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ライターレポート:GP北九州後編 レガシー選手権 坂本力祐 
 
text by Ryousuke Sakamoto 

前編からの続きです。

 8/25、北九州は前日から続く雨がより激しさを増し、噂では新幹線も関門海峡を越えられずに止まっているらしい。

 一方僕はというと、前日の本戦で2日目進出を果たすことが出来ず、レガシーのデッキを掴んで同行者達と宿を出る。




 普段は黒緑系を好んで使うし、前日の本戦でもJunkを使っていたのですが、今回はそのどちらも含まないデッキを。
Deck Name:Trico-Pyromancer
19land
4《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
4《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》
3《Tundra》
3《Volcanic Island》
1《Plateau》
1《島/Island》
3《不毛の大地/Wasteland》

12creature
4《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》
2《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer》
3《若き紅蓮術士/Young Pyromancer》
3《聖トラフトの霊/Geist of Saint Traft》


29spell
4《渦まく知識/Brainstorm》
4《思案/Ponder》
3《目くらまし/Daze》
4《Force of Will》
3《呪文貫き/Spell Pierce》
4《稲妻/Lightning Bolt》
4《剣を鍬に/Swords to Plowshares》
3《もみ消し/Stifle》
15sideboard
3《翻弄する魔道士/Meddling Mage》
2《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》
3《紅蓮破/Pyroblast》
2《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》
1《摩耗/損耗/Wear/Tear》
1《狼狽の嵐/Flusterstorm》
2《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》
1《外科的摘出/Surgical Extraction》
 M14のスポイラーで《若き紅蓮術士/Young Pyromancer》を見た時は、周囲のプレイヤー仲間たちと、
「HAHAHA!流石にフェイクでしょ!こんなの刷られたらいよいよ2マナ四?天王最後の一人確定やん!」
と盛り上がっていたのですが、気づけば本当に刷られてしまった訳で。

 早速試してみたい、と思い立って組んだのがこのデッキです。

 トリコカラーの特権=1マナ除去8枚に加え、軽量カウンターも装備できる。《タルモゴイフ/Tarmogoyf》不在による線の細さは『いつものやつ/Delver of Secrets』と聖人の癖にやたら暴力的な彼に加え、この期待の新人が補ってくれるだろう、という目論見です。




 首都圏ではないにしろ参加者は200人越え、高まるレガシー人気の熱気で昨日の憂鬱を吹き飛ばす為にいざ、開戦!

 初戦の相手、どんと来い!




GP北九州 レガシー選手権2013夏
参加者207名。スイス8ラウンド、シングルエリミネーション3ラウンド。

第1回戦 BYE(ナチュラル)

 対戦相手の方が来られませんでした。

 10分間の待ち時間の間、お隣ではもはや大会名物と化した例の光景が見られたので、試合レポートの代わりにお楽しみください。


A「…をプレイ!」
B「…はい。…はい?このカードはなんですか?」(カードに手を伸ばす)
A「そこに書いてあるルールは今や嘘です」
B「!?」

A「代わりにこれをお読みなさい(胸元からオラクルを取り出しながら)」
B「えーっと…『フェイズ・アウト』とはなんですか?」

A「私が教えてもいいのですが、嘘を教えてはいけませんので、ここは呼びましょうか。ジャーーッジ!!」

ジ「今日もですか…」

以上、最近めっきり見なかった「サンドポイズさん」(*1)の生存報告でした。

ちなみにこの返しに《実物提示教育/Show and Tell》を撃たれるのですが、もちろんこちらの手札には《時の砂/Sands of Time》が…



*1:サンドポイズ
レガシーに存在するロックデッキ。フェイズ・アウトというカードの位相の変化させる特殊なルールを用いるため、ルール的に非常に難解なデッキ。実際にレガシーをプレイしている人でも知らないことがあるほど。
非常に大雑把に言うと、対戦相手の戦場にある土地とアーティファクト、クリーチャーが毎ターンそれぞれ1つずつ無くなっていく。
デッキ名の由来は《《時の砂/Sands of Time》と《平衡/Equipoise》から)




第2回戦 UWr RiP Helm ×○△

G1

こちら痛恨のダブルマリガン。
負けを覚悟するも、手札は先手1T秘密を掘り下げる者からはじまるナイスな5枚。

しかも相手が除去を全く引けないらしく、虫が空から襲い掛かること5回。
ここでようやく除去されてしまい、《相殺/Counterbalance》まで張られている辛い状態。

とは言え、まだまだこちらには《聖トラフトの霊/Geist of Saint Traft》がいる。

祈るように繰り出すもカウンターの憂き目に会い、2枚目を投入すると飛んでくるのは《終末/Terminus》

なんとかして3枚目を掘り当てるか、相殺独楽のスキを見つけて《稲妻/Lightning Bolt》を放り込めば勝てる…!と祈ってはみたものの、その前に《安らかなる眠り/Rest in Peace》&《Helm of Obedience》コンボが決まってしまい敗北。


G2
対戦相手3マリガン。こちらカウンターを構えて秘密を掘り下げる者スタート。
結果は言うまでもなく。


G3
これまた秘密を掘り下げる者で攻め始め、順調に4回ほどアタックが通る。
これで相手のライフは(フェッチによる損耗を加えて)残り5。

このままいけるか? と欲をかいて紅蓮術士を投入してみると、見事に《終末/Terminus》が突き刺さって裏目に出る。

この後の《聖トラフトの霊/Geist of Saint Traft》もやはり処理されてしまい、相手のライフはもう風前の灯だというのに、ここでピタリとクロックが止まってしまう。

一方で相手の《天使への願い/Entreat the Angels》は2回ともカウンターに成功し、壮絶な泥仕合の様相を見せたまま追加5ターンが終了した。


通算1-0-1。あまり喜ばしいスタートではない。



第3回戦 Sneak Show ×○○

G1

相手は開幕《島》からこちらのEoTに《渦まく知識》。
除去&クロック中心のハンドであり、ドローソースがないのでカウンターをかき集める事も出来ない。
ならばいっそ初動を潰せ、と挨拶代わりの《呪文貫き》を打ち込んで秘密を掘り下げる者でライフをどんどん削っていく戦法に。

しかしながら早々に《騙し討ち》から”最強のパーマネント”こと《グリセルブランド》が登場し、14点ペイ→《水蓮の花びら》→《引き裂かれし永劫、エムラクール》とのダブルパンチ。南無。


G2
カウンターを握りながら2T目《翻弄する魔道士》(指定は《実物提示教育》)を着地させる良いスタート。
相手はじっくりとマナを伸ばし、必要牌を探している様子だが、途中で2体目の翻弄が登場。
更には《古えの墳墓》によるライフロスも手伝って、そのままキーパーツを掘り当てられる前にヘイト・ベアーズによるビートダウンが成功。


G3
3本目は「先手1ターン目《防御の光網》」という地獄絵図からゲーム開始。
こちらは淡々と秘密を掘り下げる者を展開するのみ。

緊張走る2ターン目、《島》をおかれ…るがアクションはなし。
返しの翻弄する魔導士で《騙し討ち》を指定する。

早々に5点クロックが登場したことにより、向こうの時間はあまりない。
ライフにリーチがかかったラストターン、遂に《実物提示教育》から《引き裂かれし永劫、エムラクール》が舞い降り、試合はクライマックスへ。

勿論殴れずターンを返し、無論相手も最強のエルドラージをレッドゾーンに送り込む。
こちらは土地が4枚、昆虫と翻弄。きれいに消し飛ぶ筈だった

…そこに狙い澄ました《もみ消し》(4マナ)が飛び、こちらのライフは2残る。
ギリギリ過ぎるビートダウンが1T差で間に合い勝ち。


危なかった…が勝利は勝利。これで通算2-0-1。





4戦目 コボルトストーム ○○

G1

こちら先手、呪文貫きを構えつつターンを返す。
すると相手の初動は《宝石鉱山/Gemstone Mine》から…《垣間見る自然/Glimpse of Nature》!?

浮きマナなしでこれをプレイするということは、次に予想されるのは0マナクリーチャー。
この時点で《自然》入りの青緑親和かコボルトストームに限定されてくる。

いや、そもそも後者はいないだろう…と思っていたら、次のターンに《唯々/諾々》!

これを《目くらまし》すると、《Elvish Spirit Guide》で回避され、手札からあふれかえる「コボルト」達…

なのだが、上手くつながらなかったようで事なきを得る。


G2
もはやおなじみ初動秘密を掘り下げる者から。
暫く相手に動きがなく、《稲妻》を放り投げながらライフを一気に詰める。

そして相手4ターン目、ドロー後に《ヴェンディリオン三人衆》を合わせてみると、大量のコボルトや《ファイレクシアの歩行機械/Phyrexian Walker》が7体…

勝利の言葉は「そのままで。」


コンボ多いなぁ、にしてもこれは珍しい…と思いながらの通算3-0-1。
最後の一つが余計だが、まだまだ悪くない。



第5回戦 青白トラフト ××

G1

お互いに秘密を掘り下げる者を繰り出し、除去しあい、ドローする鏡うちの展開。

早々にお互い残弾が尽き、
こちら:手札なし、土地3枚
あちら:手札なし、土地2枚、十手
という寂しい場に。

こうなるともはや先に《聖トラフトの霊》にアクセスした方が勝ち!ということになり、早速こちらから仕掛けるも、溜まり始めた相手の手札が《Force of Will》セットだった為また振り出しに。

お次は《秘密を掘り下げる者》を引いてきて、これでまたビートダウンを再開するのだが…相手の場に遂に降り立ったトラフト。

ここで秘密を掘り下げる者をブロックに回す筈が何故かアタックしてしまい、当然返しの十手装備アタックをモロに受け、そのまま敗北。
あまりにも迂闊というか救いようのないプレイである。


G2
長い長い消耗戦が繰り返される。

最早トラフト以外の生物に生存権はなく、デッキの中の意味あるカードはトラフトとFoW、紅蓮破のみ、という酷い有様に。

先ずはこちらが仕掛けるもカウンター、あちらのトラフトもカウンター。

そして相手の2度目のトラフトは紅蓮破で迎え撃つも、これが打ち消されて遂にゲームは終局へ。



やっちまった、な通算3-1-1。
ここから全勝すればまだ目はある。



第6回戦 BGW Junk ×○○

おお、Junk。他人の手に渡るとは情けない。Mr.Junkが手ずから介錯してしんぜよう。

G1
先手ダブマリ。しかしながら秘密&紅蓮術士の良いハンド。
秘密を掘り下げる者に《剣を鍬に》が飛び、紅蓮術士に衰微が飛ぶ。
2枚目の秘密を掘り下げる者を出せば、繰り出されるのは《ヴェールのリリアナ》…手札に《もみ消し》なし…


調子に乗るとこの有様である。


G2
またまた秘密を掘り下げる者ゴー!

こうやって書いていると不思議な気持ちになってくるが、殆どのデッキに「定番初手」というのはあるはずで。

《不毛の大地》の不毛な連打で双方土地が殆どなくなり、そうなればピッチスペルとドローを有するこちらが圧倒的に有利。

先にマナ基盤を回復し、トラフトの聖人らしからぬ6点パンチで今度こそ介錯。


G3

Junkの後手番と言えば《思考囲い》が飛んでくる。
と思ったものの、今回はナシ。代わりに出てきた第二の定番《死儀礼のシャーマン》は速攻で農場に送らせていただく。

《アーナム・ジン》も仲間が増えて喜んでいることだろう。

さて、今回は秘密でもトラフトでもなく紅蓮術士がようやく大活躍。
相手の生物を除去し、ドローでライブラリを掘っていると…何故かクロックが増えていく。

最後はちゃっかり《破滅的な行為》を《呪文貫き》で処理し、この時生まれたトークンをあわせて自軍のパワーが相手のライフジャストに。


盛り返してきたぞ、通算4-1-1。



7戦目 Jund Zombardment  ○×○

G1

相手先行、《Badlands》から《信仰無き物あさり》。
落ちるのは《復讐蔦》と《恐血鬼》。

この時点で《ゴブリンの砲撃》ゾンビ&ドレッジ・ヴァインのハイブリッドであることが確定する。

こちらは除去ハンド&不毛だったので、土地を攻めつつ相手の場がシナジーを生み出さない程度に妨害し、秘密を掘り下げる者の空からのクロックで先にライフを削り切る。




G2
開幕《信仰無き物あさり》から《日を浴びるルートワラ》が2体ハロー!するというひどい展開。

一旦《仕組まれた爆薬》で処理するものの他の死者たちが湧き上がってくるのを許してしまい、紅蓮術士で必死に止めるも《ロッテスのトロール》が止まらず負け。


G3
まずい、あと10分しかない。ブン回りの攻撃ハンド、来い!マリガン!もう1回!

《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》
《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》
《思案/Ponder》
《若き紅蓮術士/Young Pyromancer》
《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
《沸騰する小湖/Scalding Tarn》

来た!

もはや妨害は考えず、《ゴブリンの砲撃》だけ探してきた《目くらまし》で対処しながら、秘密を掘り下げる者2体で攻撃。
1体は《突然の衰微》されるものの、紅蓮術士が遂にフル稼働を始め、「ブロックに参加できない」ゾンビや吸血鬼を尻目に驚異的な速度でクロックを刻んで勝利。


二日連続のバブル・マッチへ。通算5-1-1。



8戦目 《魔の魅惑/Aluren》 ○○

G1

挨拶がわりにフェッチランドを《もみ消し》てみるものの、《島》《沼》と並べられて《悪意の大梟》が登場。

流石にこれに大事な大事な秘密を掘り下げる者を突っ込ませるわけにもいかないので、一度止まって《渋面の溶岩使い》をセット。

これで道をこじ開けて、3枚目の土地もちゃっかり《もみ消し/Stifle》。
《陰謀団式療法》で《稲妻》を2枚奪われながらも、ややこしいことになる前に逃げ切る。


G2
先ほどの動きだけ見ればBUG Control tWに見えるが、なんせ同じ「引き分け持ち」なので先ほどの試合がお隣さん。

その時《Savannah》が見えた気がしたので、《魔の魅惑》とアタリをつけて《翻弄する魔道士》と《ヴェンディリオン三人衆》、《外科的摘出》をサイドイン。

もし相手がBUGtWだったとしても腐るようなカードではない訳だし。

今度も立ち上がりは件のフクロウ。
即刻《稲妻》で処理して攻めを継続し、療法でハンドを見られたあとFBで《外科的摘出》を指定されたあたりで《直観》の存在を確信。

次のターンに引き込んだ《ヴェンディリオン三人衆》でこれ幸いとドローを検閲すると、見えたのは
《帝国の徴募兵》
《永遠の証人》
《直観》
《寄生的な大梟》



やっぱり。
これで下に送った結果《魔の魅惑》を引かれてはたまらないのでそのままにし、空の6点クロックでビートダウン完了。


なんとかたどり着いた6-1-1。
あとはオポが低くないことを祈るだけ…



 残念ながらオポが低くて10位。シングルには進めずこれにて終了と相成りました。



 残念なのは残念ですが、デッキは中々よくできていたと自負しています。

 惜しむらくは紅蓮術士が強いマッチ、弱いマッチのムラが強いカードであり、安定した高打点を求めるのであれば《タルモゴイフ》有するCanadianや、《石鍛冶の神秘家》有するPatriotにすればよい、という所でしょうか。

 一方、これはこれで手が付けられないほど強いマッチもやはりあり、何より「特定フォーマットだけでなく”マジック”を楽しむ」を信条にしている以上、新しいエキスパンションのカードは積極的に使ってやりたいという願いが、悪くない結果につながったのは大変うれしいことでもあります。




 ともあれ、長い長い2日間はどちらも「あと一歩」という所で幕を閉じました。

 次はその「一歩」を踏み出せることを祈って、研鑽の日々がまたはじまります。



それでは、またいつかどこかで会いましょう。
残り少なくなってきましたが、良い夏を。


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