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by Sawada Ken
はじめまして。澤田健です。
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、先日のグランプリ神戸2014にて、僥倖にも5位入賞という成績を収めることができました。
今回はご縁あって、その時に私が使用した「風景の変容」というデッキについて、その選択に至った経緯や調整の内容について記事を書かせていただきました。
以下が、私がグランプリ神戸2014で使用したデッキのリストです。
①GP神戸2014本戦で使用したデッキリスト
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sample deck |
25land
4 《島/Island》
4 《蒸気孔/Steam Vents》
4 《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》
3 《森/Forest》
3 《霧深い雨林/Misty Rainforest》
2 《山/Mountain》
2 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート/Valakut, the
Molten Pinnacle》
1 《繁殖池/Breeding Pool》
1 《溢れかえる果樹園/Flooded Grove》
1 《神秘の神殿/Temple of Mystery》
6creature
4 《桜族の長老/Sakura-Tribe
Elder》
2 《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》
29spell
4 《稲妻/Lightning Bolt》
2 《呪文嵌め/Spell Snare》
4 《深遠の覗き見/Peer Through Depths》
4 《差し戻し/Remand》
3 《時間の把握/Telling Time》
1 《撤廃/Repeal》
2 《木霊の手の内/Kodama's Reach》
2 《明日への探索/Search for Tomorrow》
4 《風景の変容/Scapeshift》
3 《謎めいた命令/Cryptic Command》 |
15sideboard
2 《自然の要求/Nature's Claim》
1 《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》
3 《否認/Negate》
2 《古えの遺恨/Ancient Grudge》
2 《紅蓮地獄/Pyroclasm》
1 《不忠の糸/Threads of Disloyalty》
1 《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》
3 《強情なベイロス/Obstinate Baloth》 |
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②このデッキを選択した理由
グランプリ神戸で使用するデッキを選定するにあたって、環境のtop3デッキと呼ばれる双子、黒緑ミッドレンジ、親和の使用感を確かめるところから開始しました。その結果、以下のようなことを感じました。
双子
親和やメリーラポッドにはメインボードの相性は有利。サイド後は微有利。
除去の多い黒緑ミッドレンジやトリココントロールなどにはコンボで勝つのは難しい。サイド後はコンボ要素を排して青赤コントロールとして立ち回ることが多い。青赤2色、青赤タッチ緑、青白赤など各種バリエーションを試したが、純正2色バージョンが一番強そう。
黒緑ミッドレンジ
妨害手段が多く双子やストームなどのコンボデッキに有利だが、1:1交換が基本のため親和や白黒トークンなど展開力に優れるデッキに不利。トロンや風景の変容などマナランプ系のデッキも、トップデッキされたカードのパワー差で圧殺されてしまう。いずれのマッチでも攻めるためのカードと妨害のためのカードをバランスよく引く必要がある。《思考囲い》《コジレックの審問》などを使って相手のゲームプランを予想しながら柔軟に戦えるので、腕に自信のある強豪はこのデッキに流れそう。グランプリ本戦での最多勢力になると予想。
親和
相手の動きに干渉する手段がメインボードに少ないので、序盤で押し切れないと各種コンボデッキに簡単に負ける。黒緑ミッドレンジ系のデッキには有利に戦える。《鋼の監視者》や《頭蓋囲い》など特定のカードに依存した戦略を取るため、要所で妨害を受けると脆い。ほとんどのデッキがサイドボードに対策カードを用意していて、それらが致命的に刺さる場合が多い。
この過程で、双子、黒緑ミッドレンジ、親和のいずれのデッキも、互いに明確に有利・不利なマッチアップとなっていることを再認識しました。この三角形の関係を覆すような画期的なアイディアが浮かばず、これら3つはできれば回避したいところでした。
一方でtop3のいずれにも《突然の衰微》や《流刑への道》などの単体除去が非常に有効であるため、これらを使用できるデッキが台頭、さらには単体除去が効きにくいデッキがそれらを食う、という未来が予想できました。
これらの理由により
・ トップデッキすれば1枚で勝てる、もしくは逆転できるカードがある
・ 双子、黒緑ミッドレンジ、親和は回避したい
・ 相手の単体除去が効きにくい
の3点を備え、なおかつ根源的なデッキパワーが十分に足ると思われるデッキを検討した結果、風景の変容が最適と判断しました。
風景の変容は日本国内のPTQでは目立った成績を残していませんでしたが、海外で開催されたグランプリでは優勝していましたし、MOでも一定の勢力を築くなどデッキパワーは十分だと思いました。環境top3のデッキに対する相性差は4:6~6:4程度であって圧倒的な有利が付く訳ではありませんが、メリーラポッド、トリココントロール、白黒トークンなどtier2以下のデッキの多くに明確に強いため悪くない選択です。黒緑ミッドレンジの大半がタッチ赤からタッチ白に推移し、このデッキが苦手とする《塩まき》や《殺戮遊戯》が環境から減少したことも追い風でした。
なお風景の変容と並んで最後まで候補に残ったのが、緑赤トロンでした。
緑赤トロンはきちんと回った時の破壊力は一線級ですが、ドローが噛み合わないと何がしたいのかよくわからないデッキです。ラウンド数が増えるほど事故負けの確率は上がってしまうので、グランプリという長丁場の大会に持ち込むにはその点はマイナスに働きました。メタゲームの立ち位置から言っても、双子と親和への相性が厳しく、本来は有利だった黒緑ミッドレンジもメインボードから《大爆発の魔道士》と積む構成が流行の兆しを見せたこともあって、このデッキは選択肢から外しました。
デッキの調整
調整を開始するにあたって叩き台として用意したのが、今年の5月に開催されたグランプリミネアポリス2014でJun
Young Parkが優勝したデッキリストです。今回のグランプリで同様のデッキを使用した型のほとんどが、このリストもしくはこれに近い構成のデッキを参考にしたのではないでしょうか。
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Grand
Prix Minneapolis 2014 Champion
Jun Young Park |
24land
1 《繁殖池/Breeding Pool》
1 《滝の断崖/Cascade Bluffs》
1 《溢れかえる果樹園/Flooded Grove》
3 《森/Forest》
1 《ハリマーの深み/Halimar Depths》
3 《島/Island》
2 《霧深い雨林/Misty Rainforest》
2 《山/Mountain》
4 《蒸気孔/Steam Vents》
4 《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》
2 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート/Valakut, the
Molten Pinnacle》
7creature
4 《桜族の長老/Sakura-Tribe
Elder》
3 《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》
29spell
3 《謎めいた命令/Cryptic Command》
2 《電解/Electrolyze》
3 《イゼットの魔除け/Izzet Charm》
4 《差し戻し/Remand》
2 《撤廃/Repeal》
4 《風景の変容/Scapeshift》
4 《明日への探索/Search for Tomorrow》
4 《血清の幻視/Serum Visions》
3 《時間の把握/Telling Time》
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15sideboard
2 《自然の要求/Nature's Claim》
1 《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》
3 《否認/Negate》
2 《古えの遺恨/Ancient Grudge》
2 《紅蓮地獄/Pyroclasm》
1 《不忠の糸/Threads of Disloyalty》
1 《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》
3 《強情なベイロス/Obstinate Baloth》 |
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親和、BGへの有用性を特に重視して各種カードを選択した結果、元のリストから次のようにメインボードのカードを入れ替えることにしました。
-《イゼットの魔除け》《電解》→《稲妻》
除去したいクリーチャーを親和の軽量クリーチャー(《大霊堂のスカージ》《鋼の監視者》など)、《闇の腹心》、《漁る軟泥》に絞った結果、後手の1ターン目から使える《稲妻》のみに統一しました。《イゼットの魔除け》や《電解》の汎用性は魅力的ですが、マナ加速やドロー操作など積極的に行動しながら相手のカードに対処していく必要があるので、除去カードのマナコストの軽さを優先しました。
-《血清の幻視》→《深遠の覗き見》
カード一枚一枚で探せる枚数を考えた結果です。対黒緑ミッドレンジ戦ではトップデッキ対決になりやすいことから、後半にドローしたカードが《風景の変容》に繋がりやすい《深遠の覗き見》を優先しました。基本的に序盤に欲しいカードは土地を並べるカードだけですので、占術もシナジーとして弱いと感じました。
-《明日への探索》→《木霊の手の内》
対黒緑ミッドレンジ戦を練習していた時の負けパターンの多くが、手札または土地のリソースがたった1枚だけ足らず《風景の変容》が使えなくて負け、というものでした。そこで何かしらのアドバンテージを得るカードが必要と思い、《明日への探索》を一部《木霊の手の内》にしました。
-《呪文嵌め》の採用
《稲妻》4枚だけでは、1ターン目のアクションが足りず、《呪文嵌め》を2枚採用しました。
現在、BG系の《タルモゴイフ》、《闇の腹心》や双子の《差し戻し》、親和の《頭蓋囲い》、《アーティファクトの魂込め》など対象には困らず、妨害としてはメタゲームに最も一致したカードだと思ってます。
近くの店舗の大会での調整とMagicOnlineでの調整を重ねて、カレンダーは海の日の頃に。
③一番考慮した仮想敵とそのデッキに対する対策
最も意識したアーキタイプは親和です。
基本セット2015の参入により《アーティファクトの魂込め》が加わったことで、親和が横に並べるデッキから、強烈な一点突破で勝つデッキに変わりました。これに伴い、対策方法を再考する必要に迫られました。
《アーティファクトの魂込め》 (付きのアーティファクト)に速やかに対処しなければゲームエンド。この事実により、環境の単体除去が一気に選別されました。例えばメインボードに採用される例を挙げると、《稲妻》(スタック上のみ)、《突然の衰微》、《流刑への道》、《四肢切断》、《蒸気の絡みつき》。これらが無理なく唱えられるデッキだけが親和相手に互角以上に戦える状態になりました。最低限サイドボードに、できればメインから《アーティファクトの魂込め》を確実にかつテンポロスなく対処できるカードを採用する必要があったのです。
その結果、サイドボードのうち
2《古えの遺恨》
2《自然の要求》
を確定させることができました。
本来は《自然の要求》は《クローサの掌握》と悩んでいた枠だったのですが、これでは親和相手に重過ぎて役に立たないということで迷う余地がなくなりました。
また親和を意識したことにより、一般的に良く採用される《神々の憤怒》ではなく《紅蓮地獄》の採用を決めました。これもスピード重視の結果です。《アーティファクトの魂込め》と直接関わりはありませんが、序盤のダメージを1ターンでも減らして中盤以降の強襲に備えたかったのです。
これらの調整によって、親和への相性がメイン4;6からサイド後は6:4に改善できることが分かり、デッキが一気に締まりました。ただしそれでもトップスピードの親和には太刀打ちできず、グランプリ本戦では親和に2回当たり共に0-2で負けてしまいました。
④モダンの4強デッキと意識していたデッキに対するサイドボーディングを教えてください。
ゲームプラン等、一言簡単な解説もお願いします。
■BG
サイドin
3《強情なベイロス》
1《仕組まれた爆薬》
1《不忠の糸》
サイドout
4《差し戻し》
1《謎めいた命令》
黒緑側は《思考囲い》などで安全確認してから行動してくるので、打ち消し呪文を構える時の裏目が大きいので抜いてしまいます。このマッチではマナ加速など自身のターンに積極的に行動する必要があるので、打消し呪文を構える余裕がないのもそれらをサイドアウトする理由の一つです。なお《不忠の糸》は第2ゲームで見せたら、第3ゲームではサイドボードに戻して《謎めいた命令》と変えます。対戦相手があわてて《突然の衰微》をメインボードに戻すようなら儲け物と考えてください。
■親和
サイドin
2《自然の要求》
2《古えの遺恨》
2《紅蓮地獄》
1《仕組まれた爆薬》
サイドout
4《差し戻し》
3《謎めいた命令》
《信号の邪魔者》《鋼の監視者》《エーテリウムの達人》《アーティファクトの魂込め》《頭蓋囲い》など、ダメージクロックを大幅にアップさせるものを対処できれば、相手は一気にスローダウンするはずです。除去の対象はこれらに絞ってください。除去を2回使って時間を稼ぐことができれば、きっと風景の変容のマナ域に辿り着けるでしょう。
■双子
サイドin
3《否認》
2《自然の要求》
1《仕組まれた爆薬》
1《ヴェンディリオン三人衆》
サイドout
2《稲妻》
2《木霊の手の内》
2《明日への探索》
1《謎めいた命令》
負けパターンはあっさり双子コンボが決まってgg、というより、《瞬唱の魔道士》と《やっかい児》によるクロックパーミションの場合が多いです。《風景の変容》を仕掛けるのは、手札が十分に強くなってカウンター合戦の勝算が見えてからになります。そのため早期にマナ基盤を整える必要性がないのと、ソーサリータイミングで行動することで隙を作りたくないので、マナ加速系の呪文は減らします。双子コンボを阻止できるのみならず、《血染めの月》や《呪文滑り》も対策できる《自然の要求》や《仕組まれた爆薬》は重宝します。
■出産の殻
サイドin
2《紅蓮地獄》
1《不忠の糸》
1《古えの遺恨》
サイドout
2《呪文嵌め》
2《差し戻し》
メイン、サイド後共にデッキ相性が良い相手です。《エイヴンの思考検閲者》の存在を考え、《風景の変容》を唱える時は《稲妻》を構えるようにしましょう。逆にメリーラポッド側は、3マナを常に立たせた状態で行動することを心がけると風景の変容側の動きをかなり制限することができます。《差し戻し》が空撃ちできる場合は自分の《稲妻》などを対象に唱えてドローを進めたり、自分のターンでも積極的にドロー呪文を唱えてマナ加速呪文を探すなど、空白ターンを作らないようにすることが大切です。
■トリココントロール
サイドin
3《否認》
1《ヴェンディリオン三人衆》
サイドout
2《明日への探索》
1《撤廃》
1《稲妻》
青・白・赤の3色で組まれるデッキには多くの種類がありますが、ここでは《修復の天使》と《鏡割りのキキジキ》のコンボを搭載したミッドレンジ型のコントロールデッキを想定しています。基本的には有利なマッチですが、《対抗変転》や《塩まき》など危険なカードが数枚サイドインされると思われるので注意が必要です。このマッチアップも上述した双子デッキ同様に長期戦になるので《明日への探索》を抜きます。
もっと低速の、それこそクリーチャーが《瞬唱の魔道士》と《修復の天使》だけのような構成のヘビーコントロールと対戦するときは、さらに追加で《稲妻》を2枚と《風景の変容》を1枚サイドアウトして、《強情なベイロス》を3枚サイドインしてください。このあたりはどちらの構成か見極めが非常に難しいのですが、困ったときは上記の対ミッドレンジ型のプランで大丈夫です。
■赤白バーン
サイドin
3《否認》
3《強情なベイロス》
2《自然の要求》
1《仕組まれた爆薬》
1《不忠の糸》
サイドout
4《差し戻し》
3《謎めいた命令》
2《木霊の手の内》
1《風景の変容》
今回のグランプリ神戸2014では、2回バーンと対戦しました。その時はこのようなサイドボーディングをしました。
《自然の要求》は《大歓楽の幻霊》への除去の追加としてサイドインします。また、《仕組まれた爆薬》は除去の追加兼《自然の要求》でのライフ獲得を目的としております。
予選ラウンド12の第2ゲームでは、《大歓楽の幻霊》対策としてサイドインした《自然の要求》が噛み合い、対戦相手の《神聖の力線》を破壊することができました。
■緑赤トロン
サイドin
3《否認》
2《古えの遺恨》
1《ヴェンディリオン三人衆》
サイドout
4《稲妻》
1《撤廃》
1《風景の変容》
これは、グランプリの準々決勝で緑赤トロンを使用する赤星勇樹さんと対戦した時のサイドボーディングプランです。試合前にお互いのデッキリストを公開していたので、赤星さんがどのようなカードをサイドインしてくるか把握していました。
サイドボードに用意されていたカードのうち
1《隔離するタイタン》
3《防御の光綱》
だけがケアするカードでした。
《塩まき》《殺戮遊戯》《沸騰》《窒息》などが入っておらず、比較的戦いやすいマッチアップだったと思います。
もし、《殺戮遊戯》が入ってる場合、正直ケアできないので無視しましょう。
ただ他のカードは、《ヴァラクート》を置かない、《沸騰》を打ち消せるマナを残して《風景の変容》、《窒息》をケアして《島》をあまり置かないなどのプレイングで対処できるので、何が用意されているかの把握はとても大事です。特にゲーム2で相手がどのようにマナを用意したかも、よく覚えておくと対策カードが何となくわかります。
⑤このデッキを使うプレイヤーにアドバイスがあればお願いします。
動きとしては、7ないし8マナ揃えて《風景の変容》を唱える事です。
・ キープ基準
キープ基準はメインでは、マナ加速(ドロー操作)の有無が一番大きいです。
結局相手によって効くカードが極端に異なるので、自分の動きを最優先するのがメインボードの一番強い動きです。
サイド後は、相手への妨害をどれだけできるかを考えてキープないしマリガンの基準に考えて頂ければと思います。
・ 土地の置き方
手札の呪文を効率よく唱えられるかを基準に考えてください。
サイド後の緑系のデッキに対して、島を並べすぎない事(《窒息》のケア)だけ考えれば、ある程度は戦えます。
⑥締めの一言
風景の変容は、モダンで高いといわれる《タルモゴイフ》《沸騰する小湖》などのフェッチランド、《ヴェールのリリアナ》などの高いカードをあまり使わないリーズナブルなデッキに仕上がっております。
またプレイングも、簡単な部類で、これからモダンをはじめようという方にぴったりです。
今回、対策も薄かった事も相まってベスト8に入らせていただきましたが、決してデッキポテショナルの高さとしてはまぐれではないと思います。
最後まで、お読みいただきありがとうございます。
今回、初めて記事を寄稿させていただきましたが、少しでも皆様の手助けになれば幸いです。
なお、今回デッキの製作の手助けをしていただきました友人の皆様に、この場を借りてお礼申し上げます。
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