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石田弘「テーロス—神々の軍勢シールド解説(前編)」
 
text by Hiroshi Ishida 


「テーロス—神々の軍勢シールド解説(後編)」
「テーロス—神々の軍勢シールド解説(実践編)」

「テーロス—神々の軍勢シールド解説(まとめ)」



石田です。

 GP名古屋に向けて、また3月のPTQ行脚での経験を踏まえて、今回はリミテッド記事を書かせて頂くことになりました。
実際、構築よりもリミテッドに力を入れてプレイしていますので、今回のような機会が頂けた事は嬉しいです。

 

 このテーロス—神々の軍勢環境に関しては、完全に個人的感情で言えばあまり好みの環境ではありません。
ですが、トーナメントプレイで好き嫌い言っていても仕方ありませんからね。勝つためには最善を尽くすべきです。

 



 とりあえずシールドに関してはそれなりの好成績を残しておりまして、

 
3/15  GPT名古屋@西尾 3−0−2 SE2没
3/16 GPT名古屋@名古屋 5−2
3/21 PTQM15@長野 8−0 SE2没
3/22 PTQM15@名古屋 5−3
3/23 PTQM15@大阪 4−4

となっております。

 
 自分自身、苦手な環境なのですが、環境理解と勝利のためのコツについて、少しでも皆様のお力になれれば幸いです。

 

 



■テーロス—神々の軍勢環境とは

 まずおおまかに言って、攻撃側有利の環境です。

 ただこれをテンポ環境と言い切っていいのかというとまた難しいので、まずはその辺りから説明していきます。



●除去が弱い!

 テーロス環境を決定づける要員として、除去カードの弱さが挙げられます。どれも重く、また状況を選ぶ限定的な除去ばかりです。

 対して生物は強い上に、授与されてしまったら除去を撃っても攻防の状況が代わりません。

 この除去の弱さが、攻めるデッキが強くコントロールデッキが成立しない要員の一つです。

 神々の軍勢では生物も弱くなりましたが除去も弱くなったので、この構図は何ら変わっていません。








●授与が強い!

 テーロスブロックを代表するシステムである「授与」ですが、これを持っている生物が強すぎます。

 ハンドアドバンテージを稼ぐ手段に乏しいこの環境において、授与は実質的にアドバンテージに直結した強いシステムであり、なおかつサイズアップしながら即時に殴りかかってくるのでテンポ面でさえも優れています。

 ただし、授与コストは重いので(基本的に5マナ以上必要)、本格的に殴りだすのは遅めになります。

 しかし、一度授与された生物のアタックを許したら最後、前述した通り除去が弱いのでそのまま制圧されてしまうことが多いです。

  サイズアップしてそのまま殴ってくるということは、相打ち用に同サイズのブロッカーを立たせておいても無意味になってしまうリスクが大きいという事でもあります。

 こういった様々な要素から、攻め側有利守り側不利の構図が描き出されるわけです。

 そしてビート環境にも関わらず、授与するために多くの土地が必要……という、テンポ環境と言い切っていいのかわからない独特なスピード感の環境になっています。






●レアに対処不可能!?


 除去が弱いということは、相手の脅威に対処しづらいということです。

 つまりはレアにも対処しづらく、いわゆるレアゲー・ボムゲーを許してしまうことが多いです。

 ちなみにテーロス環境も最近のリミテッドの例に漏れず、概ねレアリティがそのままカードパワーに直結しています。

 特にレア生物など、コモン生物と比べて異常にパフォーマンスが高いものが多すぎます。

 レアに手も足も出せず蹂躙される、などという展開は日常茶飯事です。






●事故環境!?

 もちろんリミテッドと言うものは常に事故と隣り合わせなのですが、ことテーロスにおいては事故ゲーで終わってしまう展開がかなり多いです。

 実際に自分もPTQでは事故って負けた試合もありますし相手の事故で勝った試合もすごく多いです。

 

 これはなぜかといえば、まずはこれまでに説明した要素がそのまま影響しているからです。

 

 攻撃側有利で受けの呪文が弱すぎるということは、つまり逆転の機会が訪れないことを意味します。
少しでも土地が詰まってしまったり、逆にスペルが足りなければ、そのまま盤面で押し潰されて終わってしまうわけですね。

 授与以外でもこの環境ではパワー≧マナコストの生物も多く、少しでもゲームが傾くと一瞬で終わってしまいます。
レア1枚でゲームの趨勢が決まってしまうレアゲーも、防ぐことが困難です。

 

 またシンボルの濃さも事故率の高さに直結しています。
この環境では信心というシステムのためでしょうか、色マナシンボルが濃いものが多く、序盤からダブルシンボルを要求されることが多いです。

 これにより、いわゆるカラースクリューで事故負けという展開が多くなっています。



 英雄的というメカニズムに関しても、事故率を高める要素があります。

 英雄的とは基本的にそれ1枚では成り立たず、他のカードと組み合わさって初めて誘発するものです。

 ですから、どこまでも噛み合いが要求されるわけで、対応スペルが引けなければ能力が発揮できないまま終わってしまいます。

 超強力な《密集軍の指揮者》も、英雄的できなければただの1/1バニラですからね……。



 もう少し突っ込んで見ていきますと、この環境、どちらかといえばマナフラッドには寛容ですがマナスクリューには情け容赦ないです。


  マナフラッドした場合には授与コストで唱えたり、怪物化にマナを注いだりして誤魔化せますが、マナスクリューした場合には成すすべなく相手の攻勢に身を晒すしかありません。

 普通、マナスクリューした側はアド損してでも相打ちを取るなどして時間を稼げば、ハンドはすべてスペルなのですから巻き返しも狙えるのですが、この環境ではそれも難しくなっています。

  重ね重ね言いますが、除去が弱く、また重いので盤面の脅威を簡単に取り除けないのです。









 また授与というシステムが攻め側に圧倒的に有利で、サイズが上がるので相打ちも取りにくいうえに、仮になんとか対処できてもまだアタッカーが残ってしまうので攻勢が終わりません。

 そして仮に、マナスクリューして動けないでいても、相手もクロックを出していなければゲームは長引くだけなのですが、この環境ではそのような状況はほぼ起きないです。

 なぜなら、基本的にこの環境では攻めるデッキを組んだほうが強く、除去カードを入れるよりもクリーチャーを多く入れる構築になりがちなので、どんな相手でもクロックを次々と出してくるからです。
これらの要素から、マナスクリューした側はほぼそのまま負けで終わります。

 
このように、様々な要素が絡み合って事故率が高くなっており、また事故から復帰するまでの時間的猶予も与えられないので事故を起こしたらすみやかに勝負が終わってしまうのです。

 この環境は事故で決まる試合が多い——これも、体感だけではなく真実だと思います。





■それを踏まえて、どうデッキを組むか?

 レアゲーとか事故ゲーが多いのは事実ですし、ドブンされて攻勢をかけられれば終わってしまうのも真実ですが、それはそれです。
それを理解した上で最大限に勝てるデッキを構築するのが、我々プレイヤーに課せられた使命でしょう。

 そこで今環境に対する自分の考えや勝つためのテクニックをざっと羅列していきます。





■デッキ構築編

●まずレア、アンコモン。あるいは授与の枚数

 身も蓋もない話ですが、この環境の高レアリティカードは単純に強く対処が難しいです。
困ったらレアリティの高い強カードをなるだけ多く運用できるように組むのが早道です。



  また同様に、授与を持つカードも極めて強力です。

 授与カードの枚数はそのままデッキの強さだけでなく柔軟性までをも高めてくれますので、授与をできるだけ多く使えるデッキを組み上げるのも意識した方がいいでしょう。






●除去はデッキになくてもいい

 基本的なリミテッドの話をすれば、除去カードとは強力なもので、タッチしてでも入れたい重要なカードです。
 
 ですがことテーロス環境においては、除去はなくても大丈夫です。自分もデッキ内に除去0枚で組み上げる事もざらで、それでも勝利できます。

 この理由としては基本的に除去カード自体のパワーが弱すぎて採用に値しないものが多い、というのと、除去カードが信頼出来ない、というものがあります。

 簡単な話、この環境の王道である授与ビートに対して、除去カードは対応できないぼやけたカードになってしまっているのです。
それなら自分も強力なクリーチャーを出すか、授与して殴り返してダメージレースに持ち込んだほうが勝ちの目が大きくなります。






●飛行が通りやすい環境

 神々の軍勢が入ったことにより、テーロスで特定のカードが出難くなりました。
その影響で、飛行生物が止まりにくくなっています。

 具体的に言えばこの環境を代表する神コモン《ネシアンのアスプ》の出現率が半分になったわけで、飛行はかなり信頼できる回避能力になったと言えるでしょう。








●エンチャント除去をメインに何枚採用するか?

 テーロス*6の時は入れ得感すらあったエンチャント除去カードですが、これも神々の軍勢参入により事情が変わっています。

 コモンの強力な授与カードやアンコモンの「試練」「使者」シリーズの出現率が下がったこと、またエンチャント・クリーチャーを主力としない赤が大幅に強化されたことで、デッキ内のエンチャント率が下がっています。

 そういった相手と当たった時に、エンチャント除去は無駄牌になってしまう可能性が大きくなりました。
個人的な体感ではメイン1枚までは入れるべきだと思いますが、2枚目以降はサイドボードでも十分だと思っています。

 ただしこれは個々のカードパワーのレベルの問題もありますので、《古代への衰退》《存在の破棄》の2枚はなくともインスタントタイミングの《破壊的な享楽》《霊気のほころび》ならメイン2枚いれてもいいと思います。






●無理に英雄的を狙いすぎない

 むろん、これもデッキ次第ですが……。英雄的を誘発させるために弱いカードを入れるのは、止めたほうがいいです。

 具体的には代表的な英雄的クリーチャー《天馬の乗り手》の英雄的を誘発させるためだけに《一過性の知力》などの噛み合わないカードをいれるのはいかにもナンセンスです。

 実際これは、やっていることはカード1枚使って+1/+1カウンターを乗せているだけですからね。






●タッチすべきか否か?

 シールドでの常套テクニックである3色目以降のタッチ。この環境でも、タッチをしたくなるカードは多いです。

 特にアンコモンの強力授与「使者」サイクルはシングルシンボルなのでタッチに適していますし、マルチカラーカードにも魅力的なパワーカードが多いです。

 そもそも授与カードはその多くがタッチに値する強力なカードで《雨雲のナイアード》や《希望の幻霊》はコモンながらタッチする価値があります。

 ですが最初に述べたように、この環境は事故環境です。マナトラブルの可能性を引き上げるタッチ構築は、確かにデッキパワーは上昇しますが事故のリスクも上がります。

  そのリスク・リターンを考え、バランスを考えて行うべきでしょう。

 個人的には、デッキ内にダブルシンボルカードが複数枚あるときはタッチはやめたほうが懸命だと思います。
この環境はビート優勢で早いので、タッチカードをプレイできるようになる前にゲームが終わってしまう可能性が高いです。

 レアの土地サイクルや《ナイレアの存在》などでタッチしやすい場合には、事故のリスクも少なくなるのでタッチ構築が正当化されやすいです。



後編に続く。

 
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