主に《アタルカの命令》の為に緑がタッチされた赤単です。
プロツアー直前から急速に勢力を伸ばしてきたデッキタイプであり、前評判以上の赤単の速さと強さを誇示していました。
"Damage 4 Wins!"はこれまでデッキ・コンセプトとマイナー・ギミックからデッキリストを組む。という形でした。
今回は環境のトップスピードのデッキがプロツアーを優勝したということもあり、既存のデッキリストからその動きや採用の理由を、4ターンキル目線で分かる範囲で解説していきます。
(独自のリストを紹介するというのがあくまで"D4W"のコンセプトなので、既に結果を残して広く知られたリストの考察を行うという今回の番外的な内容が、第2.5回というナンバリングの理由です。)
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『枚数』
D4Wの第2回では、第1ターンから第4ターンにて、順番に1マナから4マナの呪文を唱えるのに適した枚数という文章を書きました。
ザックリ、土地が24枚。1マナが9、2マナが8、3マナが7、4マナが6。フリー枠が6。というものです。
では、今回のデッキリストはどうでしょう。
まとめてみましょう。
土地20。1マナが17、2マナが14、3マナが6、4マナが4、そして7マナの《強大化》が1。
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土地が少なく、1マナ・2マナのカードの枚数が特に多いことが分かります。
パッと見でも、第1・第2ターンの動きに困ることはないでしょう。
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『第1ターンのアクション』
デッキの1/4にもあたる17枚の1マナのカードですが、実際にメイン戦・先手の"第1ターンのアクション"として想定できるものはどれだけあるでしょうか。
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1つは、D4W第1回のデッキにも採用している《鋳造所通りの住人》4枚です。
第2・3ターンのアクション次第では爆発的な"打点"を生むのが特徴的なこのクリーチャーは、逆に登場が遅れれば遅れるほどパワーの落ちるカードでもあります。
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《僧院の速槍》4枚も同様です。速攻がある分、《鋳造所通りの住人》より後半でもパワー不足になることは少ないですが、早いターンに展開しておきたいカードです。
もう1枚。《激情のゴブリン》も、相手がブロッカーを展開する前に出しておきたいので、相手より先手を打った展開が必要となる1枚です。
逆に、それらの展開を控えてまで序盤に《乱撃斬》を相手プレイヤー本人に撃つということはスタンダードでは"ない"と断言して問題ないと思います。
《稲妻の狂戦士》も、遅いターンに疾駆とパンプ能力で走った方が強い1枚です。
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《鐘突きのズルゴ》は"第1ターンのアクション"としても申し分ありませんが、疾駆の分だけ、プレイの順番的には優先度を下げる場合もあります。
混雑した盤面ではデメリットが浮き彫りになることもありますが、いつでも安定した強さがあるのが特徴です。
このように、同じ1マナでもそれぞれのカードをみていくと、"第1ターンのアクション"としては《僧院の速槍》《鋳造所通りの住人》《激情のゴブリン》の9枚が用意されていることが分かります。
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『第2ターンのアクション』
2マナのカードは《ドラゴンの餌》《稲妻の一撃》そして《アタルカの命令》です。
《乱撃斬》同様、《アタルカの命令》は"第2ターンのアクション"としては、どのモードも不適切です。
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《ドラゴンの餌》と《稲妻の一撃》の2種8枚が"第2ターンのアクション"として用意されているものです。
ただ、"第1ターンのアクション"の優秀なクリーチャーたちと異なり、《ドラゴンの餌》のゴブリン・トークンの打点は他の2マナ・クリーチャーと比較して高いものではありません。
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赤単色でも《戦名を望む者》や《国境地帯の匪賊》の方が、より高打点です。
そして《稲妻の一撃》はクロック(継続的なダメージ)でもありません。
この2種類がメインのアクションとして用意されているのは、どうしてでしょうか。
その理由は、D4Wの第1回・第2回では意識的に省略した項目でもあります。
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『自分の行動』『相手の妨害』
《ドラゴンの餌》と《稲妻の一撃》は、カード・タイプも及ぼす効果も大きく違いますが、ある1つの共通点があります。対戦相手の"妨害"に強いというところです。
《戦名を望む者》も《国境地帯の匪賊》も、相手の《乱撃斬》などで簡単に死亡してしまいますが、ゴブリン・トークンは《焙り焼き》によっても1体生き残ります。
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この1体を(最後まで)活かそう。というのが、"単体除去への耐性力"という点で、選択の最大の理由になっています。
《羊毛鬣のライオン》のようなハイスペックなブロッカーによって、1体のアタックが通らなくなるのを防ぐ《稲妻の一撃》も同じです。
こちらの攻撃をいかに"通し続けるか"を見据えての選択となっています。
※ブロッカーを排する力は《稲妻の一撃》より《焙り焼き》の方が強力ですが、やはりプレイヤーに入らないのは打点を考慮する上でデメリットです。
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『第3ターンのアクション』
3マナのカードは《軍族童の突発》4枚《ゴブリンの熟練扇動者》2枚の2種類6枚です。
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どちらも"第3ターンのアクション"として優秀な2種類ですが、《軍属童の突発》の枚数が勝っているのは《ドラゴンの餌》の採用理由同様、対戦相手の妨害に強いことです。
(続く《かき立てる炎》との相性の良さもありますが、《ゴブリンの熟練扇動者》も、その目線では劣るものではありません。)
《ゴブリンの熟練扇動者》はデッキ内では非常に高い打点を持つものの、やはり《乱撃斬》1枚でストップしてしまう脆弱性から枚数が控えめです。
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『第4ターンのアクション』
ここが今までと最も違うところです。
今回のデッキは入っている土地が20枚ということもあり、安定して第4ターンに4枚目の土地を置くことが難しいです。
逆に20枚は入っているので、第3ターンに3枚目の土地を置くことまでを想定しているともいえます。
前回の考え方でいうと、先手3ターン目の枚数に相当する、「9枚束」6つにそれぞれ土地3枚、残る6枚束1つに土地を2枚入れると、6×3+2で丁度20枚です。
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6枚束にも同じ3枚を入れた方がより安定すること、1枚が赤マナの出ない《森》であること、1枚がタップ・インである《奔放の神殿》であることから、21枚目の土地として《山》がもう1枚あった方が、より"安定"に近いです。
爆発力の維持を想定する場合は土地を20枚ピッタリに抑えることは、とても有用です。
些細な好みの違いのところのようにも思えますが、スペルと違って土地なので、6ゲームに1度程度は確実に影響するところです。
"事故"を嫌うべき環境なのか、“押し込む”べき相手が多い環境なのか。環境を読む力が試されます。
いずれにしても第4ターンに4枚目の土地を置くことを想定していないということは、4マナのアクションを唱えることが本来困難です。
採用されている4マナのカード《かき立てる炎》は召集能力を考慮した、実質的に2-3マナ程度のカードとして考えられています。
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『軽いカードという弱さ』『選択肢という強さ』
土地と4マナのカードが少ない、ということは第4ターンに持っているハンドは、土地でも4マナのカードでもない複数のカード。主に1-2マナのカードが複数枚あるということになります。
ハンドにあるのは第2・3・4ターンにドローしたカード、第1・第2ターンのアクションで優先度を落して使わなかったカードなので、《稲妻の狂戦士》《鐘突きのズルゴ》、そして《アタルカの命令》などが候補です。
これら9枚のうち1枚と、ドロー・カード2~3枚ということになりやすいと思います。
その2枚をダブル・アクションとして使うということになります。
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デッキ構造のテーマである"相手の妨害に強い"という考え方が、ここでも活かされます。
ダブル・アクションを取れば、1枚が妨害されてももう1枚が活躍するという、物量作戦的な対妨害アクションとも言えるでしょう。
構造的には多くの場合が1マナ+2マナという動きですが、時々2マナ+2マナや《強大化》(探査)という動きもあります。
最大ですと《鐘突きのズルゴ》+《ドラゴンの餌》+《かき立てる炎》召集のようなトリプル・アクションも想定できます。
また、そこまでのダメージの積み重ね方(ダメージ・フロー)が抑え目なことから、第4ターンがラスト・ターンでないことも多いです。
第5ターンに勝つ為に盤石の状態に持っていく為のアクションを取るターンという性質もあります。
ここが1,2,3,4とマナとターン目を揃えて順番に出していたD4Wのデッキと大きく異なります。
このデッキでは、第4ターンでのダブル・アクションを重要なアクションとして踏まえて、第1ターンから展開するカードの選択も考えていくことになります。
Damage 4 Wins!
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今回
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逆に言えば、土地と重いカードが入っていないということは、カードの強さとターンの経過が比例しません。
第1ターンに使うようなカードを、第3・4ターンに使うということは、"軽く・弱いカードを使いまわす"とも言えるでしょう。
そうしたなかで、盤面や相手のアクションに合わせて最適なカードを常に選択していくということは、非常に難しいところでもあります。
特にキー・カードでもある《アタルカの命令》はアタック・クリーチャーの数だけ打点が上がる、強烈ながら出来るだけ"遅いターン"に打ちたいカードです。
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しかしハンドに溜めてクリーチャーの展開を優先した結果、相手の《命運の核心》が間に合ってしまったのでは、その効果は著しく減少します。
このように、先出し・後出しで効能がガラリと変わるカードが多く採用されています。
より強く運用する為には、相手のデッキ構造やハンドの内容を把握する知識や能力が要求されます。
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『4ターンキル』
D4Wの第1・第2回のデッキは4ターンキル・デッキです。
目標としたのは、初心者を含め誰が使っても4ターンキルが行える・組めるデッキです。
第1回の冒頭で《実物提示教育》は何ターンキルか。という話を書きました。
1ターンキルすることも可能ではあるものの、デッキを考えると軽量ドローによってパーツを集めて《全知》をハンドに《実物提示教育》を唱える。となると、3ターンキルと言えます。
では、このデッキのキルターン数が何ターンかと言えば、5ターンが一番近いです。
3ターンキルは非現実的です。(山3枚 速槍4枚 乱撃斬2枚の順が、自力で達成できるほぼ唯一のルートでしょうか)
妨害耐性の為に2-3マナの高打点カードをあまり採用していないこともあり、実際の4ターンキルも不安定です。
それでも緑マナと《アタルカの命令》を引ければ多くの場合で4ターンキルなので、可能性として少ないということもありません。
今回のような『4ターンキルのルートを残しながら妨害耐性の為にスピードを遅くする』というのは、歴代スタンダードの赤単デッキでは頻繁にみられるデッキの組み方です。
ただ、相手が"妨害に使うカードがなんなのか"と、それに対する"最も妨害耐性のあるカードがなんなのか"をメタゲームから読み取る為には、実際に沢山のゲームをこなす必要があります。
※一例ですが、「青白黒ドラゴン」の台頭によって、《包囲サイ》を擁するアブザンの減少と、《龍王オジュタイ》に弱いという点から《ゴブリンの踵裂き》が優先度を落していたりと、頻繁かつ流動的にパーツの入れ替えが求められます。
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『デッキの組み方・回し方』
デッキを組む上で、メタゲームを考慮に入れるのは当然でもあるのですが、最初からメタ的なカードを多く採用すると、自分のデッキの"強い動き"というものが分からなくなってしまう人もいると思います。
また実際のゲームに触れる機会の少ない場合は《ゴブリンの熟練扇動者》より《軍族童の突発》が優先されて多く採用されている理由が分からない。というようなパターンも出てきます。
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成績を残したリストを75枚コピーするような場合、メタゲーム的に強い・弱いをハッキリさせていないと、プレイの手順にも差が出てきてしまうことがあります。
そうなった場合は、まずD4W 第1・2回のように"メタゲームを全く考慮しないひな形"を組んでから、"メタゲームに対応させるべく変形"させる。という手順を踏むことを推奨します。
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『サイドボード』
D4W第1・2回ではメタゲームへの対応をサイドボードに一任する形でしたが、メインボードからメタに応じている場合では、サイドボードはより具体的な対策が取れます。
4枚ずつ取っている《大歓楽の幻霊》は低速コントロールに、《焙り焼き》は緑軸のミッドレンジに採用する。というような、明確な役割が割り振られています。
直近のリストでは、やはり《龍王オジュタイ》に対して攻勢を取れるカードが各デッキに採用されています。
個人的に《引き裂く流弾》がスタンダードのサイドボードに枠があるとは思っていませんでしたが、RPTQでベスト8に入った朴高志選手の純正赤単に採用されていました。
プロツアー・バンクーバー2015地域予選
東京大会 TOP8 - Boku Takashi(外部リンク)
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《龍王オジュタイ》《氷瀑の執政》の2種類を確実に撃ち落とせるので、有用度は高そうです。
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『何枚かだけ』
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Sample
Deck |