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朴高志「朴高志のANT探求」 
 
text by Boku Takashi

はじめまして!本日からライターを務めさせていただく事となりました、朴  高志と申します。
今回が第1回目の記事であるため、至らない所もあるかと思いますが、どうかお付き合いのほど、よろしくお願いしますね。


さて、初回は次の国内GPがレガシーであり、かつBMOも近いということで、レガシーのデッキ、ANT・・・アドストームについて、自分が使用したレシピの解説も含めて書いていこうと思います。





1:意外なほどに瞬殺ゲー!!


ではまず、どういう風に動けばストームが満ちて相手を瞬殺出来るのか、軽く動きを説明します。
とはいっても、このデッキはその時の引きと手札で千差万別に瞬殺へのルートが存在してしまうので、本当に軽くですが。

2nd Place at StarCityGames.com Legacy Open on 1/10/2015
Storm
Ross Merriam
15land
1 《島/Island》
1 《沼/Swamp》
1 《血染めのぬかるみ/Bloodstained Mire》
1 《宝石鉱山/Gemstone Mine》
4 《汚染された三角州/Polluted Delta》
4 《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
2 《Underground Sea》
1 《Volcanic Island》

45spell
4 《ライオンの瞳のダイアモンド/Lion's Eye Diamond》
4 《水蓮の花びら/Lotus Petal》
1 《むかつき/Ad Nauseam》
4 《渦まく知識/Brainstorm》
4 《陰謀団の儀式/Cabal Ritual》
4 《暗黒の儀式/Dark Ritual》
4 《陰謀団式療法/Cabal Therapy》
3 《強迫/Duress》
4 《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》
1 《Grim Tutor》
4 《冥府の教示者/Infernal Tutor》
1 《炎の中の過去/Past in Flames》
4 《思案/Ponder》
2 《定業/Preordain》
1 《苦悶の触手/Tendrils of Agony》
15sideboard
2 《ザンティッドの大群/Xantid Swarm》
3 《花の絨毯/Carpet of Flowers》
3 《突然の衰微/Abrupt Decay》
2 《蒸気の連鎖/Chain of Vapor》
1 《巣穴からの総出/Empty the Warrens》
2 《虐殺/Massacre》
1 《紅蓮地獄/Pyroclasm》
1 《Tropical Island》
さて、これが一般的なアドストームのリストであるかと思います。
リストを見ていただければ分かる通り、相手を妨害するカードはハンデスくらいなもので、その他はほとんどが《渦まく知識》に始まる軽量ドロー、もしくはコンボに使用するカードとなっております。
その中でも特に重要なカードが《冥府の教示者》と《ライオンの瞳のダイアモンド》で、基本的にはドローカードはこの2枚を探すために使う場合がほとんどです。




《ライオンの瞳のダイアモンド》が場にある状態で《冥府の教示者》をプレイ、《冥府の教示者》がスタックに乗った状態で《ライオンの瞳のダイアモンド》を起動すると、手札のカードが無い状態で《冥府の教示者》を解決する事が出来ます。

これによって暴勇を達成した《冥府の教示者》は、デッキから好きなカードを持ってこれるようになり、多くの場合は《炎の中の過去》か《むかつき》を探してきます。
どちらを持ってくるかは状況によって異なり、たとえば手札が、



とある場合、手札のカードを全てプレイし《冥府の教示者》と《ライオンの瞳のダイアモンド》のコンボを決めれば、ストームが5、マナが6マナ浮いた状態で好きなカードをサーチすることが出来ます。

こういうときは《炎の中の過去》を持ってきて唱えます。(《ライオンの瞳のダイアモンド》からは赤3マナを出しておきます)
すると墓地にある《暗黒の儀式》×2を唱える事で残り6マナまで増え、《冥府の教示者》で《苦悶の触手》を探し、ストーム9+《苦悶の触手》=20点ドレインを相手に撃ち込む事が出来ます。

この手札のラインナップが、《炎の中の過去》ルートを使える最低基準になります。

ではこの手札の場合はどうでしょうか。




この場合、手札を全て使っても出るマナは7マナで、さらに墓地からフラッシュバックで唱えられるようになるカードはたったの2枚しかありません。
これだと、《炎の中の過去》では十分なストームもマナも出ませんね。

こういう場合は《むかつき》をサーチします。
《むかつき》で探すカードは、《水蓮の花びら》+マナブーストいくつか、《ライオンの瞳のダイアモンド》、《冥府の教示者》とやや多いものの、このデッキはほとんどが軽いカードで構成されているため、デッキの半分に近い枚数をめくる事が出来ます。
これらのカードがめくれたら、後は《炎の中の過去》を使うルートに入ります。
早いターンであればこういった手札になりがちなので、《むかつき》を持ってくる事が多いですね。

つまり、マナとストームが十分に確保出来る時は《炎の中の過去》、そうで無い場合は《むかつき》ルートになります。



これらのカードが、少ない時は《暗黒の儀式》×2と《むかつき》と土地があれば瞬殺へ動き始めてしまうので、大体3ターン、早ければそれこそ2ターン、1ターン目に瞬殺!!・・・なんて事もありえます。
このスピードと安定性こそが、このデッキの最大の魅力であり怖さだと言えますね。






2:このカードを選んだ理由。

動きを少し説明した所で、今度は自分が実際に使用したレシピを参考に、普段アドストームには入っていないカードについて説明していきます。

固定パーツの多いコンボデッキではありますが、環境に応じて調整出来る部分もモチロンあるので、皆さんも是非自分なりの調整を試してみてほしいですね。
BIGMAGIC OPEN Vol.2 LEGACY TOP8
Storm
Boku Takashi
14land
4 《汚染された三角州/Polluted Delta》
4 《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
2 《Underground Sea》
1 《Volcanic Island》
1 《Badlands》
1 《宝石鉱山/Gemstone Mine》
1 《島/Island》

46spell
4 《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》
4 《思案/Ponder》
4 《渦まく知識/Brainstorm》
2 《定業/Preordain》
4 《暗黒の儀式/Dark Ritual》
4 《強迫/Duress》
2 《陰謀団式療法/Cabal Therapy》
4 《冥府の教示者/Infernal Tutor》
4 《陰謀団の儀式/Cabal Ritual》
1 《炎の中の過去/Past in Flames》
1 《苦悶の触手/Tendrils of Agony》
1 《むかつき/Ad Nauseam》
3 《撤廃/Repeal》
4 《水蓮の花びら/Lotus Petal》
4 《ライオンの瞳のダイアモンド/Lion's Eye Diamond》
15sideboard
4 《若き紅蓮術士/Young Pyromancer》
1 《殺戮の契約/Slaughter Pact》
2 《陰謀団式療法/Cabal Therapy》
3 《紅蓮地獄/Pyroclasm》
3 《突然の衰微/Abrupt Decay》
1 《巣穴からの総出/Empty the Warrens》
1 《Tropical Island》
一般的なレシピとの最大の違いとして、メインボードに《撤廃》が3枚、サイドボードに《若き紅蓮術士》が4枚入っています。

《撤廃》はハンデスに続く第2の妨害手段として重宝する他、キャントリップによってコンボの手助けにもなるすぐれもので、レガシー環境に多く存在する《秘密を掘り下げる者》の変身後を、わずか1マナで手札に帰しつつカードを1枚引く事が出来、自分のライフを大きく守る事が出来ます。



また、墓地を使ったり呪文をたくさん唱えたりするデッキの性質上、《死儀礼のシャーマン》はかなり厄介に、《スレイベンの守護者、サリア》は降参クラスに邪魔なのですが、この《撤廃》があればそれらが出てきてしまっても場からどかせる事が出来るので、メインボードから強力な対策カードが出てきても諦めずに済みます。

自分の0マナアーティファクトに向かって使えば、1マナドローとしてだけでは無く、ストームも稼ぐ事が出来るため、コンボパーツとして見る事も可能です。

実際、《撤廃》によって拾った試合は多く、このカードはメインから搭載するに値すると感じました。

《若き紅蓮術士》はサイドボードからの新たな勝利手段です。
一般的なアドストームは、サイドボードからはカウンター対策に《ザンティッドの大群》などを投入してくる事が多いのですが、自分の場合はハンデスで十分だと考え、むしろサイド後相手は除去を減らしてくるだろうと予想しこのカードを採用しました。



元々は《闇の腹心》を入れようと思っていたのですが、よくレガシーをやっている友人から、どうせ同じアドバンテージを稼ぎに行くなら勝利に直結している《若き紅蓮術士》の方がいいよ!と強くオススメされ、試しに使ってみたのですが、これが非常に強力で、これをキャストしてからドローカードでドローカードを探しているだけで次々とトークンが戦場を埋め尽くし、対戦相手のライフを削りきる事が出来ました。

さらにこのカード、《陰謀団式療法》と極めて強いシナジーを形成し、ハンデスしたかと思えばトークンが出て、さらにそのトークンを生贄にフラッシュバックで唱え、またトークンが出て相手の手札は2度のハンデスで空っぽという、あまりにもひどい光景が出来上がります。
こうなってしまえばほぼ勝利で、後は無抵抗に近い相手を多くのトークンで殴り続けるだけとなります。

1本目はコンボで取り、2本目からは《若き紅蓮術士》で殴り勝つというパターンはかなり多く、これまた採用に値する素晴らしいカードだと感じました。





3:相手によって変わる戦い方。


コンボデッキ・・・勝ち方が決まっていて、それに向かってプレイするのが最善の動きです。
とはいえ、それでも相手のデッキに合わせて多少プレイするカードの優先順位などを変える必要があります。
たとえば相手が青いデッキである場合、相手の手札を確認出来ていない状態でコンボをスタートしようとしても、カウンターで邪魔されてしまう可能性が高いですよね。
具体的なデッキ別の立ち回りは・・・


・デルバー系などのクロックパーミッション

とりあえずハンデス。
クロックの速度はそれほど高くは無いため、手札破壊が1枚しか無いのであれば、コンボを始めるターンの最初の行動にハンデス、というのもいいですね。

サイド後は相手のカウンターが増えるため、じり貧になりやすいです。
《ライオンの瞳のダイアモンド》を減らし、《定業》、《むかつき》を抜いて《若き紅蓮術士》を入れます。
ただし、青緑赤デルバー(俗に言うカナスレ)には《若き紅蓮術士》はあまり効果的ではない為、投入は避けた方がいいかもしれません。
場合によっては《暗黒の儀式》《陰謀団の儀式》なども1枚ずつ削り、《突然の衰微》を投入しましょう。




・マーベリック、デスアンドタックスなどの白系デッキ


《スレイベンの守護者、サリア》を出されると大体の場合負けてしまうため、最速でコンボを目指します。




サイド後は除去呪文と追加の《陰謀団式療法》を取り、《強迫》《定業》はサイドアウトします。




・ジャンド、POXなどのハンデスに秀でたデッキ

《渦まく知識》を持っているなら、構えながら動きます。
こちらのハンデスは、相手のハンデスを落とすために使います。
特に《Hymn to Tourach》は致命傷となるため、優先して落としましょう。
ただ、カウンターをされない分、相手の手札が確認出来ていなくてもコンボをスタート出来ます。
コンボが始められる状態であるなら、すぐにスタートしてかまわないでしょう。

サイド後はやはりじり貧になるので、《若き紅蓮術士》を投入し、《ライオンの瞳のダイアモンド》、《定業》、《むかつき》辺りを抜きましょう。
もちろん《突然の衰微》も有効です。




・ショーテル、ミラーマッチなどのコンボデッキ

もちろん最速でコンボを狙いますが、相手が青い場合、カウンターも警戒する必要があります。
やはり最初はハンデスが一番ですね。

サイド後は《撤廃》を抜いて追加の《陰謀団式療法》を入れます。
他に邪魔するカードや、コンボを強化出来るカードがあれば、投入してもいいですね。
もちろん、相手がサイドから邪魔な置物を入れてきた場合に備えて、《突然の衰微》を多少取っておくのも有効です。





4:このデッキに勝つには?

コンボが決まるスピードも早く、安定性に優れ、かつ手札まで見られて抜かれてしまう・・・
一見とても敵わないかもと思ってしまいますが、実は結構弱点があります。

まずは何と言ってもハンデスとカウンターですね。
とはいえ、どのカードをハンデスしたりカウンターすればいいか分からないという人も多いはず。
ついでに、有効なカウンターカード選びについても触れていきますね。

ハンデスで対策する場合、相手が動き出す前にハンデスを仕掛ける事になるのですが、この時にまず気をつけたいのは《渦まく知識》の存在です。



これをたとえば《思考囲い》のプレイに対応して使われると、落としたいはずのカードをデッキの上に隠されてしまい、思ったような成果をあげられないなんて事も。
そうならない為に、まずは自分のデッキの動きを犠牲にしてでも、真っ先にハンデスを唱えましょう。

ハンデスが通ったら落としたいカードは主に絞って2つ。
1つは《冥府の教示者》、もう1つは《ライオンの瞳のダイアモンド》です。
両方あった場合の優先順位は冥府の教示者で、どちらかが複数あった場合は1枚しか無い方を抜きます。
こうする事でアドストーム側は好きなカードをサーチ出来なくなり、また《冥府の教示者》か《ライオンの瞳のダイアモンド》をドローで探さなければならなくなります。

ハンデスでの対策はとても簡単に出来るだけでなく、相手が今どれだけいい手札をしているかが把握出来るため、極めて効果的であると言えますね。

カウンターで対策する場合、どういった効果のカウンターを使用するかによって、狙う呪文のターゲットが変わってきます。



たとえば《Force of Will》などの確定カウンターが手札にある場合、《冥府の教示者》をカウンターすべきであり、それをプレイされるまでは我慢が基本という事になります。
具体的にカウンターの種類別で見たときの狙うべき呪文は・・・




・《Force of Will》、《対抗呪文》などのいわゆる確定カウンター

先ほども述べた通り、狙うは《冥府の教示者》。
相手が《冥府の教示者》をプレイし《ライオンの瞳のダイアモンド》を起動して手札が無くなった時が最大のチャンスです。
また、《暗黒の儀式》連発から《むかつき》や《炎の中の過去》をそのままプレイされた場合にも、これらを打ち消してしまえばコンボは終了するため、非常に効果的。

フィニッシュカードへつなぐための強力な呪文を打ち消す!というイメージで運用すれば、相手はさぞかし嫌な顔をするでしょう。




・《目くらまし》、《呪文貫き》などの追加の支払いを要求するカウンター

こちらはうって変わってアドストームの初動・・・《暗黒の儀式》や《渦まく知識》、果ては《強迫》などのハンデスまで、相手がそのターンの最初、まだマナに余裕が無く、かつ追加マナを支払えない時に使用するのが効果的です。

こうする事で相手は計算が大幅に狂い、また1からコンボを組み立てなおしになる事が多いです。




・《赤霊破》

ドロースペルならなんでも使っていいです。
これは他に狙う呪文が無いためですね。

しかしこれが意外と効果的。
サイドボードに採用している場合は2戦目以降、1枚くらいメインに入れ替えてみてもいいと思います。




・《狼狽の嵐》

これが一番効果的!・・・なのですが、一番使うのが難しいカウンターだと思っています。
もちろん簡単なのは《冥府の教示者》に使う事なのですが、相手が大量にマナを出せていると、そのまま支払われてコンボ続行、なんて事態になりかねません。

早いターンのうちは確定カウンターと同じ使い方を、後半は追加の支払いを要求するカウンターと同じ使い方をするか検討しつつ、相手の動きを見て使っていく必要がありますね。



他にも《スレイベンの守護者、サリア》、《虚空の杯》、《ガドック・ティーグ》などの相手の呪文のプレイを制限するカードは、たったの1枚でアドストームを封殺する事もあるくらい強力です。
これらもサイドボードに取っていない場合、墓地対策・・・《虚空の力線》や《安らかなる眠り》、《大祖始の遺産》などの強力な効果を持つカードで妨害を試みましょう。







いかがでしたか?
この記事を読んでくださってる方々に、少しでも参考になれば幸いです。
最後になりますが、ついこの間、禁止改定により《宝船の巡航》が禁止になりましたね。



これにより、いままで抑えつけられていた《Hymn to Tourach》などの強力な手札破壊が再び数を増やすと予想出来ます。
アドストームはこれらの手札破壊を苦手としているので、そうなるのであれば、今後の環境はやや向かい風となるやもしれませんね。

では、今回はこの辺で!






ノシ



朴高志
幅広いフォーマットで活躍する新進気鋭のプレイヤー。
スタンダード、レガシーともに速いデッキを好む。苛烈な攻めと緻密な計算による安定した強さが持ち味。プロツアー参加経験もある実力派。
フレッシュな外見と温和な人柄で人を惹きつける魅力のあるプレイヤー。


主な戦績
・グランプリ名古屋14 準優勝
・プロツアー“マジック2015”出場
・BIGMAGIC OPEN Vol.2 STANDARD 準優勝
・BIGMAGIC OPEN Vol.2 LEGACY TOP8
 
 
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