2013/12/18
「金属モックス」
何かを犠牲にすることで、1ターンに1マナ増えるというマジックの原則を破らせてくれるマナブースト系カード。
この《金属モックス》は手札を1枚…これ自身を含めれば、手札を2枚使って継続的に1マナ増やすというカードだ。
数字だけで見れば、非常に効率が悪い。
《金属モックス》が要求するのはアーティファクトでも土地でもない、色つきのカードである。要するに、手数を削る必要がある。
そこまでして色マナを得る価値が…あるんです。
これが初めて現れた時のスタンダードでは、よく《炎歩スリス》がフライングダッシュを仕掛けてきたものだ。
また、エクステンデッドの「ゴブヴァンテージ」と呼ばれる手札が尽きることのないゴブリンデッキでは、序盤に多少贅沢な暮らしを送っても、後半は手札が充填されているので何も問題はないのだ。
とはいえ、いかにスピード特化であったりアドバンテージを取り返せるデッキでも、これへの刻印が常に楽勝で支払える訳ではない。
そこで、何枚採用するのかという部分にはプレイヤーのセンスが求められてくる。こういうカードって、良いね。
このカードのキャリア・ハイと呼ぶべきタイミングは、2003年に行われたPTニューオーリンズではないだろうか。
極悪コンボデッキ達による超高速環境と化したこのエクステンデッドのトーナメントで、トップ8に残ったデッキのうち4つで採用される合計は12枚。
そのうち3つのデッキは「マナベルチャー」と呼ばれるコンボデッキであった。
これらの初速を早めるため、当然と言えば当然の採用であったが、問題は残りの1つ。
「セプターサイカ」と呼ばれる青に黒赤をタッチしたコントロールデッキだ。
あまりにも高速化した環境でコントロールデッキが取るべきアクションは、1ターン目にこれを設置して「もう《対抗呪文》も《マナ漏出》も撃てるぞ」とコンボ側より早く構えることであった。
そのため、コントロールデッキであるにも関わらず、ディスアドバンテージ源となるこのカードが4枚搭載されていたのだ。
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2013/12/17
「大渦の脈動」
1対複数交換というのは、一度経験するとクセになる。
これが出来るカードが強いというのに気付いたら、マジックのルールが大体理解できたと思っていいだろう(まあここからが長く険しい永遠の道のりなのだが…)。
じゃあルールもわかったし、1:Xで得するカードばっかりでデッキ組んでみる!とやってみたら、大振りなアクションを行う前に軽いカードでボッコボコにされてしまい「あれ?話が違う…」という経験をすることになる。
確かに《疫病風》は強力だが、それ1枚でゲーム中に出てくる全てのクリーチャーを除去しようと思ってはいけない。
軽い…せめて3マナ以下の除去もデッキに入れなくてはならないのだ。
かといって、それらのカードばかりでデッキを組むと、相手の面展開に手数が足りなくなって押し切られてしまうことだろう。
ここぞという時にトップしても状況を打開できないのは、ピンポイント除去の宿命である。
軽いアクションにして、1:Xを可能にする。そんなカードがあれば…というプレイヤーの思いに応えた1枚が、この《大渦の脈動》だ。
しかも、ただの除去ではなくその効果範囲は土地でないパーマネントときたのだから恐れ入る。
この超便利カードは、マルチカラーとはいえたったの3マナで《タルモゴイフ》も《梅澤の十手》も《Moat》も《精神を刻む者、ジェイス》さえも塵にしてしまうという万能性に加えて、もしそのターゲットとなった《昆虫の逸脱者》が2体以上場に出ていたりしたら全部まとめて一網打尽の根絶やしにしてくれるのだ。
これこそ、序文で書いたプレイヤー達が除去に対して抱えるジレンマを一蹴してくれる素敵な1枚だ。
ただし、何事も常に上手くいくという訳ではない。例えば、相手の《ヴェールのリリアナ》を破壊したいけど自分も同じリリアナをコントロールしている…というジレンマを抱えたりすることもあるだろう。
特にもっとも多いのは、《タルモゴイフ》のにらみ合いで引いてきたのがこれという状況だろう。
ただ、《巣穴の総出》に真っ向から対処できるピンポイント除去なんてこれぐらいしかないのも事実。
構築とプレイングで、ポテンシャルを最大限に引き出してあげよう。
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2013/12/16
「殴打頭蓋」
さて、今週はいよいよ…いよいよ!GP静岡がやってくる!
スタンダードで行われる本戦に加えて、2日制のレガシーなどサイドイベントも盛りだくさんでお届けするこのGP。年末最後のマジック祭り、皆様に楽しんでいただくのは勿論、僕も思い残すことがないように楽しみたいと思っております。
さて、今週からはGPということで「GPプロモ」になったカード達を紹介していきたいと思う。
参加したらオマケでついてくるカードでしょ?と侮ることなかれ。
今回のGP静岡からは2014シーズンに突入ということで、配布されるのは《殴打頭蓋》。
言うまでもなく、超強力な装備品だ。
「生体武器」は装備品そのものが既にクリーチャーであるため、更地の状態で引いてきてもガッカリしないよ!というコンセプトで作られたのだろう。
しかし、時代がまずかった。《石鍛冶の神秘家》と同じ時代に生まれるべきではなかった。
5マナ4/4絆魂のフィニッシャーを、開幕2ターン目にして手札に加え、3ターン目に着地させることが可能なのだ。
これはスタンダードのみならず、全てのフォーマットで殺人的な動きである(そのためモダンでは勿論禁止)。このタッグはスタンダードとレガシーの両GPの頂点に輝くという快挙を成し遂げ、マジックの歴史にその名を刻みつけたのだった。
ではソロプレイヤーとしての《殴打頭蓋》がどうかというと、これがまた強いのだ。
特に消耗戦が確定するモダンの「ジャンド」などを相手どったマッチでは、どれだけ除去を撃っても何度でも蘇るこの浮沈艦の信頼性はハンパじゃない。
対同型では引いた方が有利になるサイドカードと言ってしまっていいだろう。
ダメージレースという勝負の根底を否定する強さを持ったこの1枚。是非GPに参加して手に入れて欲しい。新イラストも恐竜の頭蓋骨の化石みたいでかっこいいよ!
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2013/12/14
「心優しきボディガード」
もう、名前が最高。
マジックはこのカードの様に人格+職業という構成の名前が多いのだが、
それらの中でも彼はプラスの人格にプラスの職業と、言うことなしだ。
《生きざる人格崩壊者》《薄汚いネズミ人間》なんかは
このカードの対極の存在と言っていいだろう。
さて、この心優しきお方、何をしてくれるかというと…
これまた男前やなぁ…。
危機に陥った味方を救うため、その身を捧げて盾となるのである。
これが1マナ1/1の能力なのだから恐れ入る。
オマケに、いやオマケと言ってしまうのは恐れ多いほどのことなのだが、
クリーチャータイプはクレリックなのである。
このカードが使えたオデッセイ・オンスロート期のスタンダードでは、クレリックはエリート集団だったのだ。
白と黒の小型クリーチャーがメインとなるこの部族デッキには、このボディガードさんが生き生きする要素が満載だ。
自己犠牲能力を使った際、隣に《腐れ肺の再生術士》がいれば、その心優しき魂は天に昇っても、
腐敗を始めた肉体はプレイヤーの前に意志なき肉壁として立ち続けてくれるだろう。
また、1マナのクレリックという点では《闇の嘆願者》が道連れにするにも丁度いいマナである。
《定員過剰の墓地》で何度も帰ってくる彼を、《境を歩む者》で0マナで出して《陰謀団の執政官》で投げ続けて勝利、なんてシナジーもある。
シナジーなど関係なく、変異状態で脆い《賛美されし天使》のお目付け役をやったりと仕事には事欠かなかった。
1マナというのが実にいいのだ。
能力の起動が生け贄だけというのもいい、
マナやタップが必要だったらなんだこの雑魚カードはというところだった。
良い調整をされて生まれてきたのだろう。
こんなボディガードさんだが「名は体を表す」という考えには真っ向から否定的だ。
何故なら、当時は「ボディガード」というクリーチャータイプがしっかりと存在していたのだ。
にも関わらず、彼はクレリックだった。
この判断も非常に正しかった。
ボディガードというタイプは全部で3種類しかおらず、2007年9月には絶滅することとなった。
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2013/12/13
「戦慄艦の浅瀬」
土地の仕事に何を求めるか。単色ならば基本土地安定なのでここでは除外して、2色以上のデッキの場合。
あなたが均等なカラーバランスの場合:2色出るべきである。
色事故で負けなど考えたくもない
あなたが能動的に動いていくビートダウンなどの場合:タップインは無粋だ。まずアンタップインであるべし。
あなたがコンボデッキなど爆発力重視の場合:多少の手間はかかっても、一気にマナが出る土地というものありがたい
あなたが延々と構えるデッキだった場合:相手が動いてこなかった場合、構え損にならないようなアクションをお願いしたい
。
これら4者のそれぞれの願いに応えられるのが、「時のらせん」が誇る貯蔵ランドのサイクルである。
これらのアンコモンの特性は、上述した通り。アンタップインで無色マナが出て、少し世話をしてやれば複数の色マナを供給してくれる。
安定感と爆発力を、それぞれ100店ではなくとも70点ずつ併せ持った土地だ。
実際にこの《戦慄艦の浅瀬》はブロック構築の青黒コントロールで採用され、打消しと除去を構えながら、比較的重いカードの補助をするといううってつけの仕事をしたのだった。
2006年の世界選手権において、このカードをメインに1枚、サイドに2枚積んだ「ドラゴンストーム」というコンボデッキが登場した(あと同サイクルの《石灰の池》も)。
このデッキの使用者が、あの「魔王」三原槙仁さんである。これは、コントロール相手に大量の青マナから《万の眠り》を叩き込んでタップアウトさせるというアプローチであり、これが実際に功を奏して見事、世界チャンピオンとなられたのである。
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2013/12/12
「Thunder Dragon」
ドラゴンとは飛んでいて巨大でかっこよくあるべし。
具体的に言うと5/5飛行+αが望ましい。パワー6と5の間には実は大差がない。
結局、それだけで20点削ろうと思ったら殴る回数は同じだ。
それなら5/5で能力が秀でている方を採用したい。
実際に、秀でているドラゴンはパワー5であることが多い。
個人的には《Thunder Dragon》も秀でているドラゴンに属すると思われる。
《Thunder Dragon》は、場に出た時に飛行を持たない全てのクリーチャーに3点のダメージをぶちまける。
大型フライヤーの宿命とでも言おうか、運用出来るだけのマナがそろった時には地上に群がった小型クリーチャーが「んなもん知るか」と特攻してきてそのままダメージレースで押し切られてしまうということが多々ある。
その点《Thunder Dragon》は、勝負を決めに行く大型フライヤーであると同時に、盤面を更地に持って行ってくれるリセットでもあるのだ。
プレイヤーとフライヤーには飛ばなくなったが、同時射撃可能な標的数の増えた《ボガーダンのヘルカイト》の兄弟機と見ることも出来る。それぞれ一長一短なのも面白いところだ。
この《Thunder Dragon》、重いマナコストを踏み倒して出せるデッキならば本当にいい仕事をする。
部族系、あるいは「マーベリック」のような横に並べてくるデッキ相手に《死体発掘》あるいは《実部提示教育》すれば、場を壊滅させることが出来る。
最近は、すっかりそのポジションに《大修道士、エリシュ・ノーン》が定番になっている。
確かに持続性があり制圧能力が高いが、これからは《Thunder
Dragon》の方が有利な状況も増えてくるように思われる。
それはvs「マーフォーク」。+1/+1修正を与えるロードが数多く入ったこのデッキでは、エリシュの-2では壊滅させられない場合がある。
《Thunder Dragon》ならばロード2枚までなら焼き払ってくれることだろう。《真の名の宿敵》登場により、また数を増やしてきたマーフォーク。
この小さな違いは、無視できないものだ。
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2013/12/11
「タッサの二叉槍」
《泥棒カササギ》は素晴らしいカードだった。
4マナと重めではあるが、一度出てしまえば以降は殴って引いてカウンターしてを繰り返すのみである。さすれば勝利への道は開かれん。
このカードに心酔したプレイヤー達は「カササギブルー」と呼ばれるパーミッションを朝から晩まで回したものである。
カササギを出すタイミングなど難しく、使っても使われてもなかなかに面白いデッキだった。
そのカササギと同じマナにして、自軍が全てカササギ化するエンチャントが《沿岸の海賊行為》。
これも良いカードだったが、此度「テーロス」にて上位種が登場した。
《タッサの二叉槍》である。ストーリー上でも大きな存在である《海の神、タッサ》がふるうこの槍、その効果は槍の見た目に反して、知識の吸収と、敵の扇動である。
前述のタッサと《波使い》を中心に据えた「青単信心」と呼ばれるデッキが、現在のスタンダードのトップメタ、砕いて言えば最強デッキの一角なのだが、そのデッキでこのアドバンテージ発生装置はしっかりと採用されている。
小粒だが飛行を持っているクリーチャーが多く入っているこのデッキでは、攻めながら必殺の《波使い》に辿り着ける上に、青の信心を2つも稼いでくれるこのエンチャントは、一見重いが使ってみれば理想的なカードであることがわかる。
タッサのブロック不可能力とも相性が良く、また苦手な《至高の評決》を採用したデッキ相手でもこれと《変わり谷》があれば、戦線を一気に立て直すことも可能だ。
伝説であるため、2枚目を引くとどうしても使い道がなくなってしまうカードではあるが、それでも1枚引けるとゲームが大きく変わってくるためメイン2枚、サイドにも追加で1枚とっているリストをよく見る。
とにかくタッサと並んだ時の無双感はすごいので、まだ採用をためらっているというプレイヤーはFNMででも是非使ってほしい。
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2013/12/10
「Powerleech」
色の役割…赤は火力、青はドローとカウンターとか、そういうのである。
その中で、緑の役割とは何だろうか?「力強いクリーチャー」「クリーチャー以外への万能な対処」というイメージが強いのではないだろうか。
特に後者は、最近は大型エキスパンション・基本セットに高い確率で収録されている《帰化》なんかがその象徴と言えるだろう。
一昔前、いや二昔前なら《忍び寄るカビ》がそのポジションだった。
これらのカードに加え《ウークタビー・オランウータン》《ヴィリジアンのシャーマン》と、緑はアーティファクウトの破壊に長けまくっている。
破壊に追放に何でもござれといった具合だ。
しかし、誰にでもルーキーな頃はある。
今は筋骨隆々・ゴツすぎる肉体を武器に大活躍の長距離砲も、入団当初は色白のヒョロヒョロ君だった、なんてことはよくあることだろう。
このアーティファクトぶっ壊し名人の緑さんにも、ヒヨッ子な時代があったのだ。
「アンティキティー」の頃は、フィーチャーされ大量に増えた強力なアーティファクトに対して、緑は猛烈に抵抗するポジションだが、まだノーリスクである直接的な破壊呪文を持っていないという、今では考えられないポジションだったのだ。
不器用な抵抗運動を続けるカード群の内の1枚が、この《Powerleech》だ。このエンチャントの効果はというと「対戦相手がコントロールするアーティファクトがタップ状態になるか、対戦相手がアーティファクトの起動コストに(T)を含まない起動型能力を起動するたび、あなたは1点のライフを得る。」というもの。
相手がアーティファクト主体のデッキならば、とりあえず2ターン目にペッと先貼りしておくと良い。そこそこの回復を見込めるだろう。
問題なのは、この回復が一体どれだけ意味があるのかということだ。
10点回復しようが20点回復しようが、相手に制約がかかっていない以上、回復が追いつかないレベルに展開されて踏み潰されるのがオチだろう。
まあ、古の抵抗手段ということで。現代では素直に現代のアイテムを使うべきだ。
統率者戦では《マイコシンスの格子》と共に設置して鬼の回復なんてしてみたくはある。
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2013/12/9
「ナントゥーコの影」
当時の筆者は「仰せのままに」と頭を下げて、ありがたくこの黒に偏重したエキスパンションを受け入れた。
様々な、露骨に強い黒のカードを見ながら、「もしかしてこれって次は黒壊滅なんじゃ…」という一抹の不安を抱きながらも、今はただその黒の強さに酔いしれよう。
17ぐらいの思い出だ。この予感は見事に「ジャッジメント」で現実となった(しかし最高の手札破壊《陰謀団式療法》という希望もあった)。
今回はそんな思い出深い「トーメント」のトップレアの1つだった《ナントゥーコの影》。
黒マナ1つでターンエンドまで+1/+1の修正を受ける、所謂「シェイド」能力の持ち主だ。
これは、マジック誕生時に存在した同能力の持ち主《凍てつく影》をリスペクトしているのと、このパンプアップ能力の持ち主の多くがシェイドのタイプを持っていることによりそう呼ばれている。
このナントゥーコも勿論、シェイドだ。元祖シェイドは3マナ0/1、シングルシンボルとはいえ黒マナでパンプする能力を見込んで採用しているのだから黒単かそれに近いマナ基盤で運用するのでトリプルシンボルでも同じことだ。
それと比較して、2マナ2/1というサイズは驚異的というか、信じられない飛躍である。ゲームの最序盤から終盤に至るまで、どこで引いてきても戦力としてカウント出来るのは素晴らしい。
《もぎとり》でリセットした後にスッと出てきたコイツ1匹が《陰謀団の貴重品室》と合わさってGood
Game(投了)なんて光景が日常茶飯事だった。
ナントゥーコというのはオデッセイ・ブロックに登場したカマキリ型の昆虫人間的な種族である。
プレインズウォーカー達以外の固有名詞を極力排除した「基本セット2011」の中にあって、バリバリ固有名詞なこいつの存在感はなかなか際立っていた。
これが「カマキリの影」みたいな名前で同型再販されていれば「8ナントゥーコ」なんて実現したのになぁと。
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2013/12/7
「真実の解体者、コジレック」
いよいよこのコーナーにもエルドラージの登場である。
このタイミングでコジレックを紹介することに、
特に理由はないが…まあマルチカラーのカード毎日見てきたから、たまには対極である無色をと思ってね。
10/10という恵まれた体躯は、10マナさえ払えばあとは維持や追加のコストは不要。
《リバイアサン》完敗である。
まあそれだけ、マジックの世界で10マナ用意するということは大変なのである。
そこまでして唱えても案外にしょっぱいというカードが圧倒的に多かったのだが、
このコジレックはそういった面々は一味違うのだ。
唱えることが出来れば、その段階で4枚ドローという褒賞をくれるのである。
これは「戦場に出た時」誘発する所謂CIPやEtBと呼ばれる能力とは違う。
例え、コジレック自身が打ち消されようとも、
この能力は唱えた段階からすでに誘発しているので問題なく4枚ドローが出来るのだ。
現段階で、カード1枚で誘発能力とコジレックの両方に対処できるようなカードはない。
あの《謙虚》ですら、この4枚ドローを封じることは出来ないのだ。
あ、そう言えば1枚だけ対処できるカードがあった。
《時間停止》である。壊れカードには、ルールぶっ壊しカードで応じるのが筋ってもんだ。
また、《もみ消し》や《虚空粘》を用いてこの能力を消したところで、
場には10/10滅殺4のバケモノが着地してしまうのだ。
この滅殺が非常に大事で、結局ただの10/10であればチャンプブロックや《Maze
of Ith》でいなされてしまうのだが、
エルドラージ達はプレイヤーのみならず場にも攻撃をしかけるので、それらの方法では被害を防ぐことは出来ないのだ。
例え「エンチャントレス」が《独房監禁》で粘ったところで、いずれは突破されてしまう運命なのだ。
こんなやつが普通にリアニメイトされるのを許される訳もなく、
どんな領域からでも墓地に落ちると、墓地の全てのカードを巻き添えにしてライブラリーへと帰ってしまう。
まあ、実はこれもインスタントの釣竿(《御霊の復讐》など)があれば難なく釣り上げられるのだが。
このカードが先行プレビューされた時の衝撃はすごかった。
《ウギンの目》のイラストをクリックすると、
解き放たれたコジレックがサイトの文章欄などをメキメキと破壊しながら降臨する。
その時、画面右端のバナーにいた《コーの火歩き》がビックリしながら逃げていくのが、
実にアメリカンなユーモアだ。
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2013/12/6
「破砕団の兄弟」
ジャンドカラー、「アラーラ再誕」の登場により、一気に強い色の組み合わせへとのし上がった3色だ。
今でもモダンやレガシーでは有力な候補となっているカラーリングである。この色の良いところはアドバンテージを確実に得ながら安定した打撃力で攻めていけるという部分だろう。
青がなくても、アドバンテージは稼げるのだ。クリチャー・土地・アーティファクト・エンチャント・PWと全てのパーマネントを破壊し、インスタントおよびソーサリーも手札破壊してしまえば対処できるのだ(トップから降ってきたものは知らない)。
今日の1枚であるこのゴブリンの兄弟は、そんなジャンドの器用さと、もう一方で同じぐらい不器用な部分とを同時に体現した素晴らしいクリーチャーだ。
彼らに何らかの物資を託して依頼をすれば、彼らはそれと同等のものを対戦相手から奪ってくれる。
決して狙ったものが潰せる訳ではないというのが、なんとも依頼人泣かせな部分はあるが…
ハマれば、こちらのエコーや想起でどのみち死んでしまうクリーチャーと、相手の巨大な単騎生物を道連れにして今日もご飯がうまいと言えるだろう。
統率者戦での暴れっぷりは、まさにテロリストである。
1:複数交換を数回行えるというのは、例えそれがゲームをひっくり返せるようなものでなくても「気持ちが良い」ものである。
あくまで自分はテロリストであり、正義のヒーローや悪の黒幕などではない。ただ、自分の我儘で暴れるだけだ。
何かの目的があって暴れるわけではなく、暴れること自体が目的のどうしようもないやつになるのだ。
そう、最早ゲームに勝つことすら目的にしてはいけない。
時には誰かに「あいつのエンチャントをどかしてくれ」と頼まれることもあるだろう。
その時は、ラヴニカでギルドに属さず仕事人として生きる兄弟の様に答えてやろう―――「そいつぁ高くつくぜ」
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2013/12/5
「戦争のアスラ、ジェナーラ」
マジックには「デュエルコマンダー」という遊び方がある。
最近普及し始めた特殊ルールであり、ザックリ言えば「1対1のEDH」である。
2マナ出る土地などは禁止されており、逆に《Fastbond》が解禁されていたりとデッキを組むだけでなかなかに面白そうだ。
詳しくは、当サイトの岡本くんのコマンダー関連の記事を読んでいただきたい。
そのデュエルコマンダーで、現在トップメタと呼ぶべきポジションにドッカリ腰を下ろしているカードの1つがこの《戦争のアスラ、ジェナーラ》だ。
所謂バントカラー、この色の安定感は素晴らしい。
クリーチャー以外はなんでも触れる緑、対クリーチャーを得意とする白、そしてそれらをかき集めるドローを抱える青。
呪文だけでもこれだけ分厚く、これに加えて《貴族の教主》《数多のラフィーク》《造物の学者、ヴェンセール》《クァーサルの群れ魔道士》《目覚ましヒバリ》《石鍛冶の神秘家》など超優良なクリーチャー陣とくれば、言うことなしである。
ジェナーラ自身は3マナ3/3飛行という高スペックに加えて、マナを注げば《毎日の処方》と同じく着実にでかくなる能力を持っている。
デッキの全てのカードをジェナーラのサポートに向けて21点削りきるデッキにしても良し、あくまで一つの勝ち手段に据えるのみで臨機応変なグッドスタッフを構築しても良し。
どの色を一番中心に据えるかによっても随分と雰囲気が違ってくるだろう。
デッキを作る人間によって、大きく構成が変わるジェネラルというのは素晴らしい。
殴ってくるんだろうなと構えていたら無限コンボを決められて死亡、なんて素敵じゃないか。
ちなみにアスラというのは「阿修羅」のこと。
「インド神話・バラモン教・ヒンドゥー教における神族または魔族の総称」とのことで、まとめて言えば「軍神」とかそういう言葉になるのだろう。
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2013/12/4
「ケルドの後継者、ラーダ」
「使い勝手が大きく変わってしまったカード」というグループがある。
マジックの根っこにあたるルールは誕生から20年経った今でも同じだが、ゲームがよりわかりやすく、またスムーズに進行するように「スタック」や「ステップ」などに関するルールはちょくちょく変更されてきて今に至る(最初期はライフが0になっても即座に敗北じゃなかったりね。
これを利用したデッキもあった)これらの細かな、しかし確実に無視できない変更によって、そのカードに印刷された文言が意味するところが以前のそれとはまったく違う意味合いを持つようになってしまったのが、冒頭で述べたグループだ。
このグループにも派閥があって、「地の底から出世組」「急落窓際組」というのがある。
今日紹介するラーダさんは、どちらかといえば窓際組に当たるだろう。
マナに関するルールの変更は、「基本セット2010」発売時に行われた。
マナバーンの廃止は当時非常に話題になった。あの騒動を覚えている方も多いことだろう。
その裏で、密かに・しかし確実に行われた変更が、マナプールがフェイズの終了時だけではなく、ステップの終了時にも空になるというものである。
前者の変更により「マナが使えなくてもダメージを受けることがなくなった!やった!」と思ったラーダさんのファンは「え、コンバットトリックで使えないの…?」と落胆したのだった。
どういうわけかというと、これまではアタックしてマナが出る→ブロック宣言・戦闘ダメージ・戦闘終了といったステップの移行を、赤マナ二つを保持した状態で行えたため「ブロックされたなら《樫の力》、されなければ《黒焦げ》で焼く、除去飛んできたら《岩石樹の祈り》、横の変異してる《憤怒の天使アクローマ》がブロックされたら表に…」といった、多種多様なコンバットトリックに繋げられるのが魅力だったのだが、これからは攻撃クリーチャー指定ステップの間に能動的にこのマナを使わないと旨味を得られなくなってしまったのだ。
彼女の能力がバリバリ全盛期だった頃は、上述したカードや《ボガーダンのヘルカイト》や《菌類の到達地》といったカード達を支えるために「ビッグ・レッド」で4枚採用されていた。
マナを生み出す伝説のクリーチャーで4枚積みとなると、かの《ラノワールの使者、ロフェロス》が如くである。
実際問題、カードパワーは落ちてしまったが、まだまだ工夫して使って楽しいカードには間違いない。
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2013/12/3
「Lord of Tresserhorn」
実際に筆者が組んだジェネラルを紹介したいと思う。
本当にお気に入りのデッキの1つだった。
青と黒のEDH2強カラーと、《Wheel
of Fortune》などの大技から《稲妻》のような小技がイカす赤を合わせたグリクシスカラーは、構築ではあと一歩足りないイメージが妙に強いが、統率者戦では悪くない選択肢だ。
さて、このメタルのジャケのような最高にイカしたイラストのこのカードの紹介に入ろう。
「アライアンス」のレア2という変則的なレアリティに含まれていた(とは言ってもほとんどのレアがレア2だったので実質はなんてことはない普通のレアである)友好色3色のマルチカラーサイクルのうちの1枚である。
4マナでパワー10という、驚異的なサイズが目を引くだろう。
マナレシオも1.75と非常に高い。4マナ6/6の《慈善獣》ですら1.5なのだから、この数字が如何にクレイジーなものかわかっていただけたと思う。
同じパワーでもタフネスが2しかない《新星追い》などとは格が違うのだ。トランプルがないとはいえ、再生持ちであるのも大きい。
しかし「世の中そんなに安く良いものが手に入る訳ないやろ」シリーズ、このカードも例外に非ず。
このゾンビは場に出た時に「対象の対戦相手1人に2ドロー献上、あなたは2点ライフルーズとクリーチャー2体生け贄」という物凄いデメリットを持ち合わせている。
対戦相手からすれば、何もせずとも4枚分のアドバンテージが得れており、それだけの代償を支払って手に入れたクリーチャーはただのパワー馬鹿一代ときたもんだ。
普通にマジックをやっていて、このカードがポンと出てきたら、ありがとうとしか言いようがない。
ここで虚をつくのが《もみ消し》なのだろうが、それなら《ファイレクシアン・ドレッドノート》を使いなさい。
しかしこれがEDHともなれば、それほど痛い出費ではなくなる。
多人数ゲームであるため、対戦相手1人だけに塩を送るというのはそれほど手痛い出費ではない。
自分と同盟を組めそうな相手に、2枚献上してこいつで延々《覇者シャルム》を殴ってやるから道を開けろとお願いするなど、所謂政治ゲーにはもってこいだ。
単純に統率者ダメージ21点を削るのに、既にパワーが10あるというのは素晴らしい。多少の強化でゲームは終わるだろう。《生体融合外骨格》をまとえば、超魔生物の誕生だ。
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2013/12/2
「始祖ドラゴンの末裔」
昔はフレイバー重視の1枚でしかなかった。
しかし今ではすっかり統率者戦での5色デッキの筆頭である。
いや、このカードに関しては統率者ではなく「エルダー・ドラゴン・ハイランダー」と言いたくなる。
ドミナリアの全てのドラゴンのご先祖様にあたるとされる始祖ドラゴン、その血を引いた正統なる末裔である。
言うなればサラブレッド・オブ・サラブレッズ、その能力も一般ドラゴンなぞ及ばない全知全能タイプだ。それではこのカードがやれることをざっとあげたいと思う。
相手が単体除去を使ってきた→モード《水銀のドラゴン》で相手のクリーチャーを除去
《金粉のドレイク》で相手にコントロールを奪われそうになった→モード《機械仕掛けのドラゴン》の0/0になりコマンド領域へ撤退
しつこく全体除去→《ヘルカイトの首領》で再生
相手が超大量ドロー→《ニコル・ボーラス》で全て叩き落とせば良かろうなのだ
相手の場に細かいパーマネントがズラリ→《鋼のヘルカイト》で残らず消し飛べ
今まで使い捨てたドラゴンが今もう一度欲しい→《収穫するものテネブ》で釣り上げる
パッと思いつくだけでこれだけの選択肢を持っている。
カードリストとしっかりにらめっこすればまだやれることがあるはずだ。
これら単体での臨機応変さに加えて、各種コンボパーツと絡めて一瞬で勝負を決める《火想者ニヴ=ミゼット》《シヴのヘルカイト》といった面々を加えて、あとは5色の強いカードを入れれば…なんという万能感。勝ちや。
このカードのフレイバーは「インベイジョン」にて登場した始祖ドラゴンの顕現した姿・デアリガズら5体のドラゴンに仕える「従者サイクル」と呼ばれる5体のゴーレム達のフレイバーを模倣したものとなっている。ご覧あれ。
今週はこんな感じで「コマンダーウィーク」いってみよう!
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2013/11/30
「黒曜石の火心」
悲しいかな赤にはクァドラプルシンボルのパーマネントが存在しない。
パーフォロス様への信心が足りていないんじゃないのー?と言いたいが、
これからのカードに期待したいところだ。
さて、トリプルシンボルのパーマネントの中から選んだ1枚が
この「オブシディアン・ファイヤーハート」こと《黒曜石の火心》だ。
「ゼンディカー」の赤の神話レアであるこのカード、登場当初は話題になったものだ。
イラストもかっこいい!オブシディアンって響きもボスっぽくてイカす!4マナパワー4+能力は悪くない!
このカードの何が話題になったのかと言えばカードテキストの注釈文だ。
「ゼンディカー」の事前情報として「この土地は~~燃え続ける。」と書かれたカードが登場するとのことで、
発売前から密かな話題にはなっていたが、現物を見てナルホドと。
猛火カウンターという独自のカウンターを用いて、相手の土地を1点クロックに置き換えてしまう。
このアップキープに1点ダメージを与える誘発型能力を「燃える」という言葉を使って表現しているわけだ。
今までプレイヤー達がそのような表現を用いて状況を説明することはあっても、
公式の文章で「(あなたにダメージを与えるという)この誘発型能力を失わない」を「この土地は燃え続ける」という一言でまとめてしまったわけだ。
ともすれば、野暮と言うか、何というかもっさりしたテキストになってしまいがちである注釈文と言うものを、
ルールは最低限通じるようにしつつも遊び心を効かせた、ある意味このカードのフレイバーテキストとも言える一文にまとめあげた人に、筆者はリスペクトするばかりである。
この調子で「(この効果はターン終了時に終わらない)」なんかの注釈もうまくフレイバーづけできないだろうか?
《威圧》のそれだと、「(コイツは一生お前のもの)」うーん無理があるか。
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2013/11/29
「精神力」
マジックが続く限り、その長い歴史に間違いなく名を残し続ける1枚、それがこのクァドラプルシンボルで信心も深い大型エンチャント《精神力》だ。
6マナと重いが、一端場に出てしまえば天下無敵。
《精神力》という名だけあって、そのプレイヤーの記憶や精神として扱われる手札を消費し、その精神のエネルギーを用いてこの世界にあるものを動かすという、非常に強力なサイコキネシスをプレイヤーが獲得することになる。
平たく言えば手札が全て《ぐるぐる》になるというエンチャントであり、リミテッドで出すことができれば以降のドロー(特に土地)を全て相手のクリーチャーをタップすることに注ぎ込めば、完封しながら殴り勝てる所謂「ボム」だ。
しばらくは書いてあることは強い系のカードだったが、「ウルザズサーガ」が登場したことにより確変突入。
アンタップすることマナが大量に生産される《トレイリアのアカデミー》・マナを生み出すために消費した手札を供給する《意外な授かり物》《時のらせん》・そして同じく供給源にしてフィニッシャーである《天才のひらめき》、これらのカードが全てこの《精神力》とのシナジーを形成し、自然とデッキになっていた・しかもそれが異次元の強さを誇るものだったと来たのだからタチが悪い。
このデッキはこのカードの名前をとって「MoMa」と呼ばれ、環境を一色に染め抜き「マジックはコインを投げる(ダイスを振る)ゲームだ」とまで言われる同系先手ゲー環境、所謂「クソゲー」を蔓延させてしまったのだ。
勿論こんな事態がなぐ続く訳もなく、《精神力》を支えた相棒たちは軒並み禁止カードとなる。
次の居場所を求めた《精神力》は《ドリーム・ホール》や《実物提示教育》といった連中とつるんで、まだまだ悪さをしようというやんちゃ盛りの中、遂に自身が禁止されて祭りは終了となる。
凶悪なカード達をまとめあげ、仕えさせて君臨する姿はさながら暴走族の頭といったところだった。
随分と時が経ち、暴走族も解散となった。
すっかり更生した《精神力》だったが、《寺院の鐘》という若いヤツと時折つるんで、やんちゃな昔を思い出しているらしい。
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2013/11/28
「触れられざる者フェイジ」
「フィニッシャー」という概念がマジックにはある。
名前の通り、ゲームを終わらせる者として、ゲームのクライマックスに登場し速やかに終了へと導いていく。
基本的にはマナコストが重い大型クリーチャーにその任が科せられることになる。
フィニッシャーに求められることは数多くあり、マジックプレイヤーが最も贅沢な注文をする部分なのだが、その中でも取り分け求められているのは「決定力」だと筆者は思う。
ゲームを終わらせてくれることが大事なのであって、ゲームを完全に掌握したのにいつまでもうだうだやっていると、いつ何があるかわからないマジックでは「紛れ」が起こってしまうものだ。
決定力があれば数ターン以内に決着となるため、そういう危険を回避できるのだ。
フィニッシャーとしてのオススメ物件として、こちらの《触れられざる者フェイジ》などいかがでしょう?何といっても決定力の高さには自信があります!何せ一撃ですから、一撃。
俗に言う「ワンパン」で御座います。何しろ触れるだけでOK!簡単でしょう?…え、そんな物件が格安なわけがない?本当にそんな条件なら何故空き物件なのかって?…お客様を騙すことは叶わないようですね……
勿論「重い割に除去耐性がない」「サイズが小さくデカブツを越えられない」そして何より「ズルが出来ない」という問題点が御座います。
最も厄介なのはこの、黒の癖に真面目一本気な「素出し以外ゆるしまへん」システムであります。
墓地から釣り上げたり手札から出したりといったチートを行えば、こちらがフェイジに触れられてオシマイで御座います。
しかしお客様、これが意外な武器となったりするので御座いますよ?
《終わりなき囁き》というエンチャントを設置してみてください。
その後にフェイジを出せば…大方、お客様の勝ちで御座いますよ。簡単でしょう?
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2013/11/27
「曙光の精霊」
マジックでは珍しいアングルから描かれたイラストと共に目を引くのが4つの白マナ。
「クァドラプルシンボル」と言われれば、まずこのカードを思い浮かべるという人も多いのではないだろうか。クァドラプルシンボル代表と言える白のシンプルなクリーチャーだ。
ダメージで倒すことが不可能な3/3飛行。《革命家チョー=マノ》の無色マナ2つを白くしたら戦闘力が上がったよ、というカードだ。
不死身ではあるものの突破力がなく、ブロッカーに回らざるを得なかったチョー=マノと比べると、飛行を有している分、戦闘要員として期待できる。
勿論、相手のフライヤーをがっちりキャッチするという仕事をしても良い。
《グリセルブランド》の眼前に立ち塞がればライフゲインもさせずプレイヤーを庇う素晴らしい壁となってくれるだろう。
そのマナコストのためか、マジックトーク(大会後に飲みに行ったりしてするよね。)においては出現頻度が高い1枚ではあるが、その割に構築シーンで使用されたことはほとんどないのが残念な話だ。
悪くないけど、特段良くもない。
強くしようと思えばいくらでも呪禁や絆魂をつけたりして強くできるのだろうが、そうするとクァドラプルシンボルが枷でも何でもない単色デッキで恐ろしい力を発揮してしまうのだろう。
恐らく赤が駆逐されてしまう。そのため、誕生から長くたっているがリメイクや調整版は未だに登場していない。
《最下層民》や《崇拝》と合わされば、赤単は完全に封殺できてしまう。
しかしそれで完全勝利となる確率は、《四肢切断》というカードの登場でほんの少しだが下がってしまった。
不死身!不老不死!が簡単に実現してしまってはつまらない。
このカードぐらいの強さが、丁度いいのかもしれない。
これがWW②のカードだったら青白コントロールとかで無茶苦茶堅い壁になっていたかもしれないし、そういう意味で本当に「丁度いい」カードだったのかもしれないね…
というところで「テーロス」の登場ですよ。
曙というだけあって、《太陽の神、ヘリオッド》を1枚で顕現させることが出来るぞ
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2013/11/26
「Niall Silvain」
僕が大好きなクリーチャーのうちの1つ。
ご覧ください、この怪しい顔。
邪悪な怪しさではなく、森の中で主人公に訳の分からない言いがかりをつけてくれるけど
ちょっと助けてくれる憎めない妖精的なキャラが持っている怪しさが、このカードにはある。
良いヤツみたいだけど、本当に信じて良いのか?
コイツが勧めてくる食べ物は本当に食べても大丈夫なんだろうか?的な怪しさである。
このカードの能力は「GGGG T:クリーチャー1体を対象とし、それを再生する。」
やはりお助けキャラ的な能力を持っている。
どのクリーチャーにも使える条件なしの再生付与はなかなかに素晴らしい。
しかし、割高だ。あまりにも割高すぎる。
コストが緑マナ4つ、所謂「クァドラプルシンボル」というやつである。
運用するにはほぼ緑単でもないとしんどい拘束である。
そこまで払ってただの再生というのは少々厳しい。
そもそも、除去が飛んでくるであろうタイミングにこれを構えようとすると、自分のターンにはほぼ何も動けずにただ現状の戦力でアタックをしてターンを返すことになるだろう。
4マナ構えても全然余裕なマナが出ている状況ならば、その4マナも展開に注ぎ込んで勝ってくださいどうぞ。一応《ケイラメトラの侍祭》と並べば再生のマナを用意するのは容易い(だからそのマナは展開に回そうねってば)。これが2マナならまた変わってきたんじゃないだろうか…
さらにこの能力のコストにはタップも含まれている。
これが辛い。召喚酔いするし、何かの力を借りねば複数回起動することは出来ない。
さらには自身は警戒でも持たない限りアタックに行きながら能力を使うということは出来ない。
完全にベクトルが防御に向いた1枚であり、お世辞にも使って強いカードではないだろう。
何故タップ能力として設定されてしまったのだろうか?2回使えると強いから?
いやいや、8マナ払ってるんだからそれぐらい許してやってほしい。
この愛すべき一歩、いや二歩足りてないカード、
生誕からしばらくの間はクリーチャータイプが「ニアル=シルヴェイン」というご自身の名前そのものだった。
いや、だからニアル=シルヴェインって何よ…(後にエレメンタルになり、さらにそれもイメージに合わなかったのかアウフへと変更されたのだった)。
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2013/11/25
「地獄界の夢」
GP京都も盛況のうちに終わった先週末。
リミテッドのGPを終え、次はスタンダードのGP静岡が待っている。
京都と静岡、どちらでも中心となってくるのは「テーロス」だ。
このエキスパンションセットのメカニズムで「怪物化」と「神」から元ネタを発見した○○ウィークは以前にも行ったので、今週は残りのメカニズムから「信心」をフィーチャーしたい。
信仰心が高いカードを紹介して行く1週間としよう。
トップバッターは《地獄界の夢》。「レジェンド」の高額エンチャント軍団の一角(だった。再録されていなかったらどうなっていただろうか)として有名な1枚である。
その能力は「対戦相手がカードを1枚引くたび、地獄界の夢はそのプレイヤーに1点のダメージを与える。」というもの。
対戦相手に毎ターン確実に1点のダメージを与えるクロックとして計算することが出来、対戦相手のドロー呪文への牽制としても機能することだろう。
《渦巻く知識》なんて唱えれば自分に《稲妻》を撃ちこんでいるようなものだ。
かの《スフィンクスの啓示》も色拘束がやたらと強い《天才のひらめき》にランクダウンさせることが出来るし、《グリセルブランド》に至っては一気に14点ものライフを損失することになる。
何れの場合も、大量ドローそのものを防ぐことが出来るわけではなく、ダメージを覚悟の上で引かれてそのリソースの差で負けてしまうということは十分にあり得る。
大事なのは、それまでにライフを削っておき「引けば地獄、引かねば地獄」という状況を作り上げることだ。
オススメなのは統率者戦で使うこと。
全員を敵に回すことから、俗に言う「ヘイト値」はMAXになりそうだが…《黒の万力》→《吠えたける鉱山》→今日の1枚《地獄界の夢》→《神話の水盤》→コマンド領域から叩きつける《精神破壊者、ネクサル》!
なんかネクサルを推してばかりな気がする。
複数人にボコられるのがいやだったらデュエルコマンダーという手もあるぞ。
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2013/11/22
「Drawn Together」
さて、種明かし。
今週のカード達はこの《Drawn Together》に登場している面々、
愛すべきイラストレーターPete Venters御大によって描かれたカード達だ。
このカードでは”Fear Me”というミドルネームまで得て、御大はノリノリである。
フレイバーテキストでもそのノリを感じることが出来るだろう。
このカード自体は、選ばれたアーティストによって描かれているクリーチャーは+2/+2修正を受けるという、なかなかに強力なもの。
元々は緑のソーサリーで、同量の修正とトランプルを付与する呪文としてデザインされていたそうだが、
いくら1マナ軽いとはいえかなり劣化した《踏み荒らし》とあっては、
例え銀枠であったとしても微妙なものだということで現在のアンセム系カードとしてデザインされたのだろう。
イラストを担当したPete御大の遊び心が随所に爆発している。
野暮かもしれないがあえて解説するならば、
右最下段から《ゴブリンの勇士》、その左隣の「HELP
ME」は《陰謀団の見習い》、 彼らの背後にいるデカいのが《火炎舌のカヴー》、その横に佇んでいるのが《タールルームの勇者》、
彼らの背後でもめているのが《粛清するものクローシス》と《炎の嵐のヘルカイト》、
その上空に浮かんでいるのが《ゴブリンの滑空者》だ。
中心にいるのが《メガエイトグ》で、その左隣にいる相当デカいやつが《大地の力》、
その肩越しに見えるのが《Storm Spirit》、《大地の力》の手前にいるのは《Gaea’s
Avenger》、 その右手前にいるのは《ヴァルショクの狂戦士》、
その手前では《ルアゴイフ》がご丁寧にフォークまで持って《カーノファージ》をバリバリ食べている。
隅っこにいるのはおそらく《スカークの匪賊》だろう(《脅しつけ》なんかに出てくるゴブリンかもしれない)。
そして中心部に居るのが《陰謀団の執政官》に温かく見守られている《Baron
Sengir》と《終末を招く者ショークー》が腕を組んでいる。
そして忘れちゃいけないのは頂点におわすPete御大ご本人だ。
巨大な筆を持って《十字軍》のパロディをしているのだ。
このイラストはラファエロの代表作「アテナイの学堂」という絵画をモチーフにしているとのことだ。
たまにはこういう遊び心に溢れたカードなんかを眺めて過ごす日があってもいいだろう。
ということで、マジック黎明期からずっと僕らに素敵なイラストを提供し続けてくれているPete
Ventersウィークでした。
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2013/11/21
「メガエイトグ」
進化というものは時に思いもよらぬ奇想天外な方向へ突っ走る。
そうした結果、現在この星には多種多様な生命が生息している。進化とは複雑なものではあるが、そんな中にも「お約束」は存在している。それは「大型化」だ。
恐竜が果てしなく巨大化したように、自然界で確固たるポジションを獲得した生物は自ずと大きくなっていくようだ。
そうなることでより高い身体能力を獲得したり、サイズの小さい同属に対して有利になったりしていくのだが、同時に燃費が悪くなったり、環境の変化に対応しづらくなるなど、大きくなることには良いこともあれば悪いこともあるのだ。
《エイトグ》という生物がいる。
それはドミナリアやミラディンに生息し、金属を食する。適応能力が高い種族なのだろう、金属以外にも様々なものを食する種に派生している。
往々にして小型なこのエイトグは、ミラディンという底なしの金属を含有する次元においてたらふく食い続けたのだろう、ついに大型種が誕生するに至ったのだ。それがこの怪獣《メガエイトグ》だ。
カードとしては、でかくなったエイトグとしか言いようがない。
レアだけあって、アーティファクトを食えば通常種より大きいサイズ修正とトランプルを得る。
よりアグレッシブに攻撃的に進化している訳だが、餌がなければ6マナで3/4というのはかなり心許ない。
巨大化の弊害が顕著に表れているようだ。
とはいえ、2口3口と鉄をかじれば致死性の攻撃をお見舞いすることが出来る。
ちなみにフレイバーテキストによると、びっしり生えた歯は飾りで、丸飲みすることで機械を捕食するようだ。食したものはその煌々と燃える胃で溶かされるのだろう。
この《メガエイトグ》、英語で表記すれば《Megatog》。発音としては「メガトグ」となるだろう。
《アトガトグ》も《Atogatog》を音で訳したという前例がある。
こちらが意味重視の《メガエイトグ》となるのならば《エイトグエイトグ》となるのが道理なように思えるが…
英語のダジャレなどを加味した翻訳とはなかなか難しいようだ。
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2013/11/20
「カーノファージ」
1マナ2/2は素晴らしい。
2マナ2/2、所謂「熊」がマジックの基本として定められているため、それより1マナ安く同戦闘力のクリーチャーを運用できるとあれば、これは格安というほかない。
だが、無条件で安さの恩恵のみを受け取れるほど世の中は甘くないというのは、多くの読者の方がご存知の事かと思う。
当コーナーでも幾つか「オイシイだけじゃない」カードを紹介してきた。今回もそんな1枚を紹介したい。
《カーノファージ》は、自らのライフを犠牲にアグレッシブに攻めるという「スーサイド」戦略の代表格とも言える1枚だ。
このカードで殴るためには、アップキープに1点のライフを払う必要がある。
ちょっと身体の1部の余分な肉をこのゾンビに食べさせてあげるのだ。
もしそうしなかったら、このゾンビはひもじくなって寝てしまうのだ。
ただし血肉を少しでも提供して活性化させてやれば、対戦相手にはその倍の危害を加えてくれるのだ。
10点のライフを支払って、相手のライフを20点削るというのは、決して高い買い物ではない。
何点ライフを支払おうが、先に相手のライフを0にして、勝てば良かろうなのだ。
また、もし自分のライフも1点を争うような危険な状態になれば、肉を供することを拒否して寝かせてしまっても構わないのはこの手のカードにしては融通が利いて素晴らしい。
この黒い《サバンナ・ライオン》、当時の黒ウィニーユーザーには待望の1枚だった。これで《肉占い》との1マナ2/2ゾンビのコンビ(ゾンビネーションとでも言おうか。いや忘れてくれ)が誕生、8枚体制となり高い確率で1ターン目にクロックを展開することが可能となった。
このコンビには、ゾンビトークンが場を離れても《肉占い》のダメージを受けずに済むなどの些細だがありがたいシナジーが存在する。
このカードはクロックとしては勿論、コンボパーツとしての役目も果たしていた。
1マナ2/2でコンボ?となるが、1ターン目に《カーノファージ》、2ターン目に《暗黒の儀式》《暗黒の儀式》(あるいは《裏切り者の都》)から《憎悪》と繋いで18点支払い2ターンキルを行うデッキ「ヘイトレッド」が存在し、カーノファージはそれのスタンダード・エクステンデッド両方のデッキで1ターン目の最高のアクションとして輝いていたのだ。
このカード名を直訳すればcarnとphageで切って「肉を喰うもの」といったところだろうか。
いやこれだと《肉喰らうもの》と思いっきり被るな。「肉喰らい」いっそ「肉喰い」ぐらいがいいだろうか。
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2013/11/19
「ルアゴイフ」
「しまった!逃げろ、ハンス!ルアゴイフだ!」の言葉であまりにも有名なカード。
後に数々の派生形が誕生した墓地参照クリーチャーの元祖である。
このクリーチャーは、全ての墓地にあるクリーチャーの枚数に等しいパワー(とそれ+1のタフネス)を持つ。
まずクリーチャーが死んでいることが条件になるカードであり、一度も戦闘や除去・ハンデスが発生していないゲームなら4マナで0/1という悲しすぎる能力となるが、幾たびかの相討ち・除去の打ち合いの末に降臨した場合10/11のような4マナでは到底考えられないサイズとなることも。
そのため、ビートダウンの息切れを防ぐ目的でよく投入されていた。4マナというコストも、ウィニーデッキの最終盤などには持って来いだ。
《嵐の束縛》という、色も能力も最高に噛み合っている相方が同じ「アイスエイジ」で登場していたのも追い風だ。クリーチャーを捨ててブロッカーを焼いて、ダメージは加速していく。
今見るとトランプルがあっても良いよなという意見も聞くが、もしこれに貫通力までついてくると考えるとそれだけで恐ろしい。
さて、冒頭で述べた「ハンス」への一言。後に「時のらせん」で登場した《サッフィー・エリクスドッター》の最後の言葉であり、マジックファンにはお馴染みである。
このサッフィーお姉ちゃん、「第5版」にて初邦訳の際、弟のハンスと同様に男と勘違いされてしまい、そのため男っぽいセリフ回しになっていた。
この誤訳は、ただでさえインパクトのあるセリフに裏話を付与し、結果として忘れられない愛されるセリフとなった。
しかしいつまでも誤訳のままではいけないという思いもあったのだろうか、「統率者」にて再録された際「ああ!
ハンス、逃げて! ルアゴイフよ!」という訳に改められた。
これでスッキリ、という訳だが…個人的には「しまった!~」の方が好きかなと。
緊急時ならこういう口調になっても違和感はないしね。
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2013/11/18
「粛清するものクローシス」
もう13年も前の話になるが「インベイジョン」が出た時の衝撃は今でも覚えている。
「ウルザズサーガ」から始めた筆者にとって、リアルタイムで発売されるセットでマルチカラーが含まれているものは初めてのことだった。
しかもマルチカラーが主軸に据えられたセットだとわかると、もう寝ても覚めてもどんなカードが登場するのかばかり考えていたものだ。実に中学生。
その「インベイジョン」の看板とも言えるサイクルの1つが今日の1枚《粛清するものクローシス》を含む5枚のドラゴンサイクルだった。
彼らはかつて「レジェンド」にて登場したエルダードラゴン達を髣髴とさせる3色の組み合わせと風貌をしており、サイズや能力などはより使いやすく・現実的なものへと調整された、新世代のエルダードラゴンとでも呼ぶべき連中だった。
この中でも、特にその見た目から人気が高かったのがクローシスだ。
クローシスが担当するのは青・黒・赤。黒を中心として、それの友好色2つと併せたこのカラーリング、今でこそ「グリクシス」と呼ばれているが、「アラーラの断片」登場以前はこのドラゴンの名を用いて「クローシス」と呼ばれるのが一般的だった。
どちらにせよ語尾がシスなので、「リース」→「ナヤ」などに比べると違和感なく移行できたのを覚えている。
この色の組み合わせは、手数で勝負できるのが売りだ。
ドロー・カウンター・ハンデス・除去(クリーチャー&アーティファクト)・バウンス・火力・土地破壊…繰り出せる技のバリエーションの豊富さには目を見張るものがある。
しかし弱点というのも明確にあって、目立つのはクリーチャーに関する部分だ。
しかし、それを解決したのがこのクローシス。当時、6マナ6/6飛行という骨太なサイズはフィニッシャーとして申し分なく、グリクシスコントロールはこのカードがあったために成立したと言っても良い。
また「オデッセイ」参入後は「リアニメイト」や「Benzo」で早いターンに降臨し、対応できなかった相手の手札をズタズタにする活躍をしたのだった。
さて、今週紹介するカードにはある共通点があって毎度おなじみ「○○ウィーク」なのだが、今週はあえてその内容を明かさないでいきたいと思う。何ウィークなのか、楽しみにしてほしい。
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2013/11/16
「頭蓋骨絞め」
今週紹介してきた一線級の連中とは格の違う、
真の無双・呂布の如く一騎当千に値する超強力カード。
「印刷されるべきではなかった」とさえ言われたその桁違いの凶悪さ。
まず、軽い。1マナで設置して1マナで起動。
これが重荷になるようなデッキはまずない(「ベルチャー!」とか言うなよ)。
また、アーティファクトであるため無色、
色を選ばずどんなデッキでも問題なく入るし、色事故をしていても運用が可能ときたもんだ。
「扱いやすい」これは強いカードの条件の1つを十分に満たしている。
次に、アドバンテージがとれる。
装備したクリーチャーが墓地に行くと、なんと2枚ドロー出来る。
2枚。2枚!?死ぬクリーチャーはたった1体、しかしドローは2枚。
カードが増えるわけで、これを装備したクリーチャーとは極力関わり合いになりたくない。
ブロックして相討ち・ライフが危険なのでやむを得ず除去…なんてことをすれば1:3交換に化けることになる。
これがリメイク前の、オーラだった《遺贈》ならば大したことはなかったのに
装備品となった途端に世界が変わってしまった。
そして、クリーチャーのサイズ変更。これがまた…いやはやなんとも。
「+1/-1」という、絶妙で最高の組み合わせとなっている。
パワーが上がるのは装備品として当然といったところだが、
タフネスが1下がるというこの調整が、このカードを危険な領域へと加速させている最大の要因とも言えるだろう。
シンプルな話だが、1/1クリーチャーにこのカードを装備させるとどうなるか?
貧弱なカードが、1マナ2ドローという驚異のアドバンテージカードに化けるのだ。
パワー9の一角《Ancestral Recall》に次ぐ高率の良いアドバンテージとなる訳だが、これが1回こっきりではなくクリーチャーがいる限り何度でも使いまわせるとなると、
《Ancestral Recall》も霞んでしまうようなアドバンテージを稼ぎ出すこととなる。
エルフや《極楽鳥》などの軽くて小さいマナクリーチャー達を絞めて絞めて絞めまくって
ドローに置き換えながらマナを伸ばしつつフィニッシュに繋げる「エルフ&ネイル」。
ゴブリン達を片っ端から絞めて引いて絞めて引いて墓地が超えたら《総帥の召集》でドンの「ゴブリン召集」。
そして相性バツグンの《大霊堂の信奉者》《電結の荒廃者》と共に、環境を徹底的に破壊した最凶最悪の「電結親和」。
やりたい放題に環境を我が物顔で駆け抜け、登場から4ヶ月で禁止となったのだった。
実に5年ぶりのスタンダードでの禁止カードの誕生である。
皮肉なことに「ダークスティール」発売前のプレビュー記事にて紹介される際、
記事のタイトルが「もしかしてダークスティールで一番ぶっこわれてるカードはこれ?」というものだった。うん、その通り。
とにかく「アカン」カードである。
ヴィンテージや統率者戦ではまだマシなものではあるが、レガシー及びモダンで封を解かれることはまずないだろう。
再録なんてもってのほか、おそらくその時がマジック最終回なのだろう。
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2013/11/15
「魂売り」
クリーチャーの進化の歴史には、いくつかのステップが存在する。
突然変異とでも言おうか、突如出現したクリーチャーが、クリーチャー全体のランクを塗り替えてしまうことがある。
それは地球の生命の歴史において最初に脊椎を手に入れたもの・最初に上陸したもの・最初に2足歩行や飛行に至ったもののように、それまで存在したものを過去にする強さを持っている。
「アポカリプス」でも、他の多くの生物のランクを1つ下げることになる生物が誕生した。それが《魂売り》だ。
5マナ6/6という優れたサイズに、能力を3つも備えている。マルチカラー、それも対抗色の組み合わせなために大盤振る舞いだ。
第1の能力は、所謂「吸血」能力でマジックの初期には黒の吸血鬼が多く所持していた能力だ。
しかし、吸血鬼達はその犠牲者を破壊しなければ血の恩恵が得られなかったのに対し《魂売り》は相手にダメージさえ与えれば破壊していなくても成長することが出来る。
再生持ちなどに粘られても、サイズを増すことでそれを片付けた時に致死性の一発をお見舞いできるようになるというわけだ。
第2の能力は、シンプルに「再生」。これがシンプルにして強力。何せたったの1マナで良いのだから構えながらキャストすることも苦にならない。
第1の能力と合わさることで、どれだけクリーチャーで壁を作っても何れは突破されてしまうという状況になる。これを除去できる《終止》や《神の怒り》は大切に使わねばならなかったのだ。
第3の能力は、自身の色を変更する「カメレオン」能力とでも言おうか。
一見、盤面には大きく影響しない能力に見えるが、当時はこれが無視できなかった。
各種《防御円》と《物語の円》を無視し、《ヴォーディリアのゾンビ》にチャンプされることはなく《冬眠》《殺戮》も回避する。環境に色対策が多かったからこそ、輝いた能力だ。
このスーパーエリートクリーチャーを使うためだけに、緑と黒を使用したデッキが多く組まれた。
「カウンターモンガー」「ダークファイアーズ」そして「The
Rock」「PT Junk」といった、今でもその系譜を残す名デッキ達だ。
ちなみに、「時のらせん」のタイムシフトに再録するという話が上がっていたそうだ。
そしてテストプレイを行った開発陣は一言「アカン」。
新カードがかすんでしまう支配力を発揮したそうだ。もしこれから先再録されることがあれば、どうなるだろうか…なんとも楽しみである。
さらに余談ではあるが、《飛行》のイラストに登場して飛んだこともある。Over
Kill!!
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2013/11/14
「苦花」
2ターンキル。「ベルチャー」「ハルクフラッシュ」といったデッキ達があらゆるものをかなぐり捨てて、厳選され研磨された末にたどり着いた境地。
これらのデッキがいかにスピードに特化しているとはいえ、その2ターンキルも絶対的な確率で行えるわけではない。
一人回しはまだしも、実際のゲームでは全力で生き残ろうとする対戦相手がいる訳で、往々にしてコンボが決まるのは3ターン目以降になったりする。
これらのデッキは「理論上」2ターンキル出来るというのが重要なのだ。
それら「理論上」集団を差し置いて「事実上」2ターンキルを決めてしまうデッキが、かつてスタンダードに存在した。
「UBフェアリー」。コントロールやクロックパーミッションに分類されるこのデッキ、比較的ゆったりとゲームを展開していくこのデッキが、2ターンキル?と思われるのも無理はない。
これはあくまで「事実上」の2キルなのだ。それが意味するところは、2ターン目に設置された《苦花》が、最終的に勝因となるということだ。
《苦花》は1点のライフと引き換えに、1/1飛行の小さな妖精を提供してくれる。
命を削り、攻め手を獲得していくこのカードは、実に黒い。
この取引は毎ターン必ず行われ、止める手段がないという点も、実に黒い。
《ファイレクシアの闘技場》の亜種とも言える。
ライフ1点とアドバンテージの交換が、クリーチャー固定になった代わりに1マナ安くなった。
どちらも一長一短ではあるが、「ハズレ」を引くことがない点では《苦花》が勝っている。
生まれ出たトークンはクロックとして攻めるもよし、チャンプブロッカーとして時間稼ぎするもよし。
とくにトークンをチャンプに回している時は、一見ジリ貧で弱い動きに見えるかもしれないが、たかだか1点の損失でそれ以上の3点や5点のダメージを軽減していることは脅威のディフェンス能力と言う他なく、なかなか他のカードに出来る芸当ではない。
時間さえ稼げば各種除去・《霧縛りの徒党》・《謎めいた命令》が解決してくれるデッキなのだ。
結局、2ターン目の《苦花》がそれらに至るまでの流れを作っているため「実質2ターン目に決着がついている」というように言われたのだ。
フェアリー同系なら、言うまでもなく2ターン目にこれを貼った方が断然有利となる。
青と黒にはエンチャントを破壊する手段がないし、以降の後手に回ったアクションは《呪文づまりのスプライト》などのカウンターで捌かれて為す術もなく負けることになってしまう。
しかし、当時本当に強かったプレイヤー達は、こんな絶望的状況でも細い細い勝ち筋を見つけ出し、それをものにして勝利していたのだ。
カードの性能ばかりにも頼っていられない、練習あるのみじゃ。
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2013/11/13
「ブラストダーム」
4マナ5/5+能力…現在ならば《世界を喰らう者、ポルクラノス》がまさしくこれにあたり、無双しているカードだ。
ではこれの元祖は?遡ること「ネメシス」、多くのプレイヤーにとってはトラウマになるレベルで遭遇した《ブラストダーム》だ。
ダームは「ネメシス」のメインとなるメカニズム「消散」を持ったクリーチャーである。
消散は、寿命つきだけどそれまでの間はコストパフォーマンスが優れているものを提供するよという、なかなかに面白い能力だった。
消散持ちには消散カウンターを消費して何かしらのアクションを行うものもいて、それらはゲームの幅を広めた。
彼らに比べれば、ダームはシンプルな消散持ちだ。
彼の目的は、死ぬまで殴り続けるということ。それだけだ。
同じマナ域では並ぶ者がいないサイズに加えて、ピンポイントの除去なら弾いてしまう被覆を持つダームの進撃を止めるのは、容易なことではなかった。
ズンズンとプレイヤーに向かって行き、強烈なぶちかましをお見舞い。
何せ、初期ライフの1/4を持っていかれるのだ。
3発殴って最後の一撃、というタイミングで、ダームにはおむかえが来てしまう。
イラストから推測するに、皮膚が泡となり解けて力尽きるのだろう。
これ1枚で勝てない様に作っているのは、デザインとして非常に優秀だと思う。
無双はするが、クソゲーの原因となる訳ではない。
この1枚だけで勝てるわけではない点から生まれた格言が「ダームは1匹は通せ」というもの。
それだけで負けることがないのなら、他の脅威に対してカウンターを使う方がより優位に立ちまわれるということだ。
当時若かった筆者含む若い世代は「なるほど」と感動したのだった。
ダームにはトランプルがないため、チャンプで凌いで寿命を待たれるという状況は辛いのだが、それを防ぐため黒の除去と組ませるというのはとても理にかなっていた。
このアプローチを行ったデッキはブロック構築にて「スナフ・オ・ダーム」という名前で登場し、成果を上げていた。
そして「インベイジョン」登場により、ダームは遂にその真価を発揮する。
《ヤヴィマヤの火》が速攻を与え、ダーム1枚で20点削りきれるようになってしまったのだ。
この爆発力は環境を支配するレベルのものだった。
ダームを凌いだところで、他の攻め口がまだまだあるというのに、イヤでもこの怪物を相手しなくてはいけない。
どないすりゃええねん!→自分もダーム使ったらええんや!の流れを経験したプレイヤーは、決して少なくないだろう。
また、プロテクション(緑)、タフネス6、再生などを持った壁役で耐え忍ぶという戦略も登場した。
筆者も《ヴォーディリアのゾンビ》《夜景学院の使い魔》で粘り、《アンデッドの王》で勝つデッキを作りダームに真っ向から勝負を挑んだものだ。
ダームは僕らにとって一つの「象徴」であり、「時代」だった。
(ちなみにブラストダームとは発生学用語で「胚盤葉」を意味する)
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2013/11/12
「聖トラフトの霊」
3マナ2/2がゲームで使われるということは、その横に相当なオマケが着いてくるということである。
以前紹介した《月の大魔術師》しかり。3マナ3/3が溢れ、パワー4も平然といるこのご時世である。
ちょっとやそっとの性能では、お帰り願いたいものだ。
で、今回は無双系を紹介する企画なのでちょっとやそっとのカードでも駄目で…あ、トラフト様でしたか。これは大変な失礼を…
という訳で本日紹介するのは歴代最強の3マナ2/2、《聖トラフトの霊》。「トラフトゲー」という言葉も生み出したこのカードの強さを、今一度振り返ってみよう。
まず、「呪禁」。トラフトが降臨した「イニストラード」前後で、すっかり「被覆」は「呪禁」に置き換わってしまった。
この青白マルチのクリーチャーも、ピンポイントで除去されないとあっては各種装備品・オーラを持たせて殴るという戦略におあつらえ向きである。
しかしそれでも、3マナ2/2を使うのは気が引ける。
勿論、もう1つパンチの効いた能力があるというもの。戦闘時限定で飛び出し、対戦相手に切りかかってスッと消えていく天使を4/4飛行の天使を呼び出す能力を備えている。この能力は2/2という貧相なサイズでアタックしたことに対するボーナスのようなものだ。
相手の場が更地なら、3マナパワー6と超強力なクロックとなる。
しかし、クリーチャーが並んでいれば…4点ねじ込めば勝てる状況ならともかく、普通はおいそれと殴りには行けない。
ここで生きてくるのが、先ほど紹介した呪禁だ。
幸い、当時のスタンダードは《幽体の飛行》《天上の鎧》《ひるまぬ勇気》《怨恨》という超優良オーラ達・「肉体と精神の」「饗宴と飢餓の」「戦争と平和の」剣3つや《ルーン捉えの長槍》・《高まる残虐性》というサイズや回避能力を強烈にバックアップするカードが多数あったのだ。
また《修復の天使》によって、天使トークンだけ殴らせて自分は生還するという動きも出来た。
「UWデルバー」「UW人間」といったデッキの残り数点をゴリ押ししたり、「呪禁バント」でマナクリーチャーから2ターン目に着地するコンボパーツとなったり、縦横無尽の活躍をしていたのだ。
この活躍はスタンダードに留まらず、モダンでは「ドメインZOO」・レガシーでは各種「石鍛冶」デッキなどで4番バッターを務めた。
賛美で補助する《貴族の教主》、当て逃げを繰り返させる《Karakas》など相棒には事欠かない。
これからも、モダンやレガシーではその無双ぶりを見せつけることになるのだろう。
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2013/11/11
「ナイレアの弓」
「○○無双」という言葉が使われるようになって久しい。
マジックをやっていても、この例えを聞いたことがあるのではないだろうか?
ある特定のカードが異常なまでの性能を発揮して、ゲームを一方的に支配・あるいは絶体絶命の窮地からの捲り返しを現実のものとする…
今週はこういった「無双系」カードを紹介していきたいと思う。勿論、超強力なカードばかりだ。
今回紹介するのは、無双系の中でも最新の「テーロス」から、《狩猟の神、ナイレア》の愛用する神の武器。
このカード、リミテッドならば訳が分からないレベルで強力だ。
まず、全てのアタッカーに接死が付与される常在型能力。
リミテッドでは終盤腐ってしまう軽くて小さいクリーチャーも、誰とでも相討ちが取れるとなれば十分に戦力だ。
勿論、相手も簡単にはブロッカーを差し出してこない訳だが、後半役に立たないクリーチャーがブロックされずに本体を叩きに行けるというのはとても大きいことである。
いつか、ライフが限界に達すれば悔しがりながら小粒と中堅の1:1交換を行ってくれるはずだ。これが先制・二段攻撃やトランプルと合わされ強力無比というものだ。
それだけではなく、この弓にはまだ4つの起動型能力がある。
4つもモードが選べるカードとは、マジックの歴史でも数少ないエリート集団の一員である証だ。
何故サイクルの他の神々の武器と違って、このカードだけ4つもモードが与えられているのかというと、それはナイレアが四季を司る神でもあるからだ。
それぞれの能力は、四季からイメージされるものとなっている。
春…春は成長の季節、木々が芽を伸ばし花を咲かせるように、クリーチャーのサイズを1段階成長させる。クロックが大きくなればそれだけで勝てる。
夏…夏の空に浮かぶは積乱雲、吹く風は台風のごとく。飛行クリーチャーに2点のダメージを飛ばし撃ち落とす。
緑が苦手とする空中に対する砲撃としては十分な威力だ。
秋…秋に行われる収穫は、身も心も満たしてくれるだろう。プレイヤーのライフを3点回復させる。ただそれだけのことだが、これが毎ターン続くと思うと恐ろしい。
冬…冬がもたらすのは静かな眠り。また春を迎えるその時まで、温かなものに包まれ眠りにつくのだ。
墓地にあるカードを4枚、ライブラリーに戻す。シャッフルすればまた使えるチャンスが来るし、純粋にライブラリーアウトへの回答としても優秀だ。
これだけの選択肢があれば、リミテッドに収まらず構築でも使用に値するものとなる。
これらのモードはまるでかの《○○の○○》を思い起こさせ…いや、今のは忘れてくれ。あんな忌々しいカードのことは…
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2013/11/9
「変化の風」
「変化」ウィーク最終日は《変化の風》。
「へんか」であって「へんげ」ではない、と仰るのももっともだ。
でも、オチってことで許してほしいよね。
《樫変化》で「リミテで狼につけると強かった」とか
小学生並みの感想を掲載するよりはマシだと思ったんや。
この赤の風は、全てのプレイヤーに今握っている手札を別物に替えるよう強要するカードだ。
土地ばっかり引いて何もないスカスカな手札を有効牌に交換したり、
コンボに向けて虎視眈々と手札を貯めている相手のプランを崩壊させたりという
トリッキーな動きをすることを意図してデザインされたカードだろう。
平たく言えば《Wheel of Fortune》の調整版だ。
この古のクレイジーな車輪は、自分と相手の手札が何枚であろうと引ける枚数は7枚。
手札を消費すればするほど、膨大なアドバンテージを稼いでくれる1枚だった。
手札をリセットするというメカニズム自体は優秀なものだったが、
如何せんドロー力が高すぎたこのカードを壊れカードにならないよう調整した結果が、
マナコストは1マナとより軽く・しかしアドバンテージは1枚損失(このカードをキャストしているため)という、
良調整に仕上がっているのではないだろうか。
組み合わせとして、《土地税》などオススメだ。
手札を基本土地でパンパンに満たしたら、一気に有効牌と交換しよう。
このシナジーは「タックスウィンド」と呼ばれ、実際にこれを投入したデッキも存在していた。
また、相手が複数のカードを引くことに注目して
《地獄界の夢》《ファイレクシアの暴政》《ケデレクトの寄生魔》らと組み合わせて
ゴリゴリ回転させてライフを削りきるデッキなど組んでも良いかもしれない。
どうせなら「統率者2013」も出たことだし、新たな統率者候補《精神破壊者、ネクサル》のデッキを作ってみようじゃないか。
相手が反撃してこようにも、この風を吹かせて手札をグズグズにしてしまえば手も足も出まい。
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2013/11/8
「蛇変化」
先日の《蛙変化》は訳としてはイレギュラーなものだった。
本来のマジック翻訳テンプレならば「蛙への変化」とでもなっていたところを、《蛙変化》と訳されることになった理由…語感のよしあしも少なからずあるだろう。
もうひとつの理由は、おそらくこのカードの名前に近づけて、同じグループにしたいという気持ちがあったのではないだろうか。
というわけで今日の1枚は《蛇変化》。
効果自体は《蛙変化》と大きく変わらない。
能力を持たない緑の蛇に生まれ変わらせて、コンバットを有利に進める、所謂「シャクる」系のカードだ。
このカードはカエルよりは1マナ重いが、緑でも青でも使えるハイブリッドであり、なおかつ1ドローのオマケ付き。
この1ドローがどれだけ「オイシイ」のかは皆さんご存知のことかと思う。
対象にさえとれれば、どんなクリーチャーだってなめし皮の財布にして売りさばけてしまう、素晴らしいカードだ。
特に「シャドウムーア」「イーブンタイド」のテーマは-1/-1カウンター。
場に出た段階で既にこれをもっているクリーチャーだって少なくない。
そんなリミテッド環境において、唱えるだけでそのクリーチャーを潰せるこのカードの評価は高いものだった。
「頑強」で帰ってきたやつを一発KOして1ドローと考えれば、相手のアドバンテージをチャラにしているので文句はないだろう。
同環境のリミテッドにおいてはかなり信頼できる除去・コンバットトリックだった。
《岸砕きのミミック》と併せれば思わぬ大打撃を与えることだって可能、実際に筆者もこれで鉄壁をこじ開けられて残り数点のライフを削りきられてしまったことがある。
リミテッド専用のカードに見えないこともないが《目覚ましヒバリ》によるリターンを防ぎつつ除去出来たりするのは強みである。
《鏡の精体》X=0にスタックで撃ちこめば、その爽快感は計り知れない。
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2013/11/7
「蛙変化」
変化カードが続いたので、いっそのこと変化ウィークにしてしまおう。
ということで比較的最近の変化カードを。
《蛙変化》の登場だ。
これはプレイヤーを変化させる先の2つとは違って、クリーチャーを変化させるトリッキーなインスタントだ。
蛙となったクリーチャーは全ての能力を失い、青の1/1のカエルになる。
この呪文は、ほとんどの場合コンバットトリックとして使っていくことになるだろう。
巨大なクリーチャーで喜び勇んでアタックしてきた相手のクリーチャーをちっぽけなカエルにしてこちらの貧弱なクリーチャー(だった。今は自分より弱いヤツがいる)でブロックしてベチャッと踏み潰してやれば、なんとも爽快なものだ。
クリーチャーなりなんらかのダメージ発生源なりが必要ではあるが、それらがある状況では実質青の《恐怖》のような除去として使っていける。
似たようなカードに《羊術》《お粗末》がある。
これらは能力を失わせた上で0/1というより安全なサイズに変更してくれる。
《縞瑪瑙の魔道士》が相手の後方に控えているなどの状況ならば、パワーを0にしてくれるこちらに軍配が上がるだろう。
しかし、相手が部族シナジーを重視するデッキだった場合…クリーチャータイプをカエルに書き換える効果がもたらす恩恵の方が大きくなるだろう。
まさか《真鍮の伝令》《順応する自動機械》で「カエル!」と宣言するプレイヤーもおるまい。いや、いたらその酔狂さを心から称賛したい。
相手のクリーチャーをちっぽけなカエルにして蹴散らすだけのカードと思われがちだが、実は自衛的な使い方・即ち自分のクリーチャーに対して使用する場面が、ないわけではない。
あるとは言ってないところが大事なところである。
筆者は、MOのM12プレリにてここを勝てば賞品がググッと増える最終戦、このカードを自分の《ウスーンのスフィンクス》に使用することになった。
相手の《垂直落下》をかわすためだ。バッサバッサと浮遊していたスフィンクスは、小さなカエルとなって地面にポトリと落ちた。
これにより除去を逃れ、相手のライフを削りきることに成功した時はなんとも言えない満足感に満ちていたものだ。
このウスーンが撃墜されれば敗北濃厚という場面で、相手はトップした《垂直落下》を叩きつけてくる。
負け、か…とコーヒーを口に含み、冷静にハンドを見る。カエル腐ったなーとテキストを読めば、そこに抜け道はあったというわけだ。
一見、限りなく勝利が遠のいた状況でも、最後まで冷静になれば道は見えるということを教えてくれた1枚である。
これでPTQ抜けたとかそういう話なら、もうちょっとカッコついたんやけどなぁ
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2013/11/6
「Form of the Squirrel」
昨日の《ドラゴン変化》と対となるカードがこの「リス変化」だ。まずは日本語のルールテキストをご覧いただこう。
Form of the Squirrelが戦場に出るに際し、緑の1/1のリス(Squirrel)・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。それが戦場を離れたとき、あなたはゲームに敗北する。
クリーチャーはあなたを攻撃できない。
あなたは呪文や能力の対象にならない。
あなたは呪文をプレイできない。
1マナとは思えない、強烈な(いろんな意味でね)効果を持ったカードだ。
1マナ1/1でものすごいメリットとデメリットを同居させたカードだ。
まずは上の能力から。
この能力はトークン生成と敗北条件の間に、改行が存在していない。
それ故に、この敗北条件は「遅延誘発型能力」と呼ばれるものである。
例えリス変化が場を離れていても、リストークンが戦場を離れればあなたは敗北することになるのだ。
運用する際は気を付けよう(銀枠のカードで真面目に運用を語っても…)。
2つ目、3つ目の能力はすごい。完全に相手からの干渉をシャットアウトだ。
こうなった時に、対戦相手が勝利へ向かうために使用すべきカードは《鍛冶の神、パーフォロス》のようなものに限定されてくる(いや、だから銀枠ですって)
4つ目の能力は、己に課した枷だ。
の絶対的な防御力のために捨てたものは、プレイヤーとしての知性。
生き残るために…先手1ターン目にこれを置けば、最速ショーテルでもドレッジでもベルチャーでもなんでもかかってこいやぁぁ状態。
自分は各種ミシュラランドを並べて勝とう(銀枠)
しかしリスを除去されるだけで全て終わってしまうのは辛い。
《ダークスティールの板金鎧》の中に隠れさせたり、《ルーンの母》でかばい続けたりとなんとかしたいところ(銀)。
もっともよい使い方は、《錯乱した隠遁者》や《Squirrel
Farm》と併用すること。
トークンも統一したものを用い、それらのリスを手に取るとおもむろにシャッフルして場に戻そう。
木を隠すなら森。
どれがどのリスだったかなーとニヤニヤしながら楽しもう(これは銀枠。これぞ銀枠)
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2013/11/5
「ドラゴン変化」
ドラゴンというのは、西洋におけるモンスターの象徴・親玉でありファンタジーを語る上では欠かせないものだ。
ドラゴンなるもの達の定義について、筆者は勉強したことがないが「翼を持つ巨大な爬虫類であり、頭部には角が生えていて火(ブレス)を吐く、極めて凶暴な存在」であればドラゴンと呼べるのではないかと思っている。
マジックにおいてドラゴンのタイプを与えられている連中も、大方これに当てはまるので間違いではないのだろう。
男の子なら、ドラゴンが好きになるものだ。
ドラゴン満載のデッキを作るのもマジックなら可能だ。
《雷口のヘルカイト》《嵐の息吹のドラゴン》と強力なヤツらも揃っている。そして、それには飽き足らずもう自分がドラゴンになって暴れたいという謎の願望でさえ、マジックはかなえてくれるのだ。
それが(前置きが長くなったが)今日の1枚、《ドラゴン変化》だ。
このエンチャントをコントロールしている限り、君は5/5飛行のドラゴンとなるのだ。
飛行クリーチャー以外からの攻撃は受け付けない。
5点を超えるライフは維持できなくなるが、同時にクリンナップステップでクリーチャーのダメージが回復するのと同様にライフが5点を切っていれば5点に回復するようになる。
アップキープにはクリーチャーのアタックのように、5点のダメージを飛ばすことが出来る。
これはクリーチャーを焼くことも出来るのがポイントだ。
この癖のあるヘビー級の1枚を勝利手段に選んだデッキが「不朽の理想」デッキだ。
デッキ名にもなっている《不朽の理想》で、各種ロックパーツをサーチして盤面を整えたら、後は「ドラゴラム」して勝利へ一直線。
勿論、複数並べれば《双頭のドラゴン》やキングギドラへと進化することも可能だ。
アップキープに引力光線15点は一度経験してみたい。
ドラゴンになって勝利を確信した相手に叩きつけるべきは《夜の星、黒瘴》だ。
ドラゴンを制するのは、東洋のドラゴン・龍だ。どう足掻いても5点のライフ失い地に落ちる姿を拝むことが出来る。
ちなみにこのカードと《卓絶》を並べると、なかなかに複雑な状況を作り上げることが出来るぞ。
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2013/11/2
「夜陰明神」
今週最後に紹介する神は、やはり我々に馴染みやすいカードをということで
「神河物語」の明神サイクルから、最も強力な1枚と言えるこのカードを。
《夜陰明神》は各色に存在する神の高位の存在である明神の、黒の1枚。
今ならおそらく神話レア扱いされていることだろう。文字通り神様であるし。
明神達は、それぞれマナコストの割には控えめなボディに設定されている。
この夜陰など、8マナ5/2なのだから相当酷い。
2マナ3/3のクリーチャーはマナレシオが高く1.5.これに対し、夜陰は0.4375。
これはクリーチャーと見る分にはかなり悪い。
それだけサイズが小さく設定されている理由は、
彼らがちゃんと手札からキャストされて場に出た場合に付随する「神性カウンター」が全てだ。
このカウンターを持っている限り、明神達は破壊不能を持つ。
最強の除去耐性の1つであり、これは「テーロス」の神々にもしっかりと引き継がれている。
この神ならではの防御能力を自ら破棄することで、明神達はそれぞれの能力を解き放つことになる。
黒の担当は、大方の予想通りの手札破壊。
全ての手札を根こそぎ持っていってしまうが、この射程範囲は1人2人ではきかず全ての対戦相手だ。
多人数戦・特に統率者戦においては、早いターンで決まれば勝てるというレベルの危険な能力である。
隣に《奪われし御物》や《伝染病の留め金》といったカードがあれば、それだけで決着が着く。
嫌われてしまうかもしれないが、一度狙って世界の敵を演じてみるのも良いだろう。
もちろん、起動のタイミングは相手のドロー後である。
インスタントタイミングであることをフルに活かそう。
このカード、実は構築でもしっかりと実績を残している。
神河ブロック構築でGPが数多く行われた2005年。
メタの中心にあった「けちコントロール」「明神フレア」といったデッキに、メインから1挿しされていたのだ。
相手の隙を見て圧倒的なアドバンテージの差を作ったり、消耗戦の末に破壊されないクロックとして降臨したりと、
ストーリー中における活躍と同等の立ち回りを見せたのだった。
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2013/11/1
「神無き祭殿」
「ラヴニカ・ブロック」登場時の衝撃。
勿論、ハイブリッドや数々の強力マルチカラーカードもあったが、最大の産物は新たなるデュアルランド達に尽きる。
その土地は、それぞれのギルドにあたる色の組み合わせであることから「ギルドランド」と呼ばれたり、2点失うことでアンタップインすることから《ショック》分のダメージを与える土地、「ショックランド」とも呼ばれ、プレイヤー達待望の1枚となったのだ。
今回はその中から、神ウィークということでこのカードを紹介しよう。
色の組み合わせによっては、ショックランドの性能をフルに発揮できないものもあった。
コントロール色が強い色が、2点のダメージを余分に受けるのはリスキーであるし、かといってタップインで1ターン遅れの行動をしていては…というジレンマがある。
この《神無き祭殿》も、その色の組み合わせから前評判ではコントロール向きで、アグレッシブなギルドの土地よりは相対的な強さは劣るのでは…と思われていた。
しかし、「ギルドパクト」が発売された後「オルゾフアグロ」なる、軽いクリーチャーでガンガン攻めていく白黒ビートダウンが登場。
この土地も積極的にショックイン(2点支払いアンタップインさせることの俗称)され、序盤のマナ事故の軽減に大活躍だった。
そして、時は流れてモダンというフォーマットが制定された。
そこで使用可能だったこの土地は、勿論引っ張りだこであった。《野生のナカティル》の平地カウントを満たしながら《思考囲い》を撃つことを可能にし、《部族の炎》の火力を高める。
また、単体で強烈なパワーを誇る《未練ある魂》の登場も大きい。
このカード(とサイドボードのカード)のために「ジャンド」はこの土地を1枚積んで、より柔軟なデッキへと進化することになった。
現行スタンダードでも「エスパーコントロール」「オロスコントロール」「オルゾフミッドレンジ」など、多くのデッキで活躍中である。
このカードの使用率は、この2色の組み合わせがいつでも強力であることの証明だ。
美麗なイラストの、モデルとなっていると言われるのはノートルダム大聖堂。
各地にあるこの聖堂に、一度行ってみるのもいい思い出になるだろう。
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2013/10/31
「復讐の亜神」
人間以上神未満、といったところか。「亜神」という言葉、神に似て神にあらざる者。
うーん、俗に言う「中二」心が擽られる響きではないか。ともかく、この神の如き存在のサイクルが「シャドウムーア」「イーブンタイド」で登場した。
その中でも最もインパクトがあり、強力だった《復讐の亜神》。そのままこのサイクルの代表となり、亜神サイクルと呼ばれるようになった。
この《復讐の亜神》、5マナ5/4飛行速攻という素のスペックは《雷口のヘルカイト》に比肩するものだ。
これが現代のクリーチャーインフレの少し前に既に登場していたのだ、そのカードパワーの高さたるや。
ズバ抜けた打点は、当時の赤単系デッキの隆盛を約束した。
5マナ5点火力のようなものだし、《神の怒り》で流され、息切れをしてもこれを1枚トップすれば戦線はあっという間に復元できる、というかゲームに勝つ。
クウィンタプル・シンボルという強烈なマナ拘束も、赤単ならば何も気にならない。
《変わり谷》が採用しづらくなるが、元より《月の大魔術師》の方を優先しているため気にはならない。
タフネス4であること、黒いことも数々の除去に対して耐性を持たせている。
赤のマナ加速から一気に叩きつけて勝負を決めに行く「デミゴッド・ストンピィ」なるデッキもエクステンデッドで誕生した。
一方、黒であることを生かした構築は、主に当時のレガシーで見ることが出来た。
《生き埋め》《直観》などで墓地に貯めた後《暗黒の儀式》から叩きつけてブーーーンと突っ込んで勝利。単純明快にして破壊力・爽快感は満点だ。
《再活性》などで釣り上げても能力は誘発しないことに注意してほしい。
能力と言えば、当時よく見た光景が「亜神プレイ」「うーん、打消し!」「じゃあ能力解決して、亜神戻しますね」「Oh…」というものだった。
こういったミスは、誰でも経験するものだ。恥ずかしがってはいけない。2回同じことをしなければ良いのだ。そうやって、皆強くなっていくんだ。
亜神様は、イラストをご覧になればお分かりの通りその御手を失っておられる。
これを《亜神の拳》で本来の所有者にお返しをすると、7/6飛行速攻先制攻撃委縮。神すらも屠りさる本来のお姿だ。
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2013/10/30
「Divine Intervention」
マジックでは「Divine」は「神」と結びつく言葉で訳されることが多い。
実際に、「神の・神聖な・神性の・神々しい」という意味から転じて「非凡な・すばらしい・素敵な」という意味まで持つ言葉である。
このカードは日本語訳するなら「神聖なる調停」とでもなろうか。名前から漂うのは強レアの風格。
しかしその正体は、二進も三進もいかない、しかしニッチな役割を与えられた1枚だ。ルールテキストは…
Divine Interventionはその上に介入(intervention)カウンターが2個置かれた状態で戦場に出る。
あなたのアップキープの開始時に、Divine
Interventionから介入カウンターを1個取り除く。
あなたがDivine Interventionから最後の介入カウンターを取り除いたとき、このゲームは引き分けになる。
なんと、引き分けを目指すという非常に珍しい・後ろ向きなカードだ。
8マナ払って、次の次のターンに引き分け。大事なのは勝ちではないこと。引き分けだ。
どちらにも勝ちは着かずに次のゲームへ。
「つまらない争いをするでない、人間よ」と神々の優しい裁きの結果が喧嘩両成敗だ。
しかし…同じ8マナなら、勝利に向かうカードなどいくらでもあるだろう。
少なくとも、負けから遠ざかることの出来るカードだってある。
そのどちらでもなく、目指す方向は引き分け。
「草食系」という言葉が数年前に流行ったが、このカードは草すら食う気もない。
この引き分けと言うのは《白金の天使》でも防げない。
天使が防げるのは、相手の勝利及び自身の敗北だけである。神の裁きには天使だって無言で従うのだ。
こんなカードの使い道は、ID(合意による引き分け)を蹴られた時にこれで延々引き分けにし続けるくらいだろう。
実際、1994年の段階ではヴィンテージの前身・タイプ1で禁止カードとされていた。
《Divine Intervention》、順序を変えればIDだ。シングルエリミ目指す場合、9位にならないように、慎重にね。
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2013/10/29
「神祖」
「アラーラの断片」にて登場した次元:アラーラの断片の1つ、赤白緑のマナによって成り立っている「ナヤ」では、巨大な生物を「ガルガンチュアン」と称して神として祭り上げる習慣があるようだ。
ゲームでいうところのパワー5以上がガルガンチュアンであるとのことで、この《神祖》などはガルガンチュアンの中のガルガンチュアンといったところか。
伝説のクリーチャーではないが、当時初登場の神話レアの1枚であるところから、伝承で語られるレベルの脅威なのではないだろうか。
名前に神/Godなどと入るところから、相当に崇められているのは確かだ。
このビーストは8/8で警戒という十分な戦闘力を誇りながらも、タップ能力で自身と同格のビーストを呼び出す能力を有している。
8/8で堂々と殴りにいけているだけで十分では?と思われるかもしれないが、何にせよアドバンテージが取れて突破力のあるカードというものは良いものだ。
戦闘で死亡してしまうような状況なら、延々トークンを生み出すことに専念すれば良い。
リミテッドなら、2匹も8/8を出してしまってはあっという間に勝負が着いてしまうだろう。
8マナも払っているのだから、当然と言えば当然であるが。
とてもじゃないが構築では厳しい性能である。
この頃の神話レアというものは、まだフレーバー要素の方が色濃かったように思える。
「神話レアはデッキに4枚入るようなカードではない」と言われてもいたしね。
このカードが最高に輝くのは、やはり「モミールベーシック」。
文字通り神々が住まう領域:8マナ。1枚で勝ててしまうこれらの生物群の中で、埋もれることなくその存在感をしっかりと示しているカードだ。
これを出されると、返しのこちらは《空護りの掃討者》出てくれー!と祈ることになる。
往々にして《アクロンの軍団兵》とか出てきて何にせよ投了コース。
これぞビースト、ビヒモス、ガルガンチュアン!な風貌をしているが、よくよく見ればかわいいお目眼をしていて、どこか愛嬌がわく顔をしている。
なぎ倒している木々の大きさから推察するに、ウルトラ怪獣くらいのデカさはあるのだろう。
これに2発殴られても生きているプレイヤーってすごいね。
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2013/10/28
「三日月の神」
「テーロス」はギリシア神話、神々の息づく世界をモデルにしており、神が人々に与える影響・神が生み出したもの・そして神そのものが登場するセットである。
構築、リミテッド共にやりがいがあって実に楽しいセットだ。
この神を推したセットが登場する以前にも、マジックでは何らかの神様にまつわるカードが出ている。今週はそれらのカードを紹介したい。
本日紹介するのは「神河救済」にて登場した青い神。
神河は、それこそ神/Kamiと呼ばれる、九十九神のような存在が同じ次元に暮らしているという世界観だ。
ここでの神々は、「テーロス」の神/Godとは随分雰囲気が違い、クリーチャータイプもスピリットである。
このスピリットであることを条件に、何らかのアドバンテージをもたらすカードが多く登場したものだ(スピリットクラフト)。
この《三日月の神》はそれらとはあまり関係のないデザインである。
能力は完全に《吠えたける鉱山》と同じもの。
点数で見たマナも同じだが、青になりクリーチャーとなりアーティファクトでなくなった。
カードとして見るならば、完全に《鉱山》と同様の評価となる。
相手のドローが水増ししてでもカードを引きたい・あるいは相手にカードを引かせることを悪用するデッキ…「ターボフォグ」「ハウリングオウル」といったデッキでなら、この能力をフルに活かすことが出来るだろう。
アーティファクトからクリーチャーとなったことで、緑には対処されづらくなったが黒には簡単に対処されてしまうようになった。
使うのであれば、前述したデッキの要素・シナジーを継承した構成の統率者戦でジェネラルにしてみてはどうだろう。
引いて引かせて気づけば死んでる、みたいなデッキが理想的だ。
この肥満のおっさんのような神、神河本編ではかなり重要なキャラクターであり、神の騒乱を招いた張本人の一人である。
このやらしい笑顔を見れば、相当に悪い奴と言うのはよくわかる。
その悪巧みも、能力でうまく表現されているではないか。
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2013/10/26
「狩猟の神、ナイレア」
秋をその名に冠するカードは、本日まで紹介してきた5枚。
週6掲載のこのコーナー、企画を通すためには6つのカードが必要となる。
見るからに秋っぽいイメージのカードも幾つかあるにはあるのだが、
今回は「テーロス」発売から1か月経ち、PTも行われたということでこのセットを代表する「神」の1枚を紹介しよう。
何故「秋」で彼女が出てくるのか。
それは、彼女が狩猟や森林とともに「季節」も総べる神だからだ。
この世界の季節は彼女がコントロールしており、何か気に入らないことがあればそれを乱してしまうこともあるそうだ。
幸い、我々の生きる世界のナイレア様は今年も「秋」という季節をもたらしてくださった。
これには感謝しなければいけない。
非常にインパクトの大きい神々のサイクルの中で、ナイレア様の前評判は他の神々より少し落ちるものが多かったのではないだろうか。
能力はトランプル付与とパンプアップ。
他の豪快な面々に比べると、少々地味に見えてしまうものだ。
しかし同時に、神の中では最も「信心」の条件を満たしやすいとも言われていた。
緑と言えばマナブーストとクリーチャーの色であり、
ダブルシンボルのクリーチャーをズラリと並べてしまえばナイレア様も常時戦闘可能なのだ。
発売から1か月、結果としてナイレア様は堂々たるご活躍を我々に見せつけることとなった。
本当にあっさりと3ターン目に信心を満たした状態で登場し、自身もクロックになるのは当然、
戦線突破の方法を持たない《恭しき狩人》《世界を喰らう者、ポルクラノス》に貫通力を授けて勝負を決めてしまう。
緑単信心デッキは《ニクスの祭殿、ニクソス》によって恐るべきマナを獲得可能であり、
このマナを用いればマナ効率が悪いパンプアップ能力も必殺のX点火力のようなものとして運用出来てしまうのだ。
この神の活躍もあってか、此度「PTテーロス」にて
日本を代表するトッププレイヤー・日本が誇る世界チャンピオン、三原槙仁さんが見事トップ8に入賞された。
デッキは「コロッサル・グルール」と呼ばれる緑の信心を軸としたデッキだ。
生放送で中継されていた試合でも、ナイレア様の姿を見ることが出来た。
この時、「魔王」の異名を持つ三原さんはナイレアを生け贄に捧げる場面があり、
実況でも「さすが魔王!神すらも生け贄に!」と大盛り上がりだった。
2大会連続のPTベスト4という偉業、本当におめでとうございます。
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2013/10/25
「Daughter of Autumn」
昨日紹介した母なる存在《Autumn Willow》。
母性に溢れた彼女が作り出した、自身の娘がその名も《Daughter
of Autumn》。
「秋の娘」と随分ストレートな名前だ。
「柳の娘」でないということは、《Autumn
Willow》にとって大事な部分は「秋」であるということなのだろう。
秋は美しく、優しい季節であると筆者は思う。この辺りのイメージが大きく影響しているのではないだろうか。
さて、本題である。
あの除去耐性抜群のフィニッシャーの娘は、母親よりも一回り小さくタフネス偏重型。
能力も大きく異なり、何人も触れられない存在だった母の防御的な面を、他者に向けるのが娘の役目だ。
白マナを払うことで、白のクリーチャーが受けるダメージを1点、肩代わりすることが出来る。
一種のプリベント能力であり、タップが要らないため回数制限は白マナがある限りではあるが、しかし4点以上を引き受けてしまうと自己犠牲となってしまうため、運用できる限界は3点と考えておくのが良いだろう。
この性能、母親と比べて…かなり「厳しい」ものだ。
今なら「ラヴニカへの回帰」でセレズニア所属のコモンのケンタウルスあたりが持っていそうな能力である。
カードパワーの低さで有名な「ホームランド」の中では、まだ幾分ましなカードであるというのがまた泣ける。
カードとしては微妙でも、人物(?)としては素晴らしい存在である。
彼女は、ウルグローサでは子ども達を守ってくれたり、罠にかかって動けなくなった樵(きこり)を助けてくれる、霊的な存在として伝えられているそうだ。
親切であり、その心も果てしなく広い。
この次元に居を構えていたかの「セラ」を信仰する者の鑑と言える素晴らしい女性だった。
しかし、気のせいか娘さん…お母さんよりも老けて見えますね…
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2013/10/24
「Autumn Willow」
直訳すると「秋の柳」。秋野ヤナギさんとでも言おうか。
次元ウルグローサの大森林の化身であり、この森に活きるすべてのものの母と言っても良い、慈愛と母性に満ち溢れた女性である。
このウルグローサといえば、「ホームランド」の舞台。
ダメダメエキスパンション代表であるこの「ホームランド」の、数少ない有力カードが彼女である。
能力は被覆と、特定のプレイヤー限定でこの被覆を解除する疑似呪禁と言える能力だ。
当時のクリーチャーの水準からすれば、4/4というサイズにこの除去耐性はなかなかに強力なものであった。
スタンダードに存在した《剣を鍬に》《恐怖》《氷の干渉器》《嵐の束縛》といったカードを完全にシャットアウト出来るクリーチャーと考えれば、十分に強力であることがわかる。
この能力から、マジックの輝かしい歴史の始まりとも言える「第1回プロツアー・ニューヨーク」にて、トップ8の3人が計6枚採用していたという実績も持つ。
この大会は「ニューヨークスタイル」と呼ばれる、スタンダードに存在する全てのエキスパンションそれぞれから、最低5枚をデッキに入れるという変則ルールが採用されていた。
当時から「弱い」の烙印を押されていた「ホームランド」、このルールの下では使用に値するカードがかなり限られてくるのは明白であり、この大型フィニッシャーに白羽の矢が立ったのも納得というところである。
いずれも緑と白を中心としたデッキであった。
今となっては、完全に《最後のトロール、スラーン》に性能面では劣ることになるが…
しかしイラストの美しさではこちらに軍配が上がる。
この女性のモデルとなったのは、《Mishra's
Workshop》《剣を鍬に》でも有名なイラストレーターのKaja
Foglio。
彼女の肖像画がこのカードなのだ。
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2013/10/23
「秋の呼び手、しず子」
秋は恵みの季節であると多くの国・地域ではとらえられている。
春・夏の太陽の恵みを受け、成長しきった農作物および果実は、この季節に収穫され食卓を彩ることとなる。
日本でも、お米に栗・柿・梨・各種野菜にサンマに…美味しいものしか浮かんでこない。幸せな季節である。
そんな秋を呼び込む存在が、この伝説の蛇・しず子だ。
各プレイヤーのアップキープの開始時に、そのターンを通してキープしておける緑マナを3つも生み出す強烈なブースト能力を持っている。
このカードの元になっているのは、そう《エラダムリーのぶどう園》だ。
このカードは、自身のマナは伸ばしつつも対戦相手が緑マナを使いきれなかった場合はマナバーンでその身を焦がす、クロックにもなり得る名カードだった。
ではその後釜であるしず子さんはと言うと…ちょっと、活躍するには足りなかった。
これにはまず、クリーチャーであることがあげられる。
アタックすれば2点クロックにもなるので、ぶどう園とそれほど変わらないようにも見える。
しかし、エンチャントとクリーチャーの除去耐性の差というものは、やはり無視できないものだ。出した返しに、相手が獲得したマナを利用して展開と共に除去してきた場合…敵に塩を送るどころの話ではない。
そう、マナの恩恵を受けるのは相手からなのだ。これはぶどう園でも同じことである。しかし、ぶどう園はそれ自体が1マナであったため、1ターン目に置けば次のターンには自分は4マナまで伸ばすことが可能であり、些細なことは無視できた。
しず子さんは3マナ。理論上、次のターンに自分も7マナへとジャンプアップできるのは素晴らしいことだが…まずは相手の6(こちら後手なら7)マナのアクションを受けねばならない。神河ブロックの頃、それを有効に使わないデッキというものはなかった。
《明けの星、陽星》を初めとする強力なドラゴン、《けちな贈り物》の無色3マナを後押し、同じ緑でありトリプルシンボルを綺麗に埋める《北の樹の木霊》などなど、勝負がついてしまうレベルのカードを後押ししてしまう。
勿論、自分がこれらのカードを使えるというのもあるが、それにしても高くつく買い物だ。所謂「壊れ」カードにならないように調整されたものなのだろう。
「蛇」デッキならば、まだまだ居場所はある。
自軍の展開をサポートしつつ、《旗印》《今田の旗印》といったマナのかかるカードを後押しして圧殺蛇地獄。
たまにはこういうファンデッキも楽しいものだ。マナバーンがあれば、まだまだもう少し頑張れたのにと思うと惜しい。
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2013/10/22
「秋の帳」
続いての秋を感じる1枚は、《秋の帳》。
もう、その帳というものはすっかり落ちてきたように感じる。
イラストも、ドライアドの周囲を舞う落ち葉が美しい。
このカードは、基本セットにおいて作成された「アンチ対抗色」サイクルの内の1つだ。緑の対抗色といえば、野性に反する理知的な青・生命力に反する死にまつわる黒。
これらの呪文による打消しや、対象を取る呪文の魔の手から純粋にしてパワフルな緑を守る優しきカードだ。
1マナのインスタントであるため、相手がこれらのアクションを行ってきた際に対応して撃ちこむことが容易であり、実質カウンターとして使っていくことになる。
対抗している存在の長所をそっくりそのままいただくというのはなかなか面白い。さながら、緑の《呪文貫き》といったところだろう。勿論、相手は選ぶが。
忘れてしまいがちなのは、この呪文の効果がターン終了時まで持続するということ。
例えばクリーチャーで殴ってきた相手に除去→《秋の帳》で守る→続くクリーチャーを展開→それには打消し呪文…なんてやってしまうと目も当てられない大参事となってしまう。
この一見万能なサイドカードでも注意しなくてはならないことが多い。
この呪文が防ぐのは、あくまで「呪文」からの干渉であり、これが何かしらの能力によって…例えば《戦慄をなす者ヴィザラ》の眼光や《熟達の魔術師アーテイ》の「それだけ?」から守るということは出来ない。
このカードを初めて見た時「黒の打消し呪文って?」と思われた方も多いことだろう。
《蝕み》や《対抗突風》なんかは青いので置いておこう。
この、純粋な黒の打消し呪文という条件に当てはまるのは《打ち砕く希望》《衰亡の加護》というカード達だ。
はっきり言ってほとんど見ることのないカードではある。気にしなくていいレベルのカードである。
しかし、この《秋の際》がこれら黒いカウンターの、マジックのカード全体で見た時の相対的な価値を一段階下げたというのは紛れもない事実である。
まあ、そんなこと気にしなくていいのだけど。
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2013/10/21
「秋の際」
近頃、朝晩冷え込むことが続きすっかり秋だなと思う次第である。
皆さんも、どうか風邪を引かないように気を付けながら、
秋の夜長をマジックで楽しんで欲しいと思う次第である。
さて、今週は文字通り「秋」なカードを紹介していきたいと思う。
トップバッターは《秋の際》だ。
このカード、序盤に使えば所謂「ランパン」、
基本土地を1枚サーチしてきてタップインさせるマナ加速だ。
2マナから4マナへと一段飛びでジャンプアップできるので、相手よりも1枚上手の脅威を叩きつけていけることになる。
マナスクリューや色事故の回避として使うのは勿論、デッキ内のマナカーブをしっかり整えておけば、相手を置き去りに出来るのがこの手のマナブーストの特徴だ。
しかし、こういったカードを採用しているデッキの弱点はこれらのブーストカードを、すっかり土地を伸ばし終えた後に引いてきた時。
そのマナを使って暴れるべきカードを引きたいのに、もうマナを伸ばしても仕方がない…という状況で引いたのが《不屈の自然》ではなく《秋の際》なら、少し話が違ってくる。
このカードを捨て、伸ばし過ぎた土地を生け贄に捧げることでサイクリングを行うことが出来る。
トップがこのカードだったので投了、とならずに済む・まだチャンスが残るというのは良いことだ。
ただし、そう簡単にオイシイ思いはさせてくれないのも当然のこと。
サイクリングは不要牌1枚を「アドバンテージを失わずに」別のものに変えることが出来るのが強みであって、このカードは同じサイクリングでも確実にアドバンテージは1枚分損することになる。
しかも、このようなマナブーストを入れている割に、コストが土地を生け贄では少々矛盾も感じてしまう。
このカードのやっかいなところは、土地が4枚以上になった途端にそのディスアドバンテージモードに固定されてしまうという点だ。
例えば、土地を5枚出している状況で手札は《原始のタイタン》、どうしても6枚目の土地が欲しい!という状況でこのカードを引くと、とても複雑な気分となることだろう。
とはいえ、様々な条件において使い道が可変するカードというのは良いものだ。
未来枠のため、またいつの日か大勢仲間を引っ提げて帰ってくるかもしれない。
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2013/10/19
「Bazaar of Baghdad」
マジックプレイヤーが一度は使ってみたいカードベスト5に入ってくるのではないだろうか。
筆者も初めて使用した時は、底知れぬパワーにテンションが上がりっ放しだったものだ。
使用したフォーマットは、勿論ヴィンテージだ。
このカード、普通に使えば「2枚引いて3枚捨てる」ただのディスアドバンテージな能力しか持っていない。
さらにはマナを伸ばすことを1ターン犠牲にしなくてはならない。
そこまでして、得られるものは何か?…圧倒的な勝利だ。
土地であることは打ち消されないということであり、これに意味があるのだ。
《Force of Will》《Mana Drain》《呪文貫き》《精神的つまずき》…
最強のカウンターが犇めくヴィンテージでは、この関門をスルー出来る土地であるということ意味合いが非常に大きい。
そして、そうやって引いて捨てたカードが「発掘」を持っていたら…
次のターン、アップキープに《イチョリッド》の能力が誘発したので、これにスタックで《Bazaar of Baghdad》を起動、
先ほど捨てた《ゴルガリの墓トロール》2枚を発掘、途中で《ナルコメーバ》が捲れ、黒のクリーチャーも落ちたので《イチョリッド》が帰ってきて、通常ドローでさらに発掘、
《黄泉からの橋》がある状態で《陰謀団式療法》をキャスト…
この流れを生み出したのは、1ターン目に置かれたたった1枚の土地だ。
相性の良いカードを揃えることで、ここまでのビッグムーブを生み出すことが出来るのだ。
もう一つ、相性の良いデッキは「ワールドゴージャー」。
このデッキはまず《世界喰らいのドラゴン》を墓地に落とすことから始まる。もちろん、この土地の役目だ。
これを《動く死体》で釣り上げ、ドラゴンが全てのパーマネントを飲み込み、《動く死体》が外れて再び墓地へ→パーマネントがアンタップで戻るので土地からマナを→これをひたすらに繰り返して、無限マナで勝利するデッキだ。
その勝ち筋において必要なカードを探してくるのが…これまた《Bazaar of Baghdad》の務めだ。
アンタップ状態で帰ってくるため、何度も何度もライブラリーを掘り進むことが可能になる。
最終的には墓地に捨てた《大使ラクァタス》なり《シヴのヘルカイト》なりに無限マナを注ぎ込んで圧殺してしまえば良い。
複数なカードが必要なコンボであるのに、初手にこの《Bazaar of Baghdad》さえあればキープ出来てしまえるという手軽さも魅力だ。
本当に凶悪な土地である。この爽快感は病み付きになるので、是非一度は手に取って使ってみて欲しい。
非常に高額なカードとなっているが、それだけの価値はあると断言できる。
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2013/10/18
「隠れ家」
少し思い入れのある1枚である。
当サイトが毎週配信している動画「BIG MAGIC LIVE」でコーナーのアイキャッチに用いられているため、毎週イラストを見ているからだ。
そんなことは99%の読者には「どーでもいい」ことかもしれないので、すいません本題に入ります。
このカードの初出は「ザ・ダーク」。このセットは、マジックの歴史でも珍しい「イラスト主導型」のセットだった。
暗黒時代という設定だけをイラストレーターに明かし、
そのイメージで描かれたイラストにカードとしての能力を付与していくという方式でカードがデザインされているのだ。
この《隠れ家》も同様の経緯で作られたものだろう。暖かな光と、入り口付近で光る眼が印象的だ。
さて、この土地の能力はというと
「②T:あなたがコントロールするクリーチャー1体を対象とし、それを追放する。」
「あなたのアップキープの開始時に、あなたは隠れ家を生け贄に捧げてもよい。そうした場合、隠れ家によって追放された各カードを、オーナーのコントロール下で戦場に戻す。」というもの。
一つ目の能力で、今にも除去されそうなクリーチャーを逃がし、
次のアップキープに再び戻ってこさせることが出来る。
この《隠れ家》には定員はなく、何体でもクリーチャーを逃れさせて構わない。
安全な頃合いを見計らって、一気にドン。ただし1度に救える人員は1名のみ。
《神の怒り》から味方を一人でも逃せたなら、後の塵と化した仲間達も心残りはないだろう。
土地にそれ以上の仕事を求めるのも酷と言うものである。
ダメージスタックがあった頃はなかなか渋い仕事をすることもあった。
アタッカーがブロックされれば、ダメージスタックを乗せてから隠してしまえばいい。
自分のクリーチャーと相手の土地の交換というのは、ちょっと割に合わない場面が多いものだ。
ただ、こういったデッキにおいてマナの出ない土地を複数採用するというのはそれだけでデメリットだ。
結局、全く使われないカードとなってしまった。
《ボール・ライトニング》などの歩く火力と相性は良いが、
トリプルシンボルのカードを入れながらマナのでない土地を入れる勇気あるプレイヤーはそうそういないものだ。
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2013/10/17
「ヨーグモスの墳墓、アーボーグ」
最近はマナが出ない能力土地はデザインされていないといったな、あれはウソだ。
いや、まあ結局のところマナが出るのだけれど。
ということで今日の1枚は《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》。
「次元の混乱」唯一の土地カードにしてレアであり、我らが「ヨーグモス様」の御名が刻まれた上に、構築でも強力なカードときたものだ。
そのシンプルなテキストも含めて、我々に与えたインパクトは尋常ならざるものだった。
「各土地はそれの他のタイプに加えて沼である。」即ち、これ自身も沼になるためマナが出る土地として計算できる。
2色、3色のデッキを使っていて黒のダブルシンボル・トリプルシンボルのカードも使っている…というような欲張りなデッキなら、沼を1~2枚これに替えてやることで随分と事故は軽減されるだろう。
実際、最初期にはそのような使われ方に留まった。
理由は勿論、「伝説」の土地であるからだ。2枚目以降は完全に腐ってしまう。
しかし、「プロツアー横浜07(時のらせんブロック構築)」にて優勝した青黒コントロールには大胆にも4枚採用されていた。
このカードを採用することで島10:沼1というマナ基盤のデッキが、十分な威力を誇る《堕落の触手》を使用できるようになるというわけだ。
頂点というものは、常識を超えたところにあるのだと痛感させられたものだ。
後に誕生した環境最強デッキ「DDT」でも、最速マリットレイジ降臨を可能にするため4枚積まれていたのは記憶に新しい。
この土地の効果範囲は広く、対戦相手をも巻き込んでしまう。
これが敵に塩を送ることも多々あるだろうが、悪用することだって出来るのだ。
《不浄》との相性は勿論良いし、《因果応報》《厳格な裁き人》といったカードがスーサイドな大打撃カードに早変わり。
ここで「統率者戦」での筆者のオススメコンボを紹介しよう。
統率者(ジェネラル)は《静寂の守り手、リンヴァーラ》。
アーボーグはあくまで土地であり、黒いカードではないからすんなりデッキに入れることが出来る。
この土地がある状況で《コーマスの鐘》というアーティファクトを設置。
すると、全ての土地がクリーチャーとなる。ここにリンヴァーラが合わさると…もう対戦相手は彼らの土地からマナを出すことが出来なくなってしまう。
強烈なロックコンボ、一度狙ってみて欲しい。
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2013/10/16
「Thawing Glaciers」
自身はマナを生み出すことはない。
しかし、溢れるほどのマナを供給してくれる存在…それが《Thawing
Glaciers》だ。
とにかく強いカードのオンパレードであった「アライアンス」の中でも、特別な存在感を発揮していた1枚だ。
現在では定番となった最強土地サイクル「フェッチランド」のご先祖様と考えていいだろう。
《Thawing Glaciers》はタップインのため、機能し始めるのは置いた次のターンからだ。
1マナとこれをタップすることで、好きな基本土地をタップインさせる。
その後、次のクリンナップ・ステップの開始時に手札に戻ってくる。
これをまた自分のメインで置いて、次のターン土地をサーチして…という動きを続けていく、超長期戦において力を発揮するカードだ。
はっきり言って、マナを伸ばす手段としては非効率的なものである。
このカードは「《島》《島》《Thawing
Glaciers》《神の怒り》その他」のようなハンドを力強くキープさせてくれる存在である。
これが2枚ある状態になると、交互に使用することで土地は延々伸び続けることになる。
こうなると、圧縮されたライブラリーから引いてくるカードの期待値は跳ね上がることになるだろう。
勿論、サーチした後にライブラリーをシャッフルするため《渦巻く知識》や《夢での蓄え》といったカードとの相性はすこぶる良い。
それらが実質3ドローとなれば、もう勝負は着いたようなものだ。
さらに相性が良いカードとしては《政略》があげられる。《Kjeldoran
Outpost》という最強クラスのフィニッシャーと交換しつつ、メインで起動していたこの土地はエンドに手札に帰ってくるというよくできたシナジーを発揮したのだ。
このカード、かつては「実存」という今はもう存在しない能力を持っていた時期があった。
この能力は2005年、マジックオンラインで「ミラージュ」が登場するとともに生まれた、ターン終了時に誘発する能力を理解しやすくするための言葉(実存自体は何もしない、マーカーのようなもの)だったが「マジック2010」発売と共に制定されたルールで不要なものとなり、1枚も印刷されたカードが存在しないまま消えてしまった能力なのだ。
「融けゆく氷河」という日本語名が一応存在する。何処で使われたのかは、各自で調べてみよう。
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2013/10/15
「Island of Wak-Wak」
土地がやるべき仕事とは、まずマナが出ること。
これは何よりも優先されることであり、マナが出てこその土地だ。
土地は1ターンに1枚置くことが出来、ターンを迎えるごとにより強力なアクションが行えるようになる。
だからこそ「事故」というものがある。
土地が2枚で止まった側が、程よく5枚6枚と引いている相手に一方的に踏み潰されるのは当たり前のことだが、
逆に土地を12枚引いたりするとそれだけ盤面に影響を及ぼすカードを引けない訳で、それはそれで負けに直結してしまうことがある。
マジックにおいて、デッキに採用する土地の枚数・バランスはプレイヤー達が一生立ち向かわなければならない難問なのだ。
この「マナ基盤」という、土地の本来の仕事を拒否し、なんらかのシュチュエーションに真っ向から立ち向かうカードが過去にはあった。
マナを伸ばすことを犠牲にして、本来得られないボーナスを与えようということなのだろう。
現在のカードデザインの理念として、マナの出ない土地は作らないというものがある。
それは、これらのマナが出ない特殊土地がよくもわるくも失敗であったと判断したのだろう。
今週は、そんな絶滅種「マナの出ない土地」を紹介していきたい。
1枚目は「アラビアンナイト」からこの不思議なイラストが特徴的なカード《Island of Wak-Wak》。
この土地の仕事は、対象の飛行を持つクリーチャーのパワーはターン終了時まで0になる、というもの。
対象は限定的ではあるが、ハマれば非常に効果的な防御機能を発揮するカードだ。
当時は、同セット内に数多くいた飛行と高い打点を持つカード・ジンやイフリート達に対する鉄壁として立ちふさがった。
現代のレガシーにおいて使用するとなると…
《昆虫の逸脱者》《ヴェンディリオン三人衆》《墓忍び》《グリセルブランド》なんかは完封できる。
それは《Maze of Ith》でも同じだろというツッコミを受けそうだが、
この島は対象をアンタップしたりそれが受ける戦闘ダメージまで軽減したりということはしない。
つまり飛行クリーチャー同士のぶつかり合いにおいて非常に優秀なのだ。
この土地の不思議な名前は、千夜一夜物語にも登場する、古い古い地図に描かれていたとある島国。実はこれ、大陸を経て伝わった日本のことなのだ。日本では、飛行クリーチャーは幅を利かすことは難しいらしい。
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2013/10/12
「カーターの怒り」
「一挙両得」というものは、現実においても怪しいものが多い。
勿論、お買い得品だってあるにはあるが、
一見安そうに見えて高くつくものの多いこと多いこと。
「お兄さん!居酒屋どうっすか?いつもは○○円のところ、今日は…」みたいなお誘いはまずボッタクリである。
皆さんも気を付けて欲しい。
これはマジックでも同じで、効果がお得なカードは基本的に割高になる。
あくまで基本的に。
時折嘘のような奉仕価格(マナコスト的な意味で)でご提供なカードが現れて大活躍するのはご存知の通りだ。
ジェイスとか。一挙両得で言うなら《謎めいた命令》なんかもお得である。
トリプルシンボルなので、値段は安いが銀行振込でしか買えないものみたいな感じだろう。
さて、今日の1枚《カーターの怒り》。
一見、お買い得なカードだ。
《神の怒り》4マナ+《深夜の出没》3マナ=6マナと、1マナ安上がりだ。
ただこの値引きには勿論条件があって、
スレッショルドに達していなければ6マナの《神の怒り》と一転割高になってしまう。
4マナが6マナになるということは、
6ターン目に《神の怒り》ならリセットしながら打消しを構えられるところをフルタップでリセットのみとなってしまうということである。
これは手厳しい。
とはいえ、相手の手札が空で、
これでリセットした返しに相手がドローゴーしてきたなら…一転構成である。
微々たるダメージではあるが、果敢にアタックして少しでもライフを削ってしまおう。
まあ、この頃の青白コントロール系のデッキのフィニッシャーといえば《石臼》であることが多かったため、
その辺の噛み合わなさは仕方がない。
相手が再度展開してきたらチャンプブロックに回せば良いのだ。
スレッショルドに達しやすいコントロールで使用するか、
あるいは割り切って5枚目以降の《神の怒り》として使うのが良いだろう。
これを4枚積んでフィニッシャーとするのはなかなか難しい。
そんな割高カードである《カーターの怒り》だが、なんとこれで決着につなげるデッキはしっかりと存在したのだ。
そのデッキこそ「アウェイク」だ。
「スカージ」で《正義の命令》を獲得する前の「アウェイク」は、様々な勝ちパターンを持っていた。
その内の1つ、《燃え立つ願い》を使用するソーサリー型は、この《カーターの怒り》で場を流しつつトークンを出したら、
溢れるマナで続けざまに《生命の律動》を撃って勝負を決めたのである。
思いもかけない相方が登場するということもあるのだ。
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2013/10/11
「マーフォークの物あさり」
カードの「強さ」というものを決めるのは、簡単なようで実はなかなか難しい。
桁違いの攻撃力を持っていれば強いのか―――コストがそれに見合えばね。
完全なる防御力を誇れば問題ないだろう―――少しでも勝利に向かう姿勢があれば尚良いよ。
この議論にキリはない。筆者個人の意見としては、いろんなデッキに入る「汎用性」の高いカードこそ強いカードであると思っている。
その典型例は《タルモゴイフ》ではないだろうか。勿論弱点の多いカードだが、縦横無尽の大活躍を長きに渡って繰り広げている。
このカードが強いことに異論はないだろう。
これを強さとするのならば、「7th」が使えた頃のスタンダードでは《マーフォークの物あさり》も相当強いカードだったと言っても間違いではないだろう。
このカード名から広まった「ルーター能力」が最高のエンジンであることを買われて「UGマッドネス」で毎ターンバシバシ能力を使ってはマッドネスを引き起こしたり《不可思議》を埋めたりと八面六臂の活躍を見せた。
同じくビートダウンならば、部族がマーフォークなのだから採用されない理由はない「フィッシュオーブ」にてロードに島渡りを貰っての殴り役は勿論、いざという時のカウンターやロック用のコンボパーツ探しに大忙し。
さらにはコントロールである「サイカトグ」にも2枚ほど積まれ、ドローの質を向上させながらたまにピチピチ殴るといういぶし銀の活躍を見せたことも。
また《ゾンビ化》との相性も言うまでもなく良く、《納墓》《生き埋め》と違って手札に引いてしまったファッティも墓地へ落とせることから「リアニメイト」でもその存在感を発揮していた。うーむ、大活躍ではないか。
環境は変わるが、エクステンデッドの「トレードウィンド・サバイバル」でも渋い仕事をしてくれた良いカードだ。
勿論、《ゴブリンの太守、スクイー》とのアドバンテージエンジンはお手軽コンボであった。
追加で入れられる5枚目、6枚目の《適者生存》のようなものである。
このクリーチャー、これだけ多くのデッキに採用されたのはシングルシンボルの2マナであるという点も大きいだろう。
先述した《タルモゴイフ》と同じ条件を見たしているのだ。
こう考えれば、用途は大きく違うがタルモのご先祖様のようなものと考えても良いかもしれない。
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2013/10/10
「メイエルのアリア」
君たち、好きやろ?勝利条件カード。
なんらかの条件を達成すれば、「相手のライフを削りきる」「相手がライブラリーからカードを引けなくなる」の2大条件以外の方法でもあなたを勝利に導いてくれるカード。
だがそれは、決して近道ではない。
大抵は、気の遠くなるような労力をかけて、それでも時間が足りずに先にこちらが撲殺されてしまうような、果てしない回り道である。
暴言かもしれないが「無駄」とさえ言える努力に、何故人は挑みたくなるのだろう。
誰だって、チャレンジャーでありたい気持ちはずっと持ち続けている。
しかし人の世はかくも住みづらく、どこかで「妥協」しなければ生きていくことは出来ない。
しかしゲームの中でなら…せめてゲームの中ぐらいは、チャレンジャーでありたい!そんな熱い心をくすぐる勝利条件カードは、今日もプレイヤーを惹きつけてやまない。
今回紹介するのは、勝利条件カードの中から《メイエルのアリア》。
ナヤカラーの3マナエンチャントで、巨大クリーチャーをコントロールしていればそれぞれのサイズに応じたボーナスを獲得出来る。
パワー5なら、「ガルガンチュアン合格です。もっと大きくなれよ」と自軍のサイズアップ。
正直この能力だけで押し切れそうというか、オーバーキルな香りがするが、気にしないで次に進む。
パワー10なら、「おめでとう!君も今日から大祖始クラスだ。これとっときなさい」と10点ゲイン。
殴りに行って十分打ち勝てるサイズの生物がいて、なおも自分の身を守る必要があるのかと。
そして20点到達なら、「お前がチャンピオンだ」でエンドロールが流れ出す。
殴ったら勝ってるとかは言うんじゃない。
相手が無限ライフコンボを決めていても勝てる可能性があるのだ。
このカードでの勝利を狙うならば、相性が良さそうなカードは《大祖始》《苔橋のトロール》《セラのアバター》《黄金たてがみのアジャニ》《倍増の季節》《Berserk》《憎悪》《アクロスの巨像》といったカード達か。
うーんなんともオーバーキル。
ちなみに「アリア」とは「詠唱と訳され、オペラ、オラトリオ、カンタータなどの大規模で多くの曲を組み合わせて作られている楽曲における、叙情的、旋律的な独唱曲、または類似の曲に付けられる曲の名前」だそうだ。
メイエルは「ファッティ万歳」のようなことを歌っているのだろう。
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2013/10/09
「カテラン組合の首領」
101枚目はちょっと趣味に走らせてもらおう。
好きなカードをとにかく褒め称えたい。
そこで、数多ある大好きなカード達から、今回は《カテラン組合の首領》だ。愛称は「首領(ドン)」。
理由がわからない人は「首領」と某検索ツールに打ちこめば丁寧に教えてくれることだろう。
このカードは、「メルカディアン・マスクス」のテーマの1つであるレベル・傭兵クリーチャーの、傭兵側の頂点に立つカードだ。
両部族とも、ライブラリーから直接味方を戦場に呼んでくることの出来る継戦能力・リクルートが売りだった。
傭兵は、上司(上級兵士)が部下(下級兵士)を呼び出すスタイルが採用されている。
召喚酔いさえ解ければカードアドバンテージは確約されているのだが、もう十分戦力になるクリーチャーを出せているのにそれよりもワンランク落ちるカードを持ってくることにどれだけのメリットがあるのか、という、ややオーバーキルな能力であることは否めない。
それでも、1枚手札に握っておけば《神の怒り》を撃たれてもすぐに立て直しが出来るのは良いことだ。
逆らおうとも暴力で無理やり連れてくるのか、レベルに比べても1マナ安くリクルートしてこれる。
少々長くなったが、この傭兵たちを率いているのがこの首領だ。7マナ7/5という傭兵の中でも最大のサイズを誇り、誰にも呼ばれることはなく一方的に部下を呼びつける。
呼び出された部下は《カテラン組合の奴隷商人》のような武闘派ならそのまま首領と共に大暴れするし、どうでもいいような小粒は首領の再生能力のための生け贄となる。
飛んできた矢を、そこらの雑兵の頭をワッシとふんづかまえて盾にして防いでいる様が容易にイメージできる。
ちなみに組合の首領である割に、伝説のクリーチャーなどではない。首領と言えど、一雇われ傭兵であるということだからか。
このカード、イラストが実に良いのだ。
4本腕で頭蓋骨を髣髴とさせる頭部の怪物が鎌を持ち、月夜の平原に佇む…うーん、最高にメタルだ。
ちなみに現在はホラーのタイプも得ている。
たしかにこの謎の種族、ホラーとしか例えようがないわ。
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2013/10/08
「百手巨人」
遂にこのコーナーもコツコツ積み重ねて100回目。
ということで、百にまつわるカードを探したところ、最新セット「テーロス」にておあつらえ向きの1枚があるじゃないかということでコレ。
ギリシア神話がモデルの次元:テーロス。
このカードのモデルになったのはヘカトンケイルという巨人。
「百の手」を意味する名であり、50の頭に百の手を持った3兄弟だったそうだ。
彼らはあまりの醜さに、父であるウーラノスに封印されていたそうだが、これをゼウスが解き放つ。
彼らはゼウスのために巨人たちと戦い、ゼウスを勝利へと導いたそうな。
このゼウス(とヘリウス)が元ネタとなっているであろう神・ヘリオッドは白であり、彼と同じ色にこの巨人が属しているのも納得である。
このカード自体は4マナ3/5警戒と、素の状態で同セットのコモン《沈黙の職工》の完全上位互換であるあたり、さすがはレアである。この性能自体、古きカード達から比べれば十分にハイスペックであるのだが、スタンダードで使うのは厳しいという事実が現在のマジックのパワフルさをよく表している。
この巨人に6マナを注ぎ込むと、その真の姿を拝むことが出来る。
6/8到達・警戒と《自由なるものルーリク・サー》を上回るスペックへと変貌し、さらには「追加で99体のブロックが可能」と来たものだ。
さすが、腕一本で一匹相手してやるぜということだろう。
到達を得るのも、前述したギリシア神話でヘカトンケイルが岩を投げ続けて戦ったことになぞらえているのだろうか。
とにかくインパクトのある能力だ。
実戦の場においては、100体で殴ってこれるデッキともなると無限コンボの類で、あっさり100では済まないトークンが出てきて止めきれないというものだろうが、リミテッドでは実質「何体でもブロック可能」ということなので、頼りになること請け合いである。
勝負を決める爆弾レアという訳ではないが、早めに出せて終盤まで腐らない戦力というのはリミテッドでは稀有な存在である。
ダブルシンボルなので、信心も稼ぎやすいのも高ポイントだ。
さあ、100回まではあっという間だったので1000回目《千足虫》・10000回目《万の眠り》目指して頑張ろう!…何年先の話やら
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2013/10/07
「Ring of Ma'ruf」
昨日の非常識が今日の常識となる。
マジックの20年間の歴史では、エキスパンションが出る度にこの現象が起こっていると言ってもおかしくはない。
「そんな無茶苦茶な!」「馬鹿げていると」と言われた戦略が、後に初心者でも知っているような一般的なものになったり、誰かの妄想で作ったかのようなカード・能力がある日当たり前のようにカード化されたり。本日はその1例を紹介しよう。
《Ring of Ma'ruf》、このカードのテキストは「⑤タップ:このカードを追放する。
あなたは次にドローするかわりに、ゲーム外にあるあなたがオーナーであるカードを1枚手札に加える。」これを見てピンとくるプレイヤーも多いことだろう。
この能力、「ジャッジメント」にて看板サイクルともなった「願い」そのものなのだ。
「願い」は、色マナとその色に応じたものしか持ってくることができという制限があるが、直接そのカードを手札に入れることが出来る。
《生ける願い》《燃え立つ願い》《狡猾な願い》と、活躍した・現在進行形でしているカード達である。
これが最初のエキスパンション「アラビアンナイト」の段階で既に雛型が存在したというのだから、恐れ入る。
ただ、どの色でも使えるアーティファクトである代償とでも言おうか、異常にコストが割高で、どうにも運用しづらい。
これならば、ゲーム外サーチではなくなるが、デッキの中から探してこれて何度でも起動できる《次元の門》が随分お得に見えてしまう。
「エクソダス」あたりから始めたプレイヤーが、興味を持って古いカードを調べた時、このカードを見つけた時、それはそれはイレギュラーなテキストに驚いたことだと思う。
そして、それが数年後にリメイクされて発売された時はもっと驚いたことだろう。
はい、筆者の思い出です。
まだゲーム外から持ってこれるのはサイドボードのみというルールが定まる遥か昔の話。
このカードを主軸に据えたデッキを用いて、自分のコレクション全てをぶち込んだカートを常に携え、数千枚あるカードの中からどれを使おうか贅沢に悩むという遊びをしていたプレイヤーがいた、という都市伝説がある。
カートを押しながらデュエルスペースを移動している姿は面白いけど、当たった方はたまったもんじゃないよね。
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2013/10/05
「電結の荒廃者」
+1/+1カウンターの話で、避けて通れない存在と言えば《電結の荒廃者》だ。
これほど邪悪なクリーチャーもなかなかいない。
能力はシンプルなもので、アーティファクトを食えば食うほどデカくなる。
もし、自身が除去されるようなことになれば、
その蓄えたパーツを他のアーティファクトクリーチャーに託す「接合」能力も持っているため、
結構遠慮なしにバクバク食べさせて大きくすることが可能だ。
複数引いてしまった《霊気の薬瓶》やアーティファクト土地なんかうってつけの存在だ。
さらに、登場した「ダークスティール」の頃にはまだ「ダメージスタック」というルールが存在したため、
相手のクリーチャーと相討ち確定のアーティファクトクリーチャーをダメージだけスタックに乗っけてパクリと食べてしまうことも出来た。
これだけ支配力の高いクリーチャーが無色で2マナなのだから恐れ入ったぜ。
何よりも、この時代はこのラヴィッジャー(英名Ravager)君と「併せて使って勝ちなさい」と書かれているカードが多すぎた。
《大霊堂の信奉者》は、このラヴィッジャー君がご飯を食べている横で対戦相手に怨念を飛ばして瞬く間にライフを削ってしまう。
この魔界のコンビネーションは、2005年3月20日に揃ってスタンダードで禁止カードとなった。
そのコンビがライフを削るのと同時に、膨大なアドバンテージをもたらしたカードが、かの悪名高き《頭蓋骨絞め》である。
言うまでもないだろう。1マナで凧やカエルが2ドローと1点ダメージとラヴィッジャー君のカウンターになる。
引いてきた構築物にさらにもたせて食べて…当時のスタンダードはもはや別ゲーと化していたのだった。
この極悪サポーターはコンビより半年早く2004年6月20日に禁止カードとなった。
では、最後にこのラヴィッジャー君の全盛期である
「電結親和」のリストを見てお別れとしましょう
3《ダークスティールの城塞》
3《空僻地》
4《大焼炉》
4《囁きの大霊堂》
4《教議会の座席》
4《大霊堂の信奉者》
4《電結の働き手》
4《電結の荒廃者》
4《金属ガエル》
4《マイアの処罰者》
4《溶接の壺/Welding》
3《黄鉄の呪文爆弾》
4《彩色の宝球》
4《頭蓋骨絞め》
4《物読み/Thoughtcast》
3《爆片破/Shrapnel Blast》
悪魔のデッキや!
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2013/10/04
「クラージ実験体」
さて、ここまで+1/+1カウンターにまつわるカード・能力を紹介してきたが、本日はそれらの親玉とも言えるカードを紹介したい。
それがこの《クラージ実験体》だ。
モミールが愛情を注いで育て上げたこの生物兵器は、シミックにゆかりの深い+1/+1カウンターに関する能力の頂点に立っているとも言える。
このカードは、+1/+1カウンターが置かれているクリーチャー達が持っている起動型能力を「すべて」自分のものにする。
乗っていないクリーチャーにも、自らカウンターを飛ばして強引に己の神経系と接続させてその能力を共有してしまうのだ(完全なる妄想である)。
情景はどうにせよ、かなり特殊な能力を持ったクリーチャーであることは間違いない。
《円環の賢者》《実験体》《細胞質の根の血族》といった進化・移植クリーチャーと相性が良いのは勿論、同じくシミック連合に所属する《シミックのぼろ布蟲》とも相性は抜群だ。
これらを抜きにしても、相性の悪いカードというのはほとんど存在しないだろう。
ぶっちゃけ、リミテッドや「モミール・ベーシック」なら回避能力持ちのサイズを上げつつ自身は堅いブロッカーとなるだけで勝ててしまう。
相手がモミールを8で起動して《悲哀の化身》を出して来たら、さっさと能力をパクって除去してあげよう。
しかしこのカードの本来の力を味わいたいのなら、先述したようなカード達とのめくるめくコンボを狙っていくべきだ。
3枚コンボになってしまうが、《壊死のウーズ》がブイブイ言わせた《Phyrexian
Devourer》+《トリスケリオン》コンボを墓地ではなく場で決めることが出来る。
「統率者」にて一度は決めてみたいコンボではある。
さて、ルールのお勉強の時間です。
《ギデオン・ジュラ》をクリーチャー化してカウンターを乗せた場合・あるいは「テーロス」の神様達にカウンターを乗せた後に彼らの信心が5未満になった場合…どういうクラージは状況になるか、考えてみよう。
答えはお近くのジャッジへ!ジャッジの皆さんは、プレイヤーにルールの質問をされるのが大好きです。
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2013/10/03
「トリスケリオン」
+1/+1カウンターをギミックとして扱うカードの中でも最古のものと言っていいだろう、《トリスケリオン》先生を紹介しよう。
とは言え、改めて紹介するまでもないほど、長くやっているプレイヤーにはお馴染みのクリーチャーだ。
6マナ1/1、+1/+1カウンターが3個乗って場に出る。
これだけでも初出の「アンティキティー」の生物サイズで考えれば悪くない。
してその真価は、「ロケットパンチ」の愛称で呼ばれる、+1/+1カウンターを1ダメージに変換しどこかに飛ばすという能力だ。小さいクリーチャーどもを撃ち落とし、簡単に1:複数交換が出来るカードアドバンテージのお手本のようなクリーチャーだ。
愛称「トリ助」彼の真骨頂は、様々なカードとの強烈なシナジーである。
最初の相方は《動く死体》だろう。
3本腕の内2本を任意の場所に撃ちこんだ後、最後の一発を自らに向けて発射し墓地へ…それを《動く死体》で釣り上げロケットパンチの連打をお見舞いするシナジーを中心に据えた「Animate
Mix」から彼(?)の進撃は始まった。
続いてのピークは時を隔てた「ミラディン」ここで近代のロボットチックにリシェイプされたイラストでカムバックしたトリ助は「フィフスドーン」で《メフィドロスの吸血鬼》という最高のタッグパートナーと巡り合った。
彼らが並べば、クリーチャーに好きなだけロケットパンチをお見舞いして対戦相手の「クリーチャーで勝つ」という一つの道を完全に断つことが出来る。
このタッグチームを場に呼び出すのが《歯と爪》。
この《歯と爪》を撃つために必要なマナは《雲上の座》で供給、と完璧なお膳立てがされていた環境だった。
実はヴィンテージでも、なかなか侮れない。
1ターン目に《闇の腹心》を出していい気になっている相手に《Mishra’s
Workshop》《Black Lotus》から叩きつけて心をへし折ってやろう。
ちなみに「トリスケリオン」とは三脚巴という伝統的な文様のことである。3本の人間の足が車輪になったようなマーク、見たことないだろうか?
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2013/10/02
「ひなびた小村」
「モーニングタイド」は+1/+1カウンターがテーマの1つになっているセットだ。
キーワード能力「補強」は、本来のカードとしての用途を持ちながらもそれがもう不要である状況・あるいは緊急事態に、コンバットトリックとして使用できるカード達というデザインがなされている。
「補強X」と書かれ、コストを払って手札から捨てることでX個分の+1/+1カウンターを対象のクリーチャーの上に置くことが出来る。
シンプルでわかりやすいこの効果は、「サイクリング」の亜種と考えることもできるだろう
。起動型能力であるため、呪文よりもより安全に運用できるコンバットトリックであるが、《真髄の針》《抑制の場》などの影響は受ける。
補強を持つカードはいかにも「ザ・リミテッド」なものが多いが、その中でも構築シーンで活躍したのが今日の1枚《ひなびた小村》だ。
このカード、普段は若干デメリットがついた平地であり、マナが十分な終盤は自軍の打撃力をアップしてくれる使い勝手の良いカードだ。
デメリットである「キスキン見せなきゃタップイン」も、それらが溢れ返っている「キスキン」で用いればほぼアンタップインさせることが出来る。
どうせ1ターン目、この土地を出すために見せた《ゴールドメドウの重鎮》はそのまま出すことになるのだからデメリットと考えなくても良いレベルではあるが、土地が4枚で手札は《雲山羊のレインジャー》のみという状況で引いたのがこのカードだったら…というシーンも無い訳ではない。
それでもこの土地を使うのは、やはり補強がそれだけ優秀だからだ。何より、「キスキン」というデッキと噛み合いすぎている。
「キスキン」は1、2マナのキスキンでボコボコ殴って勝つデッキではあるが、最も流行ったタイプはこの序盤の攻めを《イーオスのレインジャー》《遍歴の騎士エルズペス》《黄金のたてがみのアジャニ》そして先述した雲山羊など、割とマナを必要とするカードが多く積まれている。
《運命の大立者》もマナ食い虫ではある。これらのカードを潤滑に運用するため、デッキの土地は25枚ほど必要になってくる。
この構成で、マナフラッドが起きても戦線に触れることの出来る土地というのは実にありがたいのだ。
また《メドウグレインの騎士》を3/3、4/4と育ててしまえばそれだけでEasy
Win出来たゲームが少なからず存在したことを付け加えておこう。
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2013/10/01
「残忍な先祖返り」
「増幅」というキーワード能力をご存知だろうか。
マイナーなもので、「レギオン」に収録されている9体のクリーチャーが持っているだけ。
その内容は、戦場に出るに際し手札のこれと同じクリーチャータイプを持つカードを公開することで、公開した1枚につきX個の+1/+1カウンターが乗った状態で場に出るというもの。
Xは個体によってそれぞれ違うが、1~3であった。
部族がテーマだった「オンスロート・ブロック」らしい、同種族のバックアップを受けて大きくなるという能力だ。
これらのクリーチャーは皆、高い戦闘力を誇るサイズまで成長できる…のだが、軒並みマナコストが重いことが難点であった。
これを手札から唱えられるときにはもう他のカードなんて手札に残ってないよ!というレベル。ちなみに青にはこれを持つものがいない。
先ほど述べたマイナスな点もあって、構築ではまずみかけることはなかったが、リミテッドでは十分に戦力になる連中だった。
「レギオン」のプレリプロモにもなったこのレア《残忍な先祖返り》など、強烈なフィニッシャーとなり得たのだ。
6マナ3/3と、マナに不釣り合いなサイズながら「増幅2」のため1枚見せれば5/5、2枚見せれば7/7だ。
さらには「挑発」持ちでもあるので、さながら除去のように使うこともできる。
この後にもこれに続くビースト達がいることが確定しているので、相手はタジタジだろう。
しかし不思議なカード名だ。
英名《Feral Throwback》。Feralは日本語訳テンプレで「残忍な」となっている。問題はThrowbackの方。これを辞書で引いてみると…
【名詞】【可算名詞】1投げ返し2あと戻り,逆転3先祖返り;
先祖返りの例 〔to〕
おぉ、本当に先祖返りという意味があるようだ。
この先祖返りとは「ある個体に,親はもっていないがそれ以前の祖先がもっていた形質が現れることを先祖返りという。」ごくまれに尻尾が生えたようになっている人がいるが、そういうものを指す言葉だ。
この場合、貧弱な身体からキングコングのような逞しい腕が生えてきているのが先祖返りにあたるのだろう。
だとすれば、この生き物はゴリラのような強靭な肉体を持つ先祖から進化して、この昆虫と爬虫類のハイブリッドのような身体になった種族なわけだ。
一体どういう進化なのだろう。
このあたりを妄想するのもマジックの楽しみの一つだと筆者は心から思っている。
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2013/9/30
「ラクドスの哄笑者」
「テーロス」がいよいよ発売され、この週末は各々充実したマジックライフを送られたことと思う。
発売前と後で、あっという間に評価が変わったカードはないだろうか?
テーロスには様々なメカニズムが組み込まれている。個人的には「怪物化」を持つカード達が面白い。
突如として牙を剥くというフレイバーとしても、マナフラッドをカバーするという点においても。
怪物化は原則として+1/+1カウンターが定数乗る能力であり、怪物的という状態になることでサイズ以外の面でもボーナスが得られるものがあるよ、というものだ。
さて、クリーチャーに+1/+1カウンターが置かれる能力は何も今に始まったことではない。
今週はこのサイズをあげるカウンターにまつわる一週間でいってみよう。プラスワン・ウィークだ。
まずは直近の「ラヴニカへの回帰」から、「解鎖」だ。
この能力は、クリーチャーが場に出る際に+1ボーナスを得た状態で出ることを選んでも良いというもの。
純粋に点数で見たマナコストに過ぎたる打撃力を得られるのだが、勿論美味しいことばかりではなく、サイズアップした連中はブロックに参加できなくなる。
「解鎖」は英語では「Unleash」、「解き放つ」または「(感情・心境などを相手に)浴びせかける・爆発させる」という意味を持つ。
ラクドスというギルドのイメージにもぴったりだ。解き放たれれば死ぬまで前のめり、雇い主(プレイヤー)が落とされようが構うもんかという能力は素晴らしい。
これらのラクドス教団の一員の中で、最も使われているヤツといえばこの哄笑者だ。
1マナ2/2はいつだって強い。
歴代の赤の1マナパワー2連中と比べても、デメリットは可愛いものだ。
いざとなれば鎖を解き放たずに、チャンプブロッカーとしてプレイヤーの盾にすることもできる。
これからも赤いデッキ(及び黒いデッキ)の先兵として、そのギラついた笑顔を見せ続けることだろう。
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2013/9/28
「地獄乗り」
筆者が「闇の隆盛」スポイラーで
たまらなくテンションの上がった1枚だ。
このデビル、4マナ3/3速効という《タールルームのミノタウルス》ボディに、
ロード能力に近い打点底上げ能力を持っている。
数が並べば並ぶほどダメージが増すのは勿論だが、
単純に更地でトップした場合、4マナで4点ダメージを与えることが出来る。
これだけでも十分使用に耐えうる数字だ。
このカードが評価されるまでには、少々時間を要した。
傷痕ブロックとの共存時は、
当時流行った「ステロイド」に採用される余地はあったが、
同じ4マナ域には《高原の狩りの達人》がまず4積まれるという傾向にあり
《地獄乗り》はその後ろに2枚ほど採用される程度であった。
さらに「ラヴニカへの回帰」参入で「ラクドス」が全盛期を迎えると、
いよいよ俺の出番か!…となるも、当初のラクドスの主流はゾンビのシナジーを主軸に据えたもの。
4マナ域には同エキスパンションの同期の桜《ファルケンラスの貴種》がおり、
彼女の方がよりゾンビ達との相性は良かった。
《ゲラルフの伝書士》のトリプルシンボルとは共存しづらかったのだ。真に残念なことに。
しかし、このゾンビ型がメタられだすと赤単タッチ黒の中速デッキが突出し始める。
「ラクドスミッドレンジ」の登場だ。
ミッドレンジという言葉が広まることの立役者となったこのデッキ、
遂に《地獄乗り》が《ファルケンラスの貴種》と肩を並べて・メタ次第では(《悲劇的な過ち》の採用が増えたなど)貴種よりも優先されて使われるようになった。やった!
さらにはM14発売を受け「赤単ミッドレンジ」なるデッキまで出てくると
いよいよ4マナ域はこの俺だと4枚採用されることとなった。
《ラクドスの哄笑者》《流城の貴族》《灰の盲信者》らと共に駆け抜け、
相手のダメージ計算を一発で狂わせる。
この環境の赤は本当に速効に恵まれていた。
赤が好きなプレイヤーにとっては、実にやりがいのある1年だったことだろう。
《雷口のヘルカイト》共々去ってしまうのはとても寂しいが、改めてありがとうと言いたい。
なぜここまで筆者がこのカードを推しているのかというと、英名が「ヘルライダー」だからだ。
カッコイイ。これに尽きる。
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2013/9/27
「スレイベンの守護者、サリア」
すっかり「人間」がマジックの最強種族の地位に君臨するようになった。
この種族の登場は意外なことに「ミラディン」とマジックの歴史で見ればまだまだ10年のキャリアしかない。
それ以前の「職業タイプしか持っていないどう見ても人間な連中」も軒並みに人間となったため、一躍最大勢力へと成り上がった。
先輩面していたエルフやゴブリンも肩身が狭い思いをしていることだろう。
今や人間に出来ないことの方が少なくなっている。
軽量アタッカー、除去能力、アドバンテージ獲得、相手への妨害、さらにはフィニッシャーやコンボパーツとしての役割まで。
我々の世界の人間と同様、人が手を取り合って力を合わせれば出来ないことなど何もないのだ―――などと恰好をつけるのはここらにしといて、本題に入ろう。
今日の1枚、このイニストラード・ブロックのストーリーでも主要登場人物でもある彼女は、仲間を・プレイヤーを守るため、プレイヤーが呪文を唱えることを妨害する。
全ての呪文をたった1マナではあるが重くする。しかしこれがたった1マナと侮るなかれ。
この稼いだ1ターンが明暗を分けることは皆様ご承知のことだろう。
《至高の評決》が4ターン目に撃てないということは、1回多く全軍突撃することが出来る。
それだけの時間を稼げれば十分というものだ。
このカードが採用されたデッキは、各種人間ビートダウン(GW、UWなどW+一色が主流。
これも全カラーに存在する人間ならでは)、またその派生形である「Naya
Blitz」のサイドボード、人間とはまた違うアプローチのGW・セレズニアビートなどだ。
これらのデッキ、何れも1ターン稼げれば十分にライフを削りきれるデッキだ。
この時間稼ぎに加えて、2マナパワー2・先制攻撃のボディは申し分ない。
唯一の弱点は、伝説のクリーチャーであることか。ただ、こんな能力持ちを2体3体と出されてはゲームにならないのだから当たり前ではあるよね。
この点は逆に《Karakas》で守れるくらいに思った方が良いだろう。
スタンダードは勿論、レガシー・さらにはヴィンテージでさえその強烈な存在感を示している。
レガシーではGWの「マーベリック」では定番の1枚。
ヴィンテージでは「フィッシュ」や「ZOO」などでパッと場に出て、パワー9なくともパワー9に対抗できるということを証明し続けている。
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2013/9/26
「雲散霧消」
「確定カウンター」と呼ばれる呪文ほど、青ユーザーにとって頼もしい存在はないだろう。
《対抗呪文》から連綿と続くその系譜、最近では《取り消し》が標準のものとなっており、パワーダウンは誰の目にも明らかである。
それでもカウンターしたい!というプレイヤーの熱い思いに応えてなのか、「イニストラード」では古き良き青の時代からタイムトリップしてきた1枚があった。それが《雲散霧消》だ。
《対抗呪文》に追加で1マナ払うと、打ち消した呪文は墓地に置かれるのではなく追放されるようになる。
このカードが登場した「ミラージュ」の時代において、これは確定カウンターを8枚搭載できるようになったということ以上の意味があった。
それは青の天敵である1枚、《ボガーダンの槌》への回答であるということ。
無限に回るこの火力も、しっかりと《雲散霧消》してやることで綺麗サッパリ処理できたのだ。
ハンマーユーザーは如何にしてこの雲散霧消を掻い潜るのかというプレイングを要求された。
相手の誘いに乗らず、最後までしっかりとこのカードを握り、意を決したハンマーに向かってこのカウンターを投げつける。パーミッションを使っていて良かったと、心から思う瞬間だ。
さて話を現代に戻そう。
このカードが帰ってきたイニストラード・ブロックは墓地がテーマの1つであり、数々のフラッシュバック呪文や《墓所這い》といった、何度もしつこく対処を迫ってくるカードのオンパレードだ。
特に、先日紹介した《掘葬の儀式》などその典型で、1枚で2枚のカウンターを消費させられてしまう・逆を言うと1枚しかカウンターを持っていなかったら負け、とまで言えるカードだ。
そりゃ《雲散霧消》も再録されるというもの。
帰ってきた確定カウンタープラスαは多くのプレイヤーに愛され、「UWデルバー」や「トリコフラッシュ」といったデッキが頂に立つのを2年間支え続けた。
今、このカードは役目を終え、次なる3マナ確定カウンター《解消》にその席を譲ることになる。
次期スタンダードでは、カウンターが再び力を持つ時代が来るのだろうか。
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2013/9/25
「高原の狩りの達人/高原の荒廃者」
クリーチャーは最も脆いパーマネントである。マジックの中でも主役格のポジションであるが故に、それに対抗する手段も幾らでもある。
だからこそ、場に出てすぐになんらかの仕事を果たすクリーチャーは強力なものである。
それが盤面に変化をもたらすことが出来れば出来るほど良い。
その他にクリーチャーに求められることといえば、突破力も無視できない要素だ。
ブロックというシンプルにして最高の防御法がある為、それらの壁を一方的に踏み潰すサイズ・打破できる能力を持つものは素晴らしく価値のあるものだ。
無論、これらを併せ持つクリーチャーは多数存在する。
しかし、そのどれもが最高のものであるとは言い難い。コストだ。贅沢な相談には、それ相応のお支払いを要求される。
8マナ9マナ10マナ…そう簡単に捻出できるものではない。
そんなプレイヤーの無茶な注文を解決した素晴らしいクリーチャーがいた。
《高原の狩りの達人》だ。
マルチカラーとはいえ、4マナという問題なく運用できるマナコスト(さらに「RGG1」のようなキツい拘束でもないところが良い)、さらに場に出れば2点のライフゲインと2/2の狼トークンを生み出す速効性のある能力。相手が最序盤から小物を並べ、電撃戦を仕掛けてきても、とりあえず達人を呼べば一息つけるだろう。
例え達人本体がすぐさま除去されても最悪2/2が残るという保険もついてくる。
そして、この2/2と戦闘力では落ちるオッサンが「前のターンに呪文が唱えられていない」という条件を満たした途端に殺傷能力が倍増した狼男へと変身する。
4/4トランプルという十分なボディに加え、獣性が勢い余ってクリーチャーとそのオーナーに殴りかかるオマケつきだ。
この条件、一見ターン中に出来ることを放棄しなければならない様に見えるが、《ケッシグの狼の地》という素晴らしいパートナーによってそれは解消される。
狼トークンを特攻させてこのケッシグで巨大化させれば大ダメージを与えつつ、変身させてアドバンテージまで取れてしまう。
これは主に「GRケッシグ」で多く見られた光景だ。
《原始のタイタン》に繋ぐまでの時間を稼いでくれるばかりか、時間稼ぎのつもりで出したこの狩人がそのまま相手を狩ってしまったなんてこともザラであった。
とにかく強力な狼男であり、イニストラードの主要部族の1つそれぞれ存在する伝説のクリーチャー・サイクルにこの達人を加えるかということも考えられたようだ。
レジェンドとして十分な能力ではあったが、裏と表になった時に名前が違うため「変身前と変身後が共存出来てしまう」という問題があったこと・またせっかくの強力な狼男であるため気兼ねなく使ってほしいとの開発陣の思いからそれは不採用となった。ええ、気兼ねなく使わせて貰いましたとも。
初心者にスタックの解決の順番を教えるにはもってこいの1枚であった。
お互いにこれをコントロールしていて、何もせずにターンを返すと一方的な殺戮を行うことが出来たのだ。
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2013/9/24
「堀葬の儀式」
「リアニメイト」は、それこそマジックの最初期から存在していたアーキタイプである。
とにかくゲームを決める能力を持った(大体は強大なクリーチャーを)埋めて釣り上げる。
普通にマナを払って出すよりも遥かに早く、効率よく戦場に送り込んだクリーチャーで一気に勝負を決める、コンボデッキの1つだ。
このデッキも時代と共に形を変え、コンボ要素をあくまでもフィニッシュの手段として、基本的にはコントロールとして動く「太陽拳(ソーラーフレア)」「昇竜拳」などのデッキも誕生した。
そして「イニストラード」の登場。
このセットは久々の墓地がメインテーマであり、フラッシュバックの再登場が話題となった(これも2年も前の話だと思うと月日の流れの速さを思い知らされる)。
そのセット内で、一際墓地で輝く1枚が今日の1枚《掘葬の儀式》だ。
所謂リアニメイトの「釣竿」であり、自身もフラッシュバックを持っている。
通常のキャストは5マナと重めだが、フラッシュバックなら白マナを含むが4マナへとダウンするというかつてない能力を持っている。
純粋に2回使用しても良いし、同セット内の《根囲い》などでクリーチャーと一緒に落ちてしまっても構わない。これがこのカードの最大の利点だ。
これまでのリアニメイトでは、ライブラリーから墓地へカードを落とす際に、うまくクリーチャーが捲れてくれたのは良いが、喉から手が出るほど欲しい釣竿も一緒に落ちてしまうということがあった。
このカードではそんな心配は無用、ということで現代のリアニメイトは《忌まわしい回収》《信仰無き物あさり》《禁忌の錬金術》などでザクザク掘り進むことが出来たのだ。
《太陽のタイタン》《幻影の像》とのシナジーを生かした新型の「太陽拳」、RTR参入後は強化されたマナ基盤により、従来の「ジャンクリアニ」に赤を追加した4色・「赤リアニ」、さらにはコンボにより特化した「人間リアニ」など、様々なメタを駆け抜けていったデッキがまずこのカードを4枚搭載することを前提にしていた。
スタンダードを引退しても、このカードにはまだ戦場がある。モダンだ。
「UWトロン」「けちコントロール」と呼ばれるデッキ達は、《けちな贈り物》でこの儀式とお目当てのクリーチャーの「2枚だけ」をサーチすることで、確実に一本釣りコンボを成立させる。
墓地に眠るクリーチャーを叩き起こすのと同様に、このカードもまた眠りにつくことはないのだ。
今週はこのカードの様に、「テーロス」が参入することでスタンダードから去っていくカード達をフィーチャーしていこうと思う。
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2013/9/21
「怨恨」
言わずと知れた最強オーラ。だが敢えて紹介したいと思う。
緑マナ1つでパワーを2上げてトランプルを与える。
これだけでも相当に強力なものだが、
このカードが最強と呼ばれる所以は、オーラの弱点を克服していることにあるだろう。
「怨恨が戦場からいずれかの墓地に置かれたとき、怨恨をオーナーの手札に戻す。」
この一文がこのカードをこれ以上ない最強の座へと昇華させている。
これはウルザブロックにおけるオーラのサイクルが持つ能力であったが、
その中でも《怨恨》は群を抜いた恐るべき存在だった。
このカードの登場により、1マナクリーチャーをパンプしまくって一気に勝負を決める
「ストンピィ」と呼ばれるデッキが日の目を浴びた。
瞬く間にトーナメントシーンで大躍進したのが実に懐かしい。
例えパンプしたクリーチャーを除去されても、
またクリーチャーを引けば《怨恨》によって打線の立て直しは非常に簡単なものだ。
さらに後のエキスパンションで相性の良いオーラ《祖先の仮面》などが出てくると
「アデプトグリーン」と呼ばれるエンチャントによるシナジーを主軸に据えたビートダウンも登場した。
そして時を隔て、《怨恨》は「M13」にて再び我々の前に姿を現した。
オーバースペックと言われたこのカード、勿論スタンダードで使われないはずもなく。
当時ではあり得なかった多色化サポートもあるため、
赤の優秀な軽量クリーチャーの打撃力を高めたり、
青絡みの《不可視の忍び寄り》《聖トラフトの霊》といった呪禁連中で
より安全に運用したりと使われまくった。
さらにM13に収録されたという事実は、
スタンダードのみならずモダンでの運用をも可能にした。
この無視できないオーラの恩恵も受けて、
世に羽ばたいたデッキが「GWオーラ」「GW呪禁」「オーラバトラー」などと呼ばれる、
1マナの呪禁持ちにオーラを貼り付けまくって一気に勝負を決めるデッキだ。
さらにこのカード、その1マナにして手札に戻ってくる能力の方にスポットを当てたデッキも登場したのだった。
そのデッキの名は「オーランカー」。
《オーラトグ》にランカー(《怨恨》の英名)を付けては食べさせを繰り返し、
ワンパンチでKOを狙える豪快なデッキだ。
《怨恨》は5回もカード化された1枚だが、
イラストは一貫として同じものが使われ続けている。
一度見たら忘れられない、Kev Walkerによる魂のイラストだ。
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2013/9/20
「税収」
白のお家芸は「何でもできること」だと筆者は思う。
突き抜けた対処はないものの、何にでも丸く対応できるのがこの色の特徴であり売りであると。
クリーチャー・アーティファクト・エンチャント・土地・プレインズウォーカーとパーマネントであれば何にでも触れることは出来るし、インスタント・ソーサリーに関しても限定的ながら打ち消したり、元から断ってしまったりという技を持っている。
最近ではすっかりその対応力が目立っているが、少し前まではある能力も得意技の1つであった。
それは「土地サーチ」だ。
ランパン系を多く擁する緑の能力に思われがちだが、元々は白と緑に等しく与えられた能力だった。
緑は直接場に出すブースト型であり、白は手札に蓄えるアドバンテージ型という棲み分けがなされていたのだ。
その中でも最強の1枚の呼び声も名高いのが《税収》だ。
平地を1枚手札に加えて、相手の土地が自分より多ければ追加で1枚のボーナスを獲得出来る。
全て土地であるとはいえ、1マナで2ドロー出来るインスタントは強烈だ。
所謂ライブラリー圧縮も可能であり、先手の相手のエンドに撃てば、2枚ランドを抜いてより良質な通常ドローを迎えることが出来る。
このままメインで《ハルマゲドン》なんかに繋ぐことが出来れば言うことなしだ。
相性の良い土地は各種フェッチランド。
起動して相手より土地が1枚少ない状態にし、スタックで使用すれば多大なるアドバンテージを獲得出来る。
また、持ってくるものは平地であれば何でもよいのでデュアルランドをサーチして色マナの安定に繋ぐことも容易であり、旧エクステンデッドは大変重宝したものだ。
さらには相性の良いカードが多かったのも追い風だった。
《モックス・ダイアモンド》で土地を出さずにマナを伸ばしながらしっかり土地も獲得し、増えた手札は《浄火の鎧》の打撃力アップに貢献する。
更には、これで手札を平地だらけにした上で《呪われた巻物》を起動すればダメージを与える確率は跳ね上がる。
今ではすっかり見ないカードとなってしまったが、レガシーで使ってみると意外に強かったりするんじゃないかなぁと筆者は思っている。
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2013/9/19
「ウーラの寺院の探索」
「諸君、私は、デカいクリーチャーが好きだ」とその胸に情熱を秘めながらも、それらのクリーチャーが場に出ること・運用することの難易度の高さに諦めて、やむなく軽いクリーチャーを主体としたデッキを組まれている方が多いことかと思う。
まだ、緑の連中は恵まれている方だ。
レガシーの「エルフ」の強烈なブーストをもってすれば、《孔蹄のビヒモス》の素出しすら容易い。
それに比べると、青のファッティ達は少し不遇ではないか。
近年の軽いクリーチャーの進化によって、リミテッドでさえその立場を危ぶまれている青の海洋性ファッティ達、クラーケン、リバイアサン、タコ、海蛇。
彼らに遂に「ワールドウェイク」で救済がもたらされたのだ!(とは言っても、タコはゼンディカーで登場した《潮汐を作るもの、ロートス》が唯一の巨大生物なので大して待ってはいない)それがこの《ウーラの寺院の探索》だ。
条件を満たせば、ターン終了時に禍々しい海の支配者を降臨させることが可能だ。
条件の、トップのクリーチャーを見せるというのも、決して難易度の高いことではない。
《渦巻く知識》《占い》といった青ならではのライブラリー操作、《師範の占い独楽》《巻物棚》といった強力なアーティファクト達の力をもってすれば、事故を回避しながら奥深き寺院の探索をのびのび行えることだろう。
勿論弱点もあって(むしろ弱点しかないと言ってほしくはない)、このカードを用いたデッキでは、このカードがなければその手札をキープすることが事実上不可能であること。
所謂「ベルチャー」系デッキとほぼ同じ問題を抱えている。
さらに、それらのデッキはまだ一発で勝利出来るから良いものの、このデッキでは出した生物であと2回は殴る必要があるし、それらの生物で被覆や呪禁を持っているものは皆無と言っていい。あっさりと除去されてしまうだろう。
筆者はこのカードと大好きな《Polar
Kraken》とその仲間達+独楽相殺に《実物提示教育》を入れたデッキを作ってレガシーに持ち込んだことがある。
まだ「エルドラージ覚醒」が登場する前の話だ。結果はどうか聞かないでほしい。
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2013/9/18
「ゴブリンの群勢」
1マナクリーチャーはパワーが2あれば上出来であり、十分使用したくなる性能だ。
それが速攻で相手のライフを詰めるカラーであれば尚更であり、もっと厳密にいうと赤が常に欲してやまない存在である。
《ジャッカルの仔》《ゴブリンの先導》《ラクドスの哄笑者》など代表的な存在であり、デッキのエース格となった連中だ。
彼らに負けない1マナ2/2が、しっかりと「神河謀反」にて登場していたのをご存知だろうか。
いや、彼らに負けないというのは言い過ぎたかもしれない、許してほしい。
何はともあれ《ゴブリンの群勢》を紹介しよう。
1マナでしっかりとパワー2、タフネスも2でマナレシオ2、サイズは優秀そのものだ。
ただし他の連中と同じく勿論デメリットがあって、それは各ターンにアタックに行きたければ、前もってクリーチャー呪文を唱えていなければいけないというもの。
臆病な・マイペースなゴブリンらしい、誰かに背中を押してもらわなければ前に出ないというフレイバーはゲームとも噛み合って実にいいデザインと言える(実は、《モグの徴収兵部隊》という同様のゴブリンの同型再販ではあるのだが)。
このカード、「バーン」のような火力主体のデッキに入れたいスペックだが、そこではほとんど機能しないだろう。
より軽いクリーチャーが主軸である「スライ」系のデッキならば、そのイケイケ能力を存分に発揮することだろう。
勿論「ゴブリン」デッキにいれても彼自身は機能するが、今日のレガシーのそれではこのようなクリーチャーの居場所はない。
モダン仕様ならそこそこ活躍する1マナ域となるかもしれない。
《ゴブリンの酋長》で速攻を与えてやれば、自身で条件を満たして出したターンに殴りに行ける。
このカードの最大の活躍の場は、なんと言っても「Pauper」だ。
マジックオンラインにて採用されているコモン限定構築のゴブリン・スライ系のデッキではデザイン元となった《モグの徴収兵部隊》と共に盤石の1マナ域を形成している。
神河のゴブリンなのに悪忌ではなくゴブリンと表記されている唯一のカードであり、かなり違和感を覚えるものとなっている。
これには、いつでも再録できるようにしているのではないか?などの憶測がされている。
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2013/9/17
「思考囲い」
朗報だったのではないだろうか。あの最強の1マナハンデス《思考囲い》が「テーロス」に再録される―――いつも新セットのスポイラーがあがりはじめた頃に流れるお約束の噂だ。
しかし今回は違った。
噂はあっさりと公式プレビューで肯定され、入手困難となっていたこのカードが現行販売パックから出てくることとなった。
青天の霹靂とはこのことだろう。
さて、そんな《思考囲い》。
強力なのは今さら言うまでもないだろうが改めて紹介しよう。
まず、「ローウィン」のプレビューに登場した時。多くのプレイヤーが驚いたものだ。
待ちに待った1マナハンデス、しかも落とせるカードは土地以外ならなんでもOK、ときたものだ。
この手のハンデスの代表《強迫》は現役時代メインから4積まれるものであったが、度々クリーチャーしかいないハンドを見せつけられたりしたものだった。
もうそんな悩みはない。
2点さえ払えばなんでも落として良いのだ。
よりビートダウンにも耐性がついたこのカード、発売と同時に使われないフォーマットが存在しない最強の手札破壊として君臨したのだ。
手札破壊(ハンデス)は度々打消し呪文(カウンター)と比較されがちである。
ハンデスの利点は、自分からアクティブにしかけて必ず1:1交換が取れるところであり、カウンターの利点は不意に降りかかる相手のトップデッキにも対応出来るその柔軟さだ。
これのどちらを用いるかは、最終的・究極的には性格や好みに委ねられるのだろう。
筆者としては、強さが変動しがちな《呪文貫き》よりも先手でも後手でも強さを失わない《思考囲い》を使って自分から攻め立てていく方が好みだ。
特にこのカードがスタンダードに存在した頃、必ずやこのカードで1ターン目に処理しなければならないカードがあった。
それは《苦花》。1枚でゲームを決めるこの強烈なカード、使われる方は勿論使う側でさえ、ライフの損失がキツいのは十分承知の上で同じく相手の《苦花》或いは《思考囲い》を抜くために共存しているのが当たり前だった。
今回は強力な1マナのカードを紹介したが、今週はこの調子で1マナウィークとしてやっていきたいと思う。
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2013/9/14
「泥穴」
テキスト自体は短く、書いてあることもちゃんとマジックの中の言葉である。
にも関わらず、だから何?と問いたくなるようなカードが
マジックには確実に存在している。
どれだけ重くても、効果がしょぼくても、
そのカードのベクトルが勝利に向けられているものはまだ良い。
問題なのは後ろ向きだったり、何も為さない類いのカードだ。
その点「オデッセイ」発売当時の《泥穴》は酷いものだった。
一体このカードが何をするというのか。
同エキスパンションではスレッショルドが登場、
墓地に7枚以上カードがあること自体が一種のアドバンテージであった。
そのため、その墓地に触れることが出来るカードを作るのは良いことだ。
それを得意としている黒や緑ではなく、
赤にその手段を与えるというのも素晴らしい。
しかし、何故土地しか飛ばせないのか。
そして、何故このカードがレアなのか。
その衝撃的なまでの「何もしなさ」で
泥穴は一躍駄目なカードのオールスターへの仲間入りを果たした。
当時、マジックを始めたばかりの少年たちが
頑張って手に入れたお小遣いを握りしめ、
勇気を出してカード屋に入り「オデッセイ」を1パック買う。
仲間たちとビリビリ剥いて
「やったーカマールだ!」「処罰者かっこええ~!」と声が上がる中、
君のパックから飛び出したレアは《泥穴》だ。
一体このカードは何をするのか?
土地が墓地からなくなることがどれだけの意味を持つのかはわからないけど、
レアだからデッキに入れてみるか…。
いざゲームをやってみて「いやだから何するねんこれ!?」。
世界各地で同じ悲鳴が上がったことだろう。
時代は過ぎ、墓地の土地に依存するカードは確かに増えた。
《世界のるつぼ》《壌土からの生命》《聖遺の騎士》…
これらに効くカードかと言われれば、確かに効くカードにはなった。
しかし、これよりも丸く広く確実に効くカードが多すぎるし、
《聖遺の騎士》に押されてる盤面で《泥穴》をトップして逆転できるかと聞かれれば、
筆者は「ウソ」だと思う。
だが、それ故このカードはカルト的な人気を誇っているのだろう。
是非とも《Collector Protector》と併せて使いたい。
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2013/9/13
「City in a Bottle」
何かしらの脅威に対抗する手段、所謂「対策カード」の歴史は古い。
何せ、「アルファ」の時点で《赤霊破》《青霊破》、《防御円》サイクルなどの色対策は存在していた。
さらにカードが増えるにつれて、特定のカードがトーナメントシーンで隆盛を誇るようになると、その支配力を緩めんがためのカードが意図的にデザインされることもある。
例を挙げれば《リシャーダの港》に対する《テフェリーの反応》《サーボの網》、フェッチランドや土地サーチに食らいつく《トンネルのイグナス》、《墓所這い》《瞬唱の魔道士》に対する《灰の盲信者》などなど。
対戦ゲームである以上「○○で絶対勝ち」というのは可能な限り少ない方が良い。
ゲームにバランスをもたらすためには、多少露骨なカードも必要になってくるのだろう。
その点で言えば、今日の1枚《City
in a Bottle》は露骨も露骨、大露骨。
何をメタったカードなのかって?これは「アラビアンナイト」そのものをメタったカードである。
その効果は「このカード以外のアラビアンナイト・エキスパンションのトークンでないパーマネントが戦場に出る度、それを生け贄に捧げる。
アラビアンナイト・エキスパンションのカードはプレイできない」というもの。
効果範囲の幅が広すぎる驚きの対策カードだ。
確かに「アラビアンナイト」は初のエキスパンションであり、そこに収録された強力なカード達が基本セットのカードを完全に食ってしまい、さも「アラビアンナイト」限定構築が基本だというような状況は好ましくない。
そのため、「アラビアンナイト」に収録されたカードがどれだけ強力で絶対的なものであったとしても、根っこの部分から対策出来るカードをデザインした、という経緯は理解できる。
しかしこれは「何を言ってるんだ?」と目を疑うレベルのクレイジーなカードであることには違いない。
盤面に触れるカードではないがポンと2ターン目に出されたらたまったもんじゃなかっただろう。
乱闘騒ぎになってもおかしくはない。
このカードはさすがに「メチャクチャ」判定を受けたのか、後に作られたエキスパンション・メタカードはもっと緩いものとなった。
ちなみに「アラビアンナイト」のカードの多くは我々の世界でいうアラビアンナイト・千夜一夜物語を元にデザインされているカードがてんこ盛りであるのだが、このカードはSandmanという漫画をモデルにしているらしい。
この漫画の一幕で、アラビアンナイトの夢・物語を永遠に続くものとするべく瓶詰にする展開があるのだとか。
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2013/9/12
「ドラゴン鎮め」
何もイカレたカードデザインは古い時代だけのものではない。
比較的近年のセットでも「え?」と目を疑いたくなるカードがちらほら登場しているものだ。
中でもインパクトが強かったのは《ドラゴン鎮め》だ。
一見、アドバンテージをガシガシとれそうなカードに見える。
しかし何をどう好意的に解釈しても、「あなたのドロー・ステップを飛ばす。」の一文はいらなかっただろう。
これさえなければまだ優秀なドローエンジンになり得たのに、残念でならない。
このカードが所属する断片「ジャンド」は生け贄をメインのテーマとしているため、うまく使えば強烈なドローも可能だろう。
しかし、それもあくまで1:1交換である。
単体で何かするわけではないこのカードを消費している以上、アドバンテージを稼いだと言い切るには相当のドローをしなければならない(何度も言うがドローを飛ばしているので尚更だ)。
《芽吹くトリナクス》との相性は目を見張るものがあるが、トリナクスがそもそも単体で十分強いのだから後は普通にドローしてればよい。
それでも、このカードの謎の魅力にとらわれたプレイヤー達は、なんとかこのカードを使おうとしたことだと思う。
筆者も、あまりにも友人がねだるのでデッキを作ってみた。
それがある程度の形になるには1年後の「エルドラージ覚醒」登場を待つことになった。
このセットで登場した落とし子トークンとの相性は確かに良かった。
《目覚めの領域》など、毎ターン確実に1ドローを供給してくれる、このシナジーはすごい!…と思ってから冷静に考えれば、これ《ドラゴン鎮め》を貼っていない状況と何も変わらないのでは…と気付いてしまった。
男にはロマンというものが必要だ。夢は夢であるから夢なのであって、夢だから追い続けることが出来る。
現実に気付かないことの方が幸せな場合もあるのだ。
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2013/9/11
「Shelkin Brownie」
クリーチャー達は、生まれた時に何がしかの目的を与えられていると筆者は思う。
《闇の腹心》《瞬唱の魔道士》などはプレイヤーにアドバンテージを与えるのが目的だ。
《タルモゴイフ》《地獄火花の精霊》などは相手を殴るのが目的だし、《灰色オーガ》なんかもリミテッドのバランスをとるという立派な目的を与えられているのだ。
そんな中、目的が今一つよくわからないクリーチャーもしっかり存在する。
そういうクリーチャーは一見小難しいことが書かれているのだが、その実「一体何をするのこれ?」というものばかりだ。
しかし、それらのクリーチャーにはそのよくわからないことをするという確固たる目的があるのだ。今日はその中の1枚《Shelkin
Brownie》を紹介しよう。
彼の生まれは「レジェンド」。
初の大型エキスパンション、伝説のクリーチャーおよびマルチカラーが初登場、エンチャント:ワールドも初登場、そして現在でも最前線で通用する強力なカードが多数!…と、同時に言葉を失ってしまうようなパンチの効いているカードも多数存在した。
《Shelkin Brownie》がすることは「クリーチャー1体を対象とする。
それはターン終了時まですべての「他の~とのバンド」能力を失う。」というもの。
そもそもが、現在マジックを遊んでいるプレイヤーの大多数が「バンド」というものを経験したことがないだろう。
マジックの黎明期では多くのクリーチャーに与えられた能力だが、ややこしい上に大して面白いものでもなく、構築で活躍するわけでもなかったので姿を消してしまった能力だ。
それぐらい空気なものに対抗しようとしている時点で、このカードのベクトルが他のカードと違うことはわかっていただけるだろう。
しかし最大の問題はそこではない。
この能力が「バンドを失う」と書かれていればどれだけ良かったことか…。
そこに書かれているのは「他の~とのバンド」。
これは実はバンド能力とは別のものなのである。
そして、この「他の~とのバンド」能力を持つクリーチャーの数は…
0
0!? ゼロである。この「他の~とのバンド」は、レジェンドの5種類の土地がそれぞれの色の伝説のクリーチャーに与えることが出来、また《Mater
of the Hunt》が生み出す狼トークンが持っているだけだ。
これらのカードに抗うことが出来るのは事実だが、だから何だというのだ。
…おっと、銀枠世界を忘れていた。
確かに、《Old Fogey》と他の恐竜の仲を引き裂けるぞ!
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2013/9/10
「軽蔑する利己主義者」
クリーチャーのサイズというものは、マジックにおいて最も大事なファクターかもしれない。
「マナレシオ」という概念がある。
これは「クリーチャーのパワーとタフネスの平均値÷マナコスト」で求めることが出来る。
例えば《灰色熊》の場合、2÷2=1でマナレシオは1だ。
《スケイズ・ゾンビ》は2÷3=0.667、《ゴブリンの先導》は2となる。
この数値が1を越えればクリーチャーとして優秀だということがお分かりいただけただろう。
では、この前フリで本日の1枚《軽蔑する利己主義者》に登場願おう。
そのマナレシオは、なんと0.125!弱い!余りにも弱すぎる!では何か驚愕のハイスペック異次元超絶アビリティを搭載しているのではないか?はい、バニラです!これはひどい。
こっちが軽蔑するレベルである。
一応「変異」を持っている。
3マナ払えば裏向きの2/2として場に出せて、青1マナ払えば表面の脆弱ボディを曝け出す。
一体この行為にどれだけ意味があるのか。
一応、収録されたエキスパンション「スカージ」はコントロールしているクリーチャーの点数で見たマナコストが大きければ大きいほど、なんらかの得をするカードというのがテーマの1つになってはいた。
なってはいたが、それでもこんなクリーチャーを使うだろうか。
このギミックをふんだんに盛り込んだのが構築済みデッキ「粉砕」である。
これは、マジックの構築済みデッキの歴史の中でも断トツの弱さを誇ることで知られている。
別にコイツだけのせいではないとは思うが、パッケージにデカデカと居座るその姿はより「弱い」というインパクトを与えるには十分なものだ。
コイツの主戦場はMOでの「
モミール・ベーシック」である。
最終盤、ゲームをひっくり返す強烈な神々が蠢く8マナ域でコイツがポンッと出てきた時の悲しさといったらない。
最後に、このカードのフレイバーテキストを。
「私もかつては人間だったがね、今やそれをはるかに超えたよ。」…おう。
ちなみに現在のクリーチャータイプでは人間のままだ。
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2013/9/9
「Naked Singularity」
マジックには時折「何これ?」と言いたくなるカードが登場する。
効果が他に類を見ない奇想天外のものであったり、一体何のために存在するのか疑うレベルのものであったり、何れにせよ初見で受ける衝撃は凄まじいカード群が存在する。
トーナメントで日の目を見ることはなくとも、人々の記憶に残り続けるカード達。
今週はそれらのカードを紹介して行きたいと思う。
さて、先頭バッターはこの謎めいたアーティファクト。パッと見、何やら5色に関係しているようだがその効果は…土地が生み出すマナが
平地…赤
島…緑
沼…白
山…青
森…黒
に置き換わるというもの。
これはなかなかに強烈だ。
相手が単色デッキならばまず何もできなくなる。
足止めとしての役割をしっかり果たしてくれるだろう。
しかし現実はそう甘くない。このカードには、色々と問題が多すぎるのだ。
まず、重すぎる累加アップキープ。
出した次のターンから3、6、9…とマナが必要とあっては、これの運用は非常に難しい。
そもそもが、相手がマナを得られなくなり足止めされているうちにこちらが一方的に盤面を制して勝つという目的の下で使われるカードで、己の足も止まってしまっては意味がない。
2ターンほど、お互いに何もしないマジックを過ごして終了というのは、一体何がしたいのか。
そして次に、同じく己の足を引っ張ること―――自身の基本土地も巻き添えを食らうことだ。
事実上、単色の基本土地主体のデッキでは運用に値しないカードである。累加アップキープを払ってもまだお釣りがくるだけの土地を展開していても、色が合わなければ何も出来なくなってしまうことに変わりはない。最後に、最大の弱点は…基本土地以外には効果がないこと。
これに尽きる。
勿論「デュアルランド」「ギルドランド」には効果があるが、それ以外の大多数の土地には効果が及ばない。
このカードの同期は「ダメージランド」達。
これと《真鍮の都》さえあればダメージを受けることにはなるが、問題なくゲームを展開できるだろう。
せめて、特殊地形は無色しか生み出せなくなるなどの効果があれば…と思ってしまう。
実に味わい深い、ダメなカードのお手本だ。
ちなみに、カード名はかの相対性理論における用語らしい。
何のことかは、筆者にはチンプンカンプンだ。
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2013/9/7
「グリフィンの峡谷」
ここ1、2年で旧枠のカード達の相場が
全体的に上がってきているのをご存知だろうか?
「え、このカードこんなにするの?」という
シンデレラストーリーを辿ったカードも少なくない。
特に「アイスエイジ」ブロックや「ミラージュ」ブロックでは、
一通り基本的なカードが作られた後でより独自性のあるものを追求したことが見て取れる、
後にも先にもない能力を持ったニッチなカードが多く存在している。
それらのカードは、例えゲームでは最良・劇的な効果をもたらす訳ではなくても
「○○はこのカードにしか出来ない」という普遍の価値を持っているのだ。
また、それらは再録禁止だったり、ルールが複雑すぎたり
現代のマジックのイメージにそぐわないなどの理由で、
再録されることはまずないカード達ばかり。
そういった理由から、使うデッキはなくとも値上がりするカードというものがある。
具体的なカードを上げればキリがない。
そのため、今回は独断と偏見で選んだ、
成り上がれる可能性がほんの僅かでも感じられる1枚を紹介しよう。
今はまだまだ安く買えるカードであり、
これからも上がるかどうかはわからない(というよりは上がらない可能性の方が圧倒期に高い)。
しかし、このカードにしか出来ないことが出来る1枚であることは確かだ。
それが今日の1枚、《グリフィンの峡谷》。
その名の通り、グリフィンを援護する1枚だ。
普通に使うならば、グリフィンの打撃力を上げながら
疑似的な警戒を与える、戦闘をサポートする土地だ。
現在存在するグリフィンは多相持ちを除けば33種類。
ゴブリンやエルフ達に比べればマイナー部族ではあるが、
近年のセットでも収録されている姿を見るカードだ。
いつの日か、強烈なタップ能力を持ったグリフィンが登場し、
それを使いまわせるこのカードにスポットが当たる可能性は否定できない。
そしてこのカード、しっかりとコンボにも使えるのだ。
まず《動く土地》などの土地をクリーチャー化するカードで命を与えたら、
次は《ヴェリズ・ヴェルの翼》などグリフィンのタイプを与えてやる。
そうしたら後は自身を対象に能力を起動しまくるだけだ
無限に膨れ上がったパワーで圧殺するもよし、《狂気の祭壇》で仕留めても良いだろう。
夢のあるこのコンボを備えたデッキは「ターボグリフィン」と呼ばれた。
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2013/9/6
「うねる炎」
マジックのゲームには相性や運など、様々な要素が絡むため一概に「最強デッキ」というものは決められない。
「環境最強」「トップメタ」という言葉はあるが、それらが常勝するという訳ではなく、メタ外のファンデッキにコロッと負けてしまうこともある。
これがマジックの良いところだと筆者は思う。
どんなデッキ・カードにもチャンスがあり、練習することでより良いデッキ・より良いプレイングに近付き、そして勝利できるようになる。
チャンスは等しく平等にあるのだ。
しかし、他の追随を許さないカードというのも確実に存在しているのだ。
その中の一つが《うねる炎》だ。波及4を持つインスタントの2点火力。
ライブラリーを4枚めくって同じ名前のカードがあればそれもキャストしてOKという、たったそれだけのカードだ。
普通の構築なら2ターン目に撃っても先手ならあと52枚はライブラリーがある訳で、その中の3枚がトップ4に1枚でもあれば儲けものというレベルだ。
さらにリミテッドでは、まずこのカードを複数ピック出来るかという段階からして試練のようなものである。
このカードの一体何が他の追随を許さないのか。それは「タイプ0」と呼ばれる異次元のマジックでの話だ。
タイプ0は文字通り何でもアリ。マジックのカードであれば銀枠でもなんでも使って良いし、4枚制限もなく、そもそもデッキの枚数の決まりさえない。
そんな、マジックの限界に挑んだ空間で行われるのは、この《うねる炎》を用いた「0ターンキル」だ。
1ターンさえ必要としないだ。例え後手でも相手のターンに《猿人の指導霊》からマナを出して《うねる炎》。
デッキはこのマナを出す猿20枚にうねる炎40枚。
めくればほぼ必ず《うねる炎》がそこにある。0キル率95%近い驚愕のデッキを生み出し、マジックの歴史にその存在を刻みつけた1枚なのだ。
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2013/9/5
「Timmerian Fiends」
つい先日も国内でのGPが行われた。
そこでは非常にレベルの高いゲームが行われ、それはまさに競技と呼ぶに相応しいものだった。
20年という歳月がこの競技性を育んだのだろう。恐らくは、マジックの生みの親達もここまでになるとは思ってもみなかっただろう。
競技ゲームとして確固たる地位を確立したマジック、今日作られるカード達もどれもが競技において問題を起こさないように・かつゲームを楽しく盛り上げるものになるように調整されている。
しかし、マジックの初期においては、これらの姿勢なんざ知ったこっちゃないと言わんばかりのアウトローなカードが多数存在したものだ。
その中でも、トップクラスの危険人物的カードがTimmerian
Fiendsだ。
何がそんなにヤバいのか。
能力を除けば3マナ1/1とクズ性能としか言いようがない。
ではその能力はというと、黒黒黒を支払い生け贄に捧げることで対戦相手がオーナーであるアーティファクトを破壊するというもの。
黒でアーティファクトに触れるのは希少も希少、スゴい!ヤバい!…というわけではない。最凶の能力たる所以は、こうして破壊されたアーティファクトが置かれるのは、こちらの墓地であるという点。
相手のアーティファクトを割り、こちらの墓地へ。対してFiendsも相手の墓地へ行くことになる。そして「この所有権の交換は永続的である」と記されている。
永続的?…簡単に言ってしまえば「強制トレード」というわけだ。
例え《Mox Sapphire》であっても、こんなカードと強制的に交換させられるのだ。こんな能力、許される訳がない。
悪鬼(Fiends)どころか、大悪魔(Archdemon)と言ってしまってもいい、いやもう邪神(False
God)レベルだ。
もちろんこの能力にも一つだけ救済法があって、アンティを1枚増やすことで打ち消すことが可能だ。
アンティとは、ライブラリーの1番上をめくってゲーム外に置き、勝った方がそれを総取りというシビアな賭けマジックだ。
初期のマジックには、このカードのようにアンティを賭けていることが前提のカードが数種類存在する。
もう二度と日の目を見ることはないだろうこれらのカード、競技マジックに疲れたらたまには眺めてみるのも良いだろう。
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2013/9/4
「不屈の古樹」
クリーチャーがまず持っていなくてはならないものは?回避能力、除去耐性、マナに見合った高いパワー、アドバンテージを取れる能力―――それらは何れも、まずタフネスあってこそ。
タフネスを持たないクリーチャーはそもそも即死してしまい、彼らの良さを発揮することは出来ない(《野蛮の怒り》の悪口を言いたいわけではない)。
その大事な大事なタフネス。
勿論、1でも多ければ多いほど良い。プレイヤーのわがままに応えるべく造られたカードがこの《不屈の古樹》だ。
4マナ2/10、硬ってぇ~。以上。これがレアというのも、なんというか「モーニングタイド」って凄いねと。
《ヴェンディリオン三人衆》を筆頭にズラリと並ぶ良レア達に全然負けないインパクトを放っている。
「わんぱくでもいい、たくましく育ってほしい」という年齢がバレそうなキャッチフレーズがあったが、いくらなんでもこれは育ち過ぎである。
このクリーチャーを突破するには…同マナ域は勿論、6マナ7マナの連中でさえ手を焼くであろう。
この老木たちは、回避能力と言うものの素晴らしさを改めて僕たちに教えてくれるのだ。
特にリミテッドでポンと出てくると心が折れることがあるかもしれない。構築では…ドランとの相性は抜群で、驚異の打撃力を発揮するがオーバーキルにもほどがある。
こんなネタカードの代表のような1枚だが「4マナで能力を持たない唯一のレア・クリーチャー」「ツリーフォークおよびバニラ(能力を持たない)クリーチャーで最大のタフネス」「フレイバーテキスト最長」と、数々の記録保持者なのだ。うん。
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2013/9/3
「生体融合帽」
「カードを1枚引く」という一文は、我々マジックプレイヤーにとっては魔法の言葉だ。
1枚でも多くのカードを引いた方が有利になるゲームなのであるから、これは当然だ。
プレイヤーは皆、相手より多くのカードを引いて使いたい。
このマジック3大欲求の1つに応えるべく、黎明期から今日に至るまで非常に多くのカードが創られてきた。
特にアーティファクトによるドローは、どの色でも使用可能であるという点がセールスポイントだ。
この恩恵を最も受けやすいのは、赤。赤は消費の色であり、特にバーン系のデッキは手札をガンガン叩きつけていく。
この戦略の永遠の宿敵は「息切れ」。
今日の1枚、《生体融合帽》はその息切れに真っ向から勝負を挑んでいく実に男らしい1枚だ。
4マナで設置すれば、あとは毎ターン2ドローが確約される。
勿論デメリットもあって、以降は手札を温存・構えるといった戦略が一切とれなくなる―――が、そういったことを考えるプレイヤーはそもそもこのカードの存在を忘れていい。
とにかく、手札を投げつけるか必ず盤面に還元していくことになる。
となれば自ずと相性が良いのは火力呪文、前述した赤バーン系。
引いた手札は全て相手本体に投げつける。
「俺のマジックは後退のネジを外してあるんだよ」と言わんばかりに、前のめりに焼いて焼いて焼きまくれ。
ノンストップマジック推奨な1枚だ。
ただ、引き増しした火力を投げているだけでは相手のクリーチャーに蹂躙されてダメージレースで負けるのではないか?とお考えのあなた。
心配ご無用、相性抜群の《罠の橋》を設置してください。
例えドローが2枚とも土地でも、パワーのあるクリーチャーのアタックは許しません。
引いたものはその場で使う、この刹那的な生き方は素敵だ。
普段は堅実に貯金しなければ生きていけないような世の中でも、マジックではパーッと使ってみることの快感を味わってほしい。
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2013/9/2
「エスパーの魔除け」
カードの効果として、複数の選択肢から1つ(ないし複数)選ぶものがマジックでは少なくない。
そういったカードは状況に応じて最適なモードを選択することが出来るので、簡潔に言うと腐りにくい。
しかし、どんな状況でもベストアンサーとなり得るカードなどそう簡単に作られる訳はなく。
何れも、そのマナコストで考えると少々弱めの効果になっている。
構築段階で1つアドバンテージを得ているのだから、当たり前の話ではある。
《悪意+敵意》などはその典型だろう。除去が腐るマッチでも少なくとも1:1はとれる確定カウンターになってくれるのは十分に素晴らしい。《謎めいた命令》の存在はどうか忘れて欲しい。
そんな複数の効果から1つを選択するカードの系譜に「魔除け」シリーズがある。英名から「チャーム」とも呼ばれるこのシリーズ、「ミラージュ」で初登場し、現在までサイクルとして引き継がれている良カード群である。
今日はその中から《エスパーの魔除け》の紹介である。
「アラーラの断片」で各断片のイメージから作られた魔除け。
何れもマナ拘束のキツさゆえに、従来の魔除けサイクルより強力ではあったが、中でも最強と言われたのはこのエスパー制のテクノロジーの結晶だ。
魔除けの中でも数少ない確定で1:2交換をとれる優秀なインスタントである。
当時このデッキをフル活用し、頂点に輝いたデッキこそが「クイックントースト」(中でも残酷コンや壁コンと呼ばれたもの)。
このデッキは土地が止まる即ち負けなので、序盤にはドローモード連打で土地を探しに行き、相手のドロー後に2枚の手札を狙い撃つ。
空気の様に思われるエンチャント破壊能力も、《苦花》《忘却の輪》など割るものは存在していたため決して腐らなかったのだ。
そして「テーロス」はエンチャント推し…マジック全カード内での、このカードの相対的な価値が上がったと考えていいだろう。
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