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岩Show、ワシントンD.C.ヘプレインズウォーク 
 

text by Iwa Show

プロツアー(以下PT)に行く方法とは?
・PTQを抜ける(MO含む)
・前回のPTで勝ちまくる(マッチポイント33点以上)
・当該のGPで勝ちまくる(とりあえず39点以上で権利は獲得、航空券は別)
・プロポイントを貯めてプロプレイヤークラブに入る
・「殿堂入り」する



などなど、詳細も書いていけばそれだけ一本の記事になりそうだ。そして2015年からはPPTQ、RPTQという新しいスタイルに変化して行くことになる。世界中のマジックプレイヤーの数ってどれぐらいいるのだろうか。

とりあえず、日本国内限定で考えれば…最近のGP参加者数が2000以上は当たり前。先のPT『運命再編』の日本人参加者は25人ほど。トーナメントシーンでマジックを行うプレイヤーの100分の1の数字ということになる。日本には潜在的に10000人近いプレイヤー(触った程度なども含めて)がいるとされ、そう考えれば400分の1。こりゃ狭き門だわ。
僕は『ウルザズ・サーガ』発売前後にマジックを触って、かれこれ17年ほどこのゲームを親しんでいる。今や仕事で携わってすらいるのだが、肝心要の部分がダメダメなのだ。

上手くならない。

いろんなプレイヤーと出会い、それこそ世界に通用するテクニックを目の前で見て、彼らの理論を読み、実際にプレイして…



あきまへん。知識は人並みにあるという自信はあるが、勝負の部分はてんでダメ。いつかプロツアーという夢の舞台で…と思っていた時期も「あった」。「あった」ってことは、もう諦めがついているのだろう。いや、正確に言うとこのゲームをやる以上、今でも勝ってプロツアーでプレイしたい欲求というものはある。あるにはあるが、それを現実のものとするのに必要なものがクッキリとクリアに見えるようになったことで、今の自分には無理だという自覚がある。あの舞台で戦うには、覚悟がいる。犠牲にするものがある。上手くなりたい一心だけでアメリカに行ったり、睡眠時間を削ったり。そういった部分を実行できない今の僕にはまず辿り着けない遥か遠い水平線の向こう、新大陸である。

ただ、1つだけ。1つだけこの海原を越えていく方法があるんじゃないか、と思い始めていた。


喋り、ワンチャン。



1.
それはある日、前振りもなくやってきた。プロツアーで実況をする。この僕が?そんなことって、起こり得るんだ。

思い返せば、「世界選手権2013」でBIG MAGICスタッフ・同僚であり友である日下部恭平の姿を見ようとニコニコ生放送を見た時のことである。マジックの実況解説自体は、ビデオマッチという形でそれこそそこそこ古い頃から存在しており、それらを見るのは楽しく、歴史の証人になっているような気分にさせてくれた。

しかしそれが、リアルタイムで・日本語で・コメントを通じて現地とやりとり可能となると、視聴者は証人どころかもはや歴史の一部だ。この感覚は観ている者にとってもこの上ないものであったが、「やりたがり」の僕は「これ(ディスプレイの)向こう側、めちゃくちゃ楽しそうだなぁぁぁやってみてぇぇぇぇ」と思っていた。丁度、見切り発進で「BIG MAGIC LIVE」を始めた頃である。どうせやるなら、こんなことしたいよなと思ったものだ。

思っているうちに、矢継ぎ早に様々なことを経験した。公式のプロツアー放送などと比べると規模は遥かに劣るものの、ネットにて実況を行った。そういった機会が国内GPの度に、そして自社イベントである「BMO」の度に訪れた。数で言えば、そこそこやったなと自分でも思うようになっていた。あくまで、数の問題で質はまだまだ。自分の喋りで世界の誰かが何を思うのか、それがフィードバックされる規模の環境を経験していないのがなんとも。ただ毎回自分なりに反省して、そして本家の実況:森慶太さんの喋りを見て質の向上を意識はしてきた。自分が良いな、嬉しいなと思ったものは徹底的に吸収する。ドラフトテクや構築と同じことで、のめり込んでいった。

そしてお声がかかった。具体的な内容は僕が述べることではないが、その時の高揚感と言ったら。映画なんかのテンプレで、起き抜けに急な連絡が来て主人公が「え?」となるシーンがあるが、まさかそれを実体験するとは思わなんだ。急遽、渡米が決まった。そういえば、マジックを始めてからアメリカ大陸に行ったことはなかったな(ハワイは学生時代に研修で行ったり)。むちゃくちゃ久しぶりのアメリカで、東海岸は初めての経験となる。これが決定した日のはしゃぎっぷりときたら、なかったろうな。
こうして、クローズド・イベントとなってから初めてPTの会場へと足を踏み入れることとなった。それもスタッフとして。ここに、僕の17年をかけたPTQはやっと決勝ラウンドを終えることとなったのである。…大袈裟過ぎたな。




2.
ここからは実際の旅の模様を綴っていこう。出発は成田空港から。PT『運命再編』で一緒に実況を行う大先輩・浅原晃さんが同便に搭乗されるとの事前情報が。初めて訪れる地で知っている方がいらっしゃるのはこの上なく心強い。そう、心強いと言えば…

出発前日の夜のこと。ちょっとアメリカに行く…という話から「ESTA」なるものの存在を知る。これがなければ入国できない可能性が高いとかなんとか。これは全く知りませんでしたぜ…2009年から導入されたもののようで、僕が以前ハワイを訪れたのは2008年。なんちゅうギリギリのラインだと。とりあえず焦りながらもなかしゅーこと中村修平さんならば詳しいという話をお聞きして連絡させていただきました。

ネットで調べれば簡単にわかることなんだけども、誰かに「それであってるよ」って言ってもらえることの心強さときたら…《全希望の消滅》から《救い》。ネットで登録して事なきを得ました。申請からものの数秒で返事が返ってきますが、場合によっては最大72時間かかるそうです。と言っても、「普通は」すぐ返事が来るそうで。後、検索していると明らかにニセモノのような、変な日本語表記&正しい登録サイトにある各種規約を読まなくてもすぐ登録できる怪しげなものも発見。これが果たして何なのかは、わからずじまい。とりあえず経験者に聴くのがソリューションでしょう。なかしゅーさんと繋がりがあって、本当に良かったと思った次第。

第1ステージをクリアして、成田空港到着。基本的に国を出る前には日本のもの、出来れば生ものを食べておく…と思っているんだけどもあんまり良さそうな寿司屋やその類がパッと見つからず。手前にあった和風スパゲッティのお店で湯葉クリームと生卵がなんとも日本っぽい一品をいただく。


お腹も満たして、本屋で機内の暇潰しになるものも購入。某フィンランドの妖精特集を組んでいた雑誌と、某球団で監督をされた方の勝つためについての著書を。これでなんとかなるでしょう、そう思いながら飛行機へ搭乗。座席へ移動中に浅原さんと遭遇。これまた一安心だ。


ちょうど夕暮れ時に離陸して、しばらくは雲の上から素晴らしい夕陽を眺めることに。こういうものを見ると、普段当たり前と思っている存在が大きいものなんだなぁと改めて感じる。こういうものが、人生を豊かにしてくれるはず…何の話だ。機内では映画のバリエーションが非常に豊富で、あまり暇になることはなかった。某カメが主役の作品を日本より一足早く観る。

途中で、前の席のおばちゃんがかきあげたドレッドヘアーが座席のまたいで、のれんの様に画面に被さる事件が…どうやってその苦難を乗り越えたかは、ご想像にお任せ。他にホテルに関する話題作も拝見して、どちらも良作で満足。ふわふわなロボが活躍する作品は今見るのも勿体ないなと思い、帰りの飛行機にとっておいた。機内食もしっかり食べて…やっぱり、お世辞にも「美味しい」ものではないのだけれど、とりあえず食っとこう。


ものの本には映画観たり飯食ったりせず全力で寝るのが正しいプレイングと書いてあったけど、選択肢多いとあれこれ試したくなっちゃうのが人の性。そのせいで、熟睡出来たのは1時間。ま、まだね。着いた日はあれこれするわけじゃないから。3人掛けの席で、通路側で真ん中乗客なしの窓際にはシンガポールの女性。ちょっと喋って、13時間のフライトもお互い気を遣わなくて済んだ。こういう細かいアクションが大事やね。

到着。ちょっとドキドキ入国審査。なんも悪いことしてないのにあの緊張感、なんなんやろうね。無事にスルーして浅原さんと合流、ニコ生スタッフさん達も同便だったが、機材が大量にある関係で各種手続きがあるようで。遅くなるかなぁと判断して浅原さんと二人で先にタクシーでホテルへ。タクシー内ではマジックの話は勿論、機内で観た映画の話なんかも。ふわふわロボ映画を帰りに温存しといたのは正解だったようだ。9タイタンズとかの話しながら、30分ほどタクシーに揺られて無事に会場へ。





3.


いや、ホテルほんまに綺麗なんですが…PTってこんなに凄いのか!?ワクワクが加速しながら受け付けを無事に住ませた所で、ウィザーズのスタッフの方とも合流。全員揃うのはもう少しかかりそうなので、部屋に入って待つか…って



広いわい。ただただ広いわい。ドラフト合宿出来るレベル。いやーたまらんわい。もう、来て良かったと思ってしまう。早速ひとっ風呂浴びて、ちょっとだけ目を閉じてウトウト休む。Wi-Fiも完備で言うことないわホンマ…。ちなみに部屋は16階。階数アドバンテージは確保だ。






グルっとホテルやその周囲を歩いて回る。観覧車が波止場にあって、リゾート感があるね。PT会場もそのまま下見。綺麗な絨毯の先には、PT会場となるホールが…って、一体どれだけ広いのか。PT会場で1つがBMOの会場の1.5倍くらいあって、それと同サイズのホールが8つくらい並んでいる…すごいね、アメリカ。



 浅原さん、鍛冶さん、そして金子さんらウィザーズスタッフと合流して、夕食はホテル内のスポーツバーっぽいレストランで摂ることに。何を食うか?ハンバーガーも良い、ワシントン名物の「クラブケーキ」も気になる、しかしここは…



肉、であるか。

ガッツリ食って、エネルギー補給。アメリカと言えばステーキ、赤みの美味さを堪能したい思いは出国前からずっと思っていたこと。付け合せのマッシュポテトもふわっふわでさながら「飲み物」。右側の小皿に入っているのはケールとタマネギ、ベーコンのワイン煮みたいなもの。何故か高菜の漬物のような味がして、謎に親近感を覚える。写真奥の二皿はワカモレ(アボカドディップ)とクラブディップ。カニのマヨネーズグラタンみたいなものを小さいパンにつけて食べるもので、ビールがすすむ。あ、肝心の肉ね。



美味いかって?そら、そうよ。レアで頼むとウェイターさんが「Oh、スシー!」とノリノリ。さすがにスシほど生ではなかったが、ステーキの国&良いホテルのシナジー。レアといってもしっかりと火が通った上でのレアで、赤みの味わいもしっかりあってこれは美味い。ペロリ。

食後解散して、翌朝はせっかくだし観光しようということで朝早く集合となる。で、就寝…その後、スカンとスイッチが入ったかのように目が覚める。目覚ましはの前に起きたな…と思いつつ時計を見ると、4時ィ?真っ暗だと思ったら…さすがにまだ早いな、二度寝や!…全く眠くないんだな、これが。




しょうがないのでテレビつけてゴロゴロ。チャンネルを回すも、ダイエット関係の通販番組しかやってねぇ。ありとあらゆる局でこれって凄いな…と思いながら観てると、どっかで見たことのあるゴツいおっさんが…って、Diamond Dallas Pageか!引退してからヨガ教室を開いているらしく、その教材DVDの宣伝をしていた。

普通のダイエット番組なら肥満状態の昔の写真とモデルのような姿になった今の映像とが並ぶものだが、Jake ’The Snake’ Robertsと共に現役時と引退後の映像を比較するという、ちょっとわけわからないプロモーションをしていたがプロレス好きとしては熱くなれたので100点。後で調べると本当に良いヨガの様で、規模もなかなかすごい。へぇ~とか思いながら、時差で丁度いい時間帯の日本の友人らとやり取りしてまったりゴロゴロ。それでもまだまだ時間があるので、昨日は暗くてよく見えなかった周囲を散策しようと歩き出す。




エレベーターホールからの眺め。今見るとめちゃくちゃ大きな雲が映ってるね。



ホテルから少しだけ離れた通り。飲食店とブランドショップが並ぶ。リゾート地なのだ。




観覧車付近。アメリカ国旗があるも角度が悪い。風はむちゃくちゃ強くただひたすらに寒かった。
やっぱり気付いてなかったけど雲が面白い。



マジックプレイヤーなら反応してしまう、往年の名呪文なお店。タップするもよし焼くもよし。



アメリカと言えばハーレーなイメージ。しっかりとディスプレイされたブランドショップは目を惹く。



会場を外から。この写真は風もバッチリの角度。PT感、あるよね。ほんまに綺麗なホテル。


ひとしきり歩き回って丁度良い時間。メンバーも続々と集合して、朝食をいただきましょう。


写真を撮り忘れた、おっちゃんの手作りオーダーメイドオムレツが野菜たっぷりにできて美味かった。カリカリベーコンはこれぞアメリカって感じだけども、スクランブルエッグとソーセージは日本の方が美味しく感じたね。なんというかジューシーさがないというか、パサつきめ。まあ朝からバイキングで野菜もフルーツもたらふく食えて大満足。昼飯いらないレベル。




4.
朝食も終えて、じゃあホテル前に待機してるめちゃくちゃゴツいタクシーに乗って、いざワシントンへ!会場は、実は若干陸の孤島気味。ワシントンの都市部へはタクシーに揺られて30分ほどかかる。いろいろあった末にパキスタン人のおっちゃんが運転するタクシーに乗ることになり、ワシントン名所グルっと観光ツアーを組んでもらった。いかにもsuburbiaな風景をガンガンに飛ばして進む。




観光プログラムその1「トマス・ジェファーソン・メモリアル」。第3代アメリカ合衆国大統領。「アメリカ独立宣言」の主要な作者であり、ここワシントンD.C.で初めて就任演説を行った大統領である。アメリカ合衆国建国の父の中でも、最も偉大な人物だと言われていたり。




どことなくパルテノン神殿などを思い起こさせるデザインは『テーロス』感あるね。








ジェファーソンさんの像。かっこええ。でも何故か、《凱旋の神殿》っぽく見えるのは僕だけ?合衆国大統領=勝利の神…?






銅像の地下にはジェファーソンさんの功績を記す年表や各種展示が。




続いてプログラムその2「マーティン・ルーサー・キングJr.・メモリアル」。「I have a dream」で始まる演説で有名な、人種差別に立ち向かったキング牧師。






今なお人々の心に勇気を与える存在である彼のメモリアルは、公園の一角である。何やら大きな岩の塊が…一部分切り出されて離れているし。これは「絶望の山/The Mountain of Despair」。ここから切り出された「希望の石/A Stone of Hope」こそ…




キング牧師その人である。かっこええ。平日だからか、人の姿は僕ら以外なかった…っていうか寒すぎか!基本的な気温は日本とあまり変わらないようだったけども、凍てつく突風に押し流されそうになりながら先のジェファーソンさんのとことともにクリア。




さてお次は…



このシルエット、皆さんも見覚えがあるのでは?またパルテノン神殿…じゃなく、アメリカの各州の名前が刻まれたこの建造物の中におわすは…







ゴゴゴゴゴゴゴ…と擬音が見えるレベルの存在感。アメリカ歴代大統領(カン)の中でも、トップクラスの知名度を誇るエイブラハム・リンカーン!ここは「リンカーン・メモリアル」。シヴィル・ウォーという激動の時代で大統領を務め、見事その危機を乗り切った人物。演説の一部も日本では非常に有名です。サルカンが「空のカン」ならリンカーンは…最近の映画など創作物では、吸血鬼退治とかやっちゃってるからね。何でもアリ。




このメモリアルの正面にあるのが、《反射池》。「リフレクティング・プール」でございます。某映画でも感動のワンシーンを飾っていてこれまた有名。当日はあいにくの天気でそのリフレクティング力の本懐を拝むことは出来ず。それでも、十二分に「伝説の土地」の風格を漂わせていた。




ワシントン巡りもいよいよ大詰め。実は道路の関係上、ファイナルステージの「裏口」側を先に拝んでしまうというハプニングが。もう裏口目の前で見ちゃったしな…と思いながら、グルーッと回り込んで正面に移動。ワシントンD.C.観光のシメと言えば、もうおわかりの




ホワイトハウス!米国(ステイツ)の中心がここ!残念ながらというか当然ながら、警備が厳重で近寄れるのはここが限界。むしろ限界の距離まで近づけたので僥倖。これが何度も危機に晒されたあのホワイトハウスなんやな…映画で見るよりも、小さく感じたのは気のせいだろうか。たぶん、裏口っていうリアルを先に拝んだからやね、うん。


観光を終え、無事にホテルに帰還・会場となるホールへ。スタッフ総出の全体ミーティングを終え、ニコ生エリアへ…


自身のネームプレートを目の当たりにして、ようやく実感が伴う。やってやるって!その感情に全身を包まれながら、各種最終打ち合わせを終えて、解散。出番は初日、モダンに切り替わる第4ラウンドから!

解散後、サンドイッチで遅めのお昼。これがね、近所のスーパーで買ったんやけども、見た目以上に食っても食っても減らなくて驚き。半分は翌朝に持越し。何か圧縮されていたのか?



陽が沈むのは比較的早い。と言っても、昼寝してたら気がつけば5時頃。会場に行ってみよう!もう受け付けを開始しているので、皆ゾロゾロとやってきているはずだ。



ビンゴ!ちょうど日本のトッププロ達が集い始めている時間帯だった。「Hreruya Pros」の齋藤友晴さん、津村健志さん。「魔王」三原槙仁さん、そしてBIG MAGIC専属プロプレイヤーの市川ユウキさん。プラチナ・レベル、プレイヤー・オブ・ザ・イヤー、プロツアー殿堂入りと、ここに無い称号の方が少ないだろ。ドラフトが始まってから気付いたが、アメリカの強豪、クリスティアン・カルカノもいるじゃないか。こりゃ、明後日にはドラフトラウンドも担当するわけだし、見て勉強しなくては。ということで市川さんのピックを後ろに噛り付きで。



初手《奪取の形態》から入り、赤の流れも良かったため青赤2色のデッキを組みあげた市川さん。生物は少なく線は細いが、《軍族の雄叫び》からの《軍族童の突発》or《奪取の形態》という超必殺技「ドリームコンボ」略して「ドリコン」を備える、テクニカルなデッキ。『タルキール覇王譚』×3でドラフトが行われた前環境ではやり込みの末に辿り着いた「0/5戦略」で見事GP静岡トップ4入賞の市川さん、今回のドラフトでもご自身で「象徴」とまで呼ぶ《僧院の群れ》《沸血の導師》をしっかりとピックし、デッキの仕上がりには満足げなご様子。

1回戦は、殿堂入りプレイヤー「魔王」三原さんとのマッチ、これは観ない訳にはいかんでしょ!ということで観戦タイム。両名とも大好きなプレイヤーで、これが本戦だったらどっちも応援したくて心苦しいところだったが、これはあくまで前日の肩慣らし。僕も心置きなく大好きな両名のぶつかり合いが見られるというもの。三原さんのデッキは、2色土地をかき集めて各色の強力なカードで戦う緑中心の5色。僕もタルキール環境では一番好きで度々やっていた戦略、『運命再編』が入ったことでどうなるかも見どころ。《破壊するドラゴン》が2枚入っていたのを覚えている。観戦していた他のプレイヤー達も、「二人ともキャラを貫いてるなぁ」というほど、両名らしいデッキ。パワーとテクニックの衝突、結果は2-1で市川さんの勝利。見応え満点!

続く試合は市川さんvs齋藤さん!これまた、熱いぶつかり合い。タダで観させてもらうのが恐縮だ。会場が閉まったので、ホテルのロビーに移動しての第2回戦。少し離れたテーブルでは津村さんがカルカノと激突。なんやこのフィーチャーエリアは…。試合の方は齋藤さんが白黒戦士で攻め市川さんの0/5が受ける展開に。「ドリコン」でゴブリントークン9体並べて1本取った市川さんだったが、戦士の安定したビートダウンによりKO。

そろそろ飯に行こうとなり、津村さん曰く「オバケデッキ」だったカルカノとスプリットして皆でご飯へ!メンバーは市川さん・齋藤さん・津村さん・カルカノ・カルカノと共に行動していた19歳のプロプレイヤー・僕。いかにも「酒場」といった雰囲気のレストランで、タコスを注文。


やっぱりアメリカに来たらタコスを食べておきたかった。海老とチキン、どちらも「アメリカのタコス」って感じで満足。いつかは本場メキシコで食べてみたいものだ。ご飯を食べながらカルカノに自己紹介。「BIG MAGIC? I love BIG MAGIC!」とダブル・サムズアップ。こういうの、嬉しいね。僕がGP静岡のラストチャンストライアルを実況生放送していたのを、見てくれていたらしい。



さて、このレストラン内にはテントが張られ、その中にはなんとロデオマシンが。齋藤さんの「あれ、やりてぇ」の一言で僕も火が点き、二人でトライ!



結論。ムズイ…30秒以上乗ることが出来れば、十分に強キャラ。これ毎日やってると超人になれそうな気がする。「多分ほんまの牛よりムズい説」を提唱しながら、ホテルに戻って就寝。スコーンと眠りにつくことが出来た。




5.
翌朝。やっぱり6時ごろに起床。まあ、健康は健康かもしれない。決して長くはないが、しかし短くもない、適切とも思える睡眠時間だ。テレビで馬の訓練風景を眺めつつ、日本とやりとり。とりあえず「肉ウメーーー」連呼botと化しながら、


前述のサンドイッチをモリモリやりつつ、部屋に備え付けのインスタント・コーヒーメーカーでホッと一息。後は風呂入って、いつものバンTの上にシャツを羽織って、エレベーターでDown Down Down Down Down。会場に入ろうとするとおっちゃんが「まだだよー列に並んで」と。「どうも、日本のニコニコスタッフの新入りっす」と自己紹介。「ホントに?でも、そんなウソついても仕方ないよな」と笑って通してくれました。1つのイニシエーションを通過して、昨日とは同じ場所・でも異なる空間、プロツアーのその会場へ。

各種打ち合わせを終えると、現地時間朝9時から放送開始!僕は出番までフリーなので、浅原さん鍛冶さんの姿を見て学んだり、せっかくなので空気感を身に刻もうと場内を歩いたり。そこかしこに、(一方的に)知っているプレイヤーの姿が。皆、頑張って勝ち進んで欲しい。ただ、多くの知らない人達も、その表情は皆真剣そのもので、良いなぁと心から思えるもの。場内の誰もが、成功して欲しい。でも、これは勝負の世界。チャンピオン以外は、皆敗れし者になる。傍から見ればトップ8は十二分に輝かしい成績に思えるけど、究極的にはそうじゃないんだよなぁ。なんて、自分からは遠い世界の事を考えながら、夢舞台であり合戦の地であるこのホールに満ちたここにしかない空気を、深く吸い込む。



ドラフトラウンドは丸々休憩というか準備時間。なので、試合が始まると既に述べてきたようなプレイヤー達の試合を見て回る。「1000枚買え!」でプッシュした《囁きの森の精霊》で勝利している市川さんをみつけて、こういうことってやっぱりあるんだなと。いつぞやの黒田正城さんの「ゴリラ(《猿人の指導霊》)が吸いついてくるんよ」発言を思い出す。ここで戦う人達は、やっぱり何かを持っている。



場内巡りをしたり、昼食をいただいたり。そうこうしているうちに4時間ほどのドラフトラウンドはあっという間に過ぎ去った。さあ、モダンだ!出番だ!





6.
後は、放送をご覧になった皆様はご存知の通り。三日間、精一杯やらせていただいたニコニコ生放送、感想は…何から何まで、楽しかった。それに尽きる。至らない点も多々あって、毎日・毎試合反省することはあった。それを加味しても、それがあるからこそ、楽しかった。実況者とはどうあるべきか、まだまだわからないことばかりだが、「楽しむ力」というものが非常に大事だとわかった。

勿論、頂点レベルのプレイヤーが試合をするのだからそれ自体は面白いに決まっている。その中で、更に深く…例えば、○○選手は基本土地は△△で統一しているんですね、綺麗ですよねあれ…みたいな部分。これが、多分大事なんだろうなと。試合の内容は正確に伝える・ちょっとした情報を織り込む・解説者の持ち味を引き出す・視聴者が望む空気にしつつも、それに呑まれない…考えなきゃならないことは山ほどある。今後、またこういった機会を頂ける日が来るかもしれない。あるいはないにしても、自分達で行っている配信の質を上げるため・マジックがどれだけ面白いのかを伝えるため、今回の旅で得た物を全て糧にして、成長、していきたい。

最終日、全て終わってからディナー…なのに。疲れからか、眠りこけて遅刻してしまうという大失態。アカン、終わった…40分ほど遅れてレストランにinしたものの、どうやら混んでいて料理の出が遅かったようで、ちょうど前菜がで終わったところらしい。セーフ!迷惑にもならなかったようで、安堵の溜息。さあ、《腹音鳴らし》さん、号令を!




「We eat!」




















翌朝、浅原さん達と帰国の途につく。この素晴らしいホテルともお別れだ。



ありがとう、ワシントン。ありがとう、アメリカ。そして、マジック:ザ・ギャザリングに、心からの感謝を。



最後まで読んでいただいて、感謝の極みであります。またどこかの会場で、お会いしましょう!



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