもしれません。いずれにせよ、特殊地形を増やせば単純なデッキパワーは高まりますが、安定性の低下は免れえませんので、そのバランスを取るのが肝要です。
●納墓のさらなる活用
現在はリアニメイト生物を墓地に送るだけのカードですが、このカードには他にも様々な可能性があります。
《冥界のスピリット》
元祖ポックスデッキでも採用されている場合のあるシナジーです。
高速デッキ相手のブロッカーなど、早急にクリーチャーが必要な場合に便利です。
また相手がカウンターを持っている場合、納墓は通してリアニメイト呪文そのものにカウンターのターゲットを絞る、というプレイングをしてくる場合があります。そうした場合、相手の裏をついて《冥界のスピリット》を出すことが出来ます。
欠点は、他の生物を墓地に落としてしまうと蘇生が機能しなくなってしまうことです。特に《ヴェールのリリアナ》や《小悪疫》で気軽に生物を捨てられなくなるのは難しいでしょう。
《陰謀団式療法》
普通に有用なスペルなのでそれだけでも採用圏内ですが、納墓から墓地に落としてのフラッシュバックも十分に狙えます。
冥界のスピリットを採用するなら、さらに相性が良くなります。
《ひどい憔悴》、《棺の追放》
どちらかと言えばサイドボード向けですが、フラッシュバック呪文はそもそも自分からカードを捨てていく《ヴェールのリリアナ》や《小悪疫》との相性が良いです。
《ヴォルラスの要塞》
墓地を経由することで実質的に生物をサーチする動きとなります。生物を素出し出来るぐらいマナが溜まった後には強い使えるプランです。
墓地の生物数を調整して《冥界のスピリット》の蘇生条件を満たしたり、墓地リムーブ系カードを回避したりといった動きもできます。
《屈葬の儀式》、《壌土からの生命》、《未練ある魂》
それぞれタッチカラーが必要ですが、《納墓》で墓地に置けば素晴らしい働きをしてくれるスペルです。
●タッチカラーの可能性
現状のデッキレシピは、黒単ならではの強みもかなり大きいと思っています。しかし、レガシーでは多色化も簡単で、可能性は無限大に広がっています。
・タッチ緑
ポックスデッキでもタッチ緑のものは多く、かなり有力な組み合わせです。
《壌土からの生命》はデッキと噛み合っていますし、《突然の衰微》の強さは言うまでもありません。《破滅的な行為》も強力です。
特に衰微によって苦手な《相殺》を克服できるのは大きいです。リアニ生物には素出しもできて除去耐性の高い《スラーグ牙》を採用しても面白そうです。
・タッチ白
《堀葬の儀式》や《未練ある魂》が、デッキと噛み合っていて強力です。
《トロウケアの敷石》も《小悪疫》と相性抜群ですし、《剣を鋤に》のような強力なスペルもあります。
一応、ノーンや灰塵の乗り手を普通にプレイできる可能性も出てきます。
もっとも、多色化するということはそれだけのリスクもあるという事です。
無理に多色化することで事故率も上がりますし、《不毛の大地》や《もみ消し》、《発展の代価》などを受けてしまうようになります。そもそもフェッチランド起動のライフロスもこのデッキでは意外と大きいです。
どこまでリスクとリターンを考えるかは、プレイヤーのセンスとバランス感覚次第です。
●リアニメイトコンボ精度の上昇
黒単色なので、ドローやサーチに関してはあまり有効なカードは使えません。
基本的にコントロールデッキとして振る舞い、グダらせてゲームをスローダウンさせることによって、単純にドロー回数を増やしてリアニパーツを揃えるのがこのデッキのやり方なのですが、このデッキをコンボデッキと見做しサーチカードを重視するアプローチもあると思います。
《女王への懇願》
レガシーでも使える教示者カード。黒単なので3マナでプレイできます。《納墓》でも釣り竿でも何でもサーチできます。
《Grim Tutor》
ライフは必要ですが万能なサーチ呪文。1ターン目に暗黒の儀式からプレイ、という芸当は《女王への懇願》では出来ません。
《リスティックの教示者》
特殊な妨害条件が付いているリスティック呪文。
マナ基盤を攻めるこのデッキなら、そのデメリットを無効に出来るかもしれません。
《血の署名》、《夜の囁き》などの単純なドロー
経験上、自分からハンドを捨てていくポックスデッキとの相性はあまりよく無いと思います。
●サイドボードに関して
現状はでもそれなりに満足はしていますが、他にも試したいサイドプランはあります。
デッキ調整によってはメインへの投入も考えられます。
《虚空の力線》 + 《Helm of Obdience》
サイド後に別の勝ち筋を用意する変則サイドボードプランです。墓地対策をしつつ、サイド後にはヘルムヴォイドコンボで即死を狙えるようになります。
特に《安らかな眠り》を使ってくる相手に対し、友情コンボを決めることも出来ます。
このサイドプランを取るなら、メインに教示者系カードを増やしてもいいかもしれません。
《強迫》などの手札破壊呪文
やはり、コントロールやコンボ相手にハンデスは何枚あっても多すぎることはありません。
《拷問台》、《金切り声の苦悶》、《呪われた巻物》
リリアナで押さえ込んだ後の非生物フィニッシャープラン。リアニメイトを対策されてもこれらでじわじわと締めあげて倒します。
《The Abyss》
クリーチャーデッキへの強力なメタカード。ポックスデッキでもよく採用されています。
《墓所のタイタン》なら自軍への被害もトークンを破壊するだけで済みますし、《ワームとぐろエンジン》ならそもそも対象外と、かなり相性が良いカードです。
《苦花》
コントロールデッキに1枚で勝てる……かもしれないカード。《小悪疫》でサクってもどうせすぐに新しいフェアリーが生まれてきます。
《陰謀団式療法》を採用する場合にも相性は抜群です。
●クリーチャーの素出しに関して
これまでの記事でも、事あるごとにリアニメイト生物の素出しに関して述べてきました。
実際、素出しによる勝利は何度もあり、特にサイド後は重要な勝ち筋になってきます。
特に青黒リアニと比べた場合の、このデッキの明確な差別化&強みの一つだと思いますので、個人的には素出しプランは重視していきたいです。
そもそもこのデッキでは、除去プランをとった場合、土地を並べた後の素出しでも速度としては十分です。
また《グリセルブランド》や《ジン・ギタクシアス》を早期にリアニメイトできたとしても、カウンターが入っていないのでドローしたカードで守り切る、という動きが期待できません。
なので速度よりも、デッキ運用の安定感を考えて、素出しを重視したレシピにするのは大いに有り得ると思います。
●デッキの改造例
今回の内容を踏まえて、以下に、素出しプランを重視した最新のデッキレシピを載せます。
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ポックスリアニ 素出し重視Ver |
22land
11《沼/Swamp》
1《Lake of the Dead》
3《ミシュラの工廠/Mishra's Factory》
3《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ/Urborg, Tomb
of Yawgmoth》
4《不毛の大地/Wasteland》
6creature
1《グリセルブランド/Griselbrand》
1《ワームとぐろエンジン/Wurmcoil Engine》
1《虐殺のワーム/Massacre Wurm》
2《墓所のタイタン/Grave Titan》
1《灰燼の乗り手/Ashen Rider》
32spell
4《思考囲い/Thoughtseize》
4《Hymn to Tourach》
4《小悪疫/Smallpox》
4《暗黒の儀式/Dark Ritual》
4《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》
4《納墓/Entomb》
4《再活性/Reanimate》
4《動く死体/Animate Dead》
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15sideboard
3《虚空の力線/Leyline of the Void》
2《Helm of Obedience》
3《漸増爆弾/Ratchet Bomb》
2《真髄の針/Pithing Needle》
3《無垢の血/Innocent Blood》
2《仕組まれた疫病/Engineered Plague》
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《暗黒の儀式》や《Lake of the Dead》のマナ加速から黒タイタンを高速で出すプレイは爽快です。レガシーでは黒タイタンが着地してしまえば、殆どのデッキに対してそのままゲームエンドを意味します。
マナベースに関しては若干安定感が下がり、初手で黒ダブルが出せないハンドが来る場合が何度かありましたので、アーボーグの増量やミシュラの減量など、もう少し調整したほうがいいかもしれません。
サイドはヘルムヴォイドを搭載してみました。奇跡コンに対してはこちらで勝ちを狙いに行くほうが明確かもしれません。
オリジナルデッキは調整のしがいもあり、手を加えて育てていく面白さもあります。
失敗してしまったらまた元に戻せばいいだけなので、何でも試してチャレンジすることが大事だと思います。
という訳で、4回に渡りポックスリアニを紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
興味を持たれましたら、使って頂けると幸いです。
個人的にはかなりしっくり来るデッキですので、今後も調整を続けながら使い続けていこうと思っています。
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