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坂本 力祐 Legacy of My Life vol.1 
 

text by Sakamoto Ryosuke

『編集者(岩Show)によるコメンタリー付き版』はこちら



6年間。

文字に起こしてみると素っ気ない事この上ないが、思い返すと実に長く、途方もない時間をレガシーというフォーマットとともに過ごしてきたのだと痛感させられる。

あの頃、丁度『ローウィン』が発売された頃だったか。

《敏捷なマングース/Nimble Mongoose》が《目くらまし/Daze》の援護を受けて駆け抜ける青緑+α「スレッショルド」

《壌土からの生命/Life from the Loam》で延々《不毛の大地/Wasteland》を使い回し、サイクリングランドで手札を増やし、《突撃の地鳴り/Seismic Assault》でとどめを刺す「アグロ・ローム」


《行き詰まり/Standstill》下で時間を稼ぎつつ、《ミシュラの工廠/Mishra’s Factory》をレッドゾーンへ送り込み、《正義の命令/Decree of Justice》で盤面を制圧する「ランドスティル」




数年後、それらは
「除去耐性はないけど、この1マナも結構強いよ。3点、3点、3点、ほらね?」
「トリプルシンボルなんて出ないよ、だから土地だけで20点与える方法を思いついた」
「EOTに1/1が湧くだって?面倒だ、4/4飛行付きを4体ほどくれてやれ」

と随分荒っぽく進化を遂げてしまうのだが、何はともあれそういう時代。





そんな、気恥ずかしいほど荒削りで、がむしゃらだった時代を、今となってはもう懐かしく思う。








前置きが長くなりましたが、皆さんおはようございます、こんにちは、こんばんは。
久々にライターのりょーちんです。


普段は個人のブログ(Diary Note)を持っているということもあり、あまりこういう場でプライベートな話をすることは避けていたのですが、今回はみなさんご存じDJ 岩showから
「好きなこと書いてええんやで!」
とお墨付きを頂いたこともあり、少しだけ思い出話をさせて頂く運びとなりました。



とは言え、

「あー、筆者はぁ、与謝野晶子と自転車の町として知られる大阪府堺市に生まれぇ…」

みたいな話を聞きたい人はいない、いてほしくない、いたら困るということで、

私がマジックというゲームの世界に復帰してからの6年間-いつの日か、かけがえのない日々として思い出すであろう日々―の話に、少しだけお付き合い頂ければと思います。


あ、ブラウザバックしないでね。ちゃんと壮大なオチも用意してあるから。







2008年、春。

私はと言えば、ロクに授業にも出ず部室(実は体育会系なのだ)に入り浸るダメ部長として鈍色の青春を謳歌していたのだが、

そんなある日、いつも通りにカツ丼片手に部室の扉を開けると、懐かしい小さな紙切れを手にする後輩達が目に入った。


A「…っしゅけんでアタック!…2点で!」
B「アンタップ、アップキープ、ド…」


マジックじゃないか! 俺も大昔にやっていたよ! 懐かしいなぁ、《変異種/Morphling》は元気か? 《マスティコア/Masticore》はいい加減禁止されたのか? レベルはまだ新種が生まれているのかい?



なんだこのバケモノは! 責任者出てこい!

と、『メルカディアン・マスクス』ブロックまでしか知らない私にとって、この3マナ3/4、使いづらいがメリット能力もちというのは少々刺激的で、更にその後“マッドネス”という能力語の解説を受けてディスカードがメリットにもなる、ということを知ってからこの義憤は加速したものだ。

とは言え、察しの良い読者諸兄はお気づきかもしれないが、この時代に《アヌーリッド》というのも実は大概アンティークの域で、彼らもまた、懐古の情とともに押入れから引っ張り出してきたのだということをのちに知るのだが。




2008年、夏。

そして月日は少しだけ流れ、そのころには私ももうどっぷりとマジック再開の流れに取り込まれていたわけで。

気づけば古い資産といくばくかの新規購入で組めたショックランド混じりの「ATS(※)」や、「Pox」といったデッキを手に、後輩達に混ぜてもらうことも最早日常風景と化していた。



※ATS:Anger Tradewind Survivalの略。《適者生存/Survival of the Fittest》を核とした黎明期のレガシー・デッキで、《憤怒/Anger》影響下で《ラノワールの使者ロフェロス/Rofellos, Llanowar Emissary》を展開、《貿易風ライダー/Tradewind Rider》で戻して出して《種子生まれの詩神/Seedborn Muse》に繋ぎ、毎ターンパーマネントを2つずつバウンスしていくというロック・デッキ。
ああ、書いていて懐かしい…《冬の宝珠/Winter Orb》や《対立/Opposition》も凶悪だった。



そんな中で『モーニングタイド』が発売し、是非スタンダード再開もしてみたいという野望が胸をよぎったのだが…


《変わり谷/Mutavault》。こいつが高い。


今でこそ異常と思えないが、初動3k前後というのは中々のぶっ壊れだったのだ。

で、(今もあるか分からないが)ネットのポイント制トレードでこれを4枚そろえるかどうか悩みに悩んでいた時、あるものが目に留まる。


変わり谷 25p
(中略)
Bayou  26p
Scrubland 20p
闇の腹心 13p





…1週間後、手元には4枚の《変わり谷/Mutavault》の代わりに、あこがれの黒いデュアルランドが1枚ずつと、私の知らない時代の黒きエース、ボブ・メイヤー4枚が揃っていたのだった。


そして、美しいデュアルランドの魔力に負けてのいくばくかの出資を経て、生まれて初めて真面目に組んだレガシー・デッキが誕生した。




Sample Deck
24land
4《吹きさらしの荒野/Windswept Heath》
3《血染めのぬかるみ/Bloodstained Mire》
2《樹上の村/Treetop Village》
3《Bayou》
2《Scrubland》
3《森/Forest》
3《沼/Swamp》
2《平地/Plains》
1《ヴォルラスの要塞/Volrath’s Stronghold》
1《死の溜まる地、死蔵/Shizo, Death’s Storehouse》


14creature
4《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》
4《闇の腹心/Dark Confidant》
3《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower》
3《ロクソドンの教主/Loxodon Hierarch》

22spell
4《強迫/Duress》
4《Hymn to Tourach》
4《剣を鍬に/Swords to Plowshares》
4《名誉回復/Vindicate》
3《破滅的な行為/Pernicious Deed》
3《師範の占い独楽/Sensei’s Divining Top》

The Rock!

ウルザ・マスクス期は、置物に触る為に緑をスプラッシュした黒コントロール(最終的には色が逆転して「疫病王トリニティ」になっていたが)を使用していたということもあり、この選択は自然なものだった。

手札を検閲し、生物を除去し、大型生物で蹂躙する。


今でも私のマジックの原点はここなのかもしれない。
(それが今やギタ調・稲妻・殴打頭蓋であったとしてもだ)






さて、「疫病王トリニティ」の戦略的優位性や、疫病王をタイプミスして「液尿王」になってしまったことについてももう2時間程語りたいのだが、

かくして、初めてのレガシー公認大会@Big Magic日本橋店に喜び勇んで向かった時の話に切り替えていこう。


唐突ですが、皆さんには忘れられない試合がありますか?

敗北の涙、勝利の喜び、様々なものがそこにはあると思います。


私にもそんなたくさんの思い出がありますが、この日、初めて自前のレガシー・デッキとともに戦ったすべての試合は、それらとはまた別の次元で忘れられないものだったのです。


それではまさかのレポート、行ってみましょう!


1戦目 「赤黒ゴブリン」

G1
相手先手《Badland》から《ゴブリンの従僕/Goblin Lackey》!
これがゴブリンか!でも相性はいいはずだ!

が、《剣を鍬に》(以下StP)を握っていないが為に相手の展開を自由に許してしまい、あっという間に《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》で没。


G2
今度は大丈夫!しっかりStPも《破滅的な行為》もあるぞ!

序盤の攻防を何とかいなし、《ロクソドンの教主/Loxodon Hierarch》でライフもギリギリ保っている。相手の場は土地ばかり。これはいけるか!?

相手「《燃え立つ願い/Burning Wish》プレイ」
私「は、はい…(何が出てくるんや…)」
相手「《総帥の召集/Patriarch’s Bidding》、私はゴブリンで」
私「」



何故か負けた。(すっとぼけ)



2戦目 「???」

G1
相手が相殺しかプレイしてこないのを傍目に《樹上の村/Treetop Village》で7回ほど殴打。

G2
同上。

のちの「樹上に14回殴られて死んだ少年(現名:TTW)」は日本レガシー選手権をスイスランド1位で通過したり、奇跡の講習会を開いたりするようになるのだが、それはまた、別のお話。



3戦目 「BTB」

G1
カウンターガッチリ決められて《ヴィダルケンの枷/Vedalken Shackles》から逃れられず敗北。青が嫌いになった原因。

G2
またも《ヴィダルケンの枷/Vedalken Shackles》に苦しめられるが、何とか引いてきた《踏み吠えインドリク/Indrik Stomphowler》!

そんなもん入れてたのか…と言われそうだが、

相殺に引っかからないから強い、という判断だったはずだ。

これが無事通り、憎っくき枷を破壊することに成功したのだが…それが相手の方が1枚上手、2枚目の《ヴィダルケンの枷/Vedalken Shackles》で見事にインドリクに攻められる悲しい展開に。

何とか生物をもう1枚送り込まねば…ということで、《Force of Will》を《根絶/Extirpate》してからの《闇の腹心/Dark Confidant》。

今度はこいつが枷の餌食になるのだが…

相手「よし! FoWはないからボブが強いぞ! 」

公開、《妖精の女王、ウーナ/Oona, Queen of the Fae》。

ギャラリー爆笑、相手爆笑、私も爆笑。

30秒後、そのウーナに殴られて死んだのもまた別の…ではなく本当のお話。





ちなみにこの「他人のボブでウーナをめくった男」は、皆さんご存知GP静岡の「プロレスマジック」(←http://urx.nu/idNFにリンク)のメイン司会者、DJ SEIGOその人である。

昨日もこの御仁とGP京都に持ち込むデッキの構築について長々と議論していたのだが、奇縁は良縁と、そんなことを思わずにはいられない。



4戦目 Landstill


G1
もう青いのやだ!3枚引かれるの嫌い!(幼児退行)

G2
《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower》を農場に送られて0ゲインした瞬間に、何か心の中の大事なものが壊れた。

ちなみにこの男も後にPT京都サイドレガシーを制し、今や西日本を代表するコンボ使い、「ドヤ顔マイスターのdome」として広く知られている。

奇縁は良縁、今思いついた単語だがなかなか深みがあるだろう。




1-3!




この圧倒的敗北を糧に私は更なる調整を…具体的にはオサイフの力で《タルモゴイフ/Tarmogoyf》と《思考囲い/Thoughtseize》を購入し、大阪の草の根イベントへひたすら足を向ける時代が始まったのだ。







2008年、秋。

そして更に時は流れて。

安定して勝ち越しが出来るようになってきたのもこの頃である。


今はもう開催されていないとある草の根イベントに参加した際に、私にとって衝撃的な事件が起きることになる。



いつも通り土地単に泣くまで《幽霊街/Ghost Quarter》されたり、ドラゴン・ストンピィに1T目《血染めの月/Blood Moon》されたりしてふて腐れて迎えた最終戦。





相手は初動《火花の精霊/Spark Elemental》を走らせてくる。
これが赤単バーンでなく他に候補があるのなら教えてほしい。

なんやかんやと《ロクソドンの教主/Loxodon Hierarch》で持ちこたえたり、順当に焼かれたりして3本目。

お互いにリソースを使い果たして、何とか更地に《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower》(《タルモゴイフ》を入手してもまだ使っていた)を着地させた時のことである。

相手の手は2枚。残された選択肢はあまりないが、こいつを処理しなくてははじまらないといった辛い所か。

そんな時。

突如、相手が爆笑したのだ。

なんだなんだなんだ、どうしたんだ。

そしておもむろに山を3枚寝かせて…《ボール・ライトニング/Ball Lightning》!



RRR! 1/1! トランプル!


この笑いのエッセンスを煮締めたような物質を前にたじろぐ私。

どうすればいい。

《ドラン》でブロックするのは容易い。
しかしそれはこの相手の渾身のネタを台無しにする行為に他ならない。

ならばスルーするか?
それはそれでダメだ、ただ通してやるのは相手への侮辱だ。
「…エンドにサクリます」なんて台詞を、この空気で言わせるのは忍びない。

いや待てよ?実はネタのフリをして…そうか!この男、気が触れたフリをして、この《ドラン》を突破する術を持っていたという訳だ!そうに違いない!



「《火炎破/Fireblast》ケア!通します!」

実は相手の手には特に何もなく、それどころかこのデッキは「歩く火力バーン」なるデッキだった(《ドラン》を見て全てを悟った)訳で、この後トップした《硫黄の渦/Sulfuric Vortex》で見事な自害を果たすのだが…



この男こそ、みんな大好きDJ 岩showであった。

そんな試合を通じて、私の中でマジック=プロレス説が芽生えるのだが、それはそれとして、この愉快な男と是非また試合がしたくなった私は、いつも根城にしていた店を紹介し、そこの大会で再び会いまみえることを約束して岐路に着き…
その約束はさほど時を経ずに果たされることになる。

そして、彼もまたBig Magicの愉快な常連客の一人として私の6年に渡るGolden Ageを語る上で、欠かせない人物になったという訳だ。

読者諸兄にも、マジックを通じて知り合ったかけがえのない人々というものがあるだろう。
マジックを通じて体験した、かけがえのない経験もあるだろう。

私の黎明期からの知人に、よく
「僕達が爺になった時、その頃には”大昔に米国で発売されたレトロゲーム”になっているであろうマジックを片手に、『お前さんに《Ancestral Recall》を《誤った指図/Misdirection》されるのはこれで100度目じゃよ』みたいな会話がしたいね」
というのを口癖にしている人がいる。


本当にそうなるかどうかは別として、だけどこれは何とも温かみにあふれた素敵なたとえではなかろうか。



さて、まだまだ思い出していけば笑いと涙(笑いすぎて出る方)の日々は続くのだが、今日はここで筆を置くこととしたい。


これを読むあなたのこれからにも、そんなGolden Ageがあらんことを。








坂本力祐

関西で精力的に活動を続けているレガシープレイヤー。りょーちんの愛称で親しまれている。
一部では《豪腕のブライオン/Brion Stoutarm》コレクターとしても知られており、foilの所持数は4000枚を越えるという。


主な戦績
WMCQ2013大阪併催レガシー BCLvsKMC優勝

「りょーちんのMad Sappy Suckers」
第1回 “A Day at The Mazes”
第2回 “Like A Ruling Stone”
第3回 徹底分析!プロツアー『神々の軍勢』モダン構築戦!

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GP北九州後編 レガシー選手権BMO Legacy メタゲームブレイクダウン/そして強くなるために
闘将(たたかえ)!サラリーマン!~GPT神戸@新大阪レポート~

 
 
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