GP名古屋では、これまでのGP同様に二人のアーティストが来日する。ここで、改めてアーティストがGPへ来ることの意義・イベントの概要について説明しよう。
マジックを含むトレーディング・カードゲームよりも古くから、世界中の人々に親しまれ収集され続けているカードがある。スポーツ選手や映画スター、コミックのワンシーンなどをカードにしたトレーディング・カードだ。
このトレーディング・カードは、全ての種類をコンプリートしても、更なる高みとして「サインド」というものがある。例えば現役メジャーリーガーのカードをコンプリートしたならば、次はそのカードを持って球場に行き、実際にその選手にカードにサインをしてもらう。他人と差をつけたいコレクターにとっては、これ以上ないものである。このカードにサインを行うという概念は、マジックにもそのまま持ち込まれた。
マジックのカードは、そのイラストなしに語ることは出来ない。自分の気に入った1枚にサインをもらうならば、そのカードの顔であるイラストの製作者に…という訳で、マジックではアーティストにカードにサインをしてもらうことが一種のステータスとなった。
黎明期は、街のカードショップやゲームセンターなどでアーティストを招くという小規模のイベントが行われていたようだ。マジック自体の人気が爆発し、GPなどの大規模なイベントが行われるようになると、プレイヤーへのサービス・恩返し的な意味合いも込めてそれらのイベントの主催者がアーティストを招き、場内でブースを設けてサイン会などのイベントを行うようになった。
これがマジックファン達にとってもアーティストにとっても好評となり、GP=アーティスト・イベントがあるという流れが途絶えることなく現在まで続いている。
実際のイベント流れとしては、午前・午後と決められた時間にアーティストがブースにて無料でサインを受け付けるという形式が主流となっている。数百人、時には千人を超えるファンが持ち寄る数枚のカードにサインを行うだけでも、アーティストにとっては大変な仕事である。時間や人数に制限が設けられるのもやむを得ない事なのだ。限られた時間のうちに確実にサインをもらうため、サイン会が開始される1時間ほど前から並ぶファンの姿も、今ではGPの風物詩となっている。
サインをもらう際に、アーティストの遊び心・コレクターの要望などで、その場で簡潔にイラストに手心を加えてもらうという流れが出来た。
例えば、「《ネクロポーテンス》の髑髏をサムライにして!」といったように。他の業界にはない、アーティストがイラストにサインを行うという世界ならではの楽しみ方だと言えるだろう。
現在のイベントでは、極々簡単なものならサインの際にリクエストすれば受け付けてくれることがある(勿論、長蛇の列の際にはファンのことを考えて断られることもある。)ので、チャンスがあればお願いするのも良いだろう。
しっかりとした描きこみ、所謂「拡張アート」なども、アーティストによっては受け付けている。こちらは既定の金額を払って依頼したり、アーティストのコピー原画・作品などを購入した際にサービスで行ってくれることがある。アーティストのブースに説明が掲示されていると思うので、GPの合間に時間があればチェックしておこう。
アーティスト自身も、独自の文化・美意識を擁する日本を訪れ、そこでファンとコミュニケーションをとることはエキサイティングな経験のようで、皆楽しみ似ているようだ。ここで、今回来日するアーティストについて紹介しよう。
Eric
Deschamps
参戦はM10からと比較的最近ではあるが、《天界の列柱》《核の占い師、ジン=ギタクシアス》《情け知らずのガラク》《ラル・ザレック》《太陽の勇者、エルズペス》など、セットの目玉・主役級のカードを手掛ける、今一番旬なアーティストの一人であるEric
Deschampsは、SF・ファンタジーものイラストレイターであり、テレビゲームのコンセプトアートも手掛けている。アーティスト歴は10年で、そのキャリアの中で上記のようなゲーム関係は勿論、出版や広告会社からの依頼も受けてきたようだ。
彼のイラストは'Spectrum: Best In Contemporary
Fantastic Art'というその年を代表するSF・ファンタジーのイラストをまとめた画集に、5回も掲載されている。また、最近ロサンゼルスのイラストレイター協会'Illustration
West Annual'より、エリックの作品に対して銀賞および選外佳作を授与されている。マジックの世界のみならず幅広い分野で、大物アーティストとして活躍することが期待されている人物である。
Igor Kieryluk
同じくマジックへの参加は「エルドラージ覚醒」からと、まだキャリアは短いながらも《静寂の守り手、リンヴァーラ》《大修道士、エリシュ・ノーン》《聖トラフトの霊》《グリセルブランド》といった、カードとしても強力な神話レアのイラストを担当している。表現技法に溢れ出るオーラのようなものを用いて、一度目にすると忘れられない幻想的なシーンを描いている。醜悪なクリーチャーから美しい天使たちまで、描くものを選ばないスタイルで今後もマジックの歴史において重要なカードを手掛けていくことだろう。
最新のイラストは「ジェイスVSヴラスカ」より、2枚看板である両プレインズウォーカー。特に《思考を築く者、ジェイス》は、これまでまた違ったイメージのジェイスを描き、マジックの主役の新たな一面を引き出している。
GP名古屋では、各種イベントの景品に予定されているオリジナルプレイマットのイラストも手掛けている。そのため、サイン会は行列必至だ。
以上、アーティスト・イベントおよびGP名古屋で来日するアーティストを簡単に紹介させてもらった。興味が出た方は、是非GP名古屋へ!この記事では、後日アーティスト・インタビューなどの記事も掲載していく予定なので、こうご期待!
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