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森安元希
モダン・シーズン。グランプリ・シンガポール。
 
マジック・オリジンBOX予約キャンペーンEVERY DAY チャンス


Text by 森安元希









『モダン・シーズン』
5月末に開催された“モダンマスターズ・ウィークエンド”
に端を発するモダン・シーズンが隆盛を見せています。



7月はフライデー・ナイト・マジックのプロモカードに《流刑への道》が採用されているということもあり、
大会規模の大小を問わずにモダンの空気が色濃く出てきていますね。

国内のPPTQでも多くの開催店舗がフォーマットにモダンを採用しています。
比較的新設のフォーマットでありながらもモダンを嗜むプレイヤーの人口は既に一定数に達していますし(昨年のGP神戸の参加者人数が2270名)、
いわゆるスタンダード・プレイヤーとレガシー・プレイヤーが交流するフォーマットとしても人気が高いのが特徴です。
事前予約制のPPTQでは満席になっているところも少なくないようです。

更に6月中は第2週のGPシャーロットから毎週、GPコペンハーゲン、GPシンガポールと続けて三連続のモダンGPが開催されました。

最初のGPシャーロットでは、以前よりそのポテンシャルが噂されていた「エルフ・カンパニー(《集合した中隊》エルフ)」が優勝です。




5位には《グリセルブランド》+《御霊の復讐》をキーパーツとする「グリセルシュート」に《滋養の群れ》+《世界棘のワーム》を導入した



「グリセルショール(グリショールブランドなんて名前も)」が食らいつき、華やかな新アーキタイプとしての強烈なデビュー戦を飾りました。


15位の「ランタン・コントロール」はもしかすると名前だけではそのキーパーツを察することは難しいかもしれません。



《洞察のランタン》でトップを公開し、《グール呼びの鈴》+《写本裁断機》で相手のドローの質を著しく落とし続けるという
“史上最遅”とも言えるようなライブラリー・アウト・デッキです。


次いでのGPコペンハーゲンでは「マーフォーク」が優勝をさらいました。




青系のコントロールデッキに対して無双とも言える強さを誇るマーフォークが
トップ8に3人という青黒赤(グリクシス)カラーのコントロール系デッキが支配する環境を打ち破っての実力発揮です。
トップ8には他に同じく「マーフォーク」が一人、同様の《霊気の薬瓶》デッキである白単「ヘイト・ベアー」が一人と、
青系コントロール対アンチ・コントロールの色合いが強く出たGPとなりました。




『GPシンガポール』

最後に、先週末(記事執筆時)に行われたGPシンガポールの結果―…なのですが、
直近であることと、筆者がプレイヤー参加してきたということもあり、少し文章量を取って紹介させていただきます。

6月26-27日に開催されたGPシンガポールは参加者数1120人。
事前から発表されていた定員が1200人ということもあり、共に1300人を超えた前2回のGPと比べると少しだけ小規模となりました。
唯一のアジアでの開催ということもあり、60人を越える多くの日本人プレイヤーも遠征参加しています。

勿論、その内の多くの方がプロプレイヤーであったり、確かな実績・実力を持つプレイヤーたちです。
トップ8のプロツアー参加権利獲得は勿論、優勝を目指して情熱を燃やす人たちが殆どです。

※個人的な感想なのですが、GPはスタッフ参加や不参加が続き、市川 ユウキ選手や村栄 龍司選手、齊藤 友晴選手といった、
筆者自身が応援しているプレイヤーらと同じGPに出る、という機会に久しぶりに恵まれ、非常に感慨深かったです。

GPシンガポールの環境の総数としてはバーンからナヤ・ズーまでを含めた赤系のアグロが非常に多かったように思います。
これは"シンガポールの土地柄、バーンが多い"という事前情報とも一致していました。





『ロボッツ』

実際に自身の第1ラウンド(普段の無精がたたり、ノーBYEでの参戦です)の対戦相手も、赤単アグロでした。
《ニヴメイガスの精霊》と《僧院の速槍》を《ギタクシア派の調査》や《はらわた撃ち》といった0マナで唱える呪文でバックアップする形のものです。

これに相対した筆者の持ち込んだデッキは、「ロボッツ」です。
対戦相手同様、超軽量の呪文群を軸に、アーティファクトを連続展開するアグロデッキです。

《メムナイト》や《羽ばたき飛行機械》といった軽量クリーチャーを
《頭蓋囲い》や《電結の荒廃者》といったアーティファクトの数で強さが増すカードで打点に変える、というのがこのデッキの勝ち筋です。

古くから「親和(アフィニティ)」という名前で親しまれていたデッキタイプですが、
キーワード能力としての“親和”を持つカードの採用が0枚の形を区別して「ロボッツ」と呼ぶことが多いです。

ここ最近では《物読み》が採用されているかどうかが区分の焦点になっているでしょうか。



※《金属ガエル》や《マイアの処罰者》といった親和クリーチャーのカードまで採用している形は
今度は事故率を軽減する為に有色のカードを採用していないことも多く、「無色親和」として小区分されています。

勿論これらは細かい小区分の話なので、まとめて「親和」とされていることも多いです。

ひとまず大別して「親和」の話をしますが、GPシャーロットでは第3位に入賞しています。
2日目進出率も「双子」「ジャンド」に次ぐ3番手。

GPコペンハーゲンでもトップ8入賞こそないものの、同様に2日目進出率にて「双子」「グリクシス」に次ぐ3番手。
と、その戦績の安定性では「双子」に次いでの高さを保持しています。

使用デッキを決める際に、他にも幾つか候補はあったのですが、この戦績の安定性に惹かれて、手に取ることとしました。
またとても感覚的な話なのですが、スピード型のアグロを軸にしていることが“手に馴染む”印象も強かったです。

※グランプリ京都のサイドイベントの際に、全く初めて使用したのですが5勝2敗と好成績を残せました。
それ以降、使用した大会全てで勝ち越しの戦績を納めることが出来たのが大きかったです。





『ペストレス』

持ち込むデッキを決めてからは、何人かと実際に話し合いながら細かいパーツを決めていきました。
中には同様に「親和」を持ち込むことを決めていた村栄選手もいました。

その過程で、大きな分水嶺となった大会がありました。

6月21日にアメニティードリーム横浜店にて開催されたPPTQです。
これに筆者は参加していないのですが、優勝した片寄氏の「ロボッツ」のリストに強く感銘を受けました。




カタヨセシンゴ Robots

16land
1 《山/Mountain》
3 《空僻地/Glimmervoid》
4 《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》
4 《墨蛾の生息地/Inkmoth Nexus》
4 《ダークスティールの城塞/Darksteel Citadel》

24creature
4 《羽ばたき飛行機械/Ornithopter》
3 《メムナイト/Memnite》
4 《大霊堂のスカージ/Vault Skirge》
4 《電結の荒廃者/Arcbound Ravager》
4 《鋼の監視者/Steel Overseer》
3 《刻まれた勇者/Etched Champion》
2 《エーテリウムの達人/Master of Etherium》

20spell
4《オパールのモックス/Mox Opal》
3《溶接の壺/Welding Jar》
4《バネ葉の太鼓/Springleaf Drum》
4《頭蓋囲い/Cranial Plating》
4《感電破/Galvanic Blast》
1《四肢切断/Dismember》

sideboard
3 《窒息/Choke》
3 《血染めの月/Blood Moon》
3 《鞭打ち炎/Whipflare》
2 《摩耗/損耗/Wear/Tear》
2 《古えの遺恨/Ancient Grudge》
2 《頑固な否認/Stubborn Denial》



実際に「親和」のリストを見慣れない場合には、何が他と異なるかが直ぐには分かりづらいかもしれません。



実はこれまで4枚必須とされてきた《信号の邪魔者》の採用が、メインサイド合わせて全くないのです。

「ロボッツ」のクリーチャーはマナ域によって与えられている主要な仕事が明確に異なります。



2種類の0マナ(《メムナイト》《羽ばたき飛行機械》)は《バネ葉の太鼓》や《オパールのモックス》を活用する“潤滑油”。



1マナ(《大霊堂のスカージ》《信号の邪魔者》)はダメージレースに差を付ける“アタッカー”。



2マナ(《電結の荒廃者》と《鋼の監視者》)はアタッカー達を間接的にサイズアップやサポートする“サポーター”。



3マナ(《刻まれた勇者》と《エーテリウムの達人》)は生き残れば勝ちの“フィニッシャー”です。
※“対処されない2打点”と“超高打点”という、少し性質が異なる点がありますが、この2種類のどちらかを通して生かすことが大きな勝ち筋の1つです。

《頭蓋囲い》は追加の“フィニッシャー”であり、《感電破》や《もの読み》は“アタッカー”や“サポーター”を切らさない為のカードです。

主に《鋼の監視者》を《稲妻》から助ける《溶接の壺》は、《オパールのモックス》からの高速展開もサポートする上で、
とても受け身なようなイメージの能力ですが、アグレッシブに攻めることを可能にしています。

《信号の邪魔者》の喊声が、数体展開出来ている第4ターンあたりからしか高い打点を作らないことから、
“アタッカー”としての信頼性が少しだけ低いことを実感し始めていた時にこのリストと出会い、
実際には大会前日まで悩んでいたのですが、《信号の邪魔者》を採用しない形での参戦を決定しました。

それまでの調整の過程で得た経験も活かすべく、友人たちともこのリストの情報を共有した上で
数枚の変更をしたものを持ち込む形としました。


Sample Deck

16land
1 《山/Mountain》
3 《空僻地/Glimmervoid》
4 《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》
4 《墨蛾の生息地/Inkmoth Nexus》
4 《ダークスティールの城塞/Darksteel Citadel》

24creature
4 《はばたき《飛行/Flight》機械》
3 《メムナイト/Memnite》
4 《大霊堂のスカージ/Vault Skirge》
4 《電結の荒廃者/Arcbound Ravager》
3 《鋼の監視者/Steel Overseer》
4 《刻まれた勇者/Etched Champion》
2 《エーテリウムの達人/Master of Etherium》

20spell
4《オパールのモックス/Mox Opal》
2《溶接の壺/Welding Jar》
4《バネ葉の太鼓/Springleaf Drum》
4《頭蓋囲い/Cranial Plating》
4《感電破/Galvanic Blast》
1《急送/Dispatch》
1《アーティファクトの魂込め/Ensoul Artifact》

sideboard
3 《窒息》
1 《血染めの月》
2 《鞭打ち炎》
2 《摩耗+損耗》
2 《古えの遺恨》
1 《頑固な否認》
1 《呪文貫き》
2 《思考囲い》
1 《大祖始の遺産》
 



3マナ域の増量と《アーティファクトの魂込め》の採用は“フィニッシャー”の増量を意味しています。
特に《刻まれた勇者》は「グリクシス(青黒赤)」と「ジャンド(黒赤緑)」が《コラガンの命令》を複数枚採用し始めている中で、
唯一と言っても良いほどのアンチ・カードなので、元々の案である4より減らすという考えはありませんでした。



《アーティファクトの魂込め》が一番悩んだ箇所で、“サポーター”である《幽霊火の刃》と枠を争い、
「より直接的に勝ちに行くか」「負け筋を減らすべきなのか」という二択は環境に大きく左右されるところでした。
会場での直前予選の様子がカンパニーデッキや赤系アグロ、そして「ロボッツ」が多いということで、
対コントロール・カードである《幽霊火の刃》を《アーティファクトの魂込め》にしました。

《信号の邪魔者》という“アタッカー”を減らしたことで“サポーター”の優先度も下がり、
《稲妻》の的として餌食となりやすく即時性のない《鋼の監視者》は3枚に抑えています。

サイドボードの《思考囲い》は「グリセルショール」と「感染」を想定しています。
基本的には環境で二番手の速度を誇る「ロボッツ」ですが、
一番手を代表するこの二つのデッキには干渉手段の少なさから明確に相性が悪いのがネックです。

「グリセルショール」だけを見れば2枚目の《大祖始の遺産》というような墓地対策カードが、
「感染」だけを見れば《四肢切断》《急送》、《シルヴォクののけ者、メリーラ》といったカードがより有効なのですが、
このどちらかにヤマをはるよりも、どちらにもある程度有効で、その他《神々の憤怒》といったカードもケアしようと考え、《思考囲い》が最適であるように考えました。

サイドボードの《窒息》の枚数と《頑固な否認》と《呪文貫き》の優先順位だけが
最後まで考えても納得の行く答えが出なかったのですが、前日の晩には、この75枚でGPシンガポールを戦い抜こうと決めました。




『第1ラウンド』

前期の年間プレインズウォーカーポイント832点(参加グランプリ1回)と、個人的にMTG開始年以来の低い点数の為に
不戦勝(BYE)なしで参加することになったGPシンガポール。目標は「2日目進出」です。

この後を占う緒戦第1ゲームはマナソースを引き込めずダブル・マリガンからスタート。
土地をもう1枚引いて、2ターン目に出す《鋼の監視者》が機能し始めれば。といったところ。

先述のように《ニヴメイガスの精霊》からスタートした対戦相手は、
続く2ターン目《僧院の速槍》《僧院の速槍》の快進撃。




これを《羽ばたき飛行機械》でキャッチすると―…《はらわた撃ち》がプレイヤーに飛んできて、
果敢が誘発して一方的に打ち取られる。だけでなく、《ニヴメイガスの精霊》の能力によって恒常的なサイズアップまで。

翌ターンのドローが土地でなかったことも含め、
一瞬にして既にどう足掻いても転覆できなくなったので、次のゲームへ。

「スペルに頼るスピード型のアグロ」であると判断した為、サイドからのインは《鞭打ち炎》と《呪文貫き》《頑固な否認》。
そして《ニヴメイガスの精霊》の存在から、相手のアーティファクト対策はその能力と“複製”が噛み合う《破壊放題》と決め打ちして、
《思考囲い》のインも行いました。
(※複製でコピーした《破壊放題》を《ニヴメイガスの精霊》が"食べる"ことで、実質的にサイズアップにも使えるからです。)

《メムナイト》と、受け手に回ることを考えて《頭蓋囲い》をアウトしました。


サイドin


サイドout




その後は《若き紅蓮術師》のあとに《鞭打ち炎》、
《破壊放題》に合わせて《溶接の壺》の展開と《ニヴメイガスの精霊》に《感電破》を合わせられたこともあり、
緒戦を勝利で収めることが出来ました。



《アクロスの十字軍》まで登場し、赤系アグロのなかでも想定していない形だったのですが、
爆発力に特化した代わりに継戦力を減らしているところを見抜いて意識したプレイングを行い、それが噛み合った形となりました。


第1R 「ニヴ=メイガス・アグロ」×〇〇




『第2ラウンド』

第2ラウンドの相手は、「アブザン・カンパニー」です。
こちらへの強烈な干渉手段が少なく、またスピード対決で勝るという点で、得意な相手の一つです。



ただ、メイン戦にて《カルテルの貴種》《悪鬼の狩人》、白黒土地といった動きに、
アブザン・カンパニーだという確証を持つに至るのが遅れました。

《悪鬼の狩人》への《感電破》を《集合した中隊》から飛び出てきた《呪文滑り》に対象を曲げさせられ、
《電結の荒廃者》と《頭蓋囲い》のプレイングの順番を間違えたことでキル・ターンが1ターン遅れ、
また、カウンターを乗せた《墨蛾の生息地》と、《頭蓋囲い》を装備させての《刻まれた勇者》のアタックの2択も間違えて、
1ターンの遅れが2ターンになり、2ターンの遅れが3ターンとなって、対戦相手に無限コンボまでたどり着かせてしまいました。
反省しきりの1ゲームです。より深く注意するように、気を引き締めました。

サイド後はダブル・マリガンで有色マナが使えず、手札のサイド・カードを活かせずそのまま薙ぎ払われました。



第2R 「アブザン・カンパニー」××



『第3,4,5ラウンド』

「スゥルタイ(青黒緑)感染」「ジャンド」「グリクシス・デルバー」という当たりです。
「ジャンド」「グリクシス」はサイド後《コラガンの命令》が飛んできましたが、


それを意に介さない《刻まれた勇者》の頼もしさに命を預けっきりのゲームが続きました。
サイドボーディング中、《血染めの月》が複数枚欲しいと思いながらも実際のゲーム展開では
相手は必ずと言って良いほど基本土地をサーチしてきており、ここを減らした今回の調整は失敗ではなかったと思いました。
消耗戦となる対ジャンド戦では《感電破》は抜く・減らすというアプローチを取るという話を
村栄選手から聞けていたのも、第4Rでは功を奏しました。

第3R 「スゥルタイ感染」×〇〇
第4R 「ジャンド」×〇〇
第5R 「グリクシスデルバー」〇〇




『第6ラウンド』

再びの「ジャンド」のお出ましです。
第3ゲーム、お互いのライフが相手3、自身5になる接戦となりました。
特に相手の場には《タルモゴイフ》の他に《闇の腹心》もおり、こちらには《溶接の壺》と2体のブロッカー。


お互いにハンドはなしなので、《闇の腹心》の公開がほぼ全てを決めるというところです。

互いに息を呑みながらの《闇の腹心》の公開は―…







《終止》。そして通常ドローは、《稲妻》。

力強い握手でゲームを畳みました。
ここからは負けられないマッチが続きます。

第6R 「ジャンド」×〇×



『第7ラウンド』


相対するは「グリクシス・コントロール」。



感心するほどの《謎めいた命令》の強さにおののきながらも、
《刻まれた勇者》が《グルマグのアンコウ》とのダメージレースを制しての勝利です。

第7R 「グリクシス・コントロール」×〇〇


『第8ラウンド』

「親和」同系戦です。
《物読み》を連続して撃たれて相手のハンドが補充されながらも、
こちらがよりダイレクトに勝てるカードを展開していた分で取りきりました。



またサイド後では《古えの遺恨》を先に引けたので、ストレート勝利です。

第8R 親和〇〇





『第9ラウンド』

個人的にGP静岡14以来の好成績となる"6-2でのバブルマッチ"です。勝者は二日目へ、敗者は弾けて消える。
この壁を乗り越えるべく立ち向かうのは既に4度目で、つまり過去の3度は負けているとも言えます。

今までよりも自身の能力の多くを詰め込んで、ゲームに向かいました。
対戦相手は「グリクシス・デルバー」です。

第1ゲームは絶好の先手キープハンド。
《メムナイト》《羽ばたき飛行機械》《鋼の監視者》《ダークスティールの城塞》《オパールのモックス》と《溶接の壺》、《感電破》。




1ターン目に6枚を展開し、“1ターン目に展開しすぎると弱い”と言われる「親和」においても、とても噛み合った強い展開です。
1度目こそ《稲妻》が《鋼の監視者》へと向かってくるものの、そこは《溶接の壺》で再生し、その後はその起動型能力でサイズアップをし続け、ライフを取り切りました。

第2ゲームも同様に早いターンから《鋼の監視者》が機能する初動で、なおかつ《バネ葉の太鼓》と《羽ばたき飛行機械》によって
《呪文貫き》を構えられるという対グリクシスへの最適解とも言える動きを取ることが出来ました。
2体の《羽ばたき飛行機械》のサイズが《鋼の監視者》と《エーテリウムの達人》によって《昆虫の逸脱者》を大きく上回った瞬間、
ゲームの勝利が確定的となりました。

第9R 「グリクシス・デルバー」〇〇


7勝2敗で2日目進出です。


勝った瞬間に、試合を視ていた村栄選手に背中をバンッと叩かれて激励されたのが印象深いです。
次の瞬間にミスプレイを指摘されたのはもっと印象深いですが、
自分の2日目進出への意欲を誰よりも知ってくれていたのも友人としての彼でした。

また、無敗で2日目進出を決め、トップ8へのキップに最初に手を伸ばした川崎 慧太選手も
関西へ遊びに行く際に良く一緒に遊んでくれる良い友人で、嬉しさはひとしおでした。


残り6回戦。
勿論理想としては全勝ならトップ8ですが、正直に言えば"ここまできたらマネーフィニッシュ(3勝3敗)したい"という気持ちでした。





『第10ラウンド』


自身初・2日目の緒戦。
対戦相手は「グリクシス・コントロール」です。

今更ですが、グリクシス多いですね!
第2ゲームで《粉砕の嵐》を打たれた時に、“あ、これは負けたかな。”



と少し思いましたが、続く第3ゲームでは《思考履き》で《粉砕の嵐》が墓地に落ちるとロングゲームになり、
除去を枯らしたところで《ちらつき蛾の生息地》が最後の4点を削るという、本当に辛うじてですがそのまま攻めきれました。

第10R 「グリクシス・コントロール」〇×〇


『第11ラウンド』

「グリクシス・デルバー」戦です。
第3ゲーム、伝家の宝刀こと《ダークスティールの城塞》+《アーティファクトの魂込め》が第2ターンに決まりました。
展開を控えてアタックを繰り返すものの《仕組まれた爆薬》で対処されてしまい、再展開に時間を要してしまうことに。
それでも《刻まれた勇者》が《グルマグのアンコウ》を乗り越え、最後の数点をもぎ取り、辛勝!

第11R 「グリクシス・デルバー」○×○


『第12ラウンド』


GPシャーロットを制覇した「エルフ・カンパニー」です。
知人と練習していた限りでは後手でも丁度一手、「ロボッツ」の方が早いことが多く、
《大霊堂のスカージ》の絆魂が機能し始めるとより好感触となるマッチです。




実際に第1ゲームは《召喚の調べ》から《再利用の賢者》で《頭蓋囲い》を破壊されながらも
《スラーグ牙》のライフ回復分を合わせて25点をピッタリ押し込みました。

第2ゲームは《エルフの大ドルイド》《背教の主導者、エズーリ》と繋げられましたが
能力を起動しても19点とわずかに足らず、返しで削りきれました。


2日目、3戦3勝で目標達成です。
ここまで自分でも驚くぐらいの好成績です。

残りの3戦全勝でトップ8―…と言うと少しだけ現実的かもしれませんが、
自分以上にその思いが強い人たちがひしめているラインでもあります。

第12R 「エルフ・カンパニー」〇〇





『第13ラウンド』

マッチング表の対戦相手の名前は、英語が拙い筆者でも直ぐに読めました。

Martin Juza選手。あの“ジュザ”です。

6度のGP優勝を誇る歴としたプロ・プレイヤーで、このシンガポールにも参戦していたことは知っていたのですが、
この地点で彼が持ち込んだデッキを知りませんでした。

もし情報を収集できて彼の使用デッキを事前に知っていたら、と、今になって少しだけ思わないでもありません。

彼のデッキは「スゥルタイ感染」でした。

「ロボッツ」が「エルフ・カンパニー」に一手早いように、「感染」は「ロボッツ」に一手早いのです。
それぞれ相手への干渉手段の少なさから、その早さの違いを埋めるには、除去(《感電破》《急送》)を引くか、
対戦相手がアクシデントにまみえるか(即ち事故)のどちらか、ということになります。

そして―…引けませんでした。
《溶接の壺》と《刻まれた勇者》という除去耐性を強烈に有する展開は、
逆に打点に欠ける展開とも言え、その差を埋める為にどうしても一度だけフルタップでターンを返さざるを得ませんでした。




既に《荒廃の工作員》は着地してしまっていたので、ハンド4枚のうち+4/+4するカードを2枚と《貴族の教主》がハンドに揃っていなければ、
返しで間に合う。と踏んだのですが、残念ながらそれらが揃っていました。
確率的にも少し分が悪いのは承知していたのですが、賭け時と踏んだことには後悔していません。

サイド後は《呪文貫き》をひたすら構えて、今度は相手のハンド4枚から+4/+4が4枚出て来なければ大丈夫だろう。と思ったのですが、



1枚目の+4/+4修整を通したあと、おもむろに墓地を5枚追放されて《強大化》が飛んできました。浮きマナは―…丁度2つ。

既に《頭蓋囲い》を装備しているクリーチャーがあり、この《呪文貫き》が《頑固な否認》であったなら。
もしくはサイドボードの3枚目の《窒息》が《呪文滑り》であって、それを引けていたなら。

当たり運の要素も強くあるとはいえ、最後まで悩んでいたところの2択の違う方を引いてしまうと、
どうにも後悔してもしきれない部分があるのも正直なところでした。

これでトップ8の芽はなくなったのですが、残り2戦。
とりあえずやれるところまでやろう、と、肩の荷が少し降りたのも事実です。

第13R 「スゥルタイ感染」××




『第14ラウンド』

上位卓にはその姿が一定数いたように思いますが、初当たりの「アミュレット(《精力の護符》)」デッキです。

《迷える探求者、梓》を《感電破》で焼くと後続がなくなり、マナはあるものの何も展開されずにメインを取りきれました。
実は「感染」同様、速度の差からあまり得意とは言えない相手です。
《召喚士の契約》など《原始のタイタン》へのアクセスカードを1枚でも引かれていれば、結果は違いました。

サイド後は《紅蓮地獄》と《原基の印章》という2枚のダイレクトな対策カードが《思考囲い》によって見えました。
ただし土地が詰まっていることと赤マナがないことから《原基の印象》を優先して落とし、
2ターンだけアンタップインの赤マナを引かれないことをお祈りして《鋼の監視者》を展開しました。

願いは届き、タップインの赤マナが起きる直前に《紅蓮地獄》の圏外へとサイズアップしたサポーターたちによって、2体の《墨蛾の生息地》が丁度10点の毒を弾き出していました。

第14R 「アミュレット」〇〇





『第15ラウンド』

関西のプレイヤー(現在は九州に在住)、Yasuhiro, Tasaki選手との対戦となりました。
オポーネントの変遷も含め、ここまでかなり近しい同じ勝ち負けの辿り方をしており、
時々場内で顔を合わせては励まし合っていたのですが、対戦はお互い真剣に挑みました。

Tasaki選手の使用デッキは、「ジャンド」。

簡単に勝てる相手ではありませんが、簡単に負けてしまう訳でもありません。

初めての二日合わせての15回戦に疲労が多少あり、自身の思考が鈍りつつあるのも自覚してきていました。
今までの試合よりも少しだけ思考時間を取るように意識して、
メモ帳の頭に繰り返し書いた“ミスをしない”という文を何度も何度も読み返しました。




取って取られての3ゲーム目。
中盤、《羽ばたき飛行機械》《メムナイト》《大霊堂のスカージ》、《電結の荒廃者》と勢い良く展開した返しに
《魂の裏切りの夜》が唱えられたところが分け目だったように思います。




手札には《呪文貫き》があるものの唯一の色マナの発生源である《バネ葉の太鼓》は寝ている。

《電結の荒廃者》がどこまでアーティファクトを“食べ”、何を残すのか。
焦点はそこに絞られながらも、中々決まりませんでした。

相手のライフは8。
《バネ葉の太鼓》《メムナイト》《ちらつき蛾の生息地》を"食べ"て、
《大霊堂のスカージ》にカウンターを4つ乗せるのか。

もしくは《メムナイト》と《ちらつき蛾》だけを食べて、
《バネ葉の太鼓》と《羽ばたき飛行機械》を生かすことで色マナを確保しつつ
《大霊堂のスカージ》にカウンターを3つ乗せるのか。




ここで考えられる相手の展開によってはどちらの選択でも裏目があり、
またおそらくはどちらでもダメということはなく、どちらかは正解に近い選択であるようにも思っていました。

結果としてカウンター4つを乗せるパターンを選び、その後《バネ葉の太鼓》を引いてきて
《羽ばたき飛行機械》で構えた《呪文貫き》を、スカージに撃たれた《稲妻》のあとの《ジャンドの魔除け》に合わせて丁度勝ったのですが、
後者では《ジャンドの魔除け》→《稲妻》と動かれるとライフに余裕を持たれたまま負けており、
また感想戦で明らかになった相手のハンドの《高原の狩りの達人》によって、その後明らかに巻き返されていました。

第2ラウンドの時に強く感じた、“迷ったときは攻めていく”を実践し、再度実感したマッチとなりました。

第15R ジャンド 〇×〇






『スイスラウンド終了』

長くも短い全15ラウンドが終わりました。

既にスイスラウンド1位が決まっていた川崎選手。

そして筆者と同じ「ロボッツ」というデッキを選んでいた人見選手。
―…事前に話していた村栄選手とデッキシェアされていたということもあり、一際注目していた選手でした。

グランプリ京都に続かんとする勢いの高橋選手。

日本人プレイヤーが3人、トップ8へと進出しました。

―…「アブザン・カンパニー」戦で沢山のミスをしなければ。
―…「ジャンド」のボブと消耗戦になる前に仕掛けられるタイミングはなかったか。
―…「感染」だと知っていればマリガンしたかな。

負けた試合を思い浮かべながら、あと一歩だけ、一勝だけ、自分に出来たことは無かったかを考え、
沢山の実力不足、努力不足をかみしめながらも、三人の好成績を祝いました。


『決勝と優勝』

高橋選手がトップ8を、川崎選手がトップ4を決めました。

そして両氏を打ち倒した人見選手が、決勝の「ロボッツ」同型戦に勝利し、優勝しました。

人見選手が持ち込んだデッキリストが完成するまでに至る道筋や長さを、
またその果てしない練習量を、それまでにもほんの少しだけでも聞きかじっていたので、
同型が勝ったということに喜ばしさはありつつもそこに悔しいという気持ちは全くありませんでした。

優勝、本当におめでとうございます。


『9位以下の順位』

トップ8発表後、9位以下の順位も次いで発表となりました。
10位から20位までが36点(12勝3敗)の横並びです。
なお2日目唯一負けたMartin Juza選手は―…9位。4人いた37点で唯一、トップ8を逃していました。


そして"GENKI MORIYASU"は―…19位。

初日終了地点からのオポの低さはいかんともしがたいものでしたが、
無事500ドルのマネーフィニッシュとなりました。
マネーフィニッシュの最少金額300ドルからの大幅にアップです。

初海外GP。初2日目。初マネーフィニッシュ。

沢山の幸運な初めてに恵まれた大会となりました。

そして、もう一つ。初の、プロポイント。3点。

自身のマジック暦の中での、一つの節目となる大会となりました。





『最後に』


また暫く、グランプリのプレイヤー参加は難しい期間が続きます。
その代わりではありませんが、『Damage 4 Wins!』やBMO、GPのカバレージ記事など、
今回の経験を活かして、今までと少しでも違う視点を持ってより良い記事を書いていきたいと思っています。
これからも皆さん、よろしくお願いします。

それでは。長文読んでくださってありがとうございました。森安でした。


 
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