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川崎慧太
グランプリ・シンガポール2015参加レポート
 
マジック・オリジンBOX予約キャンペーンEVERY DAY チャンス


Text by Kawasaki Keita




1 自己紹介
初めまして。川崎慧太と申します。この度はGPシンガポールでベスト4に入賞でき、普段からBIGMAGICなんば店に通っている縁もあり寄稿させていただくこととなりました。

まずは簡単な自己紹介を。元々は神奈川出身でして、中学生の時に『ウルザズ・デスティニー』が発売した頃にマジックを始め、そこからマスクス・ブロックを経て、『プレーンシフト』が発売された頃に進学等もあり、一度止めました。
時は流れて社会人になって数年後、大阪転勤となりました。縁もゆかりもない地、休日に遊ぶ友人もいない為、「休日の趣味を何か」ということで再開。それがちょうど『ラヴニカへの回帰』が発売された頃なので、マジック歴としては合計で5年程度、再開してからは3年弱といったところです。

競技イベントの「緊張感」と、それに伴う勝った時の「達成感」が何より好きで、その競技イベントの最高峰であるプロツアーを目指し、日々イベントに参加しております。競技を求めて海外GPに行く位なのでプレイヤー分類としては“グラインダー”(※)に近いかと思いますが、仕事もありますのでそこまでオールインはできず、PTQ・GP遠征が関の山です。なので「PTQ芸人」と自称しています。笑
(※編:マジックに全てを注ぎ、特にプロツアーを目指して各地のトーナメントを転戦するプレイヤー の総称。代表的なグラインダー、クリスチャン・カルカノは2年間で40ものGPに参加したという。今日の彼の成功は、多大な努力に基づいているのである。グラインダーについて詳しくはこちらを参照していただければ)

BMライターの表西君の家が自分の家から近く、「マジックの練習がしたい」という時には快く開放してくれるので、大会前には平日休日問わず表西邸に出入りし、数人で調整会を行う、そんな日々を送っています。




2 行き先はシンガポール、フォーマットはモダン

 今回シンガポールに行く直接のきっかけとなったのが「PTQ制度の変更」です。予備予選であるPPTQを突破した上で、本戦となるRPTQの相手は各地のPPTQを突破してきた強者揃い、権利を得られる人数も前制度の時よりも減少している(前のPTQ制度では1シーズン10人強の権利者が出ていたのに対し、現行システムでは多くても8人です。)と、PTQからプロツアーを目指すということのハードルが上がった一方、GPでのPT権利付与条件は緩和傾向(13勝2敗の全てのプレイヤーが権利獲得)にあったので、そちらでの権利獲得を目標に、国内GPに加えて海外GPにも参加を決めました。そのような理由は抜きにしても、GP自体とても楽しいので参加回数は増やしたかったですしね!

海外GPの中でも比較的行きやすいアジア圏の日程を調べたところ、GPシンガポールが会社の休みも取りやすそうなタイミングで、フォーマットも比較的自分が好きなモダンでしたのでこのGPに参加することにしました。

モダンは多様なデッキが入り乱れており、どのデッキも問答無用で自分のプランを相手に押し付けられるブン回りがある為、乱暴に言ってしまえば「じゃんけん」のようなところもありますが…その一方、カードプールが広い為、どんなデッキにもある程度の対策は施せます。環境を理解し、適切なデッキ構築とゲームプランニングを習得できれば、どのデッキにも可能性があるフォーマットなのかなと考えています。





3 調整過程

 このGPへの参加が確定したのが4月前半。その後にGP京都、RPTQマジック・オリジンと立て続けに参加し、一方5月のGP千葉は参加できないと決まっていたので、調整はこの5月頭から開始しました。

モダンは2年半前のPTQからプレイし続けており、使用デッキは一貫して「ジャンド」。昨年のGP神戸も11勝4敗と内容は悪くはなかったので、今回もBG系のデッキから調整するのは決めていました。
直近のモダンのプレミアイベントであるPT運命再編では「アブザン」が多いようだったので、まずはそちらをMagic Onlineで試してみたのですが…スペルは確かに強いものの全体的に重い。ボードコントロール力も「ジャンド」より低く、感触はイマイチ。すぐに本命の「ジャンド」調整に戻りました。

6/6にモダンのPPTQシーズンが開幕。勿論、調整も兼ねて初日から参加します。とりあえず初回は環境把握の為、お試しということで直近のSCGで勝っていたジャンドのリスト(《闇の腹心》入り)に微調整を加えたリストで参加。



MOで調整していた感触では《闇の腹心》はイマイチだったのですが、勝ったリストということもあってとりあえず入れたままで試します。スイスラウンド5回戦を3-1-1で抜けた後、SEも勝てて突破。
結果自体は残せましたが、この大会でも《闇の腹心》のアドバンテージで勝ったマッチはなく「採用しなくても特に支障ないだろう」と判断し、以後の調整では採用カードの候補から外れました。


この後は、表西邸での調整をメインにします。「親和」や「双子」のような主要どころのデッキを相手にした調整は昨シーズン十分に練習しましたので(これらのデッキは昨シーズンと大きく構成が変わっている訳ではない)、《集合した中隊》を軸にした各種デッキや「グリセルシュート」のような新しい戦略を獲得したデッキ、「リビングエンド」などのメタの中心から少し外れたところにあるデッキに対するゲームプランの習得に時間を費やすことにしました。自分はモダンに対して、上述した通り非常にデッキ数が多いと考えていましたので、「直近のGP結果によるメタ読み」よりも「環境に存在するデッキの中で相性が悪いマッチへのゲームプランの習得」「環境理解」を優先し、調整を行いました。
どのデッキと当たるかを読みそこを突き詰める、という戦略よりも、どんなデッキと当たっても大丈夫なようにゲームプランを持っている。これが大事だと思ったのです。

 シンガポールに同行する友人らとデッキをシェアし、お互いにフィードバックをしながら調整を進める途中、一緒に練習していた覚前君(※)も「ジャンド」を使うことに決めた為、最終的に4人で「ジャンド」をシェアすることに。出発前に一度すり合わせを行い、私のデッキリストは以下の様になりました。

(※編:「プラチナレベルを目指す」という高い志を掲げてマジック界に還ってきた関西の強豪プレイヤー。GP神戸14・GPオークランド15王者。現在プロポイント38点、この夏のプロツアーで果たしてプラチナに手が届くか!?)


Kawasaki Keita Jund

24land
1 《森/Forest》
2 《沼/Swamp》
2 《草むした墓/Overgrown Tomb》
1 《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》
2 《怒り狂う山峡/Raging Ravine》
2 《血の墓所/Blood Crypt》
4 《黒割れの崖/Blackcleave Cliffs》
4 《新緑の地下墓地/Verdant Catacombs》
2 《樹木茂る山麓/Wooded Foothills》
2 《血染めのぬかるみ/Bloodstained Mire》
2 《樹上の村/Treetop Village》

14creature
4 《タルモゴイフ/Tarmogoyf》
3 《漁る軟泥/Scavenging Ooze》
1 《大爆発の魔道士/Fulminator Mage》
2 《高原の狩りの達人/Huntmaster of the Fells》
2 《オリヴィア・ヴォルダーレン/Olivia Voldaren》
2 《黄金牙、タシグル/Tasigur, the Golden Fang》

22spell
4 《稲妻/Lightning Bolt》
3 《コジレックの審問/Inquisition of Kozilek》
3 《思考囲い/Thoughtseize》
3 《突然の衰微/Abrupt Decay》
3 《終止/Terminate》
3 《コラガンの命令/Kolaghan's Command》
3 《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》

sideboard
3 《大爆発の魔道士/Fulminator Mage》
2 《墓掘りの檻/Grafdigger's Cage》
3 《部族養い/Feed the Clan》
2 《古えの遺恨/Ancient Grudge》
2 《窒息/Choke》
2 《魂の裏切りの夜/Night of Souls' Betrayal》
1 《滅び/Damnation》



このデッキの調整点としては
① 《闇の腹心》不採用、《黄金牙、タシグル》採用


→自身のライフを削る、所謂スーサイドカードなので「バーン」に致命的に弱く、消耗戦になり、本来アドバンテージ獲得能力が活きるはずの「アブザン」戦においても《未練ある魂》や《包囲サイ》でライフを詰められるとすぐに不要になる。



後半に《コラガンの命令》を引いた時も、ライフが少なくなっていて回収できないことも多い。打点も低い。
…と、デメリットの方が目立ったので不採用とし、その代わりに打点が高く、マナを踏み倒せるタシグルを《タルモゴイフ》の追加感覚で採用しました。長期戦・消耗戦においては能力でアドバンテージも稼げます。

② コラガンの命令3枚、大爆発の魔道士1枚をメインに採用


→《コラガンの命令》はどのモードも万遍なく使えて、確実に1:2交換のアドバンテージが稼げます。「ジャンド」と「グリクシスコントロール」が躍進している一因である非常に強いカードなので、通常は2枚くらいのリストが多い中今回は3枚取ることにしました。
《大爆発の魔道士》1枚は、サイド枠を開けることと増量した《コラガンの命令》で回収して強いカードを採用することの2点を目的にメインから1枚採用しました。



③ 《部族養い》3枚をサイドに採用


→対「バーン」専用サイドボードです。デッキが多数存在するモダンにおいて、特定デッキのために柔軟性の低いカードを3枚も枠を割いて採用するのはとても悩ましかったのですが、
「シンガポール現地のメタではバーンが非常に多い」
という前情報があり、デッキをシェアしているメンバーからも「キャストできれば概ね勝てる」というフィードバックがあったので、意を決して3枚採用することにしました。



④ 《墓掘りの檻》2枚をサイドに採用


→「グリセルシュート」や《集合した中隊》デッキなどの新しいデッキに強いカードだったので採用。



相性の悪い「リビングエンド」には効果がないので、《虚無の呪文爆弾》や《虚空の力線》とどちらを採用するか悩みましたが、勝ち抜いていった時に上位には「リビングエンド」よりも流行の《集合した中隊》デッキの方が多いだろうと判断し、中隊と《召喚の調べ》にも効果のあるこちらを優先しました。






4 いざ、シンガポール

出国前にデッキは完成して、いざシンガポールへ。海外GP参加どころか、海外に行くこと自体、成人して初めてだったのですが…MO生活でお馴染みのリュウジもシンガポールに行くということで、旅券手配から諸々やってくれてとても助かりました。Expediaというサイトで格安航空便検索とホテル予約を合わせて行ったとのこと。海外遠征を考えている方は参考にしてはいかがでしょうか。
金曜と月曜に有休を取り、木曜深夜発・金曜早朝着の便でシンガポールに向かいます。5人で同じ便を取ったのですが、そのうちの一人がパスポートを家に忘れるという緊急事態。表西君が車で届けてくれて事なきを得ましたが、パスポートは荷造りの時にしっかり鞄に入れておきましょうという、当たり前すぎることを再認識。笑

 飛行機は直行便で7時間弱のフライト。深夜便なので何もせずとも寝られるだろうと考えていたのですが、席が狭く体勢も辛い為、あまり寝られませんでした。感覚的には高速バスに近いですね。耳栓やアイマスクなどの睡眠補助道具や、体勢を楽にできるクッションがあるともう少し快適に行けたのでは、と思います。格安航空便なので、まあしょうがないですね。

 シンガポールは日本との時差が1時間のみですので、シンガポール空港には早朝6時頃に到着。空港で両替を済ませてホテルに向かったところ、朝早すぎてまだチェックインを受け付けていないので「8時にもう一度来てくれ」との返事。どうしようかというところ、近くに海岸公園がありましたのでそちらに散歩に行きます。とてもきれいな公園で、朝早いのにも関わらず、サイクリングやランニング、太極拳など色々な目的での利用者がいました。


我々はマジックプレイヤーなので、せっかくなので「海岸マジック」をしている内に




日の出!きれいです。







…その頃、私は眠気に負けてフィール・ジ・アース。見逃しました。


無事チェックインを済ませた後はひとまずGP会場に向かい、別ルートで日本から来ていたプレイヤー達と合流。各々直前GPTに出たり、デッキの調整を行ったり。私は《思考囲い》にアーティストサインをもらうことに。国内GPに比べると列に並ぶ人も少なく、サイン枚数も1人20枚と大盤振る舞い(但し拡張アートはNG)でした。思い思いに会場で時間を過ごしている内に夜になったので、皆で現地のご飯を食べて解散。ホテルに戻って就寝します。





5 初日

さて一夜明けて本戦です。PWPにより2byeでしたので、待ち時間が長いです。GPの時はいつもそうなのですが、昂ぶる気持ちと不安な気持ちがないまぜになって不思議な感覚になりつつも、なるべく平常心を心がけます。会場で覚前君と合流し、サイドボーディングの最終確認をしている内に3回戦のアナウンスがあったので試合へ。今までの練習を反復しながら、一戦一戦淡々と戦います。最終的な結果は以下の通り。

R3:アドグレイス 
R4:アブザンミッドレンジ ×
R5:グリセルシュート(William Jensen選手※1)  ×
R6:グリクシス双子 
R7:RUGデルバー 
R8:グリセルシュート(Jason Chung選手※2) 
R9:RUGデルバー 


9-0!初日全勝と最高の結果ですが、これはまだまだ折り返し地点。これまでの色々な大会のカバレージをみても、初日全勝者が二日目は失速、結果TOP8に残れずというケースも多々ありますので気は抜けません。この日は全般的にドローが強く、ミスをごまかせた部分もありました。そのプレイを思い返し、検証してから就寝しました。

(※編1:William Jensen氏はアメリカのトッププロプレイヤー。プロツアーTOP8入賞実に5回という華々しいキャリアを誇り、2013年にプロツアー殿堂入り。2015年4月に来日し、ニコニコ超会議「バスケ×マジックやってみた!」に参加。圧倒的長身から繰り出されるダンクシュートは観る者を魅了し、次々とゴールを量産する様は「ジェンセンストーム」と呼ばれた。何の解説だよこれ)

(※編2:Jason Chung氏はニュージーランドの新鋭プロプレイヤー。PT運命再編11位、PTタルキール龍紀伝TOP8とメキメキ頭角を現している。今最も注目すべき選手の一人である)






6 TOP8確定!

朝は早めに起床。体と頭をしっかり起こすために、また近所の海岸公園に散歩に行きます。


会場で朝ご飯を食べて待機している内に、10回戦のアナウンス。いよいよ、折り返しの二日目が始まります。また平常心を心がけて、1戦ずつ淡々とこなすことに徹します。

R10:赤青双子 ×
R11:ジャンド ×
R12:親和 ×
R13:アミュレットブルーム 
R14:タルモ双子(高橋優太選手) ID
R15:ジャンド(Reid Duke選手) ID


 R13終了時で3勝1分けとなった時点で、トータル12勝1分け。
いつもの国内GP及びPTQの感覚で「残り2戦で後1勝しなければ…」と考えていたところ…周りの皆から

「TOP8確定!」

と言われ、「???」となっているうちに14回戦のアナウンス。その際にスタンディングを確認したところ、自分は現在1位。「他プレイヤーの勝ち星を計算してもIDできるラインにいる」ということを、高橋優太選手(※)にも教えていただきID。自分の認識より早くTOP8が確定していて、どうにも実感のなく、拍子抜けというかなんというか…といった状態で会場を見回っている内にR15のアナウンス、IDでも上位が確定しておりReid Duke選手ともID。何はともあれTOP8確定。当初の目的だったTOP8に残れました。これで、念願のプロツアー!!!!!!
(※:言わずと知れた「不屈のストイシズム」、あんちゃんと呼ばれ親しまれる晴れる屋Pros所属選手。GP静岡08・GP神戸08・GP京都15王者。)




7 自身から見た準決勝


マジックの競技イベントは、特にPTQが最たるものですが「Winner takes all」形式のものが多く、決勝戦に勝ち、ようやく目標達成というものが大半ですので、「プロツアーの権利獲得」という当初の目標自体は既に達成している状態でまだゲームが続く、というのは不思議な感覚でしたが、準々決勝の席へ。

 席について待っていると、対面についたのは前日R9で対戦したJoshua Yang選手。昨日はどうもといった笑顔で座ってこられ、おかげで緊張もほぐれました。

 開始前にお互いのデッキリストを公開し、内容確認。先方のデッキは「RUGデルバー」の為、軽いインスタントのカードが多く、動きが変則的な為、デッキリストを見られるメリットは大きいです。

Joshua Yang Zhijian's Temur Delver

18land
4 《霧深い雨林/Misty Rainforest》
4 《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
2 《樹木茂る山麓/Wooded Foothills》
2 《蒸気孔/Steam Vents》
1 《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》
1 《繁殖池/Breeding Pool》
3 《島/Island》
1 《森/Forest》

14creature
4 《タルモゴイフ/Tarmogoyf》
4 《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》
4 《わめき騒ぐマンドリル/Hooting Mandrills》
2 《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》

28spell
4 《稲妻/Lightning Bolt》
4 《血清の幻視/Serum Visions》
4 《思考掃き/Thought Scour》
4 《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》
3 《頑固な否認/Stubborn Denial》
3 《マナ漏出/Mana Leak》
2 《撹乱する群れ/Disrupting Shoal》
2 《シミックの魔除け/Simic Charm》
1 《タール火/Tarfire》
1 《呪文嵌め/Spell Snare》

sideboard
4 《高原の狩りの達人/Huntmaster of the Fells》
3 《血染めの月/Blood Moon》
2 《破壊的な享楽/Destructive Revelry》
1 《古えの遺恨/Ancient Grudge》
2 《紅蓮地獄/Pyroclasm》
1 《引き裂く流弾/Rending Volley》
1 《焙り焼き/Roast》
1 《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》

グランプリ・シンガポール2015  イベントカバレージより引用

《秘密を掘り下げる者》や《タルモゴイフ》のようなカードは、見ずとも4枚採用と分かっているので、こちらの行動に干渉してくるカード枚数を優先してチェック。

《瞬唱の魔道士》…2枚



《頑固な否認》…3枚



《シミックの魔除け》…2枚



《撹乱する群れ》…2枚



えっ、昨日そんなカード見てないけど?と急ぎでデッキの青いカードのマナ域を確認。メインは1マナと2マナに固まっており、3マナはサイドの《ヴェンディリオン三人衆》のみ、4マナはなし。ということを確認。これで《撹乱する群れ》をケアするのは1・2マナ域の呪文を唱える際のみで良いということがわかりました。




またサイドボードに4枚フル投入の《高原の狩りの達人》、3枚の《血染めの月》を見つけ、サイド後はテンポから一転してロングゲームを視野に入れた戦い方をしてくることも頭に入れます。従来の対デルバーデッキ戦では抜いていた《高原の狩りの達人》をこのゲームでは残すなど、プレイとサイドボーディングの方向性を決めてゲームへ。
ゲーム自体はデッキ相性もあり、メイン戦を先取。サイド後も先方のゲームプランを把握していたおかげで、残しておいた《高原の狩りの達人》が強く2本先取で準決勝に進みます。



準決勝は、人見選手が相手です。2日目を全勝で勝ち抜いてきた「親和」。プレイングは勿論、デッキも最高潮に温まっていることと思われます。

交換したデッキリストは、オーソドックスな「親和」のもの。サイドから入ってくるであろうカード枚数だけ数えて、いざゲームへ。

この試合の模様は公式のカバレージにも記されていて、ご覧になられた方も多いかと思いますが…ここでは、自分自身が何を考えてどのような選択肢を取ったのか、それを綴って行こうと思います。
1戦目を取られ、2戦目を取り返して、迎えた3戦目。初手は…フェッチランドに《黒割れの崖》《樹上の村》《怒り狂う山峡》《漁る軟泥》《黄金牙タシグル》《思考囲い》というもの。



先方が手札を見てから迷うそぶりを見せた後に「キープ」を宣言したこともありましたので、《思考囲い》でそのキープ基準を落とせれば、という考えでこちらもこの手札をキープしました。

先方先手の1ターン目は《ちらつき蛾の生息地》→《大霊堂のスカージ》→《オパールのモックス》で終了。



それほどパーマネントが並ぶこともなく、《思考囲い》で次の行動を阻害できれば、と思いながらドローしたのは土地。

予定通り《思考囲い》をキャストして開示された手札は《信号の邪魔者》《電結の荒廃者》×2、《鋼の監視者》



土地こそないものの、非常に強い手札でした。悩みぬいた末、私が選択したのは《信号の邪魔者》。
除去が1枚も手札にないこの状況で、相手の手札のロボット軍団を全てを捌ききるのは無理と判断し、それならば《オパールのモックス》が“金属術”を達成しない状況に持ち込んで、相手の事故を狙おう、という考えでの選択です。

お祈りしながら返したターン、人見選手のドローは…《ダークスティールの城塞》!金属術を達成しながら土地も伸ばせる、完璧と言って差し支えないドローです。スカージでアタックの後、《鋼の監視者》を展開。返ってきたターン、ドローは《思考囲い》…ここがほぼ勝敗が決した、その瞬間でした。

その次のターンには対「親和」最高のサイドカードである《古えの遺恨》を引きましたが、既に荒廃者が展開されており、監視者と一緒に戦場にいる状況下では全てを処理しきれず、最終的に戦場に残った監視者とちらつき蛾の前に敗北してしまいました。

未練がましくラストドローのライブラリートップを見ても、そこにあるのは状況の解決にはなっていない《魂の裏切りの夜》。このゲーム展開ではどうしようもなかったな。と思いながら、長いGPを終えます。その後の人見選手の優勝は皆さんご存じの通り。「優勝者に負けたのならしょうがない、土地ばかりで有効牌が引けなかった…」などと自分を慰めるのは簡単ですが…本当にどうしようもなかったのか?
…どうにも納得がいかないので、レポートを書くのを機に、箇条書きでこのゲームを時系列で遡ってみました。
※すべてを正確に把握しているわけではないので、私のライフに関わる流れのみです。


[実際の流れ]

相手T1:ちらつき蛾→スカージ→モックス
自T1 :ドロー土地、沼フェッチ(ライフ19)→思考囲いで信号の邪魔者選択(ライフ17)

相手T2:スカージアタック(ライフ16)→城塞セット→監視者展開
自T2 :ドロー思考囲い、山峡セット→思考囲いで電結の荒廃者選択(ライフ14)

相手T3:土地セット→電結の荒廃者展開→スカージアタック、ちらつき蛾アタック→
監視者起動(ライフ10)
自T3 :ドロー古の遺恨、黒割れの崖セット→荒廃者に遺恨をキャスト、スカージにカウ
ンターが乗ったのでスカージにフラッシュバック

相手T4:ちらつき蛾と監視者でアタック(ライフ6)→思考囲いでウーズ選択
自T4 :ドロータルモゴイフ、タルモゴイフ展開、樹上セット終了

相手T5:ちらつき蛾アタック→監視者起動(ライフ3)
自T5 :ドロー土地。何もせず終了

相手T6:ちらつき蛾アタック(ライフ0)次のドローは魂の裏切りの夜

記憶と当時のライフメモからの書き起こしの為、正確ではありませんがおおよそ上記の
流れだったと記憶しております。この流れで「何かすることはできなかったのか」と考えた結果が、以下の内容です。ドローなど上記との重複や細かい部分は省略しています。



[検証後のプレイ案]

相手T1:省略
自T1 :沼フェッチ、思考囲いで監視者選択(ライフ17)

相手T2:スカージアタック(ライフ16)→城塞セット→邪魔者、荒廃者展開
自T2 :思考囲い(ライフ14)→荒廃者選択→山峡セット

相手T3:邪魔者、スカージ、荒廃者、ちらつき蛾アタック(ライフ8)→思考囲いでウーズ選択
自T3 :ドロー古えの遺恨→黒割れの崖セット、荒廃者とカウンターが乗ったクリーチャー(今回は邪魔者を想定)を除去。どのようにしても場に残るのは2点クロック。

相手T4:スカージとちらつき蛾アタック(ライフ6)
自T4 :ドロータルモゴイフ、タルモゴイフ展開→樹上セット

相手T5:スカージとちらつき蛾アタック(ライフ4)
自T5 :タルモゴイフと樹上でアタック→土地セット

相手T6:スカージとちらつき蛾アタック(ライフ2)
自T6 :ドロー魂の裏切りの夜、土地をセットし裏切りの夜をキャスト。通れば相当数のクリーチャーを無効化




こう考えると…まだ可能性があったように感じます。そもそも最初に《思考囲い》を唱えた時、相手のデッキには土地がまだ15枚あり、それ以外にも《羽ばたき飛行機械》と《バネ葉の太鼓》が4枚ずつ入っていたとすれば、デッキの4割強が次のターンに引かれてはいけないカードでした。この賭けはあまりに分が悪いものです。こう思い返すと、「親和」というデッキに対する理解力・想像力が不十分だったと言わざるを得ません。いい勉強になりましたが、悔しい気持ちが勝ります。





8 最後に


 以上の通り、私の発海外遠征・GPシンガポールは3位という結果で終了し、悔しい気持ちも残るものの当初目標であった「PT権利の獲得」は達成。2年半取り組んできた目標に、ようやく達することが出来ました。
実は私が初めて出たPTQは、PTQドラゴンの迷路(モダン)。その時も「ジャンド」を使って参戦、しかし結果は2勝5敗と惨敗でした。この結果に自分の実力不足を突きつけられ、当時は非常に悔しい思いをしました。その時と同じフォーマットで同じデッキを使い続け、今回結果を出せたことを考えると、少し感慨深いところがあります。
とはいえ、今回はまだあくまで「PT参加権」を得ただけ。初参加でおこがましいことではありますが、PTでも良い結果を残せるようになりたい。と思うのは、競技プレイヤーなら誰もが皆思うことではないでしょうか?その為にまた引き続き、練習を積んで上達したいと思う次第です。
最後の最後で私信になりますが、練習に付き合ってくれた表西邸の皆、今回の旅行を手配してくれたリュウジはありがとう!

 ここまで長々とお付き合いいただきました皆様も、ありがとうございました!




 
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