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益山 拓也『GP名古屋レポート-ジャッジのお仕事-』 
 
text by Takuya Masuyama 

  初めまして!主に関西で活動をしております、レベル2ジャッジの益山と申します。今回は僕の視点からのGP名古屋体験記をお届けしたいと思います。どんな風にGPが運営されているのか少しでも伝われば嬉しいです。


・そもそもどんなことをやってるのか?


 GPのような大規模イベントと、普段お店でやっているイベントの一番の違いは「人数が多いこと」です。で、人数が多いとどうなるのかというと、普段のイベントではジャッジやスタッフが一人でやっていることをチームに分かれてそれぞれ担当するようになります。ではどんなチームがあるかを簡単に説明していきましょう。


ペーパー・チーム
ペアリングや順位表の掲示、結果記入用紙の配布などを担当するチームです。紙を扱うのでペーパー・チーム。わかりやすいですね。

デッキチェック・チーム
競技イベントに欠かせないデッキチェックを担当するチームです。2000人近い参加者のトーナメントともなるとデッキリストの枚数も膨大になるので、管理には一工夫必要です。

フロア・チーム
プレイヤーのジャッジコールに対応するチームです。ただこのチームだけが対応するわけではなく、他のチームも手が空けばフロア・チームと同じ仕事をします。

ロジスティック・チーム
その他にトーナメント進行に必要な事をこなす何でも屋的チームです。そしてリミテッドのGPではプレイヤーにパックを配布するとても重要な仕事も担当しています。

ヘッドジャッジ
一番偉いジャッジです。トーナメント全体の進行と、ルールやペナルティの裁定の最終決定を担当します。プロツアーやGPのヘッドジャッジは普通のジャッジを違って赤いシャツを着ているのでとても目立ちます。GPのヘッドジャッジは高レベルのジャッジが担当するので、海外からレベルの高いジャッジが来日して担当しています。

スコアキーパー
結果記入用紙に書かれた結果とペナルティの入力を担当します。毎ラウンド数百枚の結果記入用紙を正確に素早く入力しないといけない超人的なスキルを要求される仕事です。

 大体こんな感じで役割が分かれています。そして各チームはリーダーがいて、チーム内の役割の指示や休憩の割り振りなどを決めています。併催イベントにも(規模が小さくなりますが)同じように担当するジャッジがいます。それでは説明はこれぐらいにして、実際のレポートに行ってみましょう。



・金曜日

 僕は13時からのシフトだったので朝に新大阪から新幹線で名古屋入りしました。当然到着した段階でラストチャンスGPTが何個か行われているので、全体の流れの説明を受けて早番のチームと合流。やはり本選と同じフォーマットが人気で、立っているトーナメントはシールドばかりでスタンダードは参加者が埋まらず待機状態のようでした。「そらみんなシールドの練習したいよなー」と、「スタンダードのデッキを持ってきてる人は少ないんやな」という2つの感想を抱きました。これが実はフラグで、後でえらい目にあってしまいました(笑)。

 金曜日にはGPTの他にもヴィンテージ、デュエルコマンダー、Foil争奪スタンダードの3つのトーナメントがあって、僕はスタンダードのヘッドジャッジを担当することになっていたので、GPTのジャッジの合間にその準備を進めて行きました。準備内容はプレイエリアの確認、ペアリング掲示用のホワイトボードの設置、テーブルナンバーの配布、他のスタンダード担当のジャッジとの打ち合わせなどです。

 「スタンダードでGPTも立ってないし、これは大して人数来ないかもしれんな、楽勝やな!」などと思っていたら、参加者はどんどん増えて最終的に79人ものプレイヤーにご参加いただきました。前日受付の後にスタンダードで遊んで帰ろうという方が多かったのかもしれません。

 ともあれトーナメントが始まったのですが、開始時のアナウンスでテンパって言い忘れがあったり、海外プレイヤーがいるので英語でのアナウンスをしなければいけなかったりで、参加された方にご迷惑をかけてしまいました。トーナメント自体はスムーズに進行して、想定していた時間に終了できたのですが、賞品の受け渡しで行列ができてしまったのも反省点です。今後機会があれば改善していきたいところです。

 さて、全てのトーナメントが終わってもそれでおしまい、ではなく明日の準備があります。今日のトーナメントで使ったテーブルナンバーを回収して本選用のテーブルナンバーを置いていき、プレイヤーが朝一に来て座れるよう座席表を掲示して準備完了。時計を見ると23時!急いでホテルにチェックインして、先に晩飯に行っている人達と合流して飯を食って、そのままなだれ込むように就寝。



・土曜日


 寝る場所が変わるとあまり眠れない性質なので、2時間ちょっとぐらいしか眠れず起床。土曜日の担当は併催イベントで、その後8人イベントの応援に行きました。主に忙しかった8人イベントのほうを説明したいと思います。GP本選が主役ならば、8人イベントは裏の主役とでも言うべき人気イベントです。おそらく延べ参加人数はGP人数を上回っていると思います。しかしその性質上一度に全部が行われるわけではなく、絶えず新しいトーナメントが立ち、古いトーナメントが決着し終わりを迎えていきます。それはまるで輪廻の輪、繰り返される死と新生!  ではそんな8人イベントでジャッジが何をしているかを説明したいと思います。





席管理
どの席で何の8人イベントが行われているかを管理し、次のラウンドを別の席に移動する必要があればその指示や、空いている席で新しいイベントを立ち上げる指示を出す司令塔の役割です。8人イベントに割り当てられた席数は限られているので、高度なマネージメント能力が要求されます。

勝敗管理
進行中のイベントのラウンドを管理し、プレイヤーの結果報告を受け付けたり、終了したイベントの賞品の受け渡しなどを担当します。

案内係
席管理の指示した席にプレイヤーを案内し、ペアリングやトーナメントの説明を行う係です。混雑時には案内する→受付に戻る→次のプレイヤーを案内する、の無限コンボによって喉と足に大ダメージを食らうハードな役割です。

  今回のGP名古屋では、前回のGP静岡の8人イベント数の世界記録を更新して400卓以上の8人イベントが行われました。ここ最近の記録更新ラッシュの原動力はなんと言っても特製プレイマット存在が大きいと思います。先日行われたBMOでも8人イベントは大盛況で、土日で合計272卓の8人イベントが行われたくさんの方にご参加いただきました!

 余談ですが8人イベントにこれだけ人が集まるのは世界でも日本だけなのだとか。日本での8人イベントの人気がうかがえるデータですね。



・ジャッジと休憩

 ジャッジも動きっぱなしでは死んでしまうので、順番に休憩をしています。会場にはジャッジ控え室があって、基本的にそこで休憩や食事をしているのですが、大体の場合テーブル上には各自の持ち寄ったお土産が散乱してカオスな状態になっています。日本各地はおろか海外のジャッジが持ってきた謎のお菓子や、もはや食べ物であることを放棄した食玩のたぐいまで様々な物が置かれています。ちなみに今回僕が持って行ったのは新大阪で買った豚まんでした。一部のジャッジには好評だったようです。



 
 ジャッジが休憩中に控え室の外に出る場合は、ジャッジシャツの上に何か羽織っています。そういうジャッジを見かけたら「ああ、こいつは今休憩中なんやな」と生暖かく見守ってあげてください。というわけで僕も休憩中に会場を見て回ることにしました。今回の会場を見て思ったのは「食い物が充実している」ということでした。最近のGPではおなじみの牛丼に加え、コンビニに行くのではなくコンビニを呼んでくるという逆転の発想。驚きです。そして屋台まである! 

 これはテンションが上がります。GPというのはやはり「お祭り」だと思うので、こういったマジック以外でもお祭り感が出るような催しはとてもいいと思います。あとは会場に食べ物が充実していると近くのコンビニまで行かずに済み、次のラウンドに遅れてしまうプレイヤーが出る可能性が減るのもジャッジ的にはいいことだと思います。




  土曜日の夜には、ほぼ全てのジャッジが参加しするジャッジディナーと呼ばれる宴会があります。一緒に食事をすることは、一緒にマジックをプレイするのと同じぐらい素敵なコミュニケーションの方法なので、日頃交流する機会のない離れた地域のジャッジや海外ジャッジとも親しくなるチャンスです。お酒も入っているので飲み会のテンションになるわけですが、GPはもう1日残っています。各自明日に引きずらない程度に自重して撤収していきます。





・日曜日

 相変わらず余り眠れず。朝からエナジードリンクやら目が覚めるドリンクやらをがぶ飲みして会場に向かいます。日曜日の担当は本選のペーパー・チームでした。GP2日目のジャッジをするのは初めてなので緊張しますが、労力的には土曜日のほうが断然上なので落ち着いてやれば大丈夫のはずと自分に言い聞かせて臨みました。チームでミーティングをして、座席表を貼ってプレイヤーの入場を待ちます。賞金に関する書類を記入してもらい、他のチームが回収している間に、ペーパー・チームはドラフトポッドの組み合わせを掲示していきます。ドラフトポッドにプレイヤーが移動して、いよいよドラフトが始まるのですが、使用されるパックは通常の物とは違って事前に開封して中身をチェックし、カードにスタンプが捺されたものが使われます。これらのカードは「スタンプ付き」として一部のコレクターに人気があります。

 2日目に残ったプレイヤーは流石に経験豊富で、僕の関わった範囲では大きなトラブルもなくジャッジコールは英語のテキストが見たいという海外プレイヤーのものが中心でした。印象に残ったコールは、海外プレイヤーがデッキ構築の時に「コレクター番号で普通のカードはリスト埋められるけど、基本土地はどれがどれか分からない」というのがありました。たしかに基本土地の欄にはコレクター番号は書いてないので、確かに!  という感じでした。

 日曜日の仕事はスイスラウンド終了時点でお役御免となったので、夜から開催されたジャッジカンファレンスに参加してきました。ジャッジカンファレンスとは一体何ぞや?というと、簡単にいうとジャッジの講習や意見交換、反省会を行う集まりです。内容もGPに初めて来るジャッジ向けの講座から、ルールの勉強の仕方、今回のGPの反省会など様々です。そしてカンファレンスに出席するとなんとジャッジFoilがもらえるのです!

  自分のジャッジスキルの向上もできて、さらにご褒美までもらえる夢のような企画です。海外では今までも行われていたのですが、日本では今回が初めの開催となります。このカンファレンスで出された意見や改善案は後でまとめられ、ジャッジやトーナメント主催者にフィードバックされて今後のイベントの運営の参考にされます。

 ジャッジFoilが話に出てきたので、どのように配られているかについても少し説明します。ジャッジFoilはGPやプロツアーでジャッジをした報酬として配られるプロモカードです。




 このようなオレンジの封筒に入れて渡され、中身には6枚のカードが入っています。今回配られたのは《実物提示教育/Show and Tell》、《圧倒的武力/Overwhelming Forces》、《起源/Genesis》、《名誉回復/Vindicate》、《幽霊の酋長、カラドール/Karador, Ghost Chieftain》、《納墓/Entomb》の6枚。こういうカードがもらえることはやはり励みになりますね!

  というわけで、簡単にですがGPでジャッジが何をしているかというのを1ジャッジの視点からお送りしました。もちろん僕個人からの視点なので、今回割り当てられていないチームの仕事や、チームリーダーの視点ではもっと違ったものが見えていると思います。もしジャッジに興味を持った方がおられましたら、是非皆さんの地域のジャッジに問い合わせてみてください。きっと力になってくれるはずです。それではどこかの会場でお会いしましょう!


 
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