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Card of the Day
 
2014年6月21日(土)
「ゴリラのシャーマン」

「デザイン・チーム」というものがある。正確には、あった。

このチームはマジックのエキスパンション・セットごとに組まれるユニットであり、 彼らが行うのは、そのセットの全体的な雰囲気や方向性といったものを作り上げ、カード原案までを考えることである。

ここから先はデベロップ・チームが原案をもとに、より洗練されたデザインへとカードを仕上げていくのだ。 この役割がわかりやすいようにしたのだろうか、「基本セット2014」以降は「初期コンセプト&ゲーム・デザイン」という役職名に置き換わっている。

「マジック・コンティニュイティ」というものもあった。これは現在、「クリエイティブ・チーム」と呼ばれているものの前身となった。

マジックの背景世界と、それらのセット毎のストーリーの継続性を作っていくことがコンティニュイティの仕事だった。

「アライアンス」が創られる時、そのストーリーの原案はデザイン・チームが担うことになった。そうして出来上がった骨組みに、コンティニュイティは一つの注文をつけることになった。

「このストーリーに、知性あるゴリラ種族を付け加える方向で」。

彼らがこのセットにゴリラを投下するに至った経緯や理由は不明だが、この決定案を伝えられたデザイン・チームは、これを「ストーリーが台無しにされた」という風に捉えた。 たしかに、シリアスな漫画で、急に喋るゴリラが出てきたらそれだけで流ぶち壊しでギャグ漫画に代わってしまうというのは想像に難くない。デザイン・チームが難色を示すのも理解できることだ。

この独断に対してデザイン・チームは全力で抗議するのだが、そのやり方は「現段階で作成されている全てのカード名をゴリラにしてしまう」というものだった。

「ゴリラなんたら」「なんたらゴリラ」「ゴリラ」といった具合に。 最終的に、彼らは和解したのだが、この事件の名残として、「アライアンス」にはゴリラが描かれたカードや、一見関係ないように見えて実はゴリラが隠されているカードなども登場している。

セットの隠れテーマがゴリラとなったわけだ。 そんなセットに含まれるゴリラ・カードの中でも、屈指の名カードがこの《ゴリラのシャーマン》。

1マナ1/1という採用しやすいサイズにして、XX①でマナコストがXのアーティファクトを破壊するという能力を持っている。

一見無茶苦茶マナがかかる駄目なヤツに見えるが…ちょっと待ってほしい。君はヴィンテージというフォーマットを知っているか?

《Mox Peral》《Mox Sapphire》《Mox Jet》《Mox Ruby》《Mox Emerald》《Black Lotus》といった「Power 9」に《Mana Crypt》やアーティファクト土地のような連中を加えた、イカレた超軽量アーティファクト達。

それらが蔓延るこの環境において、この祈祷師は祈りを腕力に変えて1マナでありとあらゆる宝石を叩き割る! その雄姿は「Mox Monkey」という称号に相応しいものだ。

これの新枠日本語版は激レア。何かの間違いで「コールドスナップ」構築済みを購入してしまったそこのあなた、今すぐ押し入れを探索セヨ。

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2014/06/20 「樹上の村」

ヒトは森を捨て(「捨てられた説」も濃厚だが)、平地に生きる道を選んだ。かつて樹上生活を送っていたヒトの身体は、永き2足歩行生活の果てにもうかつてのボディバランスとは大きく異なるものとなった。そのため、もうかつてのような樹上での穏やかな暮らしに帰ることは出来ない。それで何も問題はないのだけれど、時折何故か、木に登りたいという妙な衝動・郷愁に動かされることはないだろうか?木登りに楽しさを見出すことができるのは、細胞の奥底に眠っている樹上生活者としての記憶が蘇るからだろうか。


残念ながら、我々はもう樹上生活を送るには余りにも大地に特化した生き物となってしまったわけだが…マジックの世界でならかつて過ごしたコミュニティへと還ることができる。まあ、世界中探してもそんな願望を満たすために《樹上の村》を使う人はまずいないとして…単純にカードとして非常に強力なために《樹上の村》は「最も使われた特殊土地ランキング」でもトップ5に確実に入ることだろう。もしかしたら1位じゃないかな?とさえ思えるレベルで使われまくったカードである。基本的に土地というものは「あくまでサポート役」としての強さを持ったカードだが、このゴリラ住まう村に関しては「これ自身で勝ちに行ける」カードであるため、その分評価も自ずと上がるものだ。


タップインというテンポを失ってしまうデメリットを持っているが、次のターンから2マナ注ぎ込むことで3/3トランプルの類人猿クリーチャーに姿を変えて殴りに行くことが可能。これは強烈だ。構築において3/3というのは一つのボーダーラインで、トーナメントシーンで最も目にすることが多いクリーチャーサイズ・2/2を踏み越えられるそのサイズは消散に値するものである。


クリーチャー化する土地、所謂「マンランド」「ミシュラランド」と呼ばれるこれらの最大の利点は、「起動するまではクリーチャーではない」という点だ。一見、アタックorブロックの際にマナを支払わなければならないのは大きなデメリットに見えるが、それを補って余りあるのが「ソーサリータイミングの除去を受け付けない」という大きな大きなメリットだ。クリーチャーをバシバシ並べられる→《神の怒り》があるから安心!…という訳にはいかないのだから、コントロール側としてはこれほど困ったカードもない。


《樹上の村》は緑の軽量クリーチャーで攻め立てる「ストンピィ」は勿論、再録の際には「緑黒エルフ」などでも採用されアタッカーとして活躍しまくった。さらには、緑マナしか出ないタップインの土地であるにも関わらず、3色以上の「Three Deuce」「PT Junk」といったデッキでも4枚採用される、所謂「ガン積み」が当たり前のカードだった。さらには「カウンターオース」のようなコントロールにも採用され、緑が絡んでいれば使うべきカードの1つのような扱いを受けている。


今日でも、モダンの「ジャンド」「黒緑ミッドレンジ」といったデッキで更地を走る姿が目撃されている。再録やプロモといった、カードのヴァリエーションが豊富なことでも有名。全てのゴリラを終結させ、ファイルに集落をつくってみよう。


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2014/06/19 「猿人の指導霊」

初めてカード名を聞いたときは「エンジンの始動レイ」と脳内変換していて訳が分からなかったのを覚えている。その直後にカードを確認し、《猿人の指導霊》という名前に再度「?」となったのも懐かしい。ゴリラの幽霊に、一体何に導いてもらうというのか。
夜中、何か暑苦しさを感じて目を覚ますと、枕元にゴリラの霊が。めちゃくちゃ驚くんやけども、よくよく話…というか種族を越えた意思疎通を行っていると、どうやら僕を何処かへ連れて行きたいらしい。

危害を加えてくることはなさそうなので着いていく。その先には、バナナ山盛りの洞窟とか、ワラがたっぷり敷かれた寝床とか。有難迷惑にも程がある。善意でやってくれてる分、余計に申し訳ない。ゴリラに悪いやつはいない。…こんな謎の光景を思い浮かべてしまう。一体何の話をしたかったのか自分でもわからん。


「次元の混乱」では文字通り混乱してしまいそうな、現存カードが色だけを変えた「タイムシフト」枠が存在する。

この「ゴーストゴリラ」もその1枚で、《Elvish Spirit Guide》が転生した姿である。そのイラストの可憐な美しさに定評のあった「ESG」が、ごつい腕回りをアピールする「SSG」に生まれ変わったというのも良かったのやら残念なのやらよくわからない話である。まあイラストはさておき、能力は申し分ないものである。

無条件のマナブーストということで、全世界のコンボ使い待望の1枚だ。「All In Red」「ベルチャー」「超起源」「ペインター」「グリセルシュート」「ドラゴンストンピィ」などなど、赤が絡むコンボデッキでその名を見ないことの方がもはや珍しい。引く手あまたなゴリラなのだ。


このカードの利点は転生前のそれと同じで、コンボ成立が阻まれてしまっても「とりあえず出して殴るか」という利用法がある点だ。マナブースト系のカードにありがちな、使い道がなくなってしまってどーすんのこれという状況で、別の選択肢をもたらしてくれるのは非常にありがたい。

「ドラゴンストンピィ」ではよく《梅澤の十手》《火と氷の剣》をかついでハイパーアーマーゴリラマシーンと化して暴れてくれたものです。

 いつぞやのGP横浜でも「超起源」で決勝まで駆け上がった我らが黒田さんが「今日は、驚くほどゴリラが手にすいついてくるんよ」という名言を残されている。

指導したがり導きたがりのゴリラの背後霊の群れに囲まれる姿、想像するだけで笑えてくるが、このゴリラの吸いつきがあったからこそGP準優勝という成績が生まれた訳で…皆も吸いつかせる系デュエリストを目指そう!



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2014/06/18 「ゴリラのタイタン」



「オデッセイ」にて登場した「スレッショルド」は、プレイヤーの墓地に対する意識を一変させた。それまでも墓地を用いるデッキは存在したが、そのほとんどがクリーチャーを回収するという当然っちゃ当然だけども幅の狭い使い方をしていた。

あくまで「墓地は墓地」。これをブチ壊したのが先程の「スレッショルド」だ。

墓地にカードが7枚以上あることでなんらかのボーナスを得られるという、それまでになかったカード群。しかもそれが5色全てに登場し、戦いは墓場を巡るという次のステージへ移行したのだった。とにかく、墓地にカードが沢山あれば良い。少し後に「インカネーション」も登場したことで、墓地が肥えれば肥えるほど強くなる。そんな時代がやってきたのだ。

しかしいつの時代にも、訪れたニューウェーブに真っ向からアゲインストする、ミドルフィンガーなカードというものは存在する。「オデッセイ」でのそれは、この《ゴリラのタイタン》だ。

このジャングルの王者はただ一頭、埋めよ肥やせよがスローガンな環境において、「墓地にカードが1枚もないこと」を条件にビルドアップするという、アンチ・スレッショルドなスーパーコングなのだ。リミッター解除された時のそのパワーは凄まじく、5マナにして8/8トランプルという驚愕のサイズを誇る。

マナレシオ(パワーとタフネスの合計値を2で割ったものを、さらにマナコストで割ることで出る値。これが高ければ高いほど、クリーチャーとしては優秀とされる)は1.6と高い数値であり、サイズで言えば最初のアタックを行った《カルニのハイドラ》と遜色がない。十二分に強力なクリーチャー、なのだが…やっぱり条件が厳しすぎる。

普通にゲームを行えば、5ターン目までに墓地にカードを置かず、またそれ以降も置かないという動きはまずできない。自分のクリーチャーが除去される・自分も呪文を用いる・相手の手札破壊などで落とされる…様々な展開が墓地を空のままで過ごさせることを許さない。かといって5ターン目まで延々ノーガードというのも「嘘」である。というわけで、リミテッドでも4/4トランプルならまあ十分使えるよってな存在だった。


良き相棒は《熊の谷》、最新鋭のテクノロジーと組ませるなら《漁る軟泥》。まあ実戦で使おうとか細かいことは考えなくて大丈夫だから。フレイバーの「このぐらい大きいバナナが欲しい!」を連呼しながらFoilを集めるとか、そういうのがベストの楽しみ方。

Heather Hudsonさんが最近描きおろした新規イラストでは、念願のバナナを手に入れていた。ゴリラなのに尻尾が長いという、非常に珍しい特徴がチャームポイント。


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2014/06/17 「Gargantuan Gorilla」

トリプルシンボル7マナ7/7、重たいが、それに見合う決定力のあるサイズ。その巨体を誇るのが《Gargantuan Gorilla》だ。「ガルガンチュアのゴリラ」というだけあって、ナヤの巫女たちもビックリのサイズ。それに加えて、タップすることで対象のクリーチャー1体と「格闘」を行うという超アグレッシヴ生命体。これにはメイエル様もメロメロに違いない。

僕らが住むこの世界でも、ゴリラといえばパワーあふれる強い生き物というイメージが大きいし、実際に戦ったらひとたまりもないだろう(基本的にゴリラは優しい生き物だということも付け加えておく)。大体一般人が1/1で、標準的なゴリラのサイズは3/2(出典《ゴリラの戦士》)。納得のサイズの差だ。そしてその数値を倍にしたどころではない、7/7というサイズ。この《Gargantuan Gorilla》が地球を代表するレベルの、文字通り桁違いの大きさのバケモノだということがおわかりいただけるだろう。

《原始のタイタン》のマウントポジションを奪ってタコ殴り、《怒りの天使、アクローマ》だって、スーパージャンプから驚異の握力で捉えて引き裂く最終生物兵器なのだ。森でこんなやつと遭遇しても、恐らくはまずその大きさのせいで「認識できない」レベルだと思われる。本当にもう、単純に怖い。

このゴリラ王、その巨体と超戦闘力をキープするためには、とにかく「食う」。アップキープに。プレイヤーに果物をねだるだけでは飽き足らず、《森》そのものを1つよこせと要求してくる。食欲も爆発している、怪物の中の怪物なのだ。

ここで《森》をあげればとりあえずは大人しくなる。森ではなく、《冠雪の森》をあげれば、故郷を思い出してより凶暴になりトランプルを得る。ここまでは良いが、もし森をあげなかった場合どうなるか?…

答え:発狂
『ホアッキャアアアアアアアアアゴフゴフゴフゴギャアアアアアアアアアアアアアアアア!』

プレイヤーに怒りの鉄拳をぶち込んで、飢え死にしていく。血涙を流しながらの、一方通行の痛み分け。痛いよ、7点は致命的だから。

確かに呼んだ僕が悪かった。本当は森で静かに暮らしたかったんだろう?オラクルが変わったので、誘発スタックでバウンスなどしても恨みの残留思念パンチを受けることになる。モミールベーシックでは、頼りになるが負け要素にもなり得る。

開発時の名前は、「King Kong」。納得のネーミングだ。彼が収録された「アライアンス」とゴリラについての話は、もう少しとっておこう。



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2014/06/16 「Barbary Apes」

今週は「ゴリラ(猿)・ウィーク」だ。理由?なんとなく。そういえば最近マジックでゴリラ見てないなーと。かつては「ゴリラゲー」な一面もあったように個人的には思っている。ゴリラというか猿というか猿人というか。まあ何にせよゴリラ。バナナ食べたい。

とりあえずトップバッターは絶妙なゴリラ感溢れる《Barbary Apes》。マジックの世界のゴリラは、このイラストに見られるように原始的な「文明」を持っていることが多い。簡素な武器や装飾品で身を飾っていることが多い。

あくまで個人的な見解になってしまうが…漫画などのSF作品で見られる、未開の地に住まう「原始人」のステレオタイプ的な先住民を見たことがあるはずだ。あの、動物の皮を腰に巻いて槍持ってる感じのね(何故か男性はムキムキ・女性は色白美人なことが多いのは不思議だ)。

ああいうポジションのキャラクターがいると雰囲気はでるのだろうけれど、彼らを他の人間キャラクターと並べた時に、明らかに両者の間に開きがあると「差別的である」ととらえられる恐れがある。

そういったケースで起こる様々な問題(別に開発側もプレイヤーも気にしないんだけどね。そういうのに煩い人たちがいることもいるから…)をケアした結果、「ゴリラなら良いんじゃないか」という結論に達したんじゃないだろうか。

いや、深読みだったかな。何はともあれ、マジックのゴリラ達は人間味がある個体群が多いのだ。どこかしらユーモラスでかわいくもある。

ちなみに「Barbary Apes」という猿は実在する。Barbary Apes、和名はバーバリーマカク。北アフリカに生息する、マカク属唯一のアフリカ大陸生息種。このマカク属というのは、比較的小さな猿の仲間で、実は我々にも馴染みがある連中なのだ。

マカクの代表種、「Japanese macaque」。即ち、「ニホンザル」。誰でも知ってるニホンザルと、現実世界の「バーバリーエイプ」は見た目も非常によく似ている。


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2014/06/14 「忌まわしき者」


「グロテスク・ウィーク」のシメは「ザ・グロテスク」「トラウマ注意」「ホラー十傑衆」と呼ばれる《忌まわしき者》だ。ちなみに、呼び名は全て今つけた。皆も「アボミネーション君」のことをこう呼んであげてほしい。「ホラー十傑衆」はノリで書いてみたが、ちゃんと十枚選定するのもおもしろいかもしれない。

さて、こんなノリになってしまうほどの最上級のグロテスクさを誇るこのカードを解説していこう。

5マナ2/6、タフネスは申し分ないがパワーが低いため、アタッカーとして用いるには打撃力も突破力も足りない。 比較的非力なこのカードは、その能力にこそ真価がある。

緑か白のクリーチャーにブロックされるか、ブロックするかした場合・即ち「接触」した場合、 戦闘の結果如何に関わらず、戦闘終了時に問答無用で破壊してしまう能力を持っている。

所謂「バジリスク能力」であり、マジックの初期のカードにはちょくちょく見られた能力だが(今ではすっかり「接死」にその座を奪われた)、 黒いカードとなるとこの《忌まわしき者》と《Infernal Medusa》が含まれた「レジェンド」が初出である。

色を選ばない《Infernal Medusa》と、壁を突破でき高タフネスな《忌まわしき者》。

なかなか面白い棲み分けだが、今現在だと「同じセット同じレアリティで効果が似過ぎ!」と叩かれるのは明白。 競技レベルのリミテッドのことも考えると、カードデザインって大変なことです。

かつてのクリーチャータイプは「忌まわしき者」、勿論1属1種。 クリーチャータイプ検索でトップに出てくる栄えある種族だったが、現在では「ホラー」となり、「忌まわしき者」は消滅。 なんだか寂しい気持ちになるのはどうしてだろう。

イラストを担当したのはMark Tedin氏。Markさんの持ち味が存分に発揮された素晴らしくグロいイラストがたまらない。このイラストの誕生秘話をご紹介しよう。

ある日、Markさんはいつものように喫茶店でコーヒーを飲みながら作品へのイマジネーションを膨らましていた。

ふと、本棚に並んでいるペーパーバック達に目をやると、ある一冊の表紙に「風景とドロッとした半透明の頭部」のようなものが見えた。これによりイマジネーションが加速されたMarkさんは、そのままスケッチを開始。

このイラストのラフを仕上げ、彩色する際に用いる色見本もその場で描きとめた。作業がひと段落して、Markさんは本棚へ歩み寄った。

自分が目にしたその本は、一体何なのだろうか?彼が手にした本の表紙に描かれていたのは、なんと「レオナルド・ダヴィンチの自画像」だった…。

こんな興味深い逸話があるカードイラスト、なかなかないよ!


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2014/06/13 「毒噴きブラッカス」


例によって「ブラッカス」薀蓄でスタートを切りたかったのだが…調べても調べても、検索結果に出てくるのはこのカードと、人の名字のみ。わからん。さっぱりわからん。開発部に「ブラッカスさん」がいて、彼がデザインしたこのクリーチャーに「響きもベイロスとかそういうのっぽいし」という理由で架空の生物の固有名詞としてつけられた、という可能性ぐらいしか思い浮かばない。真実を知っている方、メールください!お待ちしております。

気を取り直して、《毒噴きブラッカス》は「変異」という能力の申し子のようなカードだ。本来は7マナと重量級だが、変異でとりあえず3マナ2/2として出しておいて、5マナで表になれば5/5とそこそこ戦えるサイズに成長する。これだけでもリミテッドでは悪くない性能だが、この獣が持つもう1つの能力が変異の価値・可能性を高めている。

2マナタップで、戦闘に参加している飛行クリーチャーに5点のダメージを与えることが出来る。ふーん…え、5点って?流してしまいそうだけど、凄いことじゃないですか!フレイバー的には背中の棘からウジュルウジュル噴き出してる毒液で撃ち落とすということなのだろう。たまらなくグロテスクな生き物だ。

しかしこの毒、5点は本当にすごい。調査したところ、こいつが住んでるオンスロート・ブロックには何もしない状態で飛行を持つクリーチャーが61体生息している。このうち、ブラッカスの毒をうけても撃ち落とされない・あるいは受けないクリーチャーはたったの5体。この毒がいかに支配的か、ご理解いただけただろう。

《刃の翼、ロリックス》《戦慄をなす者、ヴィザラ》といった超S級ピットファイター達でも、その命を奪われてしまう猛毒中の猛毒だ。「神河物語」のドラゴン・スピリット連中も、これに蝕まれれば死ぬしかない。なんちゅう威力だ。

上述のように、リミテッドでは強力なクリーチャーで、そのサイズと併せて戦線を強固なものにしてくれること間違いなし。これが上空のみならず、眼前の地上の敵にも命中させることが出来たならば、構築でもあるいは…と思わずにはいられない。いや、この位のポジションが丁度いいわな。


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2014/06/12 「ゴブリンの勇士」


いやー絶妙なグロさである。死体とか、そういうもんが描かれているわけではないんだけど、我々が住む世界にまるっきり存在しないデザインというのは、それだけで薄気味悪く見えるものである。

所々人間と共通のパーツを持ちつつも捻じれ、ドロけてなデザインはまさしく「バケモノ」のそれである。そしてこのバケモノが、ゴブリンであるという事実に驚かされたプレイヤーは多いことだろう。白いし、耳がとがってないし、ユーモラスさというか愛嬌というかそういうものもなく…ゴブリンをズラーっと並べた中にこれが一匹いると、浮きまくること間違いなし。

これにはイラストを担当したMark Tedin氏も自身のサイトでコメントされている。要約すると、勿論これは今日におけるゴブリンの姿はしていない。しかし、このイラストが描かれた時には、まだPete Venters氏が確立した上記のような「ゴブリン像」が完成していなかったのだ、ということである。

Peteさんが築き上げたゴブリン像は、全世界のプレイヤーに愛され、結果ゴブリンはマジックにおいてなくてはならない重要な種族となった。

新セットの内容が発表される時、「この次元にゴブリンは生息していない」という一文で非常にがっかりするプレイヤーも多いことだろう。現に僕がそうだ。ゴブリンデッキは強くて楽しい、これに新カードが入れば最高だし、トーナメントレベルでなくては愉快な彼らの姿を見ることは楽しい。

そんな愛されるゴブリン誕生の舞台裏に、Markさんが描いたこのゴブリンがいたことも、どうか覚えていてほしい。今をときめく作品の初期原案を見て「全然違うね」と思うこと、多々あることでしょう。でも、それらがあるから今があるわけで。どうか、先駆者を否定せずに、それも含めて愛してあげてほしい。

よくこのカードは、3マナ2/2バニラなのに「Hero」なのかとネタにされる。後にはレアにもなっているので、尚更である。僕にとっては、このグロテスクなイラストが上記のようなリスペクトの姿勢をもたらしてくれたし、その後の価値観にも大きな影響を与えてくれた、紛うことなき「Hero」だ。後にイラストをPeteさんが手掛けているのも、感慨深いものがある。イラスト1つでここまで感情が動かされる、改めてマジックって最高だなって…


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2014/06/11 「灰燼のグール」


「グール」という言葉は全くもって日本語ではないが、多くの日本人がこの単語を聞いて共通のものを思い浮かべることだろう。グールは、ファンタジー世界では屍を喰らう動く死体、ゾンビの亜種のようなポジションを与えられ、ゲーム・漫画問わず非常に多くの作品でその姿を目にすることができる。所謂「ファンタジー語」であるが、それが本来意味するものはなんなのだろうか。

グールとは、元々アラブ人の民話・伝承に登場する怪物である。その語源は、アラビア語で「掴む」「攫う」を意味する「ガーラ」であるとされる。ファンタジー世界のグローバル・スタンダードでは「実質ゾンビ」であるグールだが、本来は「怪物」の一種であり、決してアンデッドではないということだ。

ゾンビは現世の人間が死後に生まれ変わる(なんか矛盾したことを言ってるけども)ものだが、グールは妖怪や悪魔といった類の「未知の生物」と言った方がよく、これらは本質的な部分で異なる。グールは、砂漠に住まい人間やハイエナなどによく似た姿に化けることが出来る。墓を漁り死体を喰らい、時には旅行者や子どもを攫って食べてしまう危険極まりない怪物だ。日本でいうと「魍魎」なんかが近いのだろうか。

グールトークはここらにしといて、今日はマジックに存在するグールの中でも、グロさと強さの2つを兼ね備えた素晴らしい1枚を紹介しよう。

《灰燼のグール》は初登場時には勿論「グール」のタイプを持っていた。しかし、グールはコイツで打ち止め。しかも後に全てのグールがゾンビとなり、グールは絶滅することになった。「ゾンビ扱いされてたけど別物だったグールが滅んで、ゾンビとして蘇ったよ」何を言っているのか自分でもよくわからん。

《灰燼のグール》はいつまでもしつこく場に還ってくる能力を持っている。ちゃんと条件はあって、自分の上に3枚以上のクリーチャーカードが存在する場合オンリー。腹いっぱい腐肉を食べて仕事に戻るのだろう。未だにエターナル環境で墓地の順番を並べ替えてはいけないのは、コイツらのようなカードがいるからである。

その継戦能力の高さとパワー3速攻という打撃力は目を見張るものがある。スタンダードではコントロール殺しの「ベリード・アライブ」で、エクステンデッドでは驚異的なシナジーを形成しつつメインアタッカーとして「ワイルドゾンビ」にて鉄砲玉として大活躍。

後に《イチョリッド》というマナが不要で条件も緩い次世代機が登場し、その役目を譲ることとなった。しかしイラストのグロさでは負けていないため、僕がデッキを作る際にはイチョの方が強いのを分かっていながらつい入れたくなってしまう。いつかイチョと共存したデッキでレガシーのトーナメントを優勝するのが、密かな目標でもある。


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2014/06/10 「死体の花」


マジックをやっていると、なんとなく法則性というものが見えてくる。必ずしもそうとは言えない、あくまで印象が強いだけでそう思い込んでいるというものも多いのは勿論のことだが、「カード名が短いカードは強い」「『全ての』と書かれているカードは強い」「テキストが短いカードは強い」といったものだ。

《神の怒り》なんかこれにど真ん中ストライクなので、なるほどと思ってしまう。しかしまあ、必ずしもそうではないということも同時にわかる。最近ではこれらの法則性に関する話は全く聞かなくなった。これも時代の流れだろうか。

さて、上記のような法則性のウワサ話の中に「イラストがグロいカードは強い」というものがあった。これを証明する際に、よく実例としてあがってくるのが《死体の花》だ。まず名前がストレートすぎる。「死体」という言葉が臆せず用いられているのは、ゲームの世界ではありそうで実はなかなか自主規制されているものだ。

この、死体から生えてくるという稀有な植生を持つ植物・それが花を咲かせる様子が描かれているイラストは、インパクトの塊である。もはや骨と化した死体から怪しい怪奇植物がニョキニョキ生えている、「現実で遭遇したら確定トラウマ」な光景にして、「現実で出くわすことがあり得なくはない」ワンシーンである。ない?本当にそう言い切れるかな…

まあホラー路線は置いといて、カードとしては「コンボを組んでくれ!」とこれでもかと主張してくるテキスト。あるリソースをマナに変換する、というカードはマジックの歴史においても数多く存在するが、これは手札1枚を2マナに変換する強力なものである。

質が全く異なるものとはいえ、1が2になるというのは一目見ただけで「お得感」を確認できるだろう。勿論大量ドローとの相性が抜群であり、「ヴィジョンズ」で《繁栄》を獲得したことにより、Xドロー→大量マナ→Xドローを連打して最後はXドレイン・火力で決着をつける「プロスブルーム」が誕生。様々な追い風もあってトーナメントシーンで猛威を振るったのだった。個人的には同様のアプローチを狙った「ネクロブルームゲイザー」もデッキ名がカッコイイので大好きだ。勿論ネクロは《ネクロポーテンス》のこと。ゲイザーは《溶岩噴火》だ。

最近はこういったコンボに使える・コンボにしか使えないカードが意図的に作られていないように思う。この怪奇植物がMike Longというデッキビルダーを昇華させたように、「カードの持つ可能性がプレイヤーを育む」というモーメントがあまり見られなくなったのは残念でならない。


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2014/06/09 「デルレイッチ」


Card of the Day2年目の幕開けは、この衝撃的なイラストから始まる…

今週は、「恐怖のグロテスク・ウィーク」。一発目から飛ばしていく、この姿勢が評価されると信じて。

《デルレイッチ》ほど、イラストとカードの能力がリンクしていて初心者に優しいカードもないだろう。怖いけど。普通にキャストすれば7マナ6/6トランプル。ちょっと重いが、当時の黒のクリーチャーの質を考えれば、全くもって悪くない。むしろ、これより弱い連中ばかりだったので、十分に「上」と呼べる存在だった。

これが、イラストにも見られるように3体のクリーチャーを生け贄に捧げるのであればマナの支払いが不要になる。「ピッチスペル」というもので、これがトーナメントシーンに還ってくるのを売りにしていた「メルカディアン・マスクス」の中でも、ずば抜けて強力・存在感に溢れた1枚だった。

ピッチコストではない通常のマナで召喚する、所謂「ハードキャスト」ではトーナメントシーンの速度に追いつくのは難しい。しかし、3体生け贄ならば他の追随を許さない驚異的な速度を誇っていた。これには、《センギアの重臣》というかけがえのない相棒の存在があってこそ。

センギアは、4マナ2/2で場に出た時に0/1を3体引き連れてくる。このチャンプブロックぐらいしか使い道のないトークンを、《デルレイッチ》が美味しくいただくというわけだ。センギアは4マナなので、《暗黒の儀式》《厳かなモノリス》といった超A級マナブースト職人がいたこの時代には、簡単に2ターン目の降臨が可能・ちょっと上振れすれば1ターン目に叩きつけるのもどうということはない。

1ターン目から8点クロックが殴りかかってくる上に、そいつらは黒くて《恐怖》《血の復讐》《殺し》のような限られた確定除去が通用しない。このコンボと呼んで差支えないエンジンは「強襲デルレイッチ」と呼ばれた。The Finals99の準々決勝にて、当時最強のデッキだった「ピットサイクル」がこれに瞬殺されたことで、《デルレイッチ》のポテンシュアルの高さは世に知れ渡ることとなった。

しかしまあイラストのグロテスクなこと。これに取り込まれた犠牲者は、そのイラストから察するにまだ自我が残っているように見える。これを「生き地獄」というのだろう。メルカディアの子どもをしかるのに「《デルレイッチ》に取り込まれちゃうよ!」と言うのはさぞ効果的なことだろう。


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2014/06/07 「歓楽の神、ゼナゴス」


そして彼は神となった。

昨日の一周年記念で登場したゼナゴスが、本日からの2年目の門出を神様となって祝福してくれる。良いスタートの切り方、なんだけどゼナゴスさんって神になったことで死んじゃうんですよね…?

不吉なスタートになってしまったのかもしれない。

現時点では数少ない「プレインズウォーカー」と「クリーチャー」という2つのカードタイプでカード化されたゼナゴスさん。そのクリーチャー側は、テーロス・ブロックの目玉でもある「神」クリーチャーだ。

これらの強大な存在は「破壊不能」といくつかの強力な能力を持ち合わせ、バリバリに戦闘向きのサイズを誇っている。しかし、彼らを支える「信心」が少ない時は置物となってしまう。ここが一応は弱点として設定されている。

このゼナゴスさんもサイクル共通の弱点を持っているのだが、実はこの人に関してはあまり関係ない。クリーチャー化=顕現しなくとも、十分にダメージを与えるクロックとして計算できてしまうのだ。

その能力は、他の神々に比べると非常に速効性の高いもの。戦闘開始時に選ばれたクリーチャーは、大歓楽の盃を飲み干してマキシマムサイズに膨れ上がって速攻も持つという、《ヤヴィマヤの火》のアッパーヴァージョンと言うべき能力を誇っている。

これがハマればめちゃくちゃに強い。いきなり10/10の《世界を喰らう者、ポルクラノス》が走ってきら、一体どうすれば良いのだろうか。これがトランプルや呪禁持ちになれば破壊力もそれだけ高まる。5マナという重さに十分見合う一撃を放てるカードであり、「グルールモンスター」などのデッキで、怪物を大怪物に育て上げている姿を良く見る。

この能力を見ていると、ゼナゴスさんって案外おだて上手というか…営業マンとしてバリバリやっていけそうである。意外にスーツも似合いそうだ。あくまで若いノリなので、「呪禁世代」のハートはガッチリ掴むが「被覆世代」とはうまくいかないのが残念だが。

プレインズウォーカーである自身との相性も良好。毎ターン4/4速攻を射出したり、奥義で捲って即死を演出したりと、リアル大歓楽デッキは楽しさしか詰め込まれていないので、組むべし。


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2014/06/06 「歓楽者ゼナゴス」


 何故、今週が「お祭りウィーク」なのか。それは、本日を祝うためである。自分で自分を祝うというのは滑稽に見えるかもしれないが、そっとしておいてやって欲しい。

本日で、当コラムの掲載開始から丸一年。めでたいfor myself。そしてThank you for 読者の皆様。Card of the Dayも2年目突入。ますます精進していきたい所存であります。もっと面白いものを、書いていこう。

 決意表明はさて置き、1周年の祝いに《歓楽者ゼナゴス》にお越しいただいた。祭りと言えばこの人、テーロス・ブロックでは良いポジションではしゃぎまくってくれました。「テーロス」のスポイラーに登場してから、僕はこのゼナゴスさんに惚れている。赤緑という素晴らしいカラー、クリーチャーを後押しするプレインズウォーカー、隙なく形成された3つの能力。素晴らしい。至高の1枚ではないか。

 +1能力は、マナを生み出す能力だ。ここで大事なのは、この能力は決して「マナ能力」では「ない」ということ。マナ能力というものはスタックに乗らずにただちに解決される。これに対してプレインズウォーカーの忠誠度能力は、必ずスタックに乗り、解決を待つことになる。

そして、マナ能力のルーリングには「忠誠度能力ではなく」ということが明文化されている。相手がこの能力を起動してきても、そのマナを何かに使われる前にこちらがアクションを挟むことが出来るのだ。

使う側としては、これにスタックでクリーチャーを除去されるのが苦痛でたまらないが、逆にこれをおとりに除去を使わせるという駆け引きも狙えるので覚えておこう。何事もなく起動できた場合は、溢れ出るマナを巨大なクリーチャーや「怪物化」の起動に充てるなどすると愉悦。

 0能力は、2/2の速攻持ちを投下する。トークンが呼び出せるプレインズウォーカーは、自衛が出来るという点でも非常に強力。4マナのゼナゴスさんならば、2/2を2体呼べればまあ元を取ったというところ。ここから+1能力に繋げるなど、自身との噛み合いも素晴らしい。

 そして所謂「奥義」-6能力は、大量アドバンテージ獲得のチャンスだ。これを用いるデッキでは、おそらくデッキに入っているカードは軒並み土地とクリーチャー、その他のカードはプレインズウォーカーのみといった具合であることが多いだろう。そうなると、捲った7枚のカード全てが場に出るということも起こり得る。こうなると大歓楽パーティー、勝利は二の次だ。

 残念ながら、ストーリー上では死亡してしまった。2枚目のプレインズウォーカー・ゼナゴスを見る機会はおそらくないのだろう。何かの間違いで還ってきてほしいものだ。


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2014/06/05 「蟲の饗宴」


「饗宴」はマジックでも多くのカード名に用いられている、頻出単語の1つだ。改めてこの言葉の意味を見てみよう。「客をもてなすための宴会」、あとはプラトンのどうたらが出てくるが、マジックとは勿論関係ないので安心してほしい。関係ないが触れておくと、「プラトニックラブの原形を示す」という解説があった。なるほどわからん。

数多くある「饗宴」カードから今回チョイスしたのは《蟲の饗宴》。名作映画「トレマーズ」の神河ヴァージョンといった趣のあるイラストだ。彼らもたまには地表に出てきて、このようなお祭りを行うのだろう。何せ、数が多い。久しぶりに会う顔もあることだろう。そういった面々との再会を喜び、遠くから来た蟲仲間をもてなすために宴を…してるのか。何にせよ、人間からすればいろいろと迷惑な話である。

イラストからもわかる通り、彼らはバクバクと家屋を食べてしまう。緑に役割が割り振られている土地破壊カードの1つだ。普通に使えば5マナの重たい《石の雨》。

しかしこれが「伝説の土地」だった場合、テンションの上がった蟲達は「二次会」へとなだれ込む。その土地のオーナーにもう1枚の土地の生け贄を要求するのだ。こうなると軽くなった《塩の雨》。

しかし伝説の土地ってそんなにお目にかかるものなのだろうか?構築級のカードがあるか見てみよう

《アカデミーの廃墟》
《すべてを護るもの、母聖樹》
《暗黒の深部》
《永岩城》
《ウギンの目》
《ガイアの揺籃の地》
《Karakas》
《ニクスの祭殿、ニクソス》
《セラの聖域》
《The Tabernacle at Pendrell Vale》
《トレイリアのアカデミー》
《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ/Urborg, Tomb of Yawgmoth》

ありますねぇ。ありますとも。これらを狙い撃ちしつつ、アドバンテージを取れれば爽快極まる。

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2014/06/04 「ギルドパクトの祝祭」


ギルドパクトというなんだかオラ達にはよくわからないものが締結された記念すべき日だよ!今年は○○年めなので特別中の特別なお祝いをするよ!とにかくめでたいんだ、仕事も休みなんだ。

酒もごちそうも好きなだけ、広場は《慈善獣》やラクドスの道化師たちがパレードを行っていて賑やかで楽しいんだ!オラ達にはよくわからないけど、このギルドパクトっていうのがあるからオラ達は生活できているんだ!

こんな感じではしゃいでいる人もいるのだろう。《ギルドパクトの祝祭》は、次元ラヴニカに住むものにとって大切な記念日である「ギルドパクト」の締結日をお祝いしている。

まあ、詳しいことはストーリー関連の解説で読んでいただくとしよう。このコラムではカードの解説、忘れちゃいないぜ。

しかし、なんとも限定された効果を持つカードだ。WXでダメージX点を軽減し、1枚ドロー。額面だけ聞くとなかなか悪くないカードの様に聞こえるが、しかし現実はそうでもない。

実はこのダメージ軽減は、「プレイヤー限定」なのである。これがクリーチャーに仕えたなら、《黒焦げ》から守ったり戦闘で一方的に討ち取りつつ1ドローという抜群の活躍を見せ、アンコモンというレアリティに恥じぬものとなったことだろう。


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2014/06/03 「真夏のお祭り騒ぎ」


祭りの風景を思い浮かべて欲しい。我々日本人のDNAに刻まれている光景、それは往々にして夏の祭りを思い起こさせるだろう。マジックの世界でも、夏にはお祭りを行うようだ。それも真夏、蒸し暑さを吹き飛ばす、音楽と酒の饗宴。思言うか寝るだけで楽しくなってくるね。

《真夏のお祭り騒ぎ》は、「ウルザズ・サーガ」にて登場した「成長エンチャント」の1つだ。これらはアップキープに「詩句カウンター」という独自のカウンターを1つ得る。そして、その数を参照する起動型能力を有しているのが特徴だ。

この起動型能力は、いずれもそのコストにエンチャント自体の生け贄を含むため、実質使いきりの呪文という形になる。先払いで、受け取りが遅くなればなるほどその効果が増す、少し変わったサイクルなのだ。同セットでは分割払いと呼ぶべき「エコー」も登場している。開発が従来のマナの払い方とは一線を画すものを作りたかったのかもしれない。

さて、《真夏のお祭り騒ぎ》は5マナと少し重めである。そして次のアップキープを迎えて初めて、3/3のビーストトークンを手に入れることが出来る。起動用のマナと併せれば6マナと1ターンをかけて3/3が1体だけというのは、少し物足りない。ではもう1ターン待ってみよう。

6マナ:2ターン:3/3 3/3
まだまだ

6マナ:3ターン:3/3 3/3 3/3
マナだけみればなかなか

6マナ:4ターン:3/3 3/3 3/3 3/3
十分勝利に値する

必殺性を増すのは、カウンターが4個乗ったあたりからだ。こういうときは皆大好き《逆説のもや》にアップキープを増やしてもらうのが良いだろう。さらにこれまた愛され系《倍増の季節》も添えてやると…6マナ:1ターン:3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3とぶっ壊れ。圧倒的陣容で踏みつぶせ。

どうせ使うならば、ビーストである点も有効活用しないと勿体ない。息切れや全体除去対策として投入し、《ワイアウッドの野人》や《貪欲なベイロス》と併用すればリアルフェスティバルの開幕。カジュアルマジック最高としか言いようがないねこりゃ。

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2014/06/02 「ゴブリンの祝祭」


私事ですが、もうすぐ記念日なのです。それはそれは大事な日がやってくるのです。我がことながら祝わずにはいられないのです。そんなわけで今週は「お祭りウィーク」。問答無用なのです。祭りじゃ!


ゴブリン達のお祭りハ、イラストを見るからに暑苦しい。無駄に高い密集度、それも雄度の高いシヴ山系ゴブリンズである。この山に住むゴブリンは、鉱夫であり機械技師である。「パワーストーン」と呼ばれる、魔力を秘めた石の製造施設にてお仕事をしている彼ら。おそらくこの祝祭は、そんな労働者を労う宴会なのだろう。

フレーバーテキストでは何の祭りだったっけと、なんともゴブリンらしい愛すべきセリフが書かれている。どいつもこいつもビール風の飲料を手にしている。働いた後は次元も部族も問わず、酒が美味い。


カードとしては、2マナという軽量コストにて設置でき、2マナで任にのターゲットに1点与えることが出来る。お祭りというカード名とは少し乖離した効果の様に思えるが、おそらくはお祭り気分なゴブリン達がどんちゃん騒ぎをしてそれに巻き込まれたものはダメージを受ける、という寸法なのだろう。

この能力だけならば、はっきり言って強すぎる。2ターン目に設置して、あとは毎ターンカウンターでも構えながら「エンドに1点」と言っていれば勝ててしまうカードだ。

勿論、そうならないように、ダメージを与えた後にコイン投げが行われる。これにコントローラーが負けてしまうと、対戦相手にコントロールを譲渡することになってしまうのだ。「こっちの方がつまみが多いや」といったところか。これまたゴブリンらしくて素晴らしい。これのせいで、基本的には「使えない」カードとなっている。


《クラークの親指》と併せるのは定番中の定番だが、実は使おうと思えば使える1枚なのだ。これの後に登場した《ゴブリンの砲台》はダメージを与えた後に生け贄に捧げるというデメリットがあったが、これを解決する前にマナを注げば注いだ分だけ砲身が焼けつき砕けようともダメージを与えることが可能で、統率者戦の無限マナの使い道としては定番なのだ。これと同様の運用を、この祝祭も可能だ。赤マナが入っていて無限マナコンボが狙えるデッキで、是非検討して欲しい。マツリジャー!

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2014/05/31 「群れネズミ」


「成り上がりウィーク」のラストを締めくくるのは、つい最近大いなる成り上がりを成し遂げた、 「RTRリミテッド禁断の最終兵器」こと、《群れネズミ》大王閣下だ。

いやほんと「リミテ専」とか言っててすいませんでした。
許してください分裂しないでくださいお願い。

2マナで場に出ているネズミの数だけのパワー・タフネス、そして3マナと手札1枚で自身のコピーを場に出す。 リミテッドでは、徐に2ターン目にこれを場に出し、あおは分裂するだけで勝ててしまう。冗談抜きで、このレベルのカードなのだ。

現に、プロツアーラヴニカへの回帰ではMartin Juza選手が《群れネズミ》2枚と《沼》38枚というデッキをドラフトラウンドで用いたほどである。 勿論、実験的な意味合いの強い試みではあるが、それでも1-2という成績を残している。1勝、しちゃったのだ。

リミテッドでは引ければ勝てると言われるほどのカードではあるが、構築では全くお呼びがかからなかった。 スタンダードでこれが分裂してる暇があったら、《昆虫の逸脱者》に空爆されまくってとっくに死んでるよ、というのが定説であった。

転機となったのは、多くのクリーチャーがスタンダードを去ったイニストラード・ブロック落ち・同時にこれまでと一線を画す連中が登場した「テーロス」の登場。 「信心」というマナシンボルを戦場に求めるメカニズムがこのカードの評価を大きく上げることになった。

このネズミが生み出すトークンは自身のコピーであるため、マナコストもしっかりと持っている。 そのため、1枚のカードで後から引いた土地を軒並み黒マナシンボルに置き換えつつ、戦場に展開して行けるカードとして高く評価されるようになったのだ。

実際、《アスフォデルの灰色商人》との相性は危険極まる。同じデッキに積まれた《地下世界の人脈》とのシナジーも恐ろしい。 かくして、「黒単信心」は《群れネズミ》のもとに完成したのだった。

これはイニスト・ブロックが擁していた軽い除去が退場して行ったことも大きく関わっているように僕は思う。

「タルキール覇王譚」が登場するまでの間、このネズミは今日もどこかで増え続けるのだろう。 成り上がりチャンピオン!いやー読めなんだ。

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2014/05/30 「ファイレクシアン・ドレッドノート」


ジョン・アーバスノット・フィッシャーは、イギリスの軍人である。
彼は海軍に多大なる影響を与えた人物として有名で、我々日本人が用いるある日本語の生みの親でもある。

彼が建造を進めたのが、高速で移動し、単一の巨砲を搭載した戦艦である。
現在の我々が用いる「超ド級」という言葉の元にもなった、長距離砲戦に圧倒的に優位な戦艦、その名も「ドレッドノート」だ。
 
 この戦艦の如き戦闘力を誇る、ファイレクシアの科学力が生み出した怪物が、この戦艦の名を冠した《ファイレクシアン・ドレッドノート》だ。
ちなみに、現在唯一の「Phyrexian」が「ファイレクシアン」と訳されているカードである。 基本的には同英文は「ファイレクシアの」と訳されている。

しかし、「ファイレクシアのドレッドノート」では、どこかまとまりがわるい。
《ファイレクシアン・ドレッドノート》。うん、強い。しっくりくる。

 「ミラージュ」にて登場したこの生物戦艦は、1マナにして(当時)マジック界最大のパワー・タフネスを誇るとんでもないバケモノだった。 まさにドレッドノートだ。しかしながら、デメリットもド級もの。

場に出た時に、自身のパワーに等しい値・パワー合計12になる様にクリーチャーを生け贄に捧げない限り、 出航前に沈没してしまうという大いなる欠点を持っている。
 
 そのため、クリーチャーとして運用ははっきり言って不可能だったため、当初は「ネタキャラ」の域を出なかった。 しかし、「エクソダス」で登場した《伏魔殿》がこの戦艦の運命を変えた。

1マナクリーチャー2枚、あるいは《再活性》での再利用を用いて、1マナで12点×2で勝利するという、 驚愕のコンボデッキ「パンデモノート」は、アジア太平洋選手権で準優勝にまでなるほどの活躍を見せた。

 このコンボがあまりにもあっさりと決まるため、ドレッドノートは本来与えられたデメリット持ちクリーチャーに戻るべく、エラッタが与えられた。

パワー12になるように生け贄を捧げない場合、ドレッドノートは場に出ずにそのまま墓地に置かれる。 このルール変更により、強力戦艦は海の藻屑と散っていった。
 
 しかし、2007年にエラッタが改定され、元の挙動に戻ることとなった。
これにより注目されたのが、《もみ消し》との相性。第6版より導入されたルールにより、 エラッタがあてられるまでは行えた《幻視の魔除け》とのコンボを、 より強力なカードに置き換えることが出来るようになったこのタッグは「スタイフル・ノート」と呼ばれ、2ターン目にパワー12のクロックをプレイヤーに提供する。

これぞ超ド級。また、エラッタ改定前から使用可能だった、《Illusionary Mask》との組み合わせも同様に強力だ。 さらには《苔汁の橋》の秘匿条件を達成させたり、《血編み髪のクレシュ》《縞痕のヴァロルズ》といった相性の良いカードは増える一方だ。

新しいセットが出てくるたびに、この最強の成り上がり戦艦と相性が良いカードを探してみよう。



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2014/05/29 「侵入警報」


WARNING WARNING(ビーッ  ビーッ)。映画なんかではお馴染みの光景である、侵入者にシステムが反応して警報が起動されるシーン。「クソッ!」と毒づいた主人公たちが脱出を目指すというシーンはもう数えきれないほどの作品でお目にかかることが出来る。果たして、本当にああいう警報システムを持つ施設は存在するのだろうか?

めちゃくちゃ煩くて命令が行き届かなかったり、侵入者にこちらが気付いているという情報を簡単に与えてしまうのはどうなのか、とか疑問は尽きない。

さて、そんなお馴染みの光景もマジックの背景世界には勿論登場し、しっかりとカード化されている。ヴォルラスさんが、わざわざ自らの姿を見せての警報だ。有情ですこと。

カードとしては、クリーチャーのアンタップを阻害する効果を持っている。通常の方法ではクリーチャーがアンタップすることはなくなり、これはクリーチャーに攻められるのが苦手な青にとってはありがたい効果である。《セラの天使》に殴られたらどうするのかということは忘れよう。…と言っても、この阻害能力は2行目で否定されてしまっている。

クリーチャーが自分でも相手でも構わず戦場に侵入すると、アラームが鳴り響き総員戦闘態勢に入るのである。これではロックカードとしては使えないよ。むしろ、このアンタップ効果を最大限に利用すべきカードなのだ。アンタップ阻害効果は、《ネクロポーテンス》のドロースキップのような、強すぎるカードにならないようにというデメリットとして設定されていると考えるのが自然だ。

このアラームと、綺麗に噛み合うカードはしばらく姿を現さなかった。そのため「よくわからないことをするカード」止まりの日々が続いていた。長く、永く…

転機となったのは「神河物語」。実にアラームが登場した「ストロングホールド」から6年後の話である。この時を待っていたのだ。《鏡割りのキキジキ》は簡単に無限トークンを生み出すコンボデッキ「キキジキアラーム」を誕生させた。さらに、《禁忌の果樹園》をクリーチャー化させれば、簡単に無限マナを確保できてしまう。「フォビドゥンアラーム」は、スタンダードは勿論のこと、エクステンデッドにおいては最速2ターンキルを可能とするデッキとしてその名を知らしめたものだ。

時を隔ててベストパートナーと巡り合えるカードがある。わけのわからない挙動が書かれているカードは、大事にとっておこう。



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2014/05/28 「太陽の拳」


太陽とは不可欠な恵みをもたらすものであり、また同時に凶悪な側面も併せ持っている。まさに「神」と呼ぶにふさわしい存在であり、古今東西あらゆる伝承に太陽神の姿を見ることが出来る。マジックでも清らかさの象徴として白マナのシンボルに定められている。


今日紹介する《太陽の拳》は、そんなマジック世界の太陽がもたらしたテクノロジーの1つである。登場した「フィフスドーン」は、ミラディンにて5つめの太陽となる緑の太陽が目覚めたため、5色にまつわるカードが多数収録されている。その中でもパッケージにも採用されているこのアームギア的アイテムは、他より各上の設定なのだろう。


このアーティファクトは、全ての呪文のコストを「WUBRG」に置き換える。これがあれば、8マナや15マナや1000000マナの呪文でも5マナで払って唱えることが可能なのだ。また、このコスト変更は強制的なものではないため、軽い呪文は従来通りで唱えることが可能である。ちょいと昔のカードならば、コントローラーが唱えるマナコストはこれに固定されてしまっていたことだろう。《寄付》などで押し付ければロック完成。まあ、そんなこともなく、柔軟性のある(当たり前とも言うが)デザインになっている。


これと「烈日」呪文が絡むとなかなか面白い。5マナ以下のそれらにも5マナ支払うことが出来るようになるため、本来のコストで唱えた時よりも多くのカウンターを乗せることが可能だ。また、このカードは代替コストを定義しているだけで、何か特殊な経由で呪文が唱えられるわけではない。そのため、手札から唱えた時にのみ生きてくる能力を持つカードを使う分にも全く問題はない。各種「明神」などは、そのコストの重さを大幅軽減でき強みも生きるので、有効な運用が期待出来るだろう。


ただし、あくまで5色を必要とするカードである。5色が問題なく供給されるマナベースを作るのは、8マナ10マナを素で払うことができる場を作るのと労力はそこまで変わらないのだ。そのため、スポットを浴びることは全くなかった。一部、愛好家が統率者戦で「5色ジェネラルの嗜み」としてデッキに入れることはあるため、全く需要がないカードというわけでもなかったのだが…トーナメントとは縁遠かった。


それがある日、モダンで(MOのイベントにて)使われてしまったからさあ大変。俗に言う「グリセルシュート」になんと4積みされ、5マナで《引き裂かれし永劫、エムラクール》をキャスト可能にするシュート系以外での勝ち手段となってしまったのだ。とはいっても、何度も言うように5色を要求するため、「ロマンコンボ」であることには違いない。しかし、一度使用されそこそこの結果を残すと、それで価値が保証されるようになるのがモダンの恐ろしいところ。この拳の値段も、グッと上昇したのだった。



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2014/05/27 「死せる生」


先代を超えることは、どんなジャンルでも難しい。前人未到の記録は、往々にしてその世界が洗練される前に打ちたてられるものである。昔は今と違って無茶苦茶やってたから…というのも要因ではあるのだろう。

しかし、現代でも過去の伝説を塗り替える存在が生まれてくるのもまた事実だ。2013年のプロ野球なんか、その典型である。僕らの生きたこの時代が、後に「昔は無茶苦茶やってたから…」と呼ばれるようになる日が来るのだろう。


マジックにおいてもそれは変わらない。過去に作られたカードを、ファンサービスの意味合いも込めてリメイクするということはもはや定番である。それらは大抵は「再調整」の意味合いが強く、当時支配的だった存在も生まれ変わればこんなかわいいもんか、と思われることも多々ある。多くはガッカリさせられるものなのだ。


そんなリメイク組の中にあって、最初は他と同様に先代と比較されガッカリされたカードがある。それが「時のらせん」のマナコストを持たない待機呪文サイクルだ。これらは、いずれもマナコストを持たない。《常在精神》以来、久しぶりの特殊なカードである。勿論普通に唱えることは不可能で、一端待機させなければならない。


この《死せる生》は一時期の黒の看板でもあった《生ける屍》のリメイクである。日本語名がそれぞれ逆になっているのがイイネ。なのだが…

《生ける屍》はその奇襲性ゆえに強力なカードだった。盤面を流して墓地からクリーチャーが返ってくる。この突然の展開に、対戦相手はしてやられるというわけなのだが…これが目に見える形で警告されると、その威力は半減どころではない。4マナ払ってから3ターン待つというのは、悠長すぎるのだ。というわけで、ほとんど見ることはなかった。


そして時は流れ、「アラーラ再誕」が登場した時、彼は遂に先代を超えることになった。「続唱」を経由することで、インスタントタイミングの3マナで唱えられるようになったのだ。これは大いなる進化である。

この続唱をブッ放すコンボデッキ、その名も「死せる生」は、モダンのGPにトップ8などの好成績を輩出しまくっている。これで先代と比較されることはもうなくなったわけだ。これぞ成り上がり!

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2014/05/26 「エルドラージの徴兵」


この世界は「ネタ」に溢れている。限りなく真面目なものが存在する一方で、それがあるからこそネタにしか思えないものが存在する。陰と陽というわけではないが、それらは切っても切れない因果関係にある。アリの巣だって、せっせか汗水流す働きアリの中には常に2割ほど、遊んで暮らしているヤツらがいるらしい。

この世界は真面目だけで構成されるとパンクしてしまうのかもしれない。マジックも然り。《稲妻》は真面目も真面目、大真面目な1枚であり、《魔力激突》はネタでしかない。しかし、1キルできる可能性を秘めているのは《魔力激突》だ。時にネタは真面目を凌駕することもあるのだ(天文学的な確率でね)

今週は、一見ネタに見えるが蓋を開けてみると真面目な強さだったカードを紹介しよう。「成り上がりウィーク」とでも言おうか。それでは早速1枚目。《エルドラージの徴兵》だ。

かつてマジックプレイヤーは、オーラが好きではなかった。語弊があるかもしれないが、好んでトーナメントシーンに持ち込むにはリスキーな1枚だったのだ。基本的にクリーチャーは除去されるもので、それにオーラをつけていた場合、純粋にカード1枚分損することになる。

《怨恨》のような特殊なやつは別で、それ専門に組んだデッキ以外ではオーラはとても使いにくく、また「ミラディン」以降はアドバンテージを失わない装備品に完全にとって変わられてしまった。そんなオーラの歴史をひっくり返したのが、この超巨大オーラだ。

無色の8マナで、トランプルと滅殺2、そして破格の+10/+10修正をもたらすというGAME OVER級の1枚。「8マナのオーラ」という、一見「聳え立つネタ」にしか見えないカードではあったが、これが使ってみると強かったのなんの。

リミテッドでは勿論強力で、適当な飛行クリーチャーにこれをつけられれば勝ちという、「ボムレア」だった。8マナは一見重たいが、この環境ではプレイアブルであった。パックを開ける度に、これが飛び出すと何故か笑えるものだった。

そしてなんとオーラ嫌いなトーナメントプレイヤー達が、こぞってこのカードを使用したことがあったのだ。使用したデッキは「徴兵バント」。《極楽鳥》《貴族の教主》《水蓮のコブラ》でマナサポートしつつ優良クリーチャーとプレインズウォーカーを連打するデッキに、《失われたアラーラの君主》とこのカードが放り込まれたデッキだ。ある日突然パワー0の極楽鳥に殴られて負けるという経験、皆にも味わって欲しいよね。


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2014/05/24 「カロニアのハイドラ」

 なんやかんややっているうちに、「M14」のスタンダードでの賞味期限も迫りつつある。

最後まで、最大限にカードを遊んでこその基本セット1年サイクルだと個人的に思っているので、 「M15」に収録されるカードも気になるが…うん、無茶苦茶気になるが。

それよりも、現行セット内にまだまだ見落としがないかという部分に拘ってみたいなと思う。 それでも本音は次が気になって仕方ないというのは内緒。


「M14」発売当初、トップレアの座に君臨していたのが《カロニアのハイドラ》だ。 5マナ4/4トランプル、アタックする度に自軍のカウンターが倍化する能力持ち。即ち、実質的に5マナ8/8というわけだ。

構築の場で5マナのクリーチャーの運用というのは決して簡単ではないが、 それでも2回殴れば勝てるというサイズ(2回目なんて16/16)であれば使用に値するものだ。

そういった評判から、この神話レアは一見大人しいカードが多い「M14」内にて一際目立つトップレアとして一目置かれていたのだ。

しかし、発売してすぐに「《カロニアのハイドラ》めっちゃつえー」という声を聞くことは果たしてなかった。 同じく「カロニア、あれ見かけ倒しのガッカリ神話だったね」という話を聞くこともなかった。

要するに、デッキが作製されていなかったのだ。
実力未知数のまま、カロニアは秋の大型セット「テーロス」の発売を迎えた。


そして、この「テーロス」の登場により生まれた「緑単信心」に、カロニアはしっかりと投入され、 デッキの一フィニッシャーとしての活躍を見せることに成功したのだった。

緑のファッティ連打デッキで、除去耐性皆無とはいえなんだかんだでパンチ力があって強いことを世界に知らしめることが出来たのだ。

すぐに同デッキはタッチ赤をした「コロッサル・グルール」という形で流行るようになり、
そのデッキではテーロスが生んだモンスター達が主力となり、カロニアさんは追いやられる形となってしまったのは内緒だ。


さて、このカロニアさん。「コンボ・ウィーク」のシメとして、ド派手なコンボを見せていただこう。

まずは、《倍増の季節》《野生の活力》《屍体屋の脅威》らの、カウンター倍増組。
これらのうち1つが出ていれば、カウンターが8個で場に出て殴れば24個という超ド級の一撃を生み出すことが出来る。

また、場に出てから殴るまでのラグをなくすコンボも素晴らしい。 《ラクドスの血魔女、イクサヴァ》《歓楽の神、ゼナゴス》なんかでサポートしてやれば、隙だらけの相手を一発で仕留めることだって容易い。

また、カウンターは自分だけでなく全体に付与できるのもポイント。各種スパイクなんかと併せれば、グリーン・ナイトメアの始まりだ。

GP静岡で行われた100人規模のカジュアルゲーム「大乱闘戦」では、これのサイズが実に4桁まで成長していたとのこと。 隣の家が出てったと思ったら、ゴジラが引っ越してきた。そんな素敵な光景なのだろう。



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2014/05/23 「清純」


[名・形動]清らかで素直なこと。世の中のけがれにそまっていないこと。また、そのさま。「―な乙女」

 「世の中の汚れ」とは。何が正義で何が悪で論に発展しそうな話題であるが、次元ローウィンではそれは大別がついている。それは「戦闘ダメージでないダメージ」である。

火力、ティムといった直接ダメージから、カードがデメリットとしてコントローラーに与えてくるダメージまで、ありとあらゆる戦闘ダメージでないダメージが「汚れ」なのである。ローウィン世界では、それらは忌むべきものなのだ。

 その汚れに真っ向から立ち向かい否定するものこそ、《清純》そのものなのである。

あぁ、汚れ無きこの白き獣の姿をした事象の化身(=インカーネーション)は、6マナ6/6飛行という、そこらのドラゴンをも圧倒する戦艦の如き戦闘力と、その汚れを洗い流すかのような慈悲深い能力とを併せ持っている。

戦闘ダメージでないダメージは全て軽減し0にしてしまう、だけでなく。それに等しい点数のライフをもたらすという、プレイヤーに対してとことん優しすぎる1枚なのだ。これは対戦相手の火力からプレイヤーを守る優しさであると同時に、プレイヤーが自分自身で引き起こした《地震》や《真鍮の都》から受けるダメージまで特別扱いする「依怙贔屓(えこひいき)」でもあるのだ。

 「コンボ・ウィーク」としては、この依怙贔屓の部分で何か美味しい思いをしたいところ。しかし、「《火山の乱暴者》でお手軽好きなだけライフゲインや!2兆点ゲインするで!」とか言っちゃうと、軽減できないダメージで1000億ゲーム分の天文学的ダメージを受けてしまうので、ダメージの発生源はしっかりと吟味しよう。《硫黄の渦》とでライフの差が開きまくり!とか思っても、軽減は出来るけどゲインがなかったり。

使うなら《溶岩の猟犬》や《肉裂き怪物》《火飲みのサテュロス》なんかが最高の友にはなるだろう。どちらもイラストからは清純さの欠片も窺えないあたりが、なおよし。《清純》+《将軍の正装》+《火飲みのサテュロス》《ジャッカルの仔》でピュアすぎる将軍ディフェンス!うーん、難しいね


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2014/05/22 「要塞の計略」


赤に「ギャンブル」の役割が与えられたのは、適役と言う他ない。

白…天使や聖職者がギャンブルして良いのか

青…相手の思考読む連中がやるそれは、最早ギャンブルにあらず

黒…第2候補。ただ命を賭けて何かをとりにいくスタイルは、ライトなものではない。公営化は一生無理。1000%違法行為

緑…ちまちましたことはせずにぶんどろうとして来る、話の通じない…っていうかそもそも動物

ときての、赤:ゴブリン。はい、納得。何も考えていない・向こう見ず・ゲーム大好き・運ゲー当たれば勝ち、ヤフィー!


納得のチョイスなのだ。というわけで、古からコインに関するカードなどたっぷりお持ちの赤。「ネメシス」にて手に入れたギャンブル枠は、《要塞の計略》だった。舞台は次元ラース。イラストに描かれているのはこの次元のゴブリンであるモグと彼らが警護(?)する要塞。実は同じシチュエーションのギャンブル系カードが既に登場していた。「エクソダス」の《ファイティング・チャンス》である。こちらはコインを投げるタイプのギャンブルであったが、《要塞の計略》はポーカー的なギャンブルを行うカードである。

手札を1枚公開し、よりマナコストが低いクリーチャーを公開した方がそれを直接場に出すことが出来る。《実物提示教育》と同様、重くて致死性の高いクリーチャーを出せればカードを1枚使ってショートカットを行うことには大いに意味がある。しかし、このカードは重いものであればあるほど、場に出る確率は減少していくのだ。

とりあえず0マナの《メムナイト》なんかは確実に場に出すことが出来るが、一体何をしているのかわからないので除外。やはり出すならば7マナの《大修道士、エリシュ・ノーン》や8マナの《グリセルブランド》レベルのものであることが最低の条件となる。これより軽いクリーチャーカードをどうこう言うよりも、これより重いカードを相手が選んでくる可能性はまずないので忘れて欲しい。そう、基本的に無理なんである。何も考えずにブッ放して、たまたま相手がクリーチャー1枚も持ってなかったとかいう真性のギャンブラープレイングを求めているカードなのだろうか。いやー、その度胸が僕にはないです。

ないならないなりで、手札破壊と組ませれば良いのではないだろうか。全部叩き落とせればよいが、そうでなくとも《思考囲い》などでクリーチャーを握っていないタイミングがわかればOK。逆を言うと手札を覗いてクリーチャーびっしりの時はどうすれば良いのだろうか…やっぱり男は賭けに出た方が良いのかもしれない。

僕は友人にこのカードをやたらと勧めたことがある。完全にその場のノリで、反論する友人を論破する遊びをしたかっただけである。結局「ノンクリーチャーのコンボには1マナ軽いショーテル」という口説き文句に乗せられて友人はそれをサイドに積んだ。実際にトーナメントに出て、友人は「ANT」相手に2ターン目に力強くこれを叩きつける!《Force of Will 》も《目くらまし》もある完璧なハンドだ。…はたして相手が公開したのは、《ザンテイッドの大群》。友情2キル。正直、すまんかった。


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2014/05/21 「不死の隷従」


「場に出す(戦場に出す・戻す)」と書かれたカードは、同じような効果のそうでないものと格が違うことがほとんど。《死者再生》が手札ではなく戦場に戻していたら、マジック随一のブッ壊れカードだったことだろう。

逆に各種フェッチランドが手札に加えるという効果だったら、歴史に残る最弱ランドという愛されキャラになっていたことだろう。このあたりの調整は、ものすごく当たり前の事に見えるが、それが当たり前のこととして成り立っているマジックの完成度に、我々は今一度敬意を表した方が良いのではないだろうか。というわけで、今日は戦場に直接出すカードの中から、近年出たもので僕が最も可能性を感じた《不死の隷従》をいってみよう。


このカードは墓地からクリーチャーを戦場に出す、所謂リアニ系のカードである。であるのだが、ちょっと毛色が違う。白黒ハイブリッド3マナ+Xマナで、点数でみたマナコストXのクリーチャーを総釣りするのだ。

よく《再活性》なんかが「一本釣り」と表現されるが、それに対してこれは「地曳網」とでも言おうか。現実でも、カジキマグロなんかをこれで捕ろうとする不可能に近い。

《グリセルブランド》を釣り上げるのに本人より重いマナ域になってしまっては一体何がしたいのか分からない。一方、超高性能釣竿で海の底にいる小魚やらカニやらを採取するのも嘘な話である。それぞれに目標にあった道具を使うのは大切である。


というわけで、この地曳網では墓地に転がった軽い(0マナ~2マナ)のクリーチャーをまとめてドンと叩きつけて勝つために使用するのがメインの目的となる。普通に戦死して行った面々を釣って戦線再構築を狙っても良いが、やっぱりそこはコンボでしょう。

《火花の精霊》や《苛立たしい小悪魔》といった墓地に落ちてしまう面々を一気釣りしてライフを削る黒赤や、同様の狙いの白赤での5枚目以降の《再誕の宣言》として用いるというのが1つのアプローチとしてまず浮かんでくる。

後は浮かびそうで意外と浮かばないもので…X=2で《血の芸術家》数体と《カルテルの貴種》のようなサクリ台でガッツリドレイン、《ファイレクシアン・ドレッドノート》が共食いをする恐ろしい場を作る…などなど、面白い状況を作り出せることは確かだ。

0マナクリーチャーがズラリ並ぶことで勝てるというカードが見つかれば、最軽量の「地曳網」であるこのカードは化けるに違いないのだ。



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2014/05/20 「苦悶の結合」


「法の抜け穴」というフレーズ自体はよく耳にするものだが、実際にどんなものなのか目の当たりにした経験というものがある人間は一握りだと思う。それは方が抜け穴だらけではなくしっかりと整備されたものであるということの裏打ちであるわけだが、誰しも一度はそんな、法を犯したり破ったりする訳ではないのにそれらを超越する、「抜け穴」に憧れたことがあるのではないだろうか。いやないか。

マジックにおける法とはルールである。マジックのルールは、シンプルなものか始まり、そのカード群が多様性を増すたびにより深く深く進化していった。深化といった方が良いのかもしれない。このまだまだ底の見えないルールの海は、世界中のジャッジ達が探索し研究し真実を見つけ出すという行為が積み重なって生まれた偉大なものである。

時に、そこには全く未知の存在が登場することがある。これは世界中のジャッジを巻き込んで論争が起きる、一大クロスオーバー・イベントへと発展し、マジックのルールにまた1つ新たなページが加えられることになる。今日はそんなクロスオーバーの1つであった「幻のカスケード×ボンド・コンボ」を紹介しよう。


「アラーラ再誕」で登場した「続唱」。これにより、X呪文を唱えたらどうなるか?そんなもの、X=0に決まっている。では、《苦悶の結合》を捲った場合は?そんなもの…わからないです。Xマナは支払われていないが、追加のコストとしてXライフ支払うことは出来るのではないか・そこで17点ライフを支払えば、相手のライフを17点奪うことが出来るのではないか?という議論が世界中のジャッジとレガシープレイヤー達の間で行われたのだ。

ちなみに、17点というのは、残りの3点を《血編み髪のエルフ》で殴って削るという計算である。血編み、やっぱり強いよね。


僕もこの問題には興味があって、世界中のマジックに関する掲示板を覗いていた。「うちの大会ではOKだったぜ!」「レベル3ジャッジに聞いたけど無理みたいだぞ」「明文化されていないからなんとも言えないらしい」といった意見が飛び交う中、2009年7月11日の総合ルール更新でこれに対する回答が明確にルール化された。

「マナ・コストにXを含み、文章中でXの値が定義されてない呪文を、マナ・コストを支払わないで唱えるか、Xを含まない代替コストで唱えた場合、Xは0以外選べない」

世界中の皆「お疲れ様でした!解散!」


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2014/05/19 「生体融合外骨格」


先週から引き続き、「コンボ・ウィーク」をお届けしよう。

本日は、一見コンボとは関係なさそうなこちらの装備品から。早速解説していこう。

このカードの元になっているのは《融合する武具》。
元々はミラディンでヴァルショクの戦士達が用いた捨て身の最終兵器だったようだ。

装備すれば、コストに見合わぬ爆発的な戦力アップとなるが、
しかしこれをキャストオフすることは装具者にとって死を意味する。

メカニズムは不明だが、おそらく神経系と接続されて~系の類だろう。
この《融合する武具》を、ミラディンに現れたファイレクシア人達が自分好みに汚染した結果が、この外骨格だ。

元と比べると、コストが上がったのにパワーの上昇は3から2にダウンしているというダウングレード仕様だが、 本家にはなかった能力付与があるのがこちらのポイントだ。

そして得られる能力は、凶悪な能力である「感染」。
これを装備したクリーチャーは毒カウンターと-1/-1カウンターの形でダメージを与えるようになる。 プレイヤーに与えるダメージは純粋に2倍になったと言って良いだろう。

リミテッドでは適当な飛行クリーチャーにつけて殴り続けていればゲームが終わったのももう懐かしい話である。

ただし《粉砕》などで美味しくいただかれることがあったり、あと対戦相手のライフを数点まで削っておきながら戦線突破するにはこれの+修正が必要とかで一からコツコツ毒を与える(「ミラディンの傷痕」当時よく言われた「ライフ30点ゲーム」)ことになってしまったりするので全幅の信頼を寄せるほどのものではない。

さて、これを用いたコンボだが、やはりこういったカードを用いたコンボは統率者戦のようなフォーマットで狙いたいもの。 ジェネラルを《無情の碑出告》に設定すれば、初期ライフがたっぷりある統率者戦では全体一撃必殺をぶちかますことも容易い!

勿論、自分もまきこまれてしまうので、なんらかの手段で自分のライフを19点以下にしておこう。

あるいは、《歓楽の神、ゼナゴス》と組ませても面白いだろう。
パワーが3以上のクリーチャーに装備していれば、悪魔の毒々モンスターの誕生だ。

安全に運用したいなら、《最後のトロール、スラーン》と共に運用するのが良いだろう。

さあ、ワンショットキル・コンボの快感を味わってみよう。



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2014/05/15 「逢魔が辻」


まず、カード名が何を意味するのか。この《逢魔が辻》の解説はそこから始めなければならない。「逢魔時(おうまがとき)」という言葉がある。

これは昼と夜とが移り変わる時、所謂「黄昏時」を意味する。字面を替えて大禍時(おおまがとき)とも言い、昔の人はこの時間帯には魔物に遭遇する、あるいは大きな災禍を蒙ると信じていたのだ。これと同様に、逢魔が辻(おうまがつじ)は、ロクでもない目に遭う辻=十字路を指す言葉で、古い映画のタイトルにこれを冠したものを見つけることが出来た。

 この辻は、死者が蘇る現世と幽世の狭間の世界である。黒らしい、いつものどんなエキスパンションでも見ることが出来る墓地に落ちたクリーチャーを回収する手段である。

「メルカディアンマスクス」のこれは、任意の1枚をライブラリートップに戻す。黒1マナでドローを飛ばして回収、といったところだろうか。実質的なアドバンテージを得ているわけではないが、ドローの質を高める(ランダム要素を完全に排除する)という部分で質的なアドバンテージを獲得することが出来る。

所謂「チューター」の一種であるという捉え方も出来るだろう。リミテッドでは強力なクリーチャーを除去っても除去っても引いてこられるので実質的な詰みの状況を生み出しやすい、超強力な1枚である。

構築でも、《ブラストダーム》を連打させたり、墓地に落ちた傭兵を即座に拾ってリクルート(傭兵が持つ、ライブラリーから同族をサーチする能力)したりと隙のない攻めを行える渋いカードとして1挿しされているのをよく見たものだ。《ヴォルラスの要塞》および《霊安室》のリメイクであり、バランスのとれたカードである。

 さて、これを用いたコンボとなると、やはりライブラリートップにクリーチャーが置かれることをうまく用いたものになる。《霊気魔道士の接触》《野生の呼び声》《冥府からの誕生》《時間ふるい》など相性の良いカードは沢山。その中でも、《場当たりな襲撃》と《合成ゴーレム》との3枚コンボは強烈。ゴーレムがこの世→墓地→あの世→この世…と高速転生ループを繰り返し、その横で黒以外のマナを無限に発生させることが出来る。そのマナは、これまた《場当たりな襲撃》に注ぎ込んでライブラリー内の全クリーチャーをテーブルの上に並べよう。まさに《Incoming!》


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2014/05/14 「ダスクマントルのギルド魔道士」


ギルド魔道士サイクルは以前にも紹介した(《ラクドスのギルド魔道士》の回参照)通り、ラヴニカの10個のギルドを代表するサイクルであり、ハイブリッドの2マナ2/2、2色それぞれの同点数のマナコストの起動型能力を持っており、リミテッドでは勿論のこと構築シーンでも活躍したカードを含む良サイクルである。

「ラヴニカへの回帰」で、マジックは再びこのギルドの都に還ってきた。生まれ変わったラヴニカにも、このギルド魔道士の系譜は受け継がれていた。それが「地名ギルド魔道士」サイクルだ。その名の通りに、それぞれのギルドのゆかりの地をその名に冠するギルド魔道士である。ちなみに、名前は今僕がつけました。

先代がハイブリッドであり、その気になれば単色での仕様も可能だったに比べると…地名世代は正真正銘の多色・マルチカラーである。そのため、かならずギルドの2色を含んだデッキでなければ運用が出来ない。さらにその能力も、単色からマルチカラーの軽コストと重コストとに変更がなされ、その使い勝手は大きく変化したのだった。基本的には、旧世代の面々の方が強力であり、構築での活躍も見込めたものだった。

さて、そんな地名ギルド魔道士の中から、「コンボ・ウィーク」が紹介するのはディミーアを代表する《ダスクマントルのギルド魔道士》だ。これの二つ目、重い方の能力は無視して欲しい。コンボ目線で重要なのは、1つ目の軽コスト能力。「このターン、カードが1枚いずれかの領域から対戦相手1人の墓地に置かれるたび、そのプレイヤーは1点のライフを失う。」これ、なんともコンボ使いの好みそうな能力であり、それでいて2マナで設置できるパーマネントが3マナで起動できる能力と現実的でもある。

純粋に、これを起動したターンに20枚以上のカードを相手の墓地に送り込めればそれで勝利となる。また、能力は起動すればするほど相手が失うライフが増えていく。2回起動してからの《不可視の一瞥》で20点火力だ。

最強の相方は《精神クランク》。このカードは、《血の長の昇天》と併せた「ブラッドクランク」というデッキがスタンダードでも作られたため知られている方である。この《血の長の昇天》と《精神クランク》が揃った時の挙動を、《ダスクマントルのギルド魔道士》でも再現することが出来るのだ。コンボ始動にマナは必要になったが、「ブラッドクランク」のように《血の長の昇天》を稼ぐ必要がなかったり、本家では2枚が揃った上で対戦相手のライフを何かしらの手段で奪わせる必要があったが、このカードならば自身がクリーチャーであるため、アタックすればクランクが誘発する。

相手がノーガードならばパンパンと2枚並べて勝利である。マナコストも同じであるため、「変成」カードでサーチもしやすい。さあ、「ブラッド・ダスク・クランク」を作ってみよう。


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2014/05/13 「スカークの炎の司令官」


カードとカードの効果が噛み合う時、我々はそれを「シナジー」と呼ぶ。「synergy」とは、直訳すれば「相乗効果」。AとB、それぞれの長所が合わさることでより高い効果・結果を得られることを言う。マジックでも基本用語となっており、デッキを組む際にはこれを常に意識したいものだ。

ちなみにテレビなんかで「シナジー効果」って言ってるのを聴くと、ビジネス用語ではそれで通ってるんだろうけど物凄いこう、しっくり来ないというか。「相乗効果効果」って何やねん!と思ってしまう。

このカード間の「シナジー」が、相乗効果の域を超えたものになった時…即ち、即勝利クラスの効果をもたらす時、それをマジックプレイヤーは「コンボ」と呼ぶ。

かつては一撃必殺のものも、ちょっとオイシイ思いが出来る程度の物も全部ひっくるめて「コンボ」と呼んでいたが、今日ではそれらは「コンボ」と「シナジー」に分けられることとなった。

前置きが長くなったが、今週はそんな「コンボ」の新世界を切り拓く「コンボ・ウィーク」をお送りしよう。

一番手を担うのは、《スカークの炎の司令官》。ドッカーーーーーーーーーン!と、予測不能の一撃をぶっ放す驚異の司令官殿である。

ゴブリンを5体タップ(司令官殿ご自身を頭数に含んでよいので、実質4体)するというのは、数を並べてナンボのゴブリンデッキでは決して難しい条件ではない。それでもこのカードがトーナメント・シーンで使われなかったのは、自身にも10点という無視できないダメージが飛んでくる・起動するとか弱いゴブリンを4体失う・10点という数字が一撃必殺には物足りず中途半端である…といった側面からだろう。

自分はプロテクションで被弾しないあたりからも、ネタキャラとしての風格は備えている。焼け野原に司令官殿御一人。シュール。

そんなネタ専門・レガシーのゴブリンの所謂「オシャレ枠」が関の山な司令官殿だが、実はしっかりと一撃必殺コンボが造れるのであります。それも《ラースの灼熱洞》《双子神の指図》とのコンボで20点!とかそういうのじゃない。《モグの偏執狂》という、イラストからもイカレ具合がよく伝わる軽いゴブリンがいる。彼は、自身が受けたダメージと同量のダメージを、逆恨みで対戦相手に与えることが出来る。

ゴブリンであるため司令官殿の補佐を務めることが可能であり、司令官殿の炎に包まれながら、敵陣へと笑い狂い駆けて行く後姿。唯一人生き残った司令官殿は、彼らの最後の姿をその目に焼き付け、今日も火を起こす。



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2014/05/07 「Creature Guy」


GWも明け、忙しいヤツである。そう、僕はすっかり連休で体がなまってしまったヤツなのだ。しかし、これも仕方がないヤツな訳で。日に日に体力の衰えを感じるヤツではあるが、それでも頑張らなくてはあかんヤツなのよ。

「ヤツ」とは便利な言葉である。上記の序文でも、何がとは明言するわけではないが大体それが何を指しているのか伝わるという、不思議な言葉である。これ文章で視るよりは、実際の会話で感じることが多いだろう。「これってさっき言ってたヤツ?」とか、よく使うヤツでしょ?

マジックの世界でも、この言葉に関するカードが存在する。それがこの《Creature Guy》。「クリーチャーなヤツ」だ。

このカードは「クリーチャー」あるいは「ヤツ」という言葉により誘発する「ゴチ」を持っている。そもそも「ゴチ」とはなんぞや?これは「アンヒンジド」にて登場した能力で、何かしらの条件が満たされた時に「ゴチ!」と宣言することでボーナスが得られるというものだ。

「ゴチ」という名前は、原文=英語の「Gotcha!」に字面が近く(発音はガッチャ!。似ているっちゃ似ている)、また両社ともに「いただき!」という意味合いのスラングであるという共通点がある。うまくあてられた和訳である(と言っても日本語版が製品化されているわけではないが)。

この「クリーチャーなヤツ」は、その名を構成する2つの単語に反応し、墓地から手札へと帰ってくる。これを除去した後に「いやー厄介なヤツだなぁ」なんて口走ろうもんなら瞬時に反応して帰ってくる、とにかくシツこいヤツなのだ。

「ヤツ」以外にも「クリーチャー」に反応するのが手強い。「《謎めいた命令》キャストします」「モードは?」「1ドローと、クリーチャータップで」「ゴチ!」といった具合に、言わせるのは容易いものだ。たまにはこういう面白いヤツで遊んでほしいヤツ。

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2014/05/02 「金之尾師範」


センセイ・ゴールデン・テイル!「ゴールデンウィーク」最終枠は狐人の剣術師範だ。師範本人は2マナ2/1武士道1と、コストパフォーマンスは悪くない(平均的な3マナのクリーチャーと相打つことが出来る)ものだ。

しかしてこの師範の本領は、あくまで師範としての仕事にアリ。1Wタップで弟子を採用すると、その者の肉体はもとより精神の修練を開始する。基本的にはどんなものでも、《カーノファージ》や《ピョンピョン自動人形》にさえ、「武士道精神」を植え付ける凄腕の先生なのだ。彼の指導を受けた面々は、皆「修練の証」(訓練カウンター)を授かり、以後「侍」として、己が信ずる者のために戦うことになるのである。

この「修練の証」を、あやかしの術の類で奪われるようなことがあっても、弟子たちは武士道精神を失うことはない。それはもう、彼らの生き方である。師範の教えは、文字通り血肉となってその者が息を引き取るその時まで心の臓の奥底にあり続ける。

また、修練は積めば積むほど強くなるのは当然のこと。既に武士道1を備えた者でも、さらに剣術に磨きをかけることが出来る。何度も何度も繰り返し指導することで、《ゴブリンの英雄》でさえも

「武士道1 武士道1 武士道1 武士道1  武士道1 武士道1 武士道1 武士道1」

のような大剣客へと変貌を遂げ、妖魔《グリセルブランド》さえ一刀両断。金之尾の教えあらば、忠義無き悪漢など「なます斬り」にされるがオチよ。

師範自身も、片時も鍛錬を積むことを忘れない。弟子非ず時は、ひたすらにご自身の居合の閃きを磨かれておられるのだ。

この素晴らしき師範をもってしても《ブラストダーム》などに武士の道を説くことは叶わず。まことに残念極まる。

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2014/05/01 「黄金の願い」


願うことは万民の自由であり、僕らはより良きものを願う権利を有している。それが例え貪欲なものであっても、願うのは自由だ。

マジックにおいても、そんな万民の強き願いが魔術の域にまで昇華されたカードが存在する。「ここで○○があれば…」そんな願いに応えるべくして作られたのが「願い」サイクルである。

今週はゴールデンウィークに準えて、《黄金の願い》を紹介しよう。ゲーム外にある(現在のトーナメントルールではサイドボードのみを指す)ある特定のタイプのカードを、それぞれの色に応じたものをサーチできる―――それが「願い」サイクルである。

白の《黄金の願い》に割り当てられたのはエンチャントおよびアーティファクトだ。古来より、白はエンチャントに秀でた色である。強力なエンチャント、エンチャントを守る力、そしてそれらを消し去る光。

さらにはアーティファクトにおいても、エンチャントほどではないにしろ相性が良いカラーである。何せ主人公サイドの色だから、伝説のアーティファクトを求めて的なストーリーやってるんだから当然っちゃ当然の話。

そんな相性の良い2つのパーマネント。これらは特に、特定の相手に「ブチ効き」なカードが多いものだ。

5秒間、目を閉じてそういったカードを思い浮かべて欲しい。…ほら、尽きないでしょ。そんなズラリと揃った世界の名銃の中から、今まさに必要な一発をブチかませる一丁を好きなタイミングで手に入れることができる。相手の弱点を的確に突き屠り去るワンショットは、俗に言う「シルバーバレット」の域を超えている。「黄金銃」とも呼ぶべき必殺の破壊力だ。

…そんな便利なカードなのに、全く使われていませんね。これが現実。重すぎる。お膳立てに5マナのソーサリーは、重すぎる。

5マナでサーチしてきたそれらが、2マナ以下である可能性も低い訳で。結局1ターン犠牲にしてソーサリーアクションで、「次に僕はこれを使います。急いだ方が良いですよ」と言ってるようなもんである。

開き直った相手は次のターンで全力総攻撃をフルタップのあなたにしかけてくることだろう。僕は友人が《崇拝》を手札に加えたのを見てからの《陰謀団式療法》で叩き落とすのが好きでした。

かと言って、これが3マナとかだったらそれはそれで「壊れ」と言われてしまうところ。何とも調整というやつは難しい。

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2014/04/30 「金箔付け」



「ゴールデンウィーク」ど真ん中に発売される「ニクスへの旅」には、触れるもの皆黄金にかえてしまう、ギリシャ神話のミダース王をモチーフとした《黄金の呪いのマカール王》が収録される。彼は「天啓」で、クリーチャーを一体追放し無色マナを生み出すトークンに変えてしまう能力を持っている。この能力そのものの1枚が、今日の1枚《金箔付け》である。

フルスポイラーが出た段階で、『「神々の軍勢」は「テーロス」に比べると少々抑え目の調整が為されているエキスパンション・セットである』という共通認識がプレイヤー達の間にはあった。その具体的な例として、《英雄の破滅》とこの《金箔付け》の差が多くあげられたものだ。

方や、3マナにしてインスタント・タイミングで対象にとれるクリーチャーならばなんでも破壊、さらにはプレインズウォーカーまでその射程範囲であるという応用力の高さ・腐りにくさが評価されメインから問題なく複数枚投入された万能除去カード。それに比べると、シングルシンボルとはいえ4マナで、しかもソーサリー。万能さはなくクリーチャーにしか撃てないという不器用さ。同じ色、レアリティでこの差は、「パワーダウン」と言う他ない。

それだけのパワーダウン経た上で得た効果は、まずはクリーチャーを追放すること。これは死亡時に誘発する能力を持ったクリーチャー、墓地からの再利用などを防ぐ点で破壊に対して勝っている。そして、このカードが属するのはテーロス・ブロックだ。この世界には「破壊不能」を基本能力として持つ神々が15体も存在する。

彼らとまみえた時、神々には英雄を破滅させる程度の力では対抗できない。しかし、テーロスの死後の世界において重要な役割を与えられた金であれば、彼らに抗うことが出来るという訳だ。ブロック構築ではこちらを重要視する可能性も…ある。全てはメタゲームだ。

そして、地味に「金」という名のアーティファクト・トークンを生み出すのもポイントだ。これは無色1マナを生み出すことが出来るため、どうせ使うならばこれが生きるデッキで使用したいものだ。4ターン目にクリーチャーを除去し、返しのターンで6マナのビッグアクションに繋げることが旨味となる構築をすれば、見た目以上の活躍をするのではないだろうか。

ちなみに、何かのコピーでない非クリーチャー・トークンを生み出す初のカードである。このトークンはクリーチャーではないので、「居住」でポコポコ増産したりは出来ないのが残念だ。《倍増の季節》があればなんとなく成金気分。


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2014/04/28 「黄金の若人ラクシャ」



この日本に住む者ならば、4月の末から5月の頭に起こるイベントを誰もが知っている。「黄金週間」という名のそれがやってくる。

当コラムも、5/3から5/6までの間お休みをいただくことになるのだが、その一週間に先駆けて、今週は「ゴールド」にまつわるカードを紹介していこう。その名もズバリ「ゴールデンウィーク」。もうお休みに突入されている方、連休中はマジック漬けや!という方、皆でこの連休を楽しもうじゃありませんか。それではスタート

《黄金の若人ラクシャ》は変則的な猫の「ロード」だ(「ロード」が何かについては、2014/03/17からのロードウィークをご覧ください)。平時は7マナ3/4警戒という、「レジェンド」でもここまで「キツい」クリーチャーおらんぞという悲しいサイズ。

これが一度武器を手にしたのならば、レオニンの若き王は誇りと共に本来の腕力を取り戻す。5/6  警戒・二段攻撃…一撃で10点を弾き出す、王と呼ぶに相応しき驚異のスペックだ。

そこに装備品のパワー修正値が入ると…フェイタリティ溢れる一撃だ。さらにはその溢れる威光は王のみならず、彼の家臣達(猫)にも驚異の膂力を付与する。+2/+2と二段攻撃という強化は、歴代ロードの中でもぶっ飛んだ修正値である。

2マナ2/2飛行の《レオニンの空狩人》で8点のダメージを叩きだせるのだから、正直なところ「勝ったやろ」というやつだ。


一番相性の良い装備品は《稲妻のすね当て》になるだろう。更地から突然の10点は鼻水も飛び出るインパクトを与えることだろう。また、ミラディンといえば各種《○○と○○の剣》なんて装備しようものなら大変なことになる。オーバーキルも甚だしいが、一度はやってみたい夢のアタックである。


白の装備品と猫が入ったデッキで使いたいところだが、そういったデッキは基本的に軽量のウィニー系になってしまい、7マナのラクシャ様が場に出る前に勝負をつけるデッキとなることだろう。手札で腐ってしまった王の姿は見たくない。ならばビッグマナ・ランプ系で!と思っても、そういうデッキでは元から強いクリーチャーを採用するのでお呼びでなかったり。どうしたものか。


最も王の恩恵を受けるカードは《焦熱の火猫》。1枚で18点叩き出す、脳内麻薬分泌確定の一撃。やはりこういう一撃ロマンデッキで、カジュアルに遊んでこその1枚なのだろう。

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2014/04/25 「幻視の魔除け」



さて、今週は実はあるテーマに沿った5色5枚のカードを紹介しているのにお気づきだろうか。今週は「シンボル・ウィーク」。形を持たない概念や、信仰の対象となるようなシンボリックな図形が描かれたカードを紹介してきたが、どれも独特のクセを持った面白いカード達だった。そしてトリを務めるこの《幻視の魔除け》も、彼らに負けず劣らずの一癖二癖ある1枚である。

《幻視の魔除け》は、「ミラージュ」にて登場した3つの効果から1つを選んで使用する呪文、「魔除け」サイクルの「ヴィジョンズ」版の一員である。この魔除けというのは、1つ1つの効果は実は薄いものである。手札を消費してまで・または払ったマナに見合わない限定的な効果しかもたらさない。

しかし、それが必要だったり十分に効果的な盤面は存在するため、「もしどれかのモードが腐ってしまっても、他が生きてくる」という気休め程度の保証が約束されている。

使い勝手は決して良い訳ではないが、やれることが増えるというのは純粋に利点である。それでは、この《幻視の魔除け》を実例に丸さを解説してみよう。


第1のモード:ライブラリーを4枚削り取る。長期戦の末、相手のライブラリーが後わずかだった時・相手が各種「教示者」やライブラリー操作で積み込んだ有効牌を引かれたくない時・あるいは自分のライブラリートップが思わしくない時・自分の墓地を肥やすことにメリットがある時


第2のモード:土地タイプAを持つ土地を全て基本土地タイプBに変更する。《沸騰》《沸騰する海》が飛んできた時・単色デッキ相手に1ターン行動を制限したい時に・青単パーミッションデッキに1枚挿しした《生命吸収》で勝負を決めたい時・かつてのルールでは、基本でない土地に基本土地タイプを与えることも可能だった(今は「ウルザの」を持つ土地のみ可能)


第3のモード:アーティファクトをフェイズ・アウトさせる。「親和」のようなアーティファクトが中心の相手の計算を狂わせたい時・自らの《無のロッド》などを守りたい時・《ファイレクシアン・ドレッドノート》に対する5枚目以降の《もみ消し》が欲しい時に。レガシーが隆盛を見せ始めた頃に流行った「スタイフル・ノート」では《もみ消し》であり除去呪文に対する《対抗呪文》であるという渋い活躍を見せていた。


いかがだろう?どれも微々たる力であることには違いない。それぞれの1つのモードで独立したカードだったら、使用する気にならないレベルの1枚である。ただ、器用なんである。「スタイフル・ノート」に入ったこれが、ライブラリーを掘り返した「ドレッジ」の息の根を止めたシーンを見たことがある。

器用貧乏なんて言葉もあるが、器用さで生き残っている層だって存在しているのだ。

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2014/04/24 「ムラガンダの印刻」



言わずと知れた「バニラ・アンセム」。「バニラ」とは能力を何も持たないクリーチャーのことであり、「アンセム」とは全体強化エンチャントの通称である(《栄光の頌歌》のカード名より)。

昔は《十字軍》からとって「クルセイド」と言ったりもしたんだけどね)。何も能力を持たないクリーチャーであれば、+2/+2修正を与えるという破格のエンチャントである。実験的なカードの大集合となった「未来予知」にて、所謂「未来枠」の1枚として登場したが、「ムラガンダ」自体は滅んだ太古の文明であるというのも面白い。未来からやってきた超古代の遺跡、パラドックスをはらんだ一文であり味わい深いと思うのは僕だけだろうか。


この印刻の力をフルに使うのならば、バニラ・クリーチャーが並ぶデッキがベストであるのは言うまでもない。しかし《カロニアの大牙獣》みたいな優秀なバニラそうそういないため、《ネシアの狩猟者》なんかを投入せざるを得ないがそれではデッキパワーが…となってしまう。

そのため、最も良い運用方法は「トークン」と絡ませることだと思われる。トークンといっても、勿論能力を持っていてはダメ。純然たるバニラを、小粒でも良いのでばら撒けるカードを採用すべきだ。

例えば…《ゼンディカーの報復者》なんか、良いかも。土地をガンガンダンプして、報復者出してさらに土地を置いて全体強化してムラガンダ!…って、報復者が自身でムラガンダの代わりになるものを内蔵していることに気付いた。これはナシで。そもそも1枚で勝てるカードのバックアップしてどうする。


では続いては…「リス」なんてどうだろう。《錯乱した隠遁者》《木の実拾い》《リス番》《リスの巣》でかわいいリスに囲まれて、太古の力でフルパワーマイティビーストに生まれ変わらせてワンショットキル!…Over Kill?Sorry…


結局、使おうと思えば大げさでオーバーキルこの上ない大味な1枚であるし、どう組んだってガチにはならない。

しかし、マジックにはそういった方向を突き詰めるという遊び方がある。僕はこのゲームのその懐の広さこそ、このゲームが最高である理由だと思っている。印刻にも「楽しんでナンボ」という一文が記されていることだろう。

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2014/04/23 「語られざる印」



 かつて《憎悪》と呼ばれる強力なインスタントがあった。ライフを支払った分だけクリーチャーのパワーを増長させるそれは、5マナと重いにもかかわらず「全力で使用すれば人を殺せる」という部分が評価され、1ターン目に1マナパワー2クリーチャー、2ターン目にマナブーストを全力で使用して全力《憎悪》で一撃必殺という、ビートダウンのようなコンボデッキ「ヘイトレッド」を生み出した。

自分のライフは最低限1残っていてれば良い、相手のライフが先に0になれば勝ち。この死を恐れぬ戦闘スタイルは「スーサイド○○」という言葉を生み出した。多くのマジック少年たちが、この危ない魅力にとりつかれたものだ。


《憎悪》の後も数多くの自爆スイッチ的カードが量産された。「ヘイトレッド・フォロワー」とでも呼ぶべきそれらは、偉大なる先輩を超えることは果たして叶わなかった。数字を1つ間違えるだけで取り返しのつかない強力カードになってしまうジャンルである。開発はかなり慎重に調整に調整を重ねたことと思われる。そんな後発組のうちの1枚がこの《語られざる印》である。

ライフを3点ペイすることで、クリーチャー1体に+1/+1カウンターを配置することができる。3点払って打点が1上がると考えると、パッと見大損かもしれない。しかし全くそんなことはなく、置いてあるだけで戦闘を円滑に進めることが出来る、リミテッドでは大変優秀なエンチャントだった。本当にライフを払うかどうかはわからないが、「その気になればできる」という状況を作り上げているだけでこのカードは仕事を完了している。

目に見えているもので一方的に討ち取られる可能性があるのに、誰がアタック・ブロックするものか、と相手に躊躇させればその時点で「勝ち」である。


2/2が地上戦の基本サイズだった「オンスロート」ブロックのリミテッドにおいて、3/3以上をマナ無しで増産できるこの印は圧倒的な力を持っていたが、しかし構築においては2/2が3/3になって嬉しいとかそういう環境じゃなかったことが彼の存在を「リアル語られざる」にしていた。これにはこのカードの元になった《魂飲み》もガッカリしていることだろう。


そして語られてこなかったこのカードの現在はどうか、というと実は「激渋」な1枚として一部のユーザーからの高評価を獲得している。統率者戦において《荒廃のドラゴン、スキジリクス》をジェネラルにしている場合に、「パワー増量一撃必殺」系カードの候補にいれるとなかなかいい仕事をすると思うよ。お試しあれ。


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2014/04/22 「Red Scarab」



 「スカラベ」とは、俗に言う「フンコロガシ」のことである。正式な和名は「タマオシコガネ」、名前の通りコガネムシに近い甲虫類の総称であり、彼らの最大の特徴は通称の通り「糞を転がす」ことである。彼らの主食は草食動物の糞であり、これを丁寧に丸めて塊とする。

そして逆立ち状態で後ろの脚をうまく使ってコロコロと糞の球を巣穴へと転がしていく。巣穴に運ばれた糞には卵が産みつけられ、幼虫はこの糞の球の中身を餌として成長し、糞の球の中でサナギ・成虫と成長して外の世界へと出てくる。

この彼らの生活史を視た古代エジプト人達は、彼らが崇拝する太陽神・ケプリとスカラベの共通性を発見し、彼らを同一のものであるとみなした。太陽という球体が転がることで朝と夜が訪れ、その太陽から自分自身を創造する、この小さな甲虫が神の使いであると崇められたのだ。

古代エジプトでは、このスカラベをモチーフにした金属や石の加工品が多く作られているし、1つのシンボルとなっている。


マジックの世界にもこのスカラベは存在し、古代エジプト同様に1つのシンボルとして愛されているようだ。「アイスエイジ」にて白の1マナオーラサイクルとして登場した《~ Scarab》。

5色に対応した対策カードとして用意され、いずれも「エンチャントされているクリーチャーは、~のクリーチャーによってはブロックされない。」「エンチャントされているクリーチャーは、対戦相手1人が~のパーマネントをコントロールしているかぎり、+2/+2の修整を受ける。」という2つの能力を持っている。~に当てはまるのは色だ。その対赤ヴァージョンがこの《Red Scarab》。


タフネスが2上がるのは対赤にはありがたいボーナスだ。大抵の火力の射程圏外に逃れることが可能だ。さらにパワーが上がりブロックもされなくなるのは、ダラダラ相手をしていると火力を全力で放ってくる赤相手にゲームを少しでも早く決められるので評価できる。


とは言え、オーラの弱点である「つけるタイミングに合わせて除去を撃たれて地獄を見る」という展開に比較的なりやすいのは事実だ。

じゃあ、呪禁とかプロテクション赤持ちにつけるか…って、もうすでに火力耐性あるがな!しかも、相手がフルバーンで赤いパーマネントを全く出してこなかったら?というか赤のクリーチャーって基本的にブロックに回らんやつらでしょ。…こんな感じで、不要とされる不遇な1枚である。イラストは太古の宗教アイテム感があっていいんやけどね~

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2014/04/21 「Glyph of Destruction」



 黎明期ならではの、非常に変わり種な1枚。そもそも、この《Glyph of ~》は5色にまたがるコモンサイクルである。

そもそもGlyphという言葉は、「標識」や「字体」という意味がある。字体とは、図形を一定の文字体系の一字と視覚的に認識する概念、らしい。平たく訳せば「シンボル」ということになる。

これは《破壊の標識》とでも訳せば良いだろうか。いや、それだと《破壊の標》とややこしいことになってしまうか?どうでも良いか。

この色々な意味が込められた字体の呪文は、それぞれの色らしい効果をもたらす…「壁」を対象として。「壁」。「壁」である。紛うことなき壁であり、広義で「防衛」を持つクリーチャー達を含んだりはしない。「防衛」が誕生して、一時期は数を大きく減らしたものの、現在でもしっかりと基本セットなどに数枚収録され生き延び続けている部族、「壁」。所謂「ロード」などの部族支援クリーチャーなどはいないものの、古き時代には妙に「壁」にまつわるカードが存在する。Glyphサイクルもそんな妙なカードの1つで、このDestructionは


あなたがコントロールする、ブロックしている壁(Wall)1体を対象とする。それは戦闘終了時まで+10/+0の修整を受ける。このターン、それに与えられるすべてのダメージを軽減する。次の終了ステップの開始時に、それを破壊する。


というもの。何もかもが現在の呪文から浮世離れしているのが凄い。1マナでパワー+10という文字通り桁違いの修正を与えるパワフル・インスタント。後にも先にもここまでのカードは登場していない。

そして、このパワーを10も上げるパワフル・インスタントは、ブロックに参加している壁にしか使用できない。つまり、完全に守備専用のカードである。これが制限なく壁のパワーを10上げていれば…《ローリング・ストーンズ》がもっと評価されていたかもしれない。

そししてその裏で、壁が受けるダメージを完全カット。これで壁のタフネスが低くても安心である。で、あるのだが…何故、ダメージ軽減効果をつけておきながら、その壁をターン終了時に破壊してしまうのか??訳が分からん。一瞬、訳が分からん戦闘力を誇るクリーチャーを生みだして、それで満足もう飽きたってことなのだろうか。

「俺たちは使い捨てのクリーチャー、用が済んだらポイなのさ」どうせポイするなら、《投げ飛ばし》ておくことをオススメする。

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2014/04/19 「ヤヴィマヤの火」


ダークホース。

どんな世界にも、それは潜んでいる。
想定外の実力を発揮し、下馬評を覆して一気に玉座へと上り詰める。

勝負の世界は、これがあるから面白い。

そして今度は追われるものになった王者が、並ばせまいと奮闘する姿もまた面白い。
頂点がある限り、この戦いの輪廻は続く。Endless War.

本日紹介する《ヤヴィマヤの火》はまさしく上記の道を駆け抜けていった漢の1枚である。

カードとしては、緑が加わりマルチカラーとなった《熱情》である。
3マナで自軍全体に速攻を付与する、効果範囲の広いカードではある。

しかし、付与されるのは速攻だけで、クリーチャーのサイズが上がるわけではない。

ただでさえ「元から速攻持ってるヤツばっかだから使わんよ」と言われた《熱情》がマルチカラーになってもその効果が同じとあっては…と、発売当時は思われていた。

一応、2枚目以降は腐ることがないように設計されている。
とは言え3マナ払って+2修正だけではね…とも言われていた。

しかしながら、「インベイジョン」が発売されるや否や、
このカードは「ネメシス」の賞味期限(消散)持ちの緑のカードとの相性を買われて赤緑ビートダウンで採用されまくったのだ。

《極楽鳥》《ラノワールのエルフ》からの2ターン目《ヤヴィマヤの火》、3ターン目《ブラストダーム》は驚異的な殺傷力を誇ったものだ。

マルチカラー復活がテーマであった、エキスパンションセットであり、始祖ドラゴン達などのインパクトの大きいレアカード達の影に隠れていたこのアンコモンこそ、「インベイジョン」後のメタゲームを決定づけた伏兵であった。

一気にスターダムにのし上がり、環境を「Fires」の赤緑2色に染め上げてしまった。
君臨したならば、次は迎え撃たれるが王者の宿命。

同型対決では、この《ヤヴィマヤの火》よりも盤面に触れられる有効牌を一枚でも多く引いた方が勝利するという方式が発見され、王者に牙を剥く「No Fires」なるデッキが、メタゲームにおいて本家よりも高い地位を確立した。

その状況は、僕が初めて目の当たりにしたRise and Fallだった。

「英雄vs怪物」において与えられたフレイバーテキストを読めば、この火で何故速攻を得られるのかがよくわかる。

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2014/04/18 「オルゾフのギルド魔道士」


「ニクスへの旅」のプレビューもいよいよ大詰め。今のところ個人的に最大のヒットは、白黒の小神であるエイスリオス様。ああいうエンチャントが大好物で大好物で。白黒という色の組み合わせも好きで、この所謂「オルゾフカラー」のビートダウンやミッドレンジなんかはもう最高。

パワーが高い訳ではないのに着実な打撃力があって気が付けばダメージレースを逆転していつの間にか相手を詰んでいる、そんな白黒の戦術は実に「マジックをやっている」感じがして馴染むのである。


《オルゾフのギルド魔道士》は、そんな白黒の楽しみを僕に改めて教えてくれた1枚だ。これぞ白黒の体現者である。2マナ2/2という序盤から殴っていける最低限のサイズをしっかりと持ち、更に2つの能力を持つハイブリッド・サイクル、ギルド魔道士。彼らの中でも、《オルゾフのギルド魔道士》は一見地味に見える1枚である。

他の連中に比べれば、これが行えるのは全てのプレイヤーのライフ1点を+あるいは-させるだけである。たったそれだけのことなのだが、それだけのことが僕には十分に見えた。

3マナでライフ1点回復はさすがに微々たるもののように思えるが、例えばこれが2点だったり2マナだったりしたらどうだろう。僕はそれこそ「壊れ」の誕生だと思う。何故なら、対になる黒の能力にもその数値が反映されるからだ。2マナで1点・3マナで2点相手のライフを削ることが出来る2マナのクリーチャーが弱い訳がない、危ない強さである。という訳で自重に自重した結果がこの能力。

僕は良調整だと思っているし、これでも十分に戦っていけると確信している。効率が悪いとは言え、マナさえあれば相手のライフを削り自らの命を長引かせることが出来ることには違いない。何度もライフが「あと1点」足りなくて負けたことがある。それに対するアンサー、と言い切るには弱いが、「足り得る」1枚であることには違いない。

手数は多いに越したことがない。《闇の腹心》でライフがピンチでもなんとかなる。ライフが少ない相手に《黒焦げ》を撃つことを躊躇させる。2マナクリーチャーにしては十分な仕事である。さて、モダンのデッキを組むとしよう。

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2014/04/17 「稲妻の謎」


祝・再録。「テーロス」にて《マグマの噴流》が返ってきた事例もあるため、他にも同様のケースは起こり得たわけで、この再録も読めた話ではあった。頭の片隅にも出てこなかったことなので、再録情報を見た時には「おぉ」よりも「悔しい!」という思いの方が強かった。

一体何と戦って負けたのかはわからないが、負けは負けだ。次の再録こそは読み切ってやる。これはある一人の男の静かな戦いである(完)


《稲妻の謎》は火力としてはそこそこ重い。インスタントとはいえ5マナは、結局のところ構えながら何か他に出来るマナではない。それだけの重めのコストを支払うのだから対価も高い…とは言い難い。全くない時もあるし、意味不明な効率の良さだったりといろんな意味で「化ける」1枚である。

まず占術3を行い、トップを整えたらそれを公開してそのマナコスト分ドカン。赤に時たま登場するギャンブル系呪文の火力バージョンだ。この呪文が与えることが出来るダメージの最高値は15(1000000という学説もある)、最低値は勿論0。デッキに重いカードが多ければ多いほどその期待値は高まることになる。つまりは、そういうデッキで使ってくださいな1枚である。

5マナの呪文を問題なく運用出来、かつ公開する=次のドローで手札に入る重すぎる呪文をしっかり使えるマナベースが必須となってくる。しかしそれらの軽いマナブーストが多すぎると、今度は占術で見える3枚が2マナばっかりで謎でも何でもない!なんて展開も頻繁に起こるだろう。一番難しいのはバランスだ。


あるいは、先代である《うつろう爆発》先輩の水増し要員として「ドラコ爆発」系のコンボデッキを練った方が良いのかもしれない。

《稲妻の謎》は《うつろう爆発》と違ってクッソ重たいカードがトップに残ってしまう。これを引いてしまっても大丈夫なように《紅蓮術》で投げ捨てたりする二の矢を用意するのも大事なことだ。むしろ、所謂「SnT」と呼ばれる青赤エムラクールぶん投げデッキの二の矢としてこのカードを使ってみるのはどうだろう?《罠の橋》で攻撃が封じられても、一撃で15点叩き出せれば勝ちは近いぞ。

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2014/04/16 「彩色の宝球」


便利さの裏側には、理解しがたいテクノロジーが潜んでいる。今や3D映像や超絶グラフィックゲーム機なんて当たり前の様に日常に存在するが、僕はピコピコ電子音とドット絵で作られた黎明期のゲームの仕組みの欠片すら理解できないし、十分に技術の頂点だと思っている。

マジックにおいても、「当たり前の便利さ」の裏側には難しいルールがある。それを知っておくのと知らないのでは大きな・無視できない差がある。今回はそんなカードを紹介しよう。


《彩色の宝球》は、元々は《逆刺の六分儀》だった。この使い捨てのマナフィルターは、当時も事故を軽減してくれるものとして愛用された。しかしこの六分儀は、カードをドローするタイミングが次のアップキープの開始時というタイムラグを持っている。

このラグはしばしば、プレイヤーにドローを忘れさせた。せっかくの便利なカードもこれでは問題児である。そのため、ラグを解消するように上方修正されたのがこの《彩色の宝球》である。その結果、世にもややこしいカードの誕生となってしまった。


カードとしては先代の六分儀同様、使い勝手の良い1枚である。その特性やアーティファクトであることから、「ストーム」や「親和」などで活躍したカードである。

現在進行形では、モダンの「トロン」において、無色マナしかでないウルザランドを置きながら《紅蓮地獄》などの有色呪文を唱えるサポートをしてくれる必携の1枚となっている。


さて、これの何がややこしいのかと言うと…六分儀で問題となったドローのラグ。これが解消されたのは素晴らしい。しかし、ドローとマナを加えることが同時に処理されるようになったおかげで…他に類を見ない珍しい状況を生み出すカードとなった。

このカードの起動型能力はマナ能力であり、そしてカードを引くこともその能力の一部である。世にも珍しい、スタックに乗らずにカードを引くことが出来る1枚となっているのだ。

そして、その珍しい能力が知っておかなくてはならないややこしさを秘めている。例えば、呪文や能力があなたにマナの支払いを要求したとする。それを支払う際に、あなたはこのカードから発生したマナを支払いに充てようとマナ能力を起動した。そしてドロー。

ここだ。ここに注意しなければならないポイントがある。実はルール上、他の呪文や能力を解決している最中にカードをドローすることになった際、それは呪文が解決されるまで見ることが出来ないということ。裏向きに伏せることがルールで決まっているのだ。

なかなかない状況だとは思うが、呪文や能力の解決中に何か他の能力などによってドローが引き起こされた場合は注意するようにしたい。


また、「親和」で用いる際にも注意したい。《物読み》が手札にあり、戦場にはこれを含めてアーティファクトが4つ。ここで先にこのカードから青マナを生み出してから《物読み》を唱えると、必要なマナはUと①。これが《物読み》を唱えると宣言してからこのカードを起動してマナを出すと、必要なマナはUのみ。当時はこれらのルールを知らないことが、よくもめる原因になっていた。これからも気を付けていきたいものだ。

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2014/04/15 「灰鱗のガリアル」


《シャノーディンのドライアド》《疫病甲虫》《ゴブリンの山岳民》から連綿と続く1マナで自らの色の基本土地に対する渡りを持つクリーチャーのサイクル。青は「ラヴニカ:ギルドの都」にてこの《灰鱗のガリアル》を投下してきた。

あとは白が1マナ1/1平地渡りを用意してくれればサイクル完成なのだが、一体いつその時が来るのだろうか。このグランド・サイクルが出揃うのを待っているのはワイだけではないはずや!

 カードとしての評価はこんなもん。はっきり言って大したカードではない。イラストは大好きだけどね。ところで「ガリアル」ってなんなのか?と思われた方はいらっしゃるだろうか。それでは解説いたしましょう。

 ガリアル…否、「ガビアル」はパキスタンやバングラデシュといったインド付近の深くて流れの速い河に生息している、6メートルにもなる大型のワニの仲間である。一般的にガビアルと呼ばれるのは、インドガビアル(学名Gavialis gangeticus)のことを指す。

このワニはカードイラストに見てとれるような、細長い吻(口の部分)が特徴である。この先端に鼻があるのだが、オスはこの部分がコブのように盛り上がる。このコブが、壺=現地の言葉で「ガラ」に似ているため、現地では「ガリアル」と呼ばれている。これを誤表記したのが「ガビアル(Gavial)」であり、ラテン語で書かれた学名および日本ではこれをそのまま用いており、英語では現地での呼び名と同じく「ガリアル(Gharial)」と呼んでいる。

そのため、このカード名はガリアルとそのまま訳してもガビアルという日本風に表記してもどちらでも間違いではない。ガビアルの吻は水中で素早く動かして魚を捕らえるのに適している。彼らは他のワニよりも水中に対する依存度が高い。

 一体、何の解説なのだろう。何気ない1枚のカードにも、調べてみれば色々と知れることが詰まっているんだよ、と綺麗にまとめて誤魔化したいと思う。


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2014/04/14 「カマキリ・エンジン」


「安かろう悪かろう」という言葉がある。「どうせ買うなら高いものを買った方が良いよ」という先輩からのアドバイスをいただいたという話もよく耳にする。


往々にしてこれは正しい。僕も思い切って高いものを買って良かったと思うことが多々ある。一方で、金銭的な問題で安いもので済ませてしまうことだってある。常にリッチな気分が許される訳でもないし、我慢あってこその「はじけの時」だとも思う。

 そして、安いもので間に合わせたつもりが「意外な掘り出し物」がみつかることもある。個人的に《カマキリ・エンジン》はなかなかの掘り出し物だ。まずはこのカードについて解説しよう。

 5マナ3/3、2マナ支払うことで飛行か先制攻撃をターン終了時まで得ることが出来る。どの色でも使えるアーティファクトクリーチャーであるため、《チドリの騎士》に比べるとコストは割安である。

しかし、「安かろう」という訳で、高級品の《チドリの騎士》が常時備えている能力をコイツはターン終了時まで得るために2マナの追加予算が必要になってくる。確かに、相手がクリーチャーを出していなければそれらの能力は必要無い訳で、平地が2枚無くても場に出せる点が勝ることもある。しかし往々にして、《チドリの騎士》の方が優秀なのは言うまでもない。

 さらには同じマナコスト・アーティファクトクリーチャーであり、能力も似ているが自分のみならず他者に付与することもできるという超上位互換である《ゴーレムの職工》が登場してますます肩身の狭いカードになってしまった。向こうは先制攻撃を得られない?サイズで負けちゃうよ…

 さて、このカードのどこが掘り出し物なのか。答えは「イラストが最高にかっこいい」「名前がたまらない」というもの。カマキリにときめかない男の子はいないでしょ。能力がどうとかじゃないから。「男は見た目じゃない」と言うが、「見た目が全て」である時だってあるのだ。

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2014/04/10 「旅の準備」


着替え・下着・歯ブラシ(基本ホテルにあるよね)・人によっちゃ薬の類・デッキ?サプライ?トレード用のファイル?そう、GP前の準備である。

勿論財布を忘れちゃいけない。マジックは年に数度の旅をさせてくれる趣味だ。もうすっかり手慣れたベテランも、初めての遠征になるルーキーも、皆抜かりない様に最後まで確認を怠らずに!


《旅の準備》は、これから戦闘の旅に出るクリーチャー達にささやかな備品を提供する。+1/+1カウンター1個というのはそれほど大きな強化ではない。しかしこれが、クリーチャー2体に置くことが出来るとなると話は変わってくる。

さらにフラッシュバックで再準備可能となると、これは超強力と言ってしまって問題のないカードとなる。回避能力の高い2体をガッシリ強化して一点突破を狙っても良し、トークン生成カードで生み出した軍団を手広く強化して面攻撃をしかけても良し。リミテッドではこれがあるからこそ緑白をやるというレベル、アーキタイプを生み出した1枚である。

これがコモンなのだから恐れ入る。「イニストラード」の緑と白は軽くて優秀なクリーチャーに恵まれていた。僕は当時延々とこの「トラベル」と呼んでいたアーキタイプをやっていた。そしてこれが一番勝てるアーキタイプだった。簡単ソーサリーマジックは僕のような集中力がないプレイヤーには有難い。


このカードは何も全てが最高のお手軽カードというわけでもない。バウンスや除去には依然として弱い、感覚で言うとオーラに近いカードである。簡単に殴り勝てるが、簡単に相手にアドバンテージを獲得されることもある。

今は本当にフラッシュバックすべきか?展開を優先した方が良いのか?そういったことを焦らずにじっくり考えて使ってこそ強い1枚であると僕は思っている。それでも簡単な方なのだけどもね。


皆も旅に出る前の準備にはじっくり時間をかけて欲しい。万全の状態で、GPでお会いできることを楽しみにしております!申し訳ないですが、今週の更新はここまでになります。また来週!

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2014/04/09 「タックル蛆」


名前勝ち。以上。で、終わっても良いレベルのハイセンスな日本語訳。大好きな1枚である。ちなみに、ルールテキストが死ぬほどややこしいのでザックリ解説しよう。


《タックル蛆》はクリーチャーに寄生する。その宿主をジワジワと弱らせる

宿主はいつかタフネスが尽きて死亡する。すると《タックル蛆》は次の宿主を求める。行き先を決めるのは犠牲となったクリーチャーのコントローラー

場からクリーチャーがいなくなってしまうと、《タックル蛆》はオーラでなくなり、最後の犠牲者のコントローラーに寄生する


たまらなくややこしくしそれでいて効果は緩慢。おそらく、トーナメントシーンで目にすることはないし、統率者戦などのカジュアルなゲームでもせいぜいクリーチャー1体を食らい尽くせば関の山である。

ただしタフネスが2以下のクリーチャーばっかりを相手に、ノンクリーチャーのコントロールで使えばそれなりに効果はある。《滅び》を使えば一発で相手本体に寄生させることも可能だ。

面白い1枚であるため、「時のらせん」にてタイムシフト再録候補に挙がったが、最新のルールテキストが枠内に収まらない長さになってしまっていたため、泣く泣く見送られた過去を持つ(代打は《巨大カキ》)。

「地獄料理書」ではこれを用いたジャムが登場し、物語の盛り上げに一役買っている。BM liveのストーリー紹介コーナーでもこれを勿論紹介したのだが、編集者が僕の迫真の演技を「ガチの嫌悪感」と判断し、「独断でカットしてしまった」という笑える話がある。

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2014/04/08 「不退転の意志」


「不退転」とは、「信念を持ち、何事にも屈しないこと」という意味や、何事も気にせずに修行をすることという仏教用語であったりする。

どちらにせよ、Aを行うと思ったなら他者の干渉・妨害などにはめげずに行動を完遂する、という覚悟を示す言葉だ。最も使う例が「不退転の決意」そして《不退転の意志》だ。

この言葉がそのままカード名となった《不退転の意志》は、カードとしては結構地味である。というか《マギータの加護》まんまの同型再版である。同じサイズの上昇を付与する《聖なる力》は、軽いことは軽いが効果もささやかすぎるため、使われることは全くなかった。

リミテッドでさえ、これを入れるぐらいなら他の物を使った方が良い。そんなレベルのカードがさらに1マナ重くなったが、「瞬速」を得ただけで話は変わってくるもの。戦闘を有利に導き、効果が残り続けるコンバットトリックは強力なものだ。

一度これを見せると、2マナ立てているだけで相手は気軽に相討ちブロックしたり、軽い火力で除去しようとしたりすることが出来なくなってしまう。一度相手にそのイメージを刷り込ませ、躊躇させてしまえばもうこっちのものだ。後は不退転の意志をもって臆することなくアタックを仕掛け続ければ良い。

例えブロックされたり火力を撃たれると損する状況であっても、決意を帯びた表情で躊躇いなく行動することで、相手を圧倒してしまえることだってあるだろう。所謂「ブラフ」というものだが、手札やデッキが弱い時に勝とうと思うのならばこういう部分で勝負するしかない。

現在、トップで活躍し続けるプロプレイヤーを思い浮かべて欲しい。「鋼のメンタル」とでも形容すべき強い意志の元で、彼らがコンバットしているように見えたこと、あるでしょう。


ちなみにこの「ザ・リミテッド」な1枚である《不退転の意志》、こう見えて構築でも使われた立派なカードなのだ。《脂火玉》によりサーチされ投げられるこれは、相手にするとその見た目より遥かに厄介な1枚である。ブロック構築の「白ウィニー」やスタンダードの「ゴースト・ダディ」では渋すぎる働きをする1枚としてスタメンの座を得ている。

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2014/04/07 「Subdue」



 漫画などの二次元の作品が、映画などに映像化された際に起こるのが、キャストとキャラクターの「イメージの差異」である。これは相当に原作の雰囲気を重視・理解し、細かなところにも心配りをしなければならない。映像を観るファン達にはもうしっかりとしたイメージが根付いているため、彼らのそれに近付くように全力を注ぎこまなければならないのだ。

最近では、映画は映画だからと言わんばかりの原形をとどめないアレンジなんかが増えてきて、その大半は多くの人をガッカリさせている。イメージは何よりも大切なものなのだ。


《Subdue》は「レジェンド」にて収録されたコンバットトリックだ。最初期の呪文らしく、なかなかに弱い。対象のクリーチャーはこのターン戦闘ダメージを与えなくなり、代わりにそれのタフネスをそれのマナコスト分だけパンプアップする。

1マナインスタントとはいえ、使い勝手は悪い。自軍に使うなら《巨大化》系の呪文を差し置いてまで採用することは難しい。防御的に使いたいのならば、そもそも《濃霧》やその亜種があるではないか。まあ「レジェンド」ドラフトなんかを遊ぶ機会があれば、これで火力を避けられたりする可能性があることを覚えておくといいだろう。遊ぶ機会があるのかは、知らない。


「Subdue」という言葉は「征服する」「鎮圧する」「抑える」や、「やわらげる」「緩和する」といった意味がある。このカードにおいては、イラストからもわかる通りダメージを「やわらげる」方の意味で使われていると考えて良さそうだ。

しかし、これがマジックの漫画では…意味合いが変わってくる。マジックのコミックブックでは、プレインズウォーカーのクリスティナはこの呪文を用いて、街で騒動を起こしている若者を抑圧し、暴動を鎮圧している。冒頭でも述べた、「イメージの差異」が生じている。

これは呪文に関するインフォメーションが名前程度しかなかったのか・あるいはコミック作者が言葉の意味を拡大解釈して呪文に幅を持たせたのだろうか。どちらにせよ、意外な呪文にスポットが当たっているものだ。

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2014/04/05 「Yet Another AEther Vortex」


何でもアリ。ジャンルによってはそれが一番面白いことがある。ルールで守られたもの、それは素晴らしい。

ルールをブチ破った先にあるもの。
これは時としてゴミクズであり、ダイヤモンドにもなる。

絶妙なバランス、匙加減のもとに行われた何でもアリは類を見ない輝きを放つダイヤとなる。 総合格闘技なんかがそうでしたね。

某大会の最初の頃とか実に何でもアリで、幻想(ファンタジー)度が高くて興奮したものだ。

今現在のルールが整備され、技術が洗練されたそれも勿論素晴らしい。
しかし、何でもアリ感は薄れているように思う。

《Yet Another AEther Vortex》は実に何でもアリな1枚だ。

テキストに書かれているのはすべてのクリーチャーは速攻を持つ。
プレイヤーは自分のライブラリーの一番上のカードを公開した状態でゲームをプレイする。

いずれかのライブラリーの一番上にあるインスタントでもソーサリーでもないカードは、 そのライブラリーにあるのに加えてオーナーのコントロール下で戦場に出ている。

というもの。

すごいよね。「戦場に出ている。」とかいう意味不明な一文が堂々と書かれたカードはさすがにこのカードくらいのものだ。

勿論、銀枠なればこそのカードではあるが、個人的にはこれぐらいのカードがあってしまっても良いと思っている。 《騙し討ち》や《実物提示教育》が許されてるんだから良いでしょう。

似たようなトップオープンでアドバンテージを稼ぐエンチャントである《未来予知》も許されてるんだから良いよね。ハイパーカオスタイムの始まりや!

…ダメよね。

このカードが使えるフォーマットではライブラリー操作が軒並み禁止になってしまう。 そうなると完全に運ゲーとなってしまう。

これ4枚とマナブーストと大型クリーチャーだけ入れておけば厨デッキとなってしまう…かな? 意外と対処できそうではある。トップにいる間だけやからね。

《グリセルブランド》で7枚ドローすればトップからいなくなってしまうので
二の矢・三の矢を連打されるという訳ではない。あれ?意外と問題ないんじゃない?

フレイバーテキストの解説をすると、「flavortext」という文面の中に「vortex」という文字が隠れているよ!というかわいい一文が記されているのだよ。

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2014/04/04 「大貂皮鹿」


カードは何処から生まれてくるのか。そりゃ印刷所でしょ、とかそういうのはナシで。バニラ(能力なし)やフレンチバニラ(飛行や到達などだけを持っている)は、「リミテッドをする上で必要」「初心者に色の役割・レアリティ格差を教えるもの」という理由から生まれてくる。

そう、物事には全て理由があり目的がある。僕ら人間だってそうで、生まれてきた理由も生きる目的もある。ただ、それに気付きにくくできているだけなのだ。今は目的が見えなくても、目的を知ることを目的にすれば何も問題はないのだ!と僕は思…話がそれすぎた。


この《大貂皮鹿》というカードほど、生まれてきた理由と目的がハッキリとしたカードもないだろう。打ち消されない・プロテクション青と黒。このカードは、「時のらせん」で青いカードが強化され、「次元の混乱」で《滅び》が登場して以降進撃を続ける青黒コントロールに一蹴りかますために生まれてきたのだ。

その開発経緯はかなり具体的に公式発表されている。勿論、皮鹿誕生時にスタンダードであちこちでブンブンと羽ばたきまくっていた「青黒フェアリー」に効果的なカードとして作られている。

そもそもは、プロテクション青・黒のみを持ったクリーチャーとして作られていたようだ。しかし、青を含むコントロールデッキの強みとは「打消し」である。これに尽きる。確実に相手のリソースを奪っていき、トップから降り注ぐ儚い希望はカウンターで弾く。これが青黒の真骨頂である。

そのため、まずはカウンターに強くなくては始まらないということで打ち消されない能力が与えられた。


次に、対フェアリーカードが対フェアリーカードに潰されるという、不毛な衝突を避けることも考慮されたようだ。

たしかに、既存のカードのあおりをくらってしまうのであれば「そっちを使うから鹿に用はないよ」と言われてしまう。そこも計算しなければならないデザイナーは大変であるわけだが、この皮鹿のデザイナーさんはそこも完璧にケアしていたのだ。

この時既に活躍していた対フェアリーの先輩は《火山の流弾》。これはタフネス2以下を流し去る全体除去であり、打ち消されない飛び道具であったために非常に多くのデッキがこのカードを採用していた。

これに引っかかるタフネス2以下では、せっかくの新カードが活躍できずにローテ落ちしてしまう。つまり2マナ2/2は強そうに見えてお呼びではないのだ。かといって2マナでタフネス3以上では強すぎるようにも見える。

フェアリー相手にダラダラやっても向こうのクロックの方が強くては負けてしまうのでパワー3は欲しい、となれば3マナ3/3という具合にサイズも決定した。大変そうだけど、遣り甲斐があって楽しそうな仕事である。


これらのデザイン上のカードを用いて、開発部内では「フューチャーリーグ」や「フューチャー・フューチャーリーグ」と呼ばれる将来に訪れるスタンダード環境でゲームを行うテストプレイ用のリーグが存在する。その場で皮鹿は、絶妙な「脅威」であったらしい。これが「絶望」になるとバランスブレイカーになってしまうわけで、カード開発とはとかく難しいものなのだ。

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2014/04/03 「迎え火のしもべ」


「謎の邦訳シリーズ」というものがある。文字通り、何故そう訳されているのか疑問しか出てこない日本語版のカード達のことを僕が個人的にそうまとめているだけなのだけども。

これらは多くはないが確実に存在しており、気付いたプレイヤーに「?」と思わせている連中なのだ。今日はそれらの中から1つ、10枚という大掛かりなサイクルを形成しているカードの中から1枚を紹介しよう。


《迎え火のしもべ》は「シャドウムーア」「イーブンタイド」にて登場した、2色ハイブリッドのクリーチャーが織りなす「しもべ」サイクルの1枚である。

さて、これのどこが誤訳なのかというと、もうストレートに言ってしまうと「しもべ」という言葉そのものである。サイクル共通のカード名に含まれる「Liege」。これが「しもべ」と訳されているのだが、この言葉の正しい意味は「領主」「君主」「家臣」といったところである。

これに対して「しもべ」という言葉は身分の低い、召使いなどのイメージがどうしてもある。真逆ではないか。何故この言葉が「Liege」の訳に用いられたのだろうか?これは「テンプレ」というものがもたらした弊害である。

初の日本語版であった「第4版」にて《Gaea’s Liege》は《大地のしもべ》と訳された。これは「Liege」を「家臣」として訳し、しかし「家臣」というのも変だろうと「しもべ」と意訳された…んじゃないだろうか。

ここまでは問題のない話ではあるが、問題はこの訳が「テンプレ」として以降のカード全てに適応されてしまったことである。このカードのような、明らかに「君主」と訳した方が良いカードでさえも「しもべ」になってしまっている。

こいつの上司はさぞかし強力なのだろう。この「テンプレ」という風習は、後に《絡み森の主》という訳が生まれたことで消え去っている。伝統を守るのも大事だが、何よりも本来のイメージを伝えることが大事なのだ。


さて、カードの解説に入ろう。5マナ2/4と頼りないサイズだが、自軍の赤と白のクリーチャーを強化するロード能力はなかなかに強力。さらには赤の呪文を唱えれば相手に3点ダメージ、白の呪文を唱えれば3点回復という能力も強力そのもの。赤白の呪文なんか唱えれば《稲妻のらせん》がおまけでついてくるのだ。

これは馬鹿にならないもので、「マスト除去」とはこういうクリーチャーのためにある言葉だと言って良い。ライフを一気に詰める、脅威の怪物だ。

ちなみにサイクル中唯一のホラーに加えてスピリットのタイプを持っている。部族的観点から視ても強力無比!《未練ある魂》との相性は言うに及ばずだ。


これだけのポテンシャルを持っていながら、構築で大々的に使われるということはなかった。しかし、多くのプロプレイヤーがこのカードは本来強いものだと評価していた。

時は流れ、統率者戦やデュエルコマンダーが盛んなこの時代。このカードの値段に、世間からの今の評価を見ることが出来る。

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2014/04/02 「棺の操り人形」


「大人の事情」というものがある。時として理不尽だったり違和感を覚えるものかもしれないが、世の中どうしようもないこともあるのです。わかってくだせえ。というわけで今日の1枚は大人の事情にうっかりだかなんだかが入り混じり真実は闇の中な1枚を紹介したい。


既にご存知の方もおられるとは思うが、中国では法律で「骸骨」「髑髏」のイラストが禁じられていた。

詳しいことはわからないが、中国の長い歴史の中で生まれ守られてきた1つの文化・思想なのだろう。しかしマジックには、歩き回る不死の骸骨や、対象を腐敗させ髑髏を剥き出しにさせてしまう呪文など、スケルトンなイラストなんていくらでも存在しているではないか。

これらは中国でどうなの?…実は、それらのカードには別のイラストがあてがわれているのだ。

例えば「ウルザズサーガ」には数多くの骸骨イラストが収録されているが、それらは強引に肌色で塗って皮膚があるように加工したり、黒塗りでシルエットだけにされたり、骸骨が写っている部分をカットしてイラストを拡大したり、元のイラストと雰囲気の近いイラストが描きおろされたりといった工夫で乗り切られている。

これらの見た目が違うカード達は、他人と差をつけたいコレクターにとってはたまらない逸品だ。多言語にあまり興味のない方でも、このイラスト違いは初めて目の当たりにすると「おぉ」とテンションが上がるはずだ。


この例に漏れず、「プロフェシー」の骸骨が思いっきり描かれたレアカード《棺の操り人形》は、中国で販売されたものは原形をとどめていない、骸骨感ゼロの謎のクリーチャーが描かれている。

そして、不思議なことに何故か日本語版でもこの謎の怪物のイラストが用いられたのだ。どういう経緯でこのようなミスが起きたのか、カードが刷られるまでの流れを妄想しながら考えるとなかなか面白い。


カードとしては、悪くない性能である。まあまあ強いし鬱陶しい。勘違いしてはいけないのは、これは沼を2枚生け贄に捧げろとは書かれていないこと。自らの戦場に沼が1枚しかなくても、土地を2枚生け贄に捧げれば釣り上げることが可能だ。

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2014/04/01 「1996 World Champion」



遂に実現しました!当社スタッフが世界中を探し回り、所在を掴むとそこからは1年間に及ぶ長い交渉…我が社の熱意がコレクターにも伝わり、お互い納得の金額で取引が成立。

問答無用で我が社の…いや世界中の全てのシングルカードを上回る文字通り桁違いのビッグ・プライスではありますが、《1996 World Champion》入荷しました!!興味がある方、是非ともショップにて、その神々しい姿を拝んでみてください!


ウソである。申し訳ない。近年ネットでは、エイプリルフールにどれだけ手が込んでいることをやれるか?という企業間の勝負になっているように見える。ささやかながら当コラムでも便乗してみたが、いつかは本当に入荷してみたいものである。いったい幾ら必要なのかは想像もつかないが…


本日紹介するのは、世界に1枚の最上級のレアカードである《1996 World Champion》。このカードはその名の通り、1996年の世界選手権優勝者に授与されるトロフィーの中に封印される形で作られた。

刷られたのはたった1枚、カードとしての原版も完全に破壊され(しかもその様子はしっかりとビデオに収められた)、世界の頂点に立った選ばれし一人に握られるためだけに作成されたのだった。


能力は5色5マナの伝説のクリーチャーでクリーチャータイプは持っていない。もちろんこのカードにオラクル更新などあるわけもないため、これからもずっとそうであり続けるだろう。

場に出た時に対戦相手1人を対象とし、そのプレイヤーのライフの総力と等しいパワーとタフネスを持つ。ワンパンチ通ればそれだけで勝ててしまうというわけだ。この能力、挙動としてはおかしなもので、常在型能力は対象をとらないという現在のルールに真っ向からアゲインストしている。

しかし、世界に1枚しかないカードにゴチャゴチャ言うことに何の意味があるのか。勿論このテキストにも変更はなく、これからもそうであり続けるだろう。最後の能力は、手札を捨て去ることでチャンピオンをライブラリートップまで引っ張ってくることができる。1枚しかないカードだし、引けずにゲームが終わってもしゃーないしね。


このカードが封印されたトロフィーは、決勝戦で相手が自爆するというラッキーもあって世界の頂点に輝いたオーストラリア人が手にすることとなった。

彼は後に、コレクター相手にこれを17500$で売ったとのこと。それ以来、世界中を転々として所在が掴めないものになっている(一説ではヨーロッパのコレクターが持っているとか)。


ちなみに、レガシーやヴィンテージでは禁止カードに指定されていない。手に入れたら、使っても良いのだ。使いてぇ~

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2014/03/31 「Ur-Drago」


久々に縛りとかない普通の一週間を送ってみよう。今週のチョイスは「テキトー」。なんとなく、こんなやつもおるんやで、っていう緩い感じでカードを紹介していこう。○○ウィークが大変とか、そんなんじゃないよ!実はフリーの方があれもこれもとなって書きにくかったりするものである。というか今までどれだけの種類の○○ウィークを当コラムでやってきたのだろう?後で数えてみよう。


今週の一番手は《Ur-Drago》。カッコイイ名前に激渋なイラスト。昔の光沢の表現・鎧のデザイン・頭髪なのか兜飾りなのかわからないフサフサの熊のような毛・角や肩のゴツゴツしたものは果たして鎧なのか、それとも彼が人外である証なのか…
まだ若かったころにマジック百科でそのイラストを見てから虜となっているのだ。「ジューダス・プリースト」的メタルっぽさがあるのもポイントなんでしょうね。


さて、この恵まれたイラストから繰り出されるのは空気の様な能力だ。青黒のマルチカラー、それぞれダブルシンボルを要求する7マナという拘束のキツいマナを払って手に入る戦力は


先制攻撃
沼渡りを持つクリーチャーは、それらが沼渡りを持たないかのようにブロックされる。
4/4

マジかよ。先制攻撃があるとは言え、7マナで4/4て。信心0、タッチで使われた《湿原霧のタイタン》に力負けするとか、お前それでも伝説のクリーチャーかよ!と言いたくなる性能。いや、これでまだ《幽霊の特使、テイサ》みたいな強烈な能力を持っていれば全然OK!


「沼渡りを持つクリーチャーは、それらが沼渡りを持たないかのようにブロックされる。」

…待ってください。《Quagmire》という同セットのゴミの能力を何故か吸収し自分の者としているUr-Dragoさん。この能力、ゲームにどれだけ影響をもたらすのか?当時は渡り能力が強力であったために作られた、という記述を見たが…そんなに?

まあこのカードに限らず、「レジェンド」のレジェンド達はあまりにもひどい格差社会の中で生きている。Ur-Dragoさんも「7マナ5/5バニラな主人公」よりはマシなのかもしれない。ぶつかり合うと一方的に負けるけどね。


Ur-Dragoさんは2007年9月の一大変更の際、デーモンのクリーチャータイプを得ている。やっぱり角は自前の物だったんだね。と思ったら2008年1月18日のオラクル大更新の際に、エレメンタルへと変更となった。エレメンタル?え?

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2014/03/29 「バネ葉の太鼓」


「春」ウィーク、最後の1枚は《バネ葉の太鼓》である。…何のことやらと思われた方、○○ウィークでちょくちょく行う「最後の1枚はちょっと変化球」というものでございやす。このバネ葉、英名は「Springleaf」。

Spring、ほら、春だね。というわけで(どういうわけや)、この春の到来を告げる太鼓について語っていこう。


1マナで好きな色マナが出るアーティファクト、と言えばMoxまでとはいかないが十分強力すぎてどんなデッキでも4枚積んでしまうレベルである。この太鼓は、その実現にちょっとの代償を求めてくる。これと一緒にクリーチャーを1体タップする、というものだ。

おそらくは、クリーチャーが太鼓をポンポコ叩くのだろう。奏でられた音楽は大地や大気から魔法の力の源、マナを呼び起こす。一種の儀式を行っていると考えていいだろう。ただし太鼓を叩くのは体力のいることだ。《Little Girl》から《引き裂かれし永劫、エムラクール》まで、どんなクリーチャーがこれを叩いてもバテてしまうのだ。


普通のデッキでこのカードを使うと、基本的には使い勝手の悪い1枚でしかないことだろう。特に緑からすればそもそも1マナのクリーチャー達がマナを出せるのでこのカードは不要だ。

 その他の色からも、これを出すタイミングが果たしてあるのか?(もっと他の事するよね)マナを払って出したクリーチャーを戦闘させずにマナ生産に回すことにどれだけの意味があるのか?(色事故くらいだよね)という点で「お呼びでない」1枚である。何もこれじゃなくて良いだろう。


そんな5色から見捨てられた、5色生み出せるこのカードを待望していたのが「無色」であったというのも実に面白い。

「親和」というほぼアーティファクトのみで構成されたアーキタイプにおいて、このカードは欲してやまなかった1枚なのだ。1マナであるから1ターン目から展開でき、親和・金属術の双方でカウントを1つ稼ぎロケットスタートを支援する。これに《メムナイト》のような0マナクリーチャーが絡むとその真の能力が発揮されることとなる。

例えほぼアーティファクトのデッキと言えど《物読み》《感電破》といった色マナを要求するカードはデッキに搭載されている。これらを運用するにはこの太鼓は必要不可欠なのだ。


「ローウィン」ではタップするとボーナスが得られるマーフォークらと共に登場し、「神々の軍勢」ではアンタップすることで誘発する能力持ちと共に還ってきた。さて、次の再録時にはどんな能力と抱き合わせになるだろうか?


ちなみに元のイラストは夕暮れで落ち葉が舞っているものだったようだ。製品版は次元ローウィンの世界観に合わせてリペイントされたもののようで、原画が2種類存在する珍しい作品。太鼓を叩く謎の生物は変わり身だろうか?魚で太鼓を叩くセンスと疾走感がたまらない名作だ。


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2014/03/28 「春の儀式」



かつて祈祷師達は、季節の到来を神に祈ることを生業としていた。

彼らの天候を読む力は、現代のお天気衛星にも負けないものだったことだろう。最善のタイミングで祈りを開始し、結果数日以内で天候に変化が生じれば、それは祈りが神に届いたことになる。

そのために行う怪しげな各種の儀式も、皆に自らが神とコンタクトをとれることを見せつけるためのものだ。ペテンと言ってしまえばそれまでだが、知恵を用いて社会的地位を確立した彼らには敬意をはらわずにはいられない(勿論、本物の力を持った人もいたのだと思うけどね)。

本日紹介する《春の儀式》は、見せ掛けだけの儀式ではなく立派な魔法である。早速紹介しよう。

そもそも、《春の儀式》とはどのタイミングで行うものなのだろう。

上述の様に春の到来のタイミングであろうか?それにしては、イラスト背景がすっかり春らしいのが気になる。もしかすると、これは春になってから「春よ、来てくれてありがとう」という感謝の儀式なのかもしれない。

我々現代人はすっかり「花見」という合法ドンチャン騒ぎしか行わなくなってしまったが、たまには目に見えないものに感謝を示してみるのも良いかもしれない。草花・風景を写真に撮って「綺麗だな」と思うだけで十分に《春の儀式》だと僕は思う。


さて、余談が長くなってしまったがカードについて解説しよう。

このカードは手札内の不要牌を基本土地と交換することができる。これは特にリミテッドでは有用で、土地が2枚しかないが3マナ4マナのカードがある・森しか手札にないが赤のダブルシンボルのカードが複数ある、といった手札をキープしやすくさせてくれるのだ。

この際に、手札からマッドネス・フラッシュバック呪文を捨てればアドバンテージを損失することはない。早いターンで色マナ調整とライブラリー圧縮を行いながらスレッショルド達成させて《熊人間》で殴る、といった芸当も可能だ。

「オデッセイ」を含むリミテッドを行う場合、その見た目よりも評価してあげて欲しい1枚だ。これで基本出ない土地も持ってこれれば、構築でも評価された1枚になったかもしれない。少々残念である。


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2014/03/27 「暖気」



毎日が温かくなってくると、心も体もポカポカとして自ずと元気になってくるものだと思う。あまりに気温が適温すぎても、眠たくなってしまうので困りものではあるが…寒い中ブルブル震えているよりは随分とマシだろう。個人的には、冬よりは春派である。断然。

というわけで本日の紹介は、温かな名前の1枚《暖気》を紹介しよう。

このカードは、テンペストにて収録された「やりすぎ色対策」サイクルの1つである。サイクル名は今勝手につけたが、間違ったことは言っていない。本当にやり過ぎ感があるサイクルなのだ(ただし効果の幅はマチマチなので、全く名が知られていないカードもある)

《暖気》はサイクルの中では中々に「鬼」である。白が対抗色である赤に牙を剥いた結果がこれだ。当時の赤いデッキとは、往々にして火力を積み手数の多い攻めを用いて相手のライフを0にすることで勝利することを目指して作られていた。

そんなデッキ達に対して、真っ向からアゲインストする1枚がこの白きエンチャントであった。

相手が赤の呪文を唱えれば、即座に誘発してライフを2点回復する。例えこの回復にスタックで火力を重ねても、また回復が誘発するというオートガード仕様。この鉄壁の守りがたった2マナのシングルシンボルとは、恐ろしい話である。フレイバーテキストのオアリムさん曰く、丁度いい距離の炎は逆に癒しになるとのこと。この呪文は、気流のようなものを起こすことで術者に炎が直撃することを和らげているような具合だろうか。

どうしても回復してから火力を喰らうという図を想像すると「あ~あったか~気持ちええ~…熱っ!あっつ~~~!!!…あ、ぬくいぬくい。いい感じ…アツアツアツアッチ~!」というものになってしまってコントにしか見えなくなる。

赤側からすれば、たまったものではない。《ショック》なんかはカード1枚損しただけ、《火葬》は2マナ払ってカード1枚使って1点を与えるという割に合わなさ。《ボール・ライトニング》を転がしてもあまりオイシイ感じがせず、《モグの狂信者》は2回殴れなければ元が取れない、しかもエンチャントだからそもそも触れないと、この上ない恐怖の存在なのだ。

しかし当サイトのライターやBM Liveのアシスタントを務める関西のバーン使い、リュウジ曰く「《暖気》2枚貼られても殴りまくって勝ちました」とのこと。さすがである。


日本語版には「3点回復する」と印刷されているものがあるので注意が必要だ。さすがに《稲妻》までチャラにするのは反則技。


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2014/03/26 「花盛りの春」


春と言えば、花。河原に生えている雑草も、桜の木も、皆それぞれの美しい花を咲かせて見る者を楽しませてくれる。思わず足を止めてしまうこともしばしばで、そのためこの季節はいつもなら自転車という距離でもちょっと歩いてみるかとなることがある。


マジックの世界でも、春は花の季節であり、ポカポカ陽気の中でかわいらしい小さな花が顔を見せるようだ。それにより、大地からはより多くのマナが得られるようになる。森からマナを出すと、そのプレイヤーのマナプールに恵みの緑マナがもう1つおまけされる。ありがたい話である。

増えた緑マナの使い道は、緑という色の特性上困ることはないだろう。ビッグ・グリーン・モンスターを叩きつけてやれば良いし、何かしらの起動型能力を絡めた無限コンボなんかも狙うのは簡単だ。


この手のマナを倍加させるエンチャントやクリーチャーは、マジックの歴史の中ではちょくちょく顔を見せている。それらの中で、4マナというのは軽量のものである。4マナもかかっているとはいえ、次のターンには8マナ10マナ手に入る訳で十分強力なものであると言えよう。

それらのカードがそんなに「入れ得」なオイシイものであるはずはなく、例えば《ほとばしる魔力》や《春の鼓動》なんかはこれより安い3マナであるが、相手もその恩恵を受けることができるという無視できない大きすぎるデメリットを持っている。

迂闊に出すと、ターンが返ってくる前に死ぬことすらあるだろう。それらと比べると、このエンチャントは相手の森にもボーナスを与えてしまう代わりに、相手が森さえ使用していなければこっちだけオイシイ思いができる1枚となっている。軽さをとるか手堅さをとるか、プレイヤーにとって選択肢が増えることは素晴らしい。


「森」でさえあれば、各種デュアルランドやギルドランド、さらには《ドライアドの東屋》《樹液染みの森》からもボーナスを得ることが出来る。勿論、森でない土地は極力排除した方が良いにせよ、決して2色デッキで使い物にならないというわけでもない。緑単の動きをしながら《スフィンクスの啓示》《苦悩火》といったカードを叩きつけるのも面白そうではある。


このカードの挙動は、実質マナが倍になっているとはいえ、森からマナが出ている訳ではないことに注意したい。土地から出るマナを参照する場合は本来のままであるし、例えば《汚染》ロックを受けたとしても、森から黒を出せば誘発して緑マナを得ることが可能なのだ。

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2014/03/25 「花粉光の羽」



この時期、世界が春に向かって生まれ変わっていく素敵な時間の中で、多くの人を苦しめるものがある。「花粉」だ。重度であれ軽度であれ、花粉症持ちの人々はこの時期、涙と鼻水、それから各種症状で地獄を味わうことになる。これが終われば心から春を楽しむことが出来るのだが…

まあこればっかりは自然の摂理であるのでどうしようもない。各種手段を用いて抗うことは出来るが、勝利することは出来ない。僕自身も、ある時期花粉症から解放された(とはいえ年中慢性の鼻炎ではあるが)ことがあった。原因は全くもって不明だが、スッキリとした春を送っていた。…そう、過去形なのである。

今年は、これまで抑えられていたものがぶり返してきたのか、通勤中は涙が止まらない。涙が落ち着くと今度は鼻が…はい、同じ花粉症の皆さん。頑張って乗り切りましょう。頑張りようもないですが…


こんな花粉にまつわるカードがマジックにもしっかり存在する。今回チョイスしたのは、それらの中で最も「花粉感」がなかったイラストのこのオーラ。他の2枚は見ただけで目が潤んで…興味のある方は調べていただきたい。早速カードの紹介に移ろう。


このオーラは、比較的重いものである。マルチカラーの6マナという安くないコストがもたらすのは、直接的な強化ではない。確かに飛行を与えるが、それは6マナよりも軽いマナで達成することが出来る。それでもこのカードは、リミテッドで十分な威力のフィニッシャー足り得る。それだけ、2つ目の能力が強力なのである。


その2つ目の能力は、プレイヤーに戦闘ダメージを与える度に誘発し、そのダメージと同じ数の苗木トークンをばらまく。これは尋常じゃない。5/5につけられると、こちらは巨大なフライヤーに殴られ、相手は脆いとはいえ毎ターン増える生垣にその身を隠していく。なんだったらその生垣まで殴りかかってくるのだ。このカードの実力をなめていた僕だったが、使われた時には花粉症の如く鼻水が止まらなくなった。


《茨の精霊》や《解体するオーグ》につけて…いや、オーバー・オーバーキルだな。

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2014/03/24 「春の大掃除」



もう新年度も目の前、すぐそこに芽吹きの季節・春が迫ってきている(とはいえまだまだ肌寒い日もある)。春の陽気に誘われて…という言葉があるが、実際に出不精の人でも、春は自ずと出かけたくなる季節だと思うのだがどうだろうか?少なくとも、「今日はマジックの大会あるけど、寒いから家にいよう」なんてことがなくなるのは素晴らしいことこの上ない。


春はマジックにも変化をもたらす。デュエルスペースにいつもいた顔ぶれが進学・就職などの理由でいなくなったかと思うと、同様に越してきた大学生・転勤してきた方などの新しい面々が遊びに来るようになる。寂しいこともあるけれど、マジックを通して一人でも多くの友人が出来れば素敵だね。というわけで、今週は「春」ウィーク!いってみよう。


一発目は、まずは新しい季節を迎える前に綺麗にしておきましょうということで《春の大掃除》。

インスタントタイミングでエンチャントを破壊できる、それだけなら汎用性が落ちた《帰化》に過ぎないが、運良く激突に勝利することが出来ればその効果は変貌。対戦相手がコントロールする全てのエンチャントを破壊するという、まさに大掃除が行える良いカード。


イラストがかわいくてお気に入りの1枚でもある。キスキンが小屋から出てきて箒でササッと掃けば、わるいこわい魔法もどこかへ消し飛んでしまう…イラストの中に絵本の1シーンのような躍動感・物語性があって、それがカードの効果とも噛み合っていてイメージと直結しやすい。そして効果はなかなかに大きいが、決して派手すぎるわけでもないしこれ1枚で勝てちゃうというカードでは決してない。いいね、《春の大掃除》。


本気の大掃除を行うならば、統率者戦で使用すると良い。これは、激突に勝利すれば「すべての」対戦相手がコントロールするエンチャントを破壊できる。最初に対象にしたエンチャントが誰のものであっても構わないし、しかも激突を行う相手も誰であってもOK。場を散らかしている子がわるいのである。恨まれてもお構いなしで掃除してあげよう。

さらに、《魔法の夜》なんかが場に出ていると…掃除1つで世界の敵だ。しっかりと各種チューターで《無限に廻る者、ウラモグ》でも仕込んでおこう。こんな大参事に合いたくなければ、常日頃から駅やビル清掃を行ってくれているおばちゃんたちに「ありがとう」と一言かけることを心がけるようにしましょう。

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2014/03/20 「ゾンビ使い」



今週は祝日もあるので、更新はこの4枚目のロード《ゾンビ使い》で最後となる。

4日しかないから4枚のサイクルを持ってきたということだ。
そして、この最後の4枚目はサイクルから「リストラ」されてしまった過去を持つ幸薄い1枚である。

でも僕はこのカードが好きだ。今日も愛のあるツッコミをしていきたい。

「アルファ」にて他のロード達と共に登場した元祖ロードであり、 しかもその中で最初から「ロード」のクリーチャータイプを有して唯一の1枚であるため、正真正銘の「ファースト・ロード」でもあるのだ。

何事においても、1番というのは素晴らしくリスペクトされるべき存在である。

あるのだが…

何故か、このロードには全体強化能力がない。
その代わりに、いや代わりと言ってしまって良いかは怪しいが、全てのゾンビは「黒:再生」を持つ。

そして他の元祖ロードと同じく沼渡りの付与、これは良い。
様式美と言うか、他の連中と並んだ時に統一された能力を持ってこそのサイクルであると思うので。

しかし…再生とは。悪くはない。

戦線に立つクリーチャー達が軒並み再生を得るということは、対戦相手からすればいろいろと面倒なことには違いない。 違いないのだが…何なのだろう、このガッカリ感は。

「第5版」当時マジックを始めたばかりの僕から見ても「え、なんで+1じゃないの…」という拍子抜けするものであった。

他のロード達は、相手が渡りの対象となる土地をコントロールしていなくても+1修正のゴリ押しでなんとかなったりするものだ。

特に2体3体と並んだ時の制圧力は筆舌に尽くしがたい。
クリーチャーが基本的に弱い時代なのだから、なおのことであった。

僕はマジックを始めたのは、黒というカラーに惹かれた部分が大きい。
当時は中学に入ったばかり。ホラー・グロテスク・闇の力…所謂「中2病」のはしりだった僕の心を、黒いカード達はガッチリ捉えて離さなかった。

そして、ゲームを続けていくうちに友人達はそれぞれ《ゴブリンの王》と《アトランティスの王》を使った部族デッキを作るようになった。

ならば、と僕は《ゾンビ使い》を携えこれを迎え撃った。
《ゾンビ使い》はイラストもそそる1枚であり、さらには大好きなゾンビ達をワラワラ展開して行ける。

やったるで!



…弱いのである。

《ゾンビ使い》が複数場に出たところで、一体何になると言うのか!? 向こうは《怒り狂うゴブリン》が3/3とか4/4になっているのに、我が軍勢ときたらそれをひたすらに肉壁でキャッチしているだけではないか!

一向に攻めることができない。なんてこったい。

いくら「アルファ」に収録された唯一のゾンビ《スケイズ・ゾンビ》が当時のゴブリンとマーフォークよりもサイズが大きかったとはいえ、 これはあんまりではないか?ていうか大きいとはいえ《スケイズ・ゾンビ》2/2バニラやねんで!?

こんな声が届いた様で、後に《アンデッドの王》にその座を明け渡すことになる。
ここまではまあ、良い。僕が一番ショックだったのは、コイツ自身が後に「ゾンビになった」ことである。

ずっとゾンビを使役させる妖術師の人間だと思っていたのに!2体並んでお互い再生が持てるとか、そんなん嬉しくないよ!

こんだけ言っといてなんだが、僕にとっては大事な・大切な1枚である。

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2014/03/19 「エルフのチャンピオン」


ロードサイクル、緑は勿論エルフな訳だが…正直なところ、相当に迷った。まず「アルファ」の時点で存在したロードは3体。緑と白にはロードはおらず、緑のロードが誕生するまでにはなかなかのタイムラグが生じた(白のロードなんて…そもそも人間というタイプが制定されたのが比較的新しいので仕方がない)。そのタイムラグを「テンペスト」までにするか、「インベイジョン」までとするか。その判断が難しかった。

「テンペスト」には《葉の王エラダムリー》という、エルフに森渡と被覆を与えるクリーチャータイプ「ロード」の伝説のクリーチャーが収録されている。これが事実上エルフの最初のロードであるが、《ゴブリンの王》《アトランティスの王》と並べた時の違和感たるや…というわけで、エラダムリーさんはまた別の○○ウィークで紹介しましょう。今週行っている「ロードウィーク」では、よりロードらしいと言えるこの《エルフのチャンピオン》を紹介しよう。


上述のように初出は「インベイジョン」。随分と待たせたサイクルの4枚目は、セオリーに倣って全体に+1/+1修正と自分たちの色に対する走破力・森渡りを与える。他のロードよりも、この渡りの部分が重要視されたロードである。

確かに、パワーを上げるだけならば使いきりのソーサリーとは言え《踏み荒らし》などの方が効率が良い。この森渡りが爆発的に効いた相手が「青緑マッドネス」であった。森を採用するしかないこのデッキを相手取り、エルフ達は木立を駆け樹冠を飛び相手の本陣へ切り込んでいく。

後方防御は《幸運を祈る者》に任せダメージレースを圧倒的有利なものとする。「エルフビート」は、「インベイジョン」に収録されているのにすぐさま「第7版」に再録され、以降「第10版」まで登板し続けたことを見ても、開発側が推していることは間違いなかった。この再録ラッシュの中で「第7版」「第8版」と矢継ぎ早に新規イラストが用意され、「第9版」からまた「インベイジョン」仕様に戻るという忙しいカードでもある。

収録されたセット全てのカードを並べても、上述のイラスト違い2つに旧枠・新枠の白枠・新枠の黒枠と、視覚的に被るカードが1枚もない。実はなかなか珍しい1枚なのだ。


チャンピオン(champion)という単語がマジックのクリーチャーの多くに使われているが、これは一体どういう意味なのだろうか?優勝者?…調べてみると「(主義・主張のために戦う)闘士」「擁護者」「他より優れた人」といった意味があるらしい。

確かにこれは、その意味どれもが当てはまる。「(主義・主張のために戦う)闘士」というのも、「インベイジョン」のイラストを見るとこのエルフがラノワール系であること・即ち自分たちの領地に踏み入り森を荒らすようなやつは絶対許さんぜよ系の方々であることからも納得がいく。

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2014/03/18 「アトランティスの王」


《ゴブリンの王》と同期で、より活躍したカードとなればこの《アトランティスの王》である。「アルファ」で登場し、「第7版」まで登場し続けた。

その後、クリーチャータイプ再編の波に飲まれて、彼らマーフォークは日本語では同じ「~の王」となっているが、ゴブリン側の「King」と、このカードの「Lord」では似ているようで厳密に言うと違う意味の「王」を指している。

「Lord」とは「君主」や「領主」といった統治者の意味で用いられる単語である。《ゴブリンの王》は、ゴブリンという種族の頂点に君臨する「王」であり、《アトランティスの王》はアトランティスという地域を支配・統治する存在である。おそらくはさらに上位の「王」がマーフォークという種族を束ねているのだろう。後に登場する《女帝ガリーナ》とかね。


カードとしては、マーフォークを全体強化し島渡りを付与、打点を底上げしつつも自身も2マナ2/2と黎明期の青には考えられないスペックの持ち主と、言うことなしなのだが…実は、種族に恵まれなかった。

初登場時、この王の傍らにいた家臣は《真珠三叉矛の人魚》ただ1体のみ。続く家臣の獲得は「ザ・ダーク」の《マーフォークの暗殺者》まで待たなければならないと、国の起こりはなんともスロースターターなものだった。


「フォールン・エンパイア」で国民は劇的に増え(増えても弱いとかは言わない)、「ローウィン」など弾けの時を経た今ではアトランティスは列強とでも呼ぶべき大国であり、並大抵の陸の部族すら乗り越えていくだけの軍事力を誇っている。どれだけカードが増え、上位互換まで登場しても、我らの王がデッキから抜ける日が来るのは想像するに難しい。


ちなみに「アトランティス」という、我々の世界のファンタジー用語がカード名に用いられているが、これは後に「エトラン・シース」というマーフォークの地名を、人間が聞き取った時に誤って伝わったものとして設定されている。「アラビアンナイト」以降、多元宇宙シリーズにならなければこの「アトランティス」を舞台にした太古の都市の物語などが発売されていたのかもしれないね。

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2014/03/17 「ゴブリンの王」


どんな世界でも上司・指導者といったものに恵まれることは何よりの財産である。自分を率いてくれる人と良好な関係を築くことが出来れば、人生は彩りを増すことに違いない。

マジックの世界でも、クリーチャー達は優秀な指導者…や君主・支配者といった存在が自らの陣営にあると、本来の力を越えた戦闘力を発揮することがある。特にポピュラーなものは、自身と同じクリーチャータイプを持つクリーチャーを強化する、通称「ロード」と呼ばれる連中だ。

これは、かつて存在したクリーチャータイプのことである。自軍を強化する能力を持ったクリーチャーの多くがこのロードというタイプを持っていた。このロードというタイプは2007年9月には廃止されたが、今でもかつてロードと呼ばれた連中と似た能力を持ったカードは「○○ロード」という愛称で呼ばれている。

今週は、そんなロード達(及びロード能力持ち達)が集う「ロードウィーク」をお送りしよう。


第一弾は「アルファ」から登場したロードの中のロード、《ゴブリンの王》だ。

彼は最もわかりやすいロードと言っていいだろう、教科書通りの「全体+1/+1」と「パワー・タフネス以外の戦闘補助」の2つ能力を持っている。このオマケ能力、《ゴブリンの王》の場合は山渡り。相手が赤系のデッキならば、自軍のゴブリン全てが相手の本陣へと穴を掘ったり斜面を滑り降りたりして殺到することになる。ほとんどの場面で、この王様が除去されなければそのターンのうちに勝負が着いてしまうことだろう。

初代ロード組全員に言えることだが、効果範囲が自軍のみではなく「すべての」であるため、相手が同系だった場合に向こうも恩恵を受けてしまうという問題があ…るにはあるが、上述したようにケリを着けられるタイミングで出せば十分仕事をするのだから、その時が来るまで握っていれば良いだけのことである。


旧ロード勢の御多分に漏れず、彼もかつてはゴブリンではなくただのロードでしかなかった。「第9版」より、ようやくゴブリンのタイプを得て、2体並べばお互いを強化したり《ゴブリンの女看守》でサーチしてこられるようになった。そして「第10版」に入る時、ついにロードではなくなったのだ。

「アルファ」から「第10版」まで皆勤賞だった初代ロードは、意外にも最初では「ロード」ではなかった。一番最初に有していたタイプは「Goblin King」という固有タイプだったのだ。あまり固有タイプがあってもややこしいだけなので、「リバイズド」にてロードと相成った訳だ。ここまでタイプが変わるクリーチャーはもう今後出てくることはないだろう。

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2014/03/15 「混沌の掌握」


訳の分からないもの。真の混沌をもたらすもの。
秩序・調和、そういったものに真っ向からアゲインストし突き破るもの。

赤のレアにはそういったカードが多い。

それらの凄いところは、相手の動きを阻害したり自分が爆発的な恩恵を受けたりすることがあるものの、 基本的には「勝利に向かうカード」ではなく「ゲームをめちゃくちゃにするカード」に過ぎない点だ。

相手を妨害したいのなら他に有効なカードが赤には沢山ある。

それでも、そんなカード達を押しのけてこの《混沌の掌握》のようなカードをデッキにいれるということの意味は1つしかない。

「メチャクチャにしたい」はっきり言ってテロリストだ。

しかしマジックは、そういうやつが1人はいないとつまらない。ガチでやっても勝てないのなら、暴れて楽しんでナンボ。

この姿勢は、マジックが如何に競技性が高いとはいえゲームであり続ける限り、正しいものだと僕は思っている。


《混沌の掌握》は文字通りゲームに混沌をもたらす。 これが訪れた後は、呪文も能力もその対象が全て「オ-トランダム」となってしまうのだ。

《巨大化》は相手のクリーチャーを大きくし、《名誉回復》は自分の《精神を刻む者、ジェイス》を叩き割る。 逆に自分めがけて《空虚への扉》が開かれたが、それに飲み込まれていったのは扉の持ち主だった。

こんなゲーム、競技としてみればグダりの極みかもしれないが、 ピザなんかを食べながら友達とワイワイやる統率者戦なんかだとこれ以上ないほどに面白くてしょうがない。

マジックはトーナメントとエンターテイメントが同居する、素晴らしいゲームだと僕は思う。 こういうカードを、レア枠の無駄遣いと言わずにこれからも用意してやってほしい。そうであってこその赤なのだ。


このイラストも素晴らしいものだ。

いつもはアクリルガッシュをメインで用いるMarkさんが、 この作品は珍しくデジタルで描いている。

この作品、中央に居る炎族のような物はもともとは普通の魔法使いの人間の女性を描いていたらしい。 そこに開発側から、彼女を「スカージ」の他のウィザードのように、液状に変化した人物にしてくれないか、との依頼があり、その要望通りの変更を加えられ、この作品は完成した。

しかし、この液状の人間は青のものとなり、そのウィザードが赤いこの呪文を唱えているのはおかしいということになった。 そのため、アートディレクターからの依頼を受けて、Markさんはこの人物を赤に相応しいものに変更したものを作成したのだそうだ。


このイラストの原題は「Blindness」。「向こう見ず」な混沌の魔法は時空を乱れさせる。
カードの上部をよくみれば、Markさんが過去にイラストを手掛けた《テトラバス》と《Dark Sphere》が時空を超えてやって来た姿を見ることが出来る。


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2014/03/14 「リバイアサン」


Markさんの代表作であると言ってしまっても文句のない1枚である。「ザ・ダーク」は、アーティストに「暗黒時代」というお題で自由に描いてもらったイラストを元にカードをデザインしているという、唯一のセットである。

全てのカードがその経緯で作られた訳ではないようだが、おそらくはこのリバイアサンも「暗黒時代」というお題の下で描かれた1枚ではないだろうか。巨大な生物は、純粋に人の恐怖に訴えてくる原始の恐怖であり、こんなものが頻繁に現れるようになればそれはまさしく暗黒時代だ。


このイラストからデザインされたのは、マジック初の・そして少しの間マジック唯一の二桁パワー・タフネスを誇る10/10の大怪物となった。

多くのマジックプレイヤーがこれに興奮し、使いたくなったことだろう。「第5版」に再録され日本語となったことで当時マジックを始めた多くの少年少女達の目にも「これは桁違いだ!すげえ!」と映ったことだろう。実際に10/10はすごい。2回殴れば人が死ぬ。しかし、代償はもっとすごい!


これを飼育しようとすると、まずアンタップする必要があるため次のアップキープに島を2枚も生け贄に捧げる必要がある。基本使用料というやつだ。そうやって叩き起こしたこのビッグシングを、今度は攻撃させるためにさらに2枚の島を生け贄に捧げなければならない。これはパケット代だね。パケットを使用せずに突っ立たせてブロッカーに回せばこの生け贄は必要なくなるが、それでは何のために最新鋭の高額スマホにしたのやら。というわけで《ぐるぐる》や《クルフィックスの預言者》などの基本使用料無料プランと併用することでうまく使っていこう。いずれにせよ、攻撃時の島2枚は支払わねばならないのが痛いところではある。


この《リバイアサン》、古くから人気が高く専門のコレクターも少なくないポピュラーな1枚だが、誰もが知るこのカードについてこんな議論をしたことはないだろうか?

「《リバイアサン》って水中にいるの?それとも空中?」そう、《リバイアサン》とは海の王・大怪物のことである。従ってこれも水中生物と考えるのが自然だが、このイラストでは手前にある小屋や青っぽい背後の空間が、水中なのか空中なのか…見る人によって意見がわかれる独特の世界観を持った1枚になっている。これについてはMarkさんご自身の回答を紹介しよう。


「皆が『このパピー(アメリカに生息するウーパールーパーの仲間、マッドパピーのこと)は水中にいるのか、それとも宙を舞っているのか、聞いてくる人が多くいます。私は、そのどちらの解釈でも満足です。しかし、これが夜空であるという感覚を伝えたかったという思いもあります」


周りの枠の色が青いため、またカードとして印刷されたものは現物と大きく色合いが異なるというのもあるだろう。イラスト上部には白く輝く月の姿もあり、大きい画像で視ることでMarkさんの言う夜空である感覚も十分に伝わってくると、僕は思う。

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2014/03/13 「罪を与えるもの」


まずはカードにまつわるお話から。この《罪を与えるもの》という訳は、少々語弊がある。「feeder」という言葉は「飼養者」つまりは「与えるもの」と訳すこともできるが、この怪物に関してのそれは「喰らうもの」という意味が、カードの設定的にも正しいだろう。

このクリーチャーは影に潜んでいて、通りすがりのプレイヤーにひっそりと忍び寄ると、触手を介して獲物の過去の記憶を探り出す。探られた記憶はこのfeederに食されるのだが、その際に自分が犯した罪の記憶が掘り起こされ、それによってプレイヤーはダメージを受ける、という寸法らしい。

そういう意味じゃ罪を与えているような気もするが、そもそも罪とは「与えられる」ものなのか?あくまで自分で犯すものであって…と国語タイムに突入しすぎてもアレなのでこの辺で。クリーチャー能力と設定が良く噛み合っている1枚だ。


カードとしても露骨に「黒激弱」だった「ジャッジメント」の中で、これはなかなか渋い輝きを放っていた。

「黒コントロール」のサイドに搭載され、黒が苦手とする《黒の防御円》《罠の橋》といった触れないカード達をものともしないフィニッシャーとして活躍した。


イラスト左側の人物はMarkさんの友人のJohnさんとのこと。この人物は《怒鳴りつけ》でもデッサンモデルとなっているなど、Markさんの創作に大きく貢献している人物だ。


僕はこのカードのイラストが大好きなのだが、Markさんは1つ納得いかないことがあるとのこと。それは、この頭だけのクリーチャーに不釣り合いなゴツい2本の脚。これはそもそも、イラストには描かれていなかったものなのだ。

そもそものこのクリーチャーは浮遊する脳ともイカともつかない幽霊・妖怪的なものとしてデザインされ、描かれている。

完成してイラストでは、このホラーは完全に浮遊しているように見える(または壁に後ろ足1つでへばりついているようにも見えるが、何らかの霊的な浮力が働いていることには違いない)。これを開発部は良しとしなかった。飛行を持たないクリーチャーがイラストで浮遊しているのは混乱を招く、というのが開発部の過去の経験に基づいたポリシーだったのだ。まあ、それはわかる。

逆にどう見ても飛んでないやつが飛行を持っていても困るし。上記の理由で、このイラストを浮遊していないものにする必要があったのだが…あろうことか、Markさんにイラストを一部変更する連絡なしに、このホラーには長い両脚が追加されてカード化されてしまったのだ。

この一点にはMarkさんも疑問でいっぱいのようだ。たしかに、イラストを見ているとこの脚と触手がまるで錯視を引き起こすトリックアートのような、違和感のある交差の仕方をしているのは気になっていたが、まさかそんな理由があったとは。

開発部が浮遊に関する連絡をしっかりとMarkさんにしていれば、例えば壁に張り付く触手を増やしたりなどもっと違和感のないものになっていたのではないかな。

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2014/03/12 「エルドラージの碑」

ゼンディカーにて登場した「エルドラージ」という言葉。後に「エルドラージ覚醒」が発表され、「ワールドウェイク」では《ウギンの眼》が登場し…という段階的な告知が行われたのは記憶に新しい。

少なくともゼンディカーが出たばかりの段階では「また意味ありげな固有名詞にすぎないのだろう」と思ったプレイヤーも多かったことだろう。


この《エルドラージの碑》は、当初はリミテッド向きの神話レア、所謂「ボム」枠かと思われた。リミテッドならば5マナで自軍が全て飛行・破壊不能・+1/+1修正を得たそのターンの内にあっさりと決着がついてしまうだろう。

逆に、守勢に回っている時はアップキープコストが首を絞めることになるだろう。このコストは「支払いません、エルドラージ破棄します」という選択制のものではない。

クリーチャーがいる限り、絶対に支払わなければならないものなのだ。クリーチャーがズラズラ並んでいれば別だが、そこそこの数しか居ない時などに《永久凍土の罠》などで抑え込まれると自滅への道を辿ることになるだろう。


「当初は」と書いたということは、後にリミテッド専用ではないことが判明するということである。スタンダード及びブロック構築で、この「モニュメント」を最後の一押しとして採用したデッキが活躍する。

Finals09ベスト8のデッキでは《イーオスのレインジャー》《遍歴の騎士、エルズペス》といった連中とのシナジーを発揮し、プロツアーサンファン10では《復讐蔦》という様々な面で相性の良い1枚と結託してベスト4プレイヤーを輩出した。

この躍進の一因は、スタンダードのメタの中心に、クリーチャー破壊に特化した「ジャンド」がいたことが大きいだろう。全てのクリーチャーが破壊不能となり、ジャンドが苦手とする航空戦力での勝負に持ち込めれば勝敗は決したようなものだ。


この素晴らしいカードに添えられたイラストもまた、同様に素晴らしいものである。前人未到の遺跡に踏み入れば、そこには禁断の光景が広がっていた…SFチックな雰囲気がプレイヤーの「ゼンディカー」へのワクワク感を刺激したことは間違いない。


ちなみに、Markさんによるとこのイラストの正式なタイトルは「Eldrazi Titan Idol」だそうだ。タイタンアイドル!

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2014/03/11 「日々を食うもの」

「実績ゼロ」でも有名なカードというものはある。ここで言う実績とは、もちろんトーナメント・シーンでのことである。環境を支配したり、誰かをチャンピオンに導いたり、100円から3000円に出世したり…そういう輝かしい実績というものはマジックの表舞台だ。
その影には「名前がおもろい」「テキストが意味不明すぎる」「とにかく弱い」という、裏世界の称号を争っているカード達が存在する。彼らは、表舞台で活躍するカードにも負けず劣らずの「愛されカード」である。皆さんもそんな1枚、あるでしょ?この《日々を食うもの》も愛されている1枚である。


この《リバイアサン》に続く2枚目の「リバイアサン」にして、本家と大きく趣を別にした機械獣。4マナ9/8飛行トランプルという、信じられない戦闘力・マナレシオを誇りながらも、同様に信じられないレベルのデメリットを併せ持つファッティだ。そのデメリットとは、相手に2ターン献上するというもの。

これを場に出すと「自分→相手→相手→相手→自分」というターンの展開となる。ちょっと考えれば、相手ターン①コイツを除去する→相手ターン②デカいクリーチャーを出す→相手ターン③殴られる、の死のコースが見えるはずだ。なので普通の感性では絶対に使わない。MOでこれを叩きつけられた相手のターン終了時に《粉砕》を撃ったら投了された経験がある。それくらい、これはどうしようもない。


でも使いたくなるナリをしているのも事実である。4マナ9/8飛行トランプル、イラストもカッコイイとくれば、憑りつかれたようになるプレイヤーもいることだろう。当時は《もみ消し》ぐらいしか選択肢はなかったが、今の時代には良いものがある。《倦怠の宝珠》だ。

相手を阻害しながら、自分は《ファイレクシアン・ドレッドノート》や《地ならし屋》を叩きつけるのも面白そうだ。あくまで、面白いだけね。勝てるなんてそんなこと言ってないぞ!


さて、イラストレーターMarkさんのお話。このイラストは「ダークスティール」の広告・BOXやパックのデザインに使われる可能性が高かったため、Markさんはその時に備えて、背景の空と手前に広がる海を大きめに描いたそうだ。

ところがカードに使われる際に、その余分に描いた背景も全てカードイラストとして仕様されたため、Markさんが想定していたよりもこの「Skywurm」の細かい部分が見えにくくなってしまったのだそうだ。


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2014/03/10 「精神攪乱スラル」


最初に言ってしまうと、今週は「趣味全開ウィーク」だ。いつぞやもやったが、好きなことをやらせていただきたい。僕のモチベーションを保つために必要なことなのです。そんなわけで、今週は「Mark Tedin」ウィークだ!早速いってみよう

まずはMarkさんの紹介をしたいと思う。Markさんは1968年1月25日、アラスカ州のシトカの生まれ。アラスカとは極寒の地。厳しい自然が彼の力強く、筋繊維などの質感の表現に重きをおいた、ズッシリとしたイラストを育んだ…のかもしれない。そんな彼がマジックに関わるきっかけは、親友であり同じくマジックのイラストレーターであるAnson Maddocksに誘われたことで始まる。

マジックの始まりである「アルファ」にて重要なアーティファクトを数点描き、マジックが産声を上げるのと共に鮮烈にデビューを飾った。200以上のイラストを手掛けた彼には、無数の代表作がある。最初は彼の初期の代表作である《精神攪乱スラル》から始めたい。


「フォールンエンパイア」にて登場したこのイラストは、その狂気に満ちた圧倒的な存在感で多くのプレイヤーの脳裏に焼き付いたことだろう。もともとこのカードには3種類のイラストが用意されていたが、このイラストのインパクトは完全に他の2枚を食ってしまった。

「第5版」に再録された際にもこのイラストが用いられ、この捩れた狂気の結晶はその姿を全世界の新規プレイヤー達に軽いトラウマを植え付けたのだった。僕自身も「第5版」のスターターからこれが出てきた時は、「マジックってヤバいゲームやな…」と思ったものである。


頭部と腕部のみで形成されたその姿は、見たものに嫌悪感を抱かせること間違いなし。そう、最初は「イヤ」なイラストだが、見ているうちに段々と「パンチ効いてるけどきらいじゃない」「どっちかというと好きやな」と移り変わっていく、奇妙な魅力にあふれた1枚だ。その斬新なデザインは、近年のホラー系ゲームのクリーチャーデザインに影響を与えているように思えてならない。

カードとしては、なかなか優秀な「サボタージュ能力」持ちである。このサボタージュというのは、攻撃をしてブロックされなかった時、このクリーチャーを生け贄にしたり戦闘ダメージを与えないことを選ぶ代わりに、なんらかのボーナスが得られるという誘発型能力の総称だ。



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2014/03/08 「Our Market Research Shows That Players Like Really Long Card Names So We Made this Card to Have the Absolute Longest Card Name Ever Elemental」


はい、いつまでも逃げてはいられない。ということで、英名の長さ・英単語の数・使用されているアルファベットの種類数という部門で不動の1位を誇る「三冠王」、「むちゃくちゃ長いヤツ」の登場だ。いつかはこのコラムでも避けては通れないと思っていた難物に、今日は果敢に挑んでみたい。


日本語訳されたカード名は「市場調査部によればプレイヤーは本当に長い名前が好きなのでこのカードを間違いなく歴代最長の名前にしてみた精霊」。お経である。間違いなく歴代最長の名前にして、コモンなので土地目当てで「アンヒンジド」を剥きまくっていると気が狂うほど湧いて出る。


しかもソートは《Wordmail》と並んでいるので、「アンヒンジド」シールドはこのソートを複数引き当てたものの勝ちと言ってしまっても良いだろう。27/27でパンチは一度体感してみたい史上最大のギャグだ。


能力の「イラスト・ランページ」もさり気なく強力で、これをブロックしているクリーチャーのイラスト内のクリーチャーの数-1のパンプをすると言うもの。これを《無数のゴキブリ》でブロックすると、+27の修正を受けることになる(1匹2匹数え漏れがあったら申し訳ない)。だから、何やねん。



フレイバーテキストに書かれた暗号のような文字列「OMRSTPLRLCNSWMTCTHTALCNEE」は、このカード名の正式略称で、各英単語の頭文字を並べたものである。これが日本語訳されると「市調よプ本長名好こカ間歴最名しみ精」となる。普通、カードの略称とは「Knight of the Reliquary(ナイトオブザレリッカリー)」と言うのがまどろっこしいから「KotR(ケーオーティーアール)」と略するのである。


このカードの場合、略称を覚える方が難しい。この暗号を覚えるくらいなら、国語の授業で長文を暗記して朗読させられたように、何度も読んで口に出して言って覚えた方が早い。何も見ずにこのカードの略称をスラッと言える人を、僕は尊敬する。でも、だから、何やねん。



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2014/03/07 「The Tabernacle at Pendrell Vale」


最も英語の文字数が多いカードは、今週の頭に紹介した通り《先祖の院、翁神社》。このカードは非常に文字数の多い=長い名前な訳だが…元祖「名前の長い土地」とくれば、やはりこの「ザ・タバナクル・アット・ペンドレル・ヴェール」だ。

文字数では翁神社に一歩(一文字)及ばずの敗北となってしまったが、この「名前の長い土地」は語感では断然ヘヴィで長ったらしく感じるものとなっている。

カードとしても、「レジェンド」を代表するレアであり、大変高価で手に入りにくいものとなっている。それは名前が長いのみならず、効果も強力そのものだからだ。

「レジェンド」当時では当たり前だった、特殊な能力を持つ「マナが出ない土地」群を代表する、影響範囲の非常に広いカードである。その能力は…


すべてのクリーチャーは「あなたのアップキープの開始時に、あなたが(1)を支払わないかぎり、このクリーチャーを破壊する。」を持つ。


というもの。これが場にある限り、相手は戦線の維持のためにマナの支払いが強要される。たった1マナとは言え、1ターン目に《極楽鳥》→相手の1ターン目がこれ、という展開になるとゲンナリするものである。

これと《Maze of Ith》や《冬の宝珠》、《プロパガンダ》などが合わさると、もうクリーチャーで何かしようという気もなくなってしまう。


以前はオラクル変更で、「破壊」ではなく「生け贄」となっていたが、現在は発売当初の「破壊」に戻っている。

正直なところ、テーロス・ブロックの「神」を抑えられないなどのパワーダウンは否めないが、それでも信心を稼ぐ周りのクリーチャーはバシッとシャットアウトしてくれることだろう。後に《幕屋の大魔術師》に生まれ変わっている。僕の大好きなクリーチャーの1つだ。


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2014/03/06 「霊界への門、神ヶ眼」


英語・アルファベットに関するマジック豆知識を紹介するこの1週間、本日は「カード名に含まれる英単語の数」が最も多い1枚である《霊界への門、神ヶ眼》の紹介である。このカード名に含まれているのは6単語…もっとゴテゴテした名前のカードがありそうで、意外にないというのもおもしろい(勿論、銀枠を全力で排除した結果である。25単語って…)。


《霊界への門、神ヶ眼》はアンコモンの伝説の土地という、実に「レジェンド」以来の登場となる珍しい1枚として注目を集めた。カードとしても珍しい能力を持っており、これが墓地に送られると1/1のスピリット・トークンを場に残していく。

破壊されても別のリソースを場に残す土地というのは、他に類を見ない。しかし、この能力はどう使ったものだろうか?土地破壊対策としてサイドインしたところで、相手はこれ以外の土地を割ってくるだけだろう。無色マナしか出ないのがなんとも辛いところである。そして仮に《ハルマゲドン》のような全体土地破壊対策として仕込んでも、出てくるのは1/1バニラ1体のみである。

神河ブロックのスピリット・トークンにありがちな勘違いなのだが、このスピリット達は我々が近年遭遇した「イニストラード」の宙を舞う幽霊たちとは同じ部族ではあるが、根本的に別物である。彼らは地べたを這う脆弱な魑魅魍魎なのだ。もしこの魑魅魍魎達が飛行を有していれば…評価はまた違ったものになったかもしれない。いずれにせよ、面白いが使いにくいカードには間違いない。


昨年の大きな変更として「レジェンド・ルール」の改定があった。これは、複数の同名の伝説のパーマネントが、同一のプレイヤーのコントロール下となった時に「どれを残すか」をプレイヤーが選び残りを墓地に置くというもの。この変更で、こ

のカードを軸にしたデッキ(そんなものあるのか)は挙動が大きく変更されている。以前までは「神ヶ眼Aを場に出す→次のターンBを場に出す、2枚とも墓地に行きスピリットが2体場に出る→Cを場に出す→Dを場に出し2体…」という動きをしていたが、現在は「Aを場に出す→次のターンBを場に出す、Bを廃棄してスピリットを1体場に出す→Cを場に出す、Cを廃棄してスピリットを…」というように、トークンの生産速度は変わらないがそれが2ターンに1回か毎ターンかという差が出るようになった。

個人的には、チャンプブロックなども考慮すれば現在の方が強化されていると思う。《世界のるつぼ》《壌土からの生命》を用いて、さあデッキを作ってみよう(やめとこう)。


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2014/03/05 「ファイレクシアの吸血兵」


こちらも記録保持者である。例によって「銀枠を除く」マジックのカードの中で、カード名に使われているアルファベットの種類が最多(17種類)というタイ記録を持っている(もう1枚は《轟く余震》)。

文字数自体は19文字だが、3つ重なった「o」以外は全て別のアルファベットという、「地味にすごい」名前となっている。他のカードはこれよりも文字数が多くても、大抵同じ母音が2度3度と出てくるためなかなかこうはいかないのだ。

そんな地味にすごいヤツな訳だが、カード自体はどうかというと、構築ではお呼びでない1枚だ。例え1:2交換が取れる可能性があるとはいえ、こんな重くて速効性がない中途半端なカードにサイドの枠を割く余裕などあるはずがないのだ。

ではリミテッドではどうか?というと、「悪くはないが強力とまでも言えない」という1枚である。しかし、それは単体での話。確かに、単体では白のクリーチャーを道連れにするだけである。

いかに3色以上のデッキが普通に存在する同環境とは言え、色が合わなければ使い勝手の悪い3/3でしかない。しかし、ここに色を変えるカードが加わるとどうなるだろうか?《高潮の幻想家》がいれば、なかなか手出しの出来ないややこしいヤツへとパワーアップさせることができる。

そしてここに更に《脱出路》が加わると…マナはかかるが、毎ターン(あるいは分割払いで2ターンに1回)相手のクリーチャーを1体除去し続けることが出来るシステムの完成だ。地味に見えるが、これがハマればなかなか強力なのだ。

特に、当時はまだ今ほど軽いクリーチャーの打撃力がなかったため、この盤面を作るのも絵空事では決してなかった。そして、このシステムはコモンのみで作られているのも注目すべき点だ。アンコモンが絡むだけでまずそのカードがパックから出るか否かの話になるが、コモンのみとなれば狙ってピックしてもバチはあたらんだろう。

ちなみに英名の「Bloodstock」は直訳すれば「サラブレッド」となる。これが「ファイレクシアのサラブレッド」という和訳になっていたら強烈な印象を残したことだろう。


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2014/03/04 「テク」


昨日とは逆に、英名最短のカードとは?銀枠がありならば答えは変わってくるが、例によってそれらを排除するならば10枚のカードがそれにあたる。その中で一際異彩を放つのが、このアーティファクトのドラゴン《テク》だ。

この「テク」という名は、デッキをイジるというスラング「デック・テク」に由来しているらしい。無色のクリーチャーでありながら、基本土地の種類が多く入っていなければその本来の力を発揮しないため、これを運用しようと思ったら相当な「テク」を要求される…といったニュアンスでつけられた名前ではないだろうか。

このカード名がこれほど短いものになったのには理由がある。是非英語版のテキストを確認していただきたいのだが、ルールテキストが長すぎるのだ。

何せ1つの基本土地につき1つの特殊能力を得るのだから、5種類の土地名とそれにより得られる能力をいちいち全て羅列しなければならず、どう頑張ってもこのように長すぎる文章になってしまうのだ。

実はこれでも短くなった方で、最初は「Tek gets +2/0 as long as you control a plains.Tek have flying~」といった具合に毎度毎度このカード名を指す言葉が登場していたのだから、長いってものじゃない。

そんな長い文章を従来のテキスト欄に収めようと思うと、一体どれだけフォントを小さくすればいいのやらである。このため、苦肉の策として、このカード名は「Tek」という非常に短いものとなったのだ。

テキスト欄に余裕があれば「Forgotten Dragon Engine」のような名前になったりしていたのだろうか。


とりあえずテクを運用するならば、とりあえず沼は必須だ。そこに島と山があればなかなかといったところ。これが森・平地みたいな状況で場に出ても、ガッカリ性能すぎる。こういうこともあって「モミールベーシック」では後者の2枚よりも前者の3枚が優先されるのだ。


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2014/03/03 「先祖の院、翁神社」



マジックはどこの国で生まれ(ピポン!)「アメリカ!」はい、正解です。というわけで、マジックは元々英語で作られている。英語版はマジックを発売している国ならば世界中どの国でも流通しており、マジックの世界では「公用語」である。

英語のカードを使っていればトーナメントで海外の方とあたった時も安心だったり、複雑なルールテキストで困ったら英語版をチェックするとわかりやすかったりと英語版の利点は多い(勿論、各言語にはそれぞれ独特の雰囲気があるという良さがしっかりとあるため、どちらが良い悪いという話ではない)。


今週はこのマジック公用語である「英語」およびそれを形成する「アルファベット」にまつわる一週間でいってみたいと思う。自分でハードルを上げてしまった感もあるが、こちらも伊達に毎日コツコツと200枚以上のレビューを書いてきたわけではない!ということで頑張ってみたい。



英語どうこう言っといていきなり純和風のカードでどうする!というツッコミがきそうな1枚ではあるが、何故このカードなのか説明しよう。


このカードの英名は「Okina, Temple to the Grandfathers」、実に28文字のアルファベットが用いられており、このカード名は英語版のカードで「銀枠」の連中を除いたものの中で最長という記録保持者である。銀枠の連中は、「狙って名づけられている」ヤツらばかりなので、狙ってつけられたわけではない純粋なカード名としての文字数で堂々の王者ということにしていいだろう。良いに決まっている。


カードとしては、一見「神河リミテッド」専用機に見えるが、意外と構築でも評価された1枚である。


基本土地を根こそぎ持っていく《隔離するタイタン》の能力の被害を気持ち抑えたり、《ショック》や《忌まわしい笑い》で伝説のクリーチャーが除去されるのを防いだりと、意外な活躍をする激渋な1枚だったのだ。今でも統率者戦やデュエルコマンダーでは森と差し替えて1枚仕込んでおくべきだろう。

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2014/03/01 「刈り取りの王」


今週は小神に関係するカラーのハイブリッドを紹介する一週間をお送りしてきたが、 6日目の本日、一体どの色のハイブリッドが登場するのか?と思われた読者の方もおられたのではないだろうか。

まあ、ご覧の通りの「裏ワザ」で切り抜けました。今回の小神は5枚、今週の更新は6回。
この事実に気付いたのは、《鳩散らし》を書き終わってからだった。

こんなウッカリはもうしないと心に誓ったのだった。

さて、裏ワザこと5色ハイブリッドの《刈り取りの王》さん。
彼が場に出ていればとりあえず全ての小神が信心2を獲得出来る。

カカシという非生物でありながら、いろんな神様を信仰しているっていうのは面白くないかな?そんなことどうでもいい?

初見のインパクトは満点である。

マナコストが一体どういうことになっているのか、理解するのに3秒ほどの時間を要するカードというのもこれぐらいだろう。

インパクト自体はあるのだが、5色のアーティファクトクリーチャーは既に《ギルド渡りの急使》がおり、ハイブリッドであるアーティファクトは「アラーラ再誕」で大量に登場したため、

実はこのカードがオンリーワンというアイデンティティは「単色ハイブリッドマナシンボルを持つ唯一のアーティファクトでありクリーチャーである」という、今一つピンとこないタイトルを有している。

まあそれでもタイトルはタイトルである。

カードの性能としては、カカシのロードであり、後続のカカシは全て《名誉回復》になるという、場に出さえすれば超性能を発揮するカードではある。

ただ、場に出すこと自体が困難なので、《婆カカシ》で釣り上げるのがベストな運用となるだろう。

ファンデッキの域を超えることはないが、それでも楽しいデッキを作ることが出来るのは確かだ。 統率者戦で全てのカカシと5色の呪文のいいところだけを詰め合わせにしたデッキなんか楽しいだろう。接待用にもってこい。

あ、日本語版は誤訳で「伝説の」が抜けているけど、しっかりと伝説のカカシです。

カジュアル要素の色濃いカードではあるが、一度「ガチ」の場に姿を現したことがある。
モダンで瞬殺狙いの「感染」コンボデッキに投入された王様は《猛火の群れ》のピッチコストの支払いに充てられるためだけにデッキに投入された。

赤くて10マナのカードであるとして白羽の矢が立ったのだ。
しかし、王として君臨する間もなく《猛火の群れ》は禁止となり、すごすごと「カジュアルの王」の座に引き下がって行ったのだった。

シャドウムーアのエキスパンション・シンボルは、実はこのカカシの頭部をモチーフとしている。

よーく観察してみて欲しい。



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2014/02/28 「ラクドスのギルド魔道士」


ギルド魔道士は「これこそがハイブリッドである」と言っても良い。「ラヴニカ:ギルドの都」にてお披露目となった新しいデザイン・ハイブリッド。2色のマナに基づくギルドに仕える者として、どちらか片方の色でも・あるいは2色でも機能するように作られたこれらのカード。それぞれの色に合わせた2つの起動型能力を持ち、単色でも悪くなく・2色とも揃っていれば2マナのクリーチャーとは思えない芸当で暴れ回る強力なサイクルであう。

《ラクドスのギルド魔道士》は、ラクドスらしさを上手く体現している1枚に仕上がっている。

黒の能力は、手札を1枚捨て去ることでターゲットのサイズを2ランクダウン。これはリミテッドでは適切な除去として機能するだろう。繰り返し使える除去・コンバットトリック持ちというのは、それだけで初手でピックしてしまうレベルである。

そして赤の能力は、特攻するゴブリン・トークンを召集する。サイズは2/1でターン終了時に死んでしまうが、それでも打点が増す能力というのは十分に強力である。このトークンは何も特攻させるだけではなく、ブロックに回すことも可能である。クリーチャーを強化する能力・クリーチャーが場に出ることで誘発する能力などを持つパーマネントが場に出ていれば、この能力は同じサイクルの《グルールのギルド魔道士》より有用なものとなることだろう。


リミテッドでは完全にゲームを支配してしまう強さなのは勿論のこと、当時のスタンダード・ブロック構築でも序盤のアタッカーにして優良なシステム能力を持つクリーチャーとして、《闇の腹心》と共に「ボロドスアグロ」などの2マナ域に採用されていた。

後半の使い道のなくなったマナや手札(いずれにせよ土地カード)を有効活用するにはこれほど便利なヤツもなかなかいない。


僕は本当にこのカードがデザインもイラストも大好きで、現代でも活躍させてあげたいとずっと思っている。良いタイミングで《殺戮の神、モーギス》が登場したので、今度デッキを組んでみよう。


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2014/02/27 「妖精の女王、ウーナ」


古今東西、あらゆる伝承での妖精は小さく儚い存在である。マジックにおいても、戦闘能力自体は低いものが多く、彼らは肉弾戦ではなくそのトリッキーな能力を活かしてゲームをじっくりと支配していく。

そんな妖精たちを総べる女王は、彼らとは一線を画すバリバリの戦闘向きのボディを有している。フェアリーの中で最大のマナコスト、サイズを誇り(多相!とか言うなよ)、殴るだけで十分ゲームを決められる存在でありながら、自身が攻め込まずに戦力(トークン)を拡大しつつ、敵陣(ライブラリー)に直接爆撃を行える能力を持つこのカード。

「攻撃型空母」とでも形容すれば良いだろうか。場に出てしまえば、対戦相手はもうウーナを無視することは出来ない。例え無限ライフコンボを成立させたとしても、放っておけばブロッカーを生み出しながらライブラリーを削り切られてしまうだろう。しかもこのライブラリー破壊は「追放」であるため、失われたカードは永遠に帰ってこず墓地を利用したコンボを助長してしまうこともない。さすがは女王様。


統率者戦においても人気のジェネラルであり、無限マナコンボが決まればそのまま出てきて即座に1人ゲームから消し去ることが可能。色も手札破壊・クリーチャー除去・サーチ・墓地利用の黒、カウンター・ドロー・バウンスの青と統率者戦において強力な・簡単にアドバンテージを稼げる2色で構成されているのは大きな利点だ。

青黒2色のジェネラルを選ぶなら恐らくは1番人気の1枚だろう。「モダンマスターズ」「From the Vault:Legends」に再録されたことで手に入れやすいため、これから統率者戦にチャレンジしたいプレイヤー達にも優しい1枚である。プレイヤー達へのリアル《ウーナの寵愛》である。


アイルランドの民間伝承に登場する、「シー」と呼ばれる様々な妖精たち。それらを総べる王と王妃が存在しており、その王妃の名が「ウーナ」というのだ。

この王妃が、我らが女王ウーナ様の御名前の由来となっていることは明らかである。多くの妖精に慕われ忠誠を抱かれているアイルランドのウーナではあるが、旦那である王・フィンヴィラにはしょっちゅう人間との浮気をされているそうだ。


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2014/02/26 「巨大ヒヨケムシ」

薀蓄回。生き物大好きな僕が「ヒヨケムシ」について語る。漢字で書くならば「日避虫」となろう、その名の通り太陽を避ける=夜行性傾向の強い蟲である。
節足動物門鋏角亜門クモ綱ヒヨケムシ目に属する、蜘蛛に似た・しかしシルエットが明らかに異なる連中の事をヒヨケムシと呼ぶ。

その最大の特徴は、カードでも描かれている長い触肢(歩行および接触による周囲の探索に用いる脚)と、巨大な鋏角(頭部の中央にある牙状の脚。蜘蛛の仲間たちの口はそれぞれの食生活に合わせて脚が変化したものとなっている)が作り上げる恐ろしげな風貌である。

また、その頭部から腹部にかけての特異な形状も本種の魅力ではあるのだが、残念ながらこのイラストの個体は巨大すぎてそこまで描かれていない。

英名の「Camel Spider」は、その体型および砂漠に生息していることからつけられたものだろう。砂漠などの乾燥地帯を中心に世界中の熱帯・亜熱帯に広く分布している。恐らくは低温に弱いようで、残念ながら日本には生息していない。


その鋏脚が示す通り肉食の獰猛なハンターであり、動くものならなんでも喰らいつく凶暴な性質と、獲物の身体を食いちぎり出血で弱らせてから貪り食う戦術を併せ持っている。

捕食対象は昆虫・同属・トカゲ・ネズミや小鳥と相手が何であれ襲い掛かる。タランチュラの類とは、お互いに食う・食われる関係にある。乾燥地帯を生きる多脚生物として、お互いに一撃必殺を極めた捕食者同士である。

タランチュラが毒を用いるアサシンならば、ヒヨケムシは肉弾戦バリバリ、大斧をフルスイングしてくるバーサーカーといったところだ。


えーカードの紹介でしたね。所謂「歩く火力」の最終進化系である。4マナでタフネス1とどんな戦闘でも死んでしまう貧弱さを代償として、パワー4トランプル速攻という殺傷能力とその敏捷性で何人も触れることができない除去耐性(被覆)を併せ持っている。

赤と緑、両方を用いるビートダウンで主に使われたが、「イゼットロン」といったコントロールがアグレッシブサイドボードとして走らせるなど、デッキを選ばない縦横無尽の活躍を見せていた。残念ながら《歓楽の神、ゼナゴス》との相性は悪い。

まあこの蟲は見るからに神話の類とは縁遠い存在であるし。飼いたいけど、流通は少なく長期飼育はすこぶる難しい。仕方なくこのカードで我慢するのだ。


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2014/02/25 「鳩散らし」

《都市国家の神、エファラ》は、各種ミッドレンジ系のデッキでの採用が多く「小神」サイクルでも最も活躍している1枚である。そんなエファラとの相性が良いかどうかはさておき、本日紹介するのはビッグ・エンチャントの《鳩散らし》だ。

まず、デカい。トリプルシンボルの7マナエンチャントなんて、稀に見る巨大物体である。このビッグ・エンチャント、重いのには勿論それに見合う効果がある訳で。このカードは簡易的なロック状態を作り上げることが出来るのだ。クリーチャー以外の呪文をシャットアウトし、全て1/1の鳩に替えてしまう。この効果範囲は広く、全てのプレイヤー(勿論これのコントローラー自身も含む)が争いの火種になるような呪文を投下しようとすると、たちまち平和の象徴へと変換されてしまうことになる。ここから先はクリーチャーでケリをつけようという趣の1枚である。


クリーチャーがほとんど入っていないコントロール、コンボなんかはこれを出されると全く別のデッキとして戦うことを強いられる。《神の怒り》なんかを積極的に撃って鳩を全力で展開してくるコントロールなど、見ていて滑稽なものだろう。その逆に、クリーチャーメインのデッキには何もしない1枚となってしまう。有効である相手は限られる、基本的には扱いにくい1枚である。


この扱いにくい呪文が輝いたのは、《不朽の理想》という相方がいたからこそ。《不朽の理想》でまずはこれをサーチしてきて、対戦相手の行動を阻害する。その次のターンに誘発する「歴伝」は、コピーであるためこのカードをすり抜けることが可能。そのまま《独房監禁》をサーチすれば、相手の場には鳩が群がり続けるだけで痛くも痒くもないわフハハハハである。


打ち消されない呪文や、エンチャントに触れるクリーチャー達には無力である。為す術もなく踏み潰されるのもまた平和なのか…。ちなみ自分の打ち消されない呪文との相性は抜群。《すべてを護るもの、母聖樹》であらゆる呪文が鳩のオマケ付なオーバースペック呪文となる。




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2014/02/24 「台所の嫌がらせ屋」

「神々の軍勢」の新カード達が各地で快進撃の狼煙を上げ始めたようだ。多くの前評判が低い評価であったのを、完全にひっくり返す勢いが見られる。土地・除去と優良カードが揃っているが、やっぱりマジックプレイヤーなら「小神」サイクルを使って結果を残したいと思うのではないだろうか。

2色のマナシンボルの合計が7を越えれば顕現するこれらの神であるが、発売前に多く見られた質問が「ハイブリッド(混成マナシンボル)はどうなるの?」というものだった。ハイブリッドは2つの色マナを示していても、あくまで1つのシンボルであるというアナウンスが公式から発表され、「これで《夜帷の死霊》2度目の高騰もないな」とホッとしたプレイヤーも少なからずいただろう。今週は、そんなあくまで単色と同じ扱いではあるが、その使いやすさで小神達の顕現を助けてくれるハイブリッドカードを紹介したい。


一番手は《収穫の神、ケイラメトラ》を支える緑白から、「ハイブリッドカード=コレ」と言ってしまって良いほどの、代名詞とも言える存在《台所の嫌がらせ屋》。今さらこのカードの紹介をする必要があるのかというレベルの1枚ではあるが、あえて書いていきたい。


通称「キッチン」「ゴキブリ」などと呼ばれるこのアウフ。3マナ3/2と、クリーチャー水準からみればサイズは悪くない。そこに、場に出た時に2点回復というオマケ付き。この回復はコイツが出てくるまでの1・2ターンに受けたダメージを帳消しにできる微量ながら確実に機能するオマケである。そこに加えて「頑強」持ち。一度やられても、1サイズ落としながらも復活して再度プレイヤーに差し入れをくれる。このしぶとさと台所という単語が「ゴキ(略)」という通称をもたらしたこと至極当然の結果である。


除去耐性を備えた、攻めにも守りにも優秀なこのクリーチャーは当時スタンダードの大会に出ればそこら中で見ることになった。スタンダードに存在したどのデッキと対戦しても腐ることがなく、クリーチャーとしての仕事を全うできるというのは素晴らしい。「クィックントースト」及びその派生形「残酷コントロール」など多くの多色デッキで採用された。また、最近ではモダンの「メリーラポッド」にて、《出産の殻》とのシナジーでアドバンテージを稼ぎ、また《シルヴォクののけ者、メリーラ》《臓物の予見者》とのコンボで無限ライフを生み出したりと大活躍の1枚である。


パワーが3と戦闘向きなのがポイントの1枚だが、これは《目覚ましヒバリ》で釣り上げられない様に調整されたため。結果カードパワーが低いということもなく、強力だが極悪でも支配的でもないと、絶妙な調整が施された1枚となった。赤使いから忌み嫌われていたけどもね。


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2014/02/22 「ワームとぐろエンジン」

メタルにおいて大事なこと。それはサウンドだけでなく、ジャケットからもメタルを感じられること。

CDを並べた時、そこに「鋼鉄感」がある・あるいはないことで
我々は「あ、これは生粋のヘヴィメタルなんやな」「これはどっちかというとハードロックやね」ということがわかることが大事である。

いかに音楽と言えど、聴いてもらうためにはまず視覚からハッキリさせておかねばならないこともあるのだ。 血みどろの骸骨が赤ん坊を抱いているジャケットの中身が、甘酸っぱい高校生の恋愛を歌ったほんわかPOPSとかだと「おいおいおい」となるものだ。逆もまたしかり。

これはマジックにおいても同じことだと僕は思う。

カードの役割と、それのイラストが乖離していてはいけないと思う。
近年は、鳥のイラストなのに飛行を持っていないカードなんかは出ていないし、強いカードはしっかりとかっこいいイラストが用いられている。

この強い=かっこいいというのは、カードゲームとして大事なことだ。
これからのゲームの発展のことを考えたら、若い世代がより感覚的に「このカードは強い・良い」ということが分かった方が良いのである。

そしてそれは、より最新の感覚で描かれていくことになる。
メタルのジャケットが、騎士がバイクにまたがったコミック調のイラストから実写さながらのCGで描かれた 有機的な側面を持ったロボットへと移り変わって行ったように…マジックのイラストもより現代的になってきているのだ。

そんな中現れた《ワームとぐろエンジン》は、この潮流の申し子のような存在である。

まず、強い。これがスタンダードで使えた頃はあらゆるデッキで採用されたのは言わずもがな。 6マナ6/6で絆魂という攻めにも守りにも頼もしすぎる能力と、自らの進路を止めに来たものは必ずや道連れにする接死。

そして、万が一破壊されても分裂することで生存し、それぞれが十分な戦闘力を誇るサイズ・能力であるということ。 非の打ちどころがない素晴らしいフィニッシャーだ。

このカードの肝である、この分裂能力が、イラストを見れば理解できるのも素晴らしい。
まさしく近代SFチックな有機的ロボットであるクールなイラストをしっかりと視れば、 それが白と黒のワームがらせん状に合体して出来た怪物であると理解することが出来る。

強さ・デザイン・イラストの3拍子揃った、カード殿堂入り(そんなものがあれば)確定の1枚である。
これが参加賞で貰えたプレリは、最早「異常」と言ってしまって良いだろう。

本当に素晴らしい1枚である。これからもモダン等で必ずやその存在を誇示し続ける1枚となるだろう。

無慈悲に襲い掛かるその姿には、最新鋭のメタルコアの楽曲がよく似合う。



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2014/02/21 「精神異常」

きましたね。イラスト、効果、カード名。全てが素敵にメタルな1枚。「ベッドラム」という響きが最高にメタルなのはもちろん、「精神異常」というのも古き良き邦訳メタル感が溢れていて、これはこれで良い。

CD屋さんのメタルコーナー(特に輸入盤の)に行ったら、絶対あるでしょこのイラスト。狂い倒しているゴブリン達がたまらない。槍を喰うとか、キテるでしょ。こういうジャケットのバンドは、一見ゴリゴリサウンドに見えて聴いてみると案外にキャッチーな楽曲であることが多い。百見は一聴にしかず。


カードとしては、文字通り気が狂っている1枚である。何せマジックの根幹である「戦闘」というものを、この上なく原始的なものにしてしまうのだ。皆が皆、気が狂ってしまえば、そこには先制攻撃やプロテクションといった無粋なものは意味をなさなくなる。とめどなく湧き起ってくる殺意を束ねてブツけてやればいいのさ、ってなもんである。

このカードはマジで殺しにかかってきている。自分が死ぬことになるかもしれないのに。んなもん知るか。あーでも貼っちまった後にあんなやつが出てくるなんて聞いてねえぞ!いや関係ねえ、突っ込め!いけいけーーーーー!…みたいなデッキで使っていただきたい。相手のブロッカーを除去でどけて殴るという、徹頭徹尾ガン攻めアーキタイプが赤には少なからずある。

相手が淀みなくブロッカーを用意してくるとなかなか厳しかったり、逆に攻めたいのに除去を必要以上に引いてしまい決めきれないという展開も多々あることだろう。そんな悩みは、いっそこれ4枚とクリーチャーと本体用の火力に絞り込んだデッキにしてみれば一挙解決。

これ1枚で全てのクリーチャーを除去出来るようなものだし、以降湧いてくる者も全てシャットアウト。そう考えると、これほど強いカードはないと思ってしまう。しかし実際は、手札にダブついたり・4マナが想っていたより重かったり・こんなもんいれてるスペースあったら盤面に触れるカードいれろ馬鹿野郎!と思ったり、なかなかうまくいかないものである。


今の時代、これが帰ってくれば…《モーギスの教信者》がその性能をフルに発揮できる、攻めながら信心を稼げる良置物になった予感が…いや、《ボロスの反攻者》との相性が終わってるか。解散~。



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2014/02/20 「最高の時」



メタルと言っても、ヘヴィメタルだけではなく様々なジャンルが存在する。僕は、あまり細かいことは考えずにザックリとメタルという捉え方をするようになったが、昔は「○○は××メタル」みたいなジャンル分けに妙にこだわったものだ。

そのジャンルの中に、シンフォニックメタルというものがある。従来のメタルサウンドに、オーケストラや合唱を取り入れた、シンフォニー(交響曲)であるかのような、それでいてメタルな音楽のことである。その音はこれでもかと言うほど「ファンタジー」。そもそもそういう世界観を描くことをコンセプトにしたバンドが用いる表現方法である。


この《最高の時》のイラストは、そんなシンフォニックメタルのジャケットであってもなにも違和感はない。むしろ、このカードからそういったサウンドが聴こえてくるレベルの1枚だ。


クリーチャーが単独で攻撃することを良しとする断片「バント」を体現した1枚である。

賛美と、単独攻撃時に誘発して追加の戦闘フェイズをもたらす、ザ・バントなエンチャント。これがある状態でパワー3のクリーチャーで攻撃した場合、まず4/4となり4点のダメージを与える。そして2回目の攻撃で再び賛美が誘発し、パワーは5に。パワー3のクリーチャーが9点のダメージを与えるという、とんでもないダメージ倍化装置なのだ。

さらには、周りに他の賛美クリーチャーなどがいれば、そのターンの内に決着をつけることなど容易い。賛美を中心としたデッキは、単独で攻撃したクリーチャーを除去された場合、著しくスピードダウンしてしまうという弱点がある。しかしこのカードがあれば、例え最初の勇者が道半ばで倒れてしまっても、その剣を引き継いだ次なる勇者が必ずや成し遂げてくれるだろう。


これを複数枚貼れば、その枚数分だけ追加の戦闘フェイズを得ることが出来る。だが注意してほしいのは、追加のフェイズを得たタイミングでクリーチャーをアンタップするということ。そのため、どれだけ最高の時が訪れようとも、同一のクリーチャーで3回以上の攻撃は出来ないのだ。



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2014/02/19 「幽霊議員オブゼダート」


最近のカードでも、十分にメタルっぽいイラストのものはある。このオブゼダートなんかも、カードとしての強さとメタル風味で目を引いた1枚だった。スポイラーを見た時はあまりのカッコ良さに収集しまくりたいという欲求と同時に、トップレア確定で高くなるんだろうな…という気持ちが混ざり合った何とも言えない感情になったのを覚えている。

カードとしての性能は、非の打ちどころがない。5マナ5/5という殴りに行けるサイズ、場に出た時に誘発する2点ドレインという速効性・継戦能力の高さ。そして、そのドレインを毎ターン誘発させる、ゲーム外への退避能力。除去耐性をある程度備えたフィニッシャーという、文句のつけ様がない完成された性能の持ち主である。

これが伝説であるため2体並ばないというのは、個人的にはデメリットと呼ぶにはあまりにも贅沢な話だと思っている。このハイスペックな生物…否、幽霊は、スタンダードではコントロール・ミッドレンジの良き5マナ圏として大車輪の活躍を見せている。これは恐らくスタンダードから落ちるまでの間、続くことだろう。未だ見ぬ、白黒の小神もクリーチャーとなるのに7つの信心を必要とすることだろう。これ1枚で4つも稼げるのは大きい。


イラストは、先代である《オルゾヴァの幽霊議員》の雰囲気を踏襲しつつ、より幽霊として個性的に・人間味溢れる集団として描かれている。欲深きオルゾフの最高権力者だ。おそらく、それぞれが欲求の権化のようなものなのだろう。逆七福神といったところだろうか。オーナーにとっては勝利をもたらしてくれる福の神であることには違いない。


これはヘヴィメタル・ブームの真っただ中、「アイアンメイデン」なんかを聴いて育った世代が「俺たちの時代(2000年代)にもちゃんとこういう音楽があるんだ!」と古き良きスタイルをリバイバルさせたようなバンドのジャケットにピッタリだろう。それぞれの幽霊がバンドメンバーの顔に似ていればなお良い。




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2014/02/18 「ヘルドーザー」


名前が良いカードは良いカード。僕の中で勝手に作っている法則である。この法則によると、《ヘルドーザー》は「最高」の1枚らしい。Hell(地獄)とBulldozer(ブルドーザー)の合成語である。ヘルドーザー、うーん響きが素晴らしいね。これが「地獄ドーザー」とかになっていなくてホッとする反面、それはそれで見てみたかったとも思う。

イラストがすごいカードはすごいカード。これまたマイルールで申し訳ないが、そういうことなのである。この法則において、《ヘルドーザー》は「超絶」の1枚であると評価されている。すごいよこのイラストは。酸やら毒液やらをまき散らす鉄球が両手。それで解体工事をしている巨大ゾンビ。その顔。何処か悲しくもあるその表情、巨人が意志なき死体となっても蘇生術で肉体を維持され、強制的に労働をさせられている…そんなストーリーが垣間見える、もの悲しげな表情。いいよヘルドーザー。素晴らしい。

実際にカードとしては、6マナ6/5という恵まれた体格の持ち主。人を殺めるのに十分なスペックは持っている。注目すべきは、その起動型能力。黒マナ3つとタップで土地を1枚叩き割る。ブルドーザーとしての仕事を体現したこの能力、瓦礫の山にしたものが基本土地でなかった場合、ヘルドーザーさんの謎のスイッチが入り「もう一回!」とアンタップするのだ。

このまま土地をもう1枚壊してマナを縛りにいっても良いし、相手のマナが伸びないようにしながらパワー6で殴りかかるも良し。所謂「脳みそ筋肉」に見えて、なかなかどうして手数の多い1枚である。いや、なんにせよやってることは脳筋か。


コイツほど、場に出して気持ちがいいクリーチャーもそうそういない(あくまで僕個人の意見だが)。リアニメイトやマナブーストなどを用いて高速召喚されたヘルドーザーさんは、相手にとって悪夢そのものである。エクステンデッドの「黒コントロール」やレガシーの「Train Wreck」にて活躍。これらのデッキを作ったヤツらは、メタルが好きに違いない。


若い連中で構成された爆音ヘヴィロックバンドが、後先あまり考えずにつけたバンド名っぽい。合金風のロゴがこのジャケットには映えるだろう。このカードは「Killdozer事件」という実際に起きたテロ行為が元ネタであるとも噂されている。その辺も、メタルっぽいのだ。



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2014/02/17 「Hellfire」


突然だが、マジックはメタルだ。さらに言えばヘヴィロックでもあり、プログレだったりもするが、とりあえずはメタルだ。

何の話かと思われる方のほうが多いとは思うが、うんうんと頷いているメタラーも多いと信じている

。マジックのイラストや、カード全体から醸し出される雰囲気が、なんとも言えずメタルだったりするのだ。そんな訳で、今週はメタルCDのジャケットイラストに使用されていても違和感のないカードを紹介して行こう。


栄えある1枚目は《Hellfire》。闇の眷属以外を薙ぎ払う地獄の業炎である。


黒でないクリーチャーをすべて破壊し、自分はその数+3点のダメージを受ける。しかしこのカードを使うデッキなど、どう考えても黒単色以外に有り得ない。相手の防衛ラインを突破したら、全軍をその喉元に殺到させれば決着と相成るだろう。

撃てば勝利と言ってもけして言い過ぎではない、強力なカードである。多少の命などくれてやる。防御面でも、そこまで悪いものではない。

どうせ何もせずに殴られていれば、これで受けるよりも多いダメージを受ける場合がほとんどだろう。《滅び》?いや、ごめんなさい。攻めてナンボのデッキに入れてナンボである。相手も黒単だったら?そこはもうこんなカードのことは忘れて仲良く握手しようぜ。


イラストは、業炎が十字軍の騎士たちを骨まで焼き払う中、高笑いするデーモンが描かれている。素晴らしい。実にメタルだ。

このイラストの上の方に「HELLFIRE」とおどろおどろしいロゴで描けば立派なジャケットの誕生だ。

教科書通りの80年代~90年代初頭のヘヴィメタルを堪能できるだろう。「レジェンド」自体が、ヘヴィメタル感溢れるエキスパンションであり、1つのアルバムであるとまで言ってしまっていいだろう。ヘヴィメタル・ブームも終盤に差し掛かった94年発売、ヴィンテージもののアルバムである。


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2014/02/15 「海神の復讐」

「テーロス」を用いたリミテッドにおいて、最も殺傷能力の高いカードは何か?様々な意見があることだろう。これはプレイヤーそれぞれの「好み」の問題も大きいし、自分が実際にゲームで経験した「ある特定のシュチュエーションにおいてバチッとハマったカード」を、一般論よりも強力であると評価してしまうことは往々にしてあることだ。
その絶対性のなさ・各自に理論があることがリミテッドの面白さだと僕は思う。しかし、冒頭での問いには皆が口をそろえてあるカード名を挙げるに違いない。これだけは答えがある。《海神の復讐》だ。


リミテッドにおけるバウンスの強さというものは、筆舌に尽くしがたい。どかして殴る・弾いて守る。その昔、ダメージスタックがあった頃には一方的に討ち取るなんてテクニックも存在していた。ただの除去よりも、ある意味では性質が悪い。何せ、バウンスの多くは除去よりもコストパフォーマンスに優れたデザインが為されているからだ。

複数のクリーチャーを対象にとって除去をする呪文は少ないし、それらには得てして制限があるものだ。それに比べて複数バウンスの多いこと。特に2体バウンスするカードは多い。リミテッドで2体戻せれば相手の主力を戦場から消し去ることが出来るだろう。そこに、《海神の復讐》である。

堂々たる3体バウンス。これは尋常ではない。例え重い呪文であるとはいえ、6はゲームで辿り着くには許容範囲の数字である。3体も戻されては、次のターンにキッチリ戦場の立て直しを行うということもなかなか難しい。まあ多くの場合、ターンは帰ってこなかったりするのだが。


この盤面に影響を与えまくる効果に加えて、オマケのような占術1。これが馬鹿にならず、例え相手が粘ってしまっても、こちらはさらに質を高めたドローが待っている。一度このカードの占術で2枚目の復讐が見えた時は、勝利を確信したものだ。こんな強烈なカードが、青マナシンボル1つでキャストできるというのもおかしな話だ。とりあえず島と青マナ出るカードとこれを入れておくという構築はシールドで相当目にすることになった。


殺傷能力がズバ抜けて高い1枚ではあり、撃たれたゲームはほとんど負けた経験しかない筆者だが、唯一勝利した試合の記憶は強烈に残っている。返しのターンにこちらもこのカードを使用したのだ。相手の場は更地となり、こちらの場にはかろうじて2体のクリーチャーが残っていた。リアル復讐である。「神々の軍勢」後も、変わらずボムであり続けるだろう。





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2014/02/14 「邪神の寺院」

考えてみれば「神」という言葉の意味するところは真に広いものである。人にとって聖なる存在である、所謂「神」を意味すると同時に、人を悪しき方向に導く存在である「邪神」にもその文字が使われているというのが面白い。他の文字がその意味を持つのではなく、あくまで「神」で表現されるというのはよくよく考えれば面白い話ではあるまいか。

これは日本語に留まらず、英語でも「False God」と表現される。邪悪であろうとも全知全能の力を有していれば、人はそれを「神」として認識するのだ。


マジックの世界で邪神と言えば何をさしおいてもまずは《邪神カローナ》である。オンスロート・ブロックの(そして次元ドミナリアを舞台としたシリーズの)最後を飾るに相応しいラスボスであるこの邪神は、その絶対的な力という魅力で多くの信奉者を得た。その信者たちが築き上げたのがこの《邪神の寺院》である。


信仰というものは力であり、最初は脆弱なものであっても、ある点を転機として報われるものとなる(かもしれない)。ずっと同じデッキを使い込むとかね。この邪神への信仰も、最初は無力に見える。いや、事実無力である。無色マナしか出ない土地というものは、他の機能を備えていない限りは単色のデッキでさえ基本土地以下の扱いをされることがしばしば。それが「マナすら出ない」となれば、一体これは何なのかと。

いやいや、そんな焦土のような荒れ地でも、しっかりと寺院を建立し、信仰を日々怠らず(毎ターン土地セットの意)に過ごしていれば、ある日突然天から力が降ってくるものだ。コントロールしている土地の枚数が5枚を以上になると、ようやく邪神はその力の一端を我々に授けてくれるのである。これまでのターン出すはずだったマナを倍にして供給してくれるのである。


しかし無色2マナが出て、5ターン目に6マナ(あるいはこれが複数出ていれば7マナ、8マナと)捻出することにどれだけの意味があるのか?これが、そこそこあった。オンスロート・ブロック構築では、セット全体が重いカード・特に6マナを超えるカード=パワーカードという作りだったため、それらのカードを1ターン早くキャストできるというメリットは、序盤に土地として全く機能しないことに目を瞑っても良いレベルの恩恵であった。この恩恵をフルに活かしたのは、《アクローマの復讐》を積んだ「白コントロール」や《窯口のドラゴン》を擁する「クローコントロール」など。


残念ながら、崇拝の対象である《邪神カローナ》との相性は全くもって良くない。嗚呼すれちがい。

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2014/02/13 「災難の大神」

亜神サイクル。「シャドウムーア」「イーブンタイド」にて登場した、2色ハイブリットカラーでクウィンタプル・シンボルのマナコストを持つ、神のごとき力を持った・しかし決して神ではない強力なクリーチャー10種が属するサイクルである。

前回の「神ウィーク」でも、このサイクル名の由来でありもっとも代表的な1枚である《復讐の亜神》を紹介した。最もスタンダードでその姿を見られた亜神に比べて、他の神と似て非なる連中は構築で活躍できていない。何れも、リミテッドではこの上ない支配力を誇るカードではあったが、除去が充実していた当時のスタンダードではサックリ対処されてしまったり、そもそもこれより先に相手が出していた軽いクリーチャーに押しつぶされたりといったことが不振の要因だろう。


しかし、この《災難の大神》はそんなサイクルにあって《復讐の亜神》に続く2番手として、タッグを組んで神の如き力を存分に発揮していた稀有な存在だ。そのサクセスストーリーの背後を探ってみよう。


まずは、そのサイズとトランプル。5マナ6/6トランプルという数字だけでもさすがレアという戦闘能力である。特にトランプルが重要で、この環境に存在していた《苦花》のフェアリートークンや《台所の嫌がらせ屋》といった「チャンプブロック要員」をブチ抜いて本体にダメージを与えられるのはそれだけで評価が1つ上がる環境に適応する力を十分に持っていたのだ


また、スタンダードから視野を広げると、このカードが「赤い」ことがこのカードの評価を高めていることに気付くはずだ。《炎の儀式》《煮えたぎる歌》といった赤いマナブーストのバックアップを受けて、1・2ターン目に高速で叩きつけられるこのカードは、まさに「災難」である。何せ、相手が対処手段を持ち合わせていなかった場合、6点のダメージだけでなく土地を破壊されるという実質「ゲームオーバー」な事態に陥ってしまうのだ。

相手が除去を握っていればマナブーストが無駄になるが、逆に持っていなければ決着がつくというこの賭けは十分に行う価値があった。エクステンデッドで「デミゴッド・ストンピィ」や「All In Red」と呼ばれる赤単の大型クリーチャー高速召喚デッキを成立させたのだ。


サイクルで唯一「Deus」という、混じりっ気のない「神」そのものを意味する単語を含むカードである。僕のようなこのカードの教信者達にとっては、正しく崇拝の対象なのだ。

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2014/02/12 「Army of Allah」

Allah(アッラー)はアラビア語で「神」を意味する。イスラム教の唯一神であり、とてつもなく広いイスラム文化圏で信仰されている神である。エジプト・トルコといったイスラム文化圏での様々な伝承が描かれた「千夜一夜物語」。これをモチーフにして作られたエキスパンションが、マジック最初のエキスパンションである「アラビアンナイト」だ。

この時はまだ、多元宇宙という現在のマジック世界の根幹となる設定が完成していなかったのだろう。あるいは我々に身近なファンタジーをモチーフにしたセットで売っていく予定だったのかもしれない。

真実は当時の開発陣のみ知るところだが、結果としてこの「アラビアンナイト」はマジック20年の歴史の中でかなり異質な雰囲気のセットとして他とは違う輝きを放っている。

この「アラビアンナイト」にイスラムの神、アッラーをその名に含んでいるカードがある。それがこの《Army of Allah》。攻撃クリーチャー限定でパワーを+2するインスタントであり、トドメの一撃に使うのが主な用途となるだろう。

防御時には全く使い道がないため、コンバットトリックとして評価するのは少々難しくなる。今なら《補強》の方が使いやすい。このカードの価値はアッラーという現実世界の固有名詞がカード名に入っていることと独特な雰囲気のイラストに尽きるだろう。

このカードはコモンではあるが、事実上2つのレアリティで収録されている。コモン1とコモン3という印刷関係で生じるレアリティの差だが、この2者の違いはカードにハッキリと表れている。コモン3の方が不特定マナコストのシンボルが暗く、また小さい。是非とも両者をコレクションしてみて欲しい。

あえてカード名を訳するならば「神の軍勢」となる。紹介するには今しかないと思い立った次第だ。

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2014/02/10 「サシーリウムの神語り」

さて、遂に発売を迎え無事発売記念週末も終えた「神々の軍勢」。今週は、このセットのタイトル「神」からとって、神ウィークといきたい。

依然「テーロス」発売後にも同様に、神と関係のあるカードを集めた1週間を行ったのでこれはその第2弾となる。前回は《Divine Intervention》のような激渋なカードも紹介したので是非遡って読んでみて欲しい。今週も負けず劣らず個性的な面々を紹介しよう。


先頭に立ったのは《サシーリウムの神語り》。彼女が住む次元、ナヤでは巨大な生物「ガルガンチュアン」達が神やその使いであるとして崇拝されている。

彼女の能力が参照している「パワー5以上」というのが、その崇拝のボーダーラインだ。彼女はその崇拝の力をもってして、神獣達が現世に顕現する手助けをする。


手札の何かを参照してマナを出し、通常では払えないようなマナコストのカードを展開するカードとしては、他に《金属細工師》が有名である。この神語りは細工師に比べて参照する者の幅が狭く、彼女を機能させようと思うならば相当な量のそれらのカードを投入しなければならない。

ここが彼女の抱えるネックであり、彼女にピンポイントで除去を撃ちこまれてしまうと、手札にはマナが払えない大型クリーチャーがゴロゴロという事態に陥ってしまう。そうならないように中堅どころや他のマナクリーチャー・除去から守るカードを採用しだすと、今度は彼女からマナが出なくなるという本末転倒なことになってしまう。


彼女を使おうと思った時点で、ガルガンチュアン達への信仰心が試されているのだ。祈りが届けば、相手は除去を引かない。そういう強い気持ちで勝負すべきだとこのカードは言っている。

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2014/02/08 「Thunder Spirit」


稲妻・雷というとマジックの世界ではすっかり赤の専門分野となってしまっているが、黎明期においてはそうではなかった。 色合いのイメージからなのだろうか、白にそれらをモチーフにしたカードが存在していたのだ。

この《Thunder Spirit》もそれら白い稲妻・雷カードの1つである。

話は突然変わって、アイスクリームの話をしたいと思う。
いや、何を言ってるんだコイツは?と思われるのも当然のリアクションだが、ちょっとだけ聞いて欲しい。

僕が好きな味は、キャラメルとかクッキークリームとか抹茶とかラムレーズンとかなんのかんの経たあげく、 結局「バニラ」に落ち着くんだなという結論に最近達した。

特に、その中でもミルク感が強く、主原料である牛乳の味・風味が濃いものがなお良い。
こういったアイスのことを「フレンチ・バニラ」と呼ぶらしい。フランスではそれがスタンダードなのだろうか。いい国ですね。

さて、話をマジックに戻して。

マジックでは何も能力を持たないクリーチャーのことを、トッピングが何もないアイスとかけて「バニラ」と呼ぶ風習が昔からある。

アイスではバニラが好きな僕でも、マジックとなるとトッピングがいっぱいついているものの方が嬉しい。それが他に類をみないユニーク能力ならなおさらだ。

逆に飛行やトランプルといった基本の能力しか持っていないクリーチャーは、実質バニラと似たようなもんだなと見られてしまうのが世の常だ。

確実にバニラより上ではあるが、それに準じたようなこれらのクリーチャーを「フレンチ・バニラ」と呼ぶのである。 これはマジック開発部で実際に用いられた由緒正しきマジック語だ。

この「雷のスピリット」は典型的なフレンチ・バニラだ。

しかしユニーク能力を持っていないとはいえ、3マナで2/2飛行先制攻撃とあれば戦力としては十分に素晴らしいものだ。

クリーチャーの質が著しく低い「レジェンド」当時、このカードのコストパフォーマンスの良さは群を抜いているものだった。 勿論、当時の「白ウィニー」では問答無用で採用され、しばしば《Moat》を飛び越えて本陣に殴り込む活躍を見せたものだった。

実にリミテッド向けの良いスペックのカードであるが、悲しいかな再録禁止カード。
完全な同型再録もできないため、数々の「似ているけどもちょっと違う」カードが存在する。

「時のらせん」にて、再録禁止カードに変身するアーティファクトのサイクルとして陽の目を浴びることになる。 その後、Magic Onlineにて再録された際に「エレメンタル」のタイプを獲得。

スピリット・エレメンタルというどっちつかずではあるが、受ける恩恵が大幅に増えたため純粋に強化されたとみていいだろう。

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2014/02/07 「とどろく雷鳴」


「X火力」という言葉は我々の世界ではごくごく一般的な言葉となっているが、どう足掻いても通常の会話では登場しようがない、専門用語である。最近は「爆アド」といった言葉も広く使われるようにはなってきたが、個人的には趣味の専門用語はその趣味の中から出したくはないなと思っている。どこかでブレーキをかけておかないと、そのうち「何それ、X=20級やんwww」とか言ってしまいそうで(いや、全くそんなことはない)。

改めてこのX火力というものを説明しよう。不特定マナがXで記されたこれらの呪文、Xはあなたが好きな値を設定してOK。Xマナ払ったら、大体はX点のダメージを飛ばしたり好きなように割り振ったりする。Xの値が小さくなるほど効果はしょぼくなり、大きくなればなるほど致死性が増す。ゲーム終盤では大いに効力を発揮する1枚となりうるが、デッキに4枚投入すると機能を果たさない序盤にお荷物となってしまう。そんなカード達だ。


これらは特にリミテッドではトドメの一撃として機能し、また20マナ以上ひねり出すことができるデッキではコンボのシメとして採用される。基本的には小回りが利かない上にオーバーキルであるとして構築では使用されないが、稀に《地震》《忌むべき者のかがり火》といった超高性能のカードが誕生し、暴れ回ることがある。


今回紹介する《とどろく雷鳴》は、どちらかと言えばリミテッド向けのカードだ。そして、そのリミテッドは鬼神の如き活躍をする、「レアより強いコモン」であった。マナが必要とはいえ、コモンでこうも簡単に1:複数交換を行ったりライフを掻っ攫っても良いものなのか?という疑問は当時遊ばれていたプレイヤーの皆さんの心に一度は去来したことがあるはずだ。

しかし「テンペスト以前もこんなん多かったし」という感覚で流されてしまうのであった。さすがにこの風習は今では廃れていて、コモンでの必殺性の高いX火力というものはしばらく収録されていない。


X火力のいいところに、「デッキに赤いカードないけどとりあえず山と土地サーチとこれだけ入れておくか」というタッチでの採用が楽だという点があげられる。これはX火力が往々にしてシングルシンボルなために起きる現象なのだが、さすがに複数に射撃できるような器用なカードはダブルシンボルになることが多いようだ。

この、X火力における赤マナシンボルのことを「種火」と表現することがある。「《とどろく雷鳴》は種火が重いからそのデッキにタッチするまでじゃない」みたいな使い方がされていた言葉だ。今では「ダブルシンボルだから」で済む話だが、ファンタジー世界らしいこういう趣のある専門用語もあったんだよというお話。

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2014/02/06 「地獄の雷」


「ヘルズサンダー」というとカッコイイ超必殺技のように聞こえる。実際にこのカードに息の根を止められたプレイヤーも数多くいたことだろう。《地獄の雷》は、赤いクリーチャーの中でも俗に「歩く火力」と分類される一団に属している。このグループには熱狂的なファンがいることで知られている。


「歩く火力」というのは、文字通り火力としての役割を与えられた、賞味期限付き(ほぼ出したターンのうちに死ぬ)のクリーチャー達だ。偉大なる始祖《ボール・ライトニング》のように、そのマナでは通常ありえないパフォーマンスを誇り、電光石火の速さでライフをかすめとっていく血族である。彼らはその性質上(タフネスが低い・除去耐性がない)とても対処されやすいが、だからこそ隙をみつけて叩き込まれる一撃は十分に致死性のダメージとなるのだ。

その一族の末裔が「アラーラの断片」にて登場。そのパワーは4と、3マナの同胞に比べて低めに設定されている。しかし、他の連中が持たない「飛行」という回避能力があるため、相手がどれだけ地盤を固めていても笑いながら4点を叩き込み任務を遂行することができる。いわばスナイパーだ。


さらにこのスナイパーのすごいところは「二の矢」を持っていることにある。「蘇生」という能力は墓地から1ターン限定の復活を約束してくれる。もともと討死上等の《地獄の雷》である。ワンモアチャンスをいただけるなら喜んでもう一発ブチかましてきますぜ!とばかり再出撃してくれるのだ。これは実質フラッシュバック付きの火力」みたいなものだ。

能力が描くマナカーブも素晴らしい。3ターン目発進、4ターン目《消しえる火》、5ターン目再発進とこれだけで14点ものダメージを与えることが出来るのは素晴らしい。火力全体で見ても、分割払いとはいえ1枚のリソースで8点ものダメージを与えることが出来るカードは稀有な存在だ。

しかし、良いことばかりではなく、勿論歩く火力ゆえのデメリットだってある。飛行があるとは言えトランプルは持っている様で持っていないため、簡単にフェアリートークンなどでチャンプブロックされて凌がれてしまう。リソースを1枚奪っているとはいえ、本来そういう役目のカードではないのだ。安全に殴れるようにお膳立てが必要であり、手札にある他の火力の使い方が非常に重要になってくるのだ。

歩く火力は往々にして通常の火力よりも劣る扱いをされる。しかし、今では必ずしもそうとは言い切れないと僕は思う。《鍛冶の神、パーフォロス》との相性の良さは、《稲妻》にだってマネできないのだ。

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2014/02/05 「予言の稲妻」


除去呪文に求められるものは「確実性」「アドバンテージの獲得」「(特定の相手に)腐らない」だと個人的には思っている。

この条件を同時に複数満たすのは難しい話だが、この条件を1つも満たしていないカードは、構築シーンではハッキリ言ってお呼びではない。この条件のうち、「アドバンテージの獲得」「腐らない」の2つを満たしているカードというのが、今日の1枚《予言の稲妻》だ。


まずアドバンテージの獲得の面だが、これはダメージが与えられた後に自身のライブラリーから4枚見て最適な1枚を選んで手札に加える、そのまんま《衝動》の効果でバッチリ得ることが出来る。

クリーチャーを除去して、さらに普通に1ドローするよりも効率のいい方法で手札を増やすことが出来るのだ。サクッと簡単に1:2交換ができるカードが5マナのインスタントとは素晴らしい。

そもそも《衝動》が2マナである。4点の火力となると《電撃破》のような4マナクラスでなければなかなかないため、単純に計算しても1マナ軽くなっている。合体することで軽量化とは、質量保存の法則もビックリだ。


そして腐らないという点。このカードは直接火力であるため、相手がクリーチャーを展開してこない場合に本体に撃ちこむことが可能なのだ。4点というと、初期ライフの1/5であるため、威力としても申し分ない。そしてそれが手札を消費せずに使用できるのだから、コントロール対決ではありがたい限りだ。

勿論、4枚の中から再びこのカードを探してきて再度叩き込んでやるというアグレッシブな動きは強烈だ。これ4枚ではライフを20点削りきるのは不可能だが、そこは同ブロックにあった《火/氷》や《ウルザの激怒》といった優秀な連中と手を組めば容易い話だ。


このアグレッシブさと堅実な強さを買われて、トリコロール・トレンチ・カウンターバーン・BBB(Bear Bounce Burn)といったデッキで活躍していた。

しかしこれはあくまで4点火力であり、除去の大事な要素「確実性」は高いとは言えないのだ。タフネスが5を越えたり、火力が通用しない連中に効くカード、5マナまで繋げられるカードと併用することで初めてその本来の性能を発揮することだろう。


初代イラストではボウ・リヴァー、再録されたイラストではラル・ザレックがそれぞれこの稲妻を放っている。プレインズウォーカーにとっても使いやすい類いの呪文なのだろう。攻撃しながら未来を予知するとか、考えてみれば相当にチートである。


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2014/02/04 「稲妻のドラゴン」

ドラゴンというものはいつだって至高の存在である。何故、我々は翼と角を持った巨大な爬虫類が好きなのだろうか?不思議なものである。遠い昔に、それらは災厄の象徴的存在として誕生し、恐怖の存在としてお伽噺で語り継がれた。

それが現代を生きる我々の目には「カッコイイ」存在として映るのである。不思議な話だ。人は何故ドラゴンに魅せられるのか。これだけで連載コラムが書けてしまいそうな題材であるが、今日のところは「好きなんだからしょうがない」ということで済ませてしまおう。


僕も様々な作品に影響されて、ノートに自分なりのドラゴン像を落書きしたりしていた(今でもか)。そんな折、なんとなく始めたマジックで衝撃的なドラゴンと出会うことになった。それが《稲妻のドラゴン》だ。

あのね、もうカッコ良すぎるんですよ。それまでのドラゴン像を完全にひっくり返す「複眼」という斬新すぎるデザイン。それも含め、全体にどこか「昆虫」っぽさを秘めているが、しっかりと爬虫類の要素も保持しており、未知の生物の外観にして、これが何かと問われれば「ドラゴン」としか言いようのない説得力を併せ持っている。そしてそれが用いる自然の力は「稲妻」ときているのだからもう少年の心をくすぐるにはオーバーキルというものだ。

僕はこのカードと出会ってから複眼のクリーチャーをイメージしまくっている。後にも先にも、このような形態のドラゴンはこの《稲妻のドラゴン》がワンアンドオンリーなのが、その異質さをさらに際立たせている。このカードがあったからこそ、マジックのカード1枚1枚への思い入れを深めることが出来るようになったし、それが転じてこのようなコラムまで書かせてもらえるようになった。まさしく僕の人生にはなくてはならないカードだったのだ。

4マナ4/4飛行ブレス能力付きというのは今の世ならばエコーなしでもレアとして許される性能に見えてしまうあたり、ウルザ時代から長い年月が経ったんだなぁと改めて実感する。

正直なところ、当時もそれほど強いカードではなかった。それでも、プレリプロモとして配布された製品版初のFoilカードがカッコ良すぎるために憑りつかれたように使用するプレイヤーは確実に存在していた。旧Foilの証である「流星マーク」のデザインが違うのもポイントだ。

後に「第7版」の《送還》のイラストにて登場。エコーを払った後に《送還》なんてされてはたまったもんじゃない、という《稲妻のドラゴン》フォロワーの悲しみが具現化したようなカードである。


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2014/02/03 「稲妻のらせん」


某アメコミの某映画が上映となり、僕のテンションも上がりっ放しである。今週は、その影響を受けまくった「稲妻・雷」ウィークだ。独断でやれるコーナーって素晴らしい。
先頭を飾るのは、構築でも散々使われまくっている2マナ火力のド定番とでも言うべき《稲妻のらせん》だ。「ライヘリ」という略称がつくくらい、飛び交うのが当たり前の呪文である。これにて栄光を勝ち取り、これにて涙を飲んだプレイヤーは数えきれない。

「ラヴニカ:ギルドの都」発売と同時に多くのプレイヤーに愛用され、「ギルドパクト」の登場で赤白緑のビートダウン「ZOO」が誕生するとその使用頻度も最盛期を迎える。1ターン目にクリーチャー、2ターン目に相手のクリーチャーを除去して殴る、後半引いてきたら相手に投げつけトドメを刺す、といつ引いてきても文句のない1枚である。単純に、これ1枚を対戦相手に撃ちこめばライフの差は6点つくのである。

赤系ビートダウンの同系対決というのは、マジックの中でも難しいマッチアップの1つである。どこにどう火力を使うのが、最もダメージ効率が良いか・また死ににくいか…様々なことをケアして貴重な1枚の火力を消費していくことになる。火力の撃ち間違いは、即ち死につながるほどのシビアな世界なのだ。

しかしこのカードは、3点の回復がある程度のミスを帳消しにしてしまうだけのカードパワーがあった。本来ならAを除去しなければならないのにBに撃ってしまった、これが《火葬》ならダメージレースに負けていたが3点回復のおかげでギリギリ勝てた、ということは多々ある。「ZOO」の完全同系ともなってしまえば、これを多く引いた方が勝ちと言っても言い過ぎではない。それだけ、この2マナのカードがゲームに及ぼす影響は大きいのだ。カードパワーここに極まれりといったところである。

そのカードパワーは、時代を超えてモダンでも存分に発揮されている。偉大なる先代である《稲妻》と夢の共演。柔軟な除去として、ビッグアクションを行おうとしている相手のライフを詰める飛び道具として存分にその力を発揮している。最高の相方であった《野生のナカティル》が残念ながら禁止となったため、最近ではもっぱら青のクリーチャー達とつるんでいるようである。「トリコミッドレンジ」において《聖トラフトの霊》の道を切り拓き、《瞬唱の魔道士》と鬼のコンビネーションを見せている。

再録された際に新規イラストとなった。そこに描かれているのは、あのアジャニ。《復讐のアジャニ》の-2能力はこのカードと全く同じ効力を持っているが、どうやら本当に《稲妻のらせん》をアジャニが使用していたようである。

以前に《黒焦げ》の項でも書いたように、伝説のトップデッキとしてマジックの名場面を飾った1枚。《黒焦げ》を相手本体に撃ちこみ残りライフ1、勝つにはこれしかないという場面で山札のトップからそのまま叩きつけられた1枚がこのカード。プロツアーホノルル06での「$16,000 Lightning Helix」はこれからも語られ続けることだろう。

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2014/02/01 「軍勢の集結」


各々一兵卒の力は弱くとも一致団結することであらゆる敵を打倒する。

人海戦術と言ってしまえばそれまでだが、
志を共にする同志が集えばどんなん困難も乗り越えられるんだ!と言えばそれは美しい響きへと変わるだろう。

そんな思想と、それを共有する者が集うことを表現したカードが、この《軍勢の集結》である。

このエンチャントは、1/1のトークンを自動生産してくれる。
戦闘において、1/1というのは最低基準となるサイズである(アタックしない0/4とかは置いといて)。

このサイズのクリーチャーが頑張ろうと思うなら、飛行なり接死なりが欲しいところだが…
このカードが生み出す兵士トークンが有しているのは速攻。

1/1速攻が敵陣に斬り込んでもちょっとな…という盤面は少なからずある。

このエンチャント、5マナ払ってそれを生み出すだけ?それなら2マナの《苦花》に軍配が…となるわけだが、
ここで忘れちゃいけないのが、この生み出されるトークンはターンを重ねるごとに増えていくということ。

これがこのカードを強烈なフィニッシャーへと押し上げている。

例え1/1という最低サイズであろうとも、それが一気に4体、5体と生み出す波状攻撃となれば、
これを無傷で捌けるデッキというのもなかなかないものだ。

対コントロールにおいては、対戦相手のありとあらゆるクリーチャー除去呪文を腐らせて以降は手札を温存できる。 相手に何もなければ座っていれば勝てるし、これを必死に排除してきたら手札を使って残りライフを攻め立てればよい。

このカードの存在があるため、コントロール側は赤と白が入っている相手に対してサイド後エンチャントを除去できるカードを絶対に積んだ方が良い。
例えメインで1枚もエンチャントを見ていなくても、そうするに越したことはないぞ。

あるいは、このカードを完全に完封できるカードを使っても良いだろう。《イゼットの静電術師》や《集団疾病》は最高の回答となるだろう。

ちなみに、先ほど例に挙げた《苦花》との対決はなかなか面白い。
お互いに《軍勢の集結》と《苦花》1枚ずつと基本土地のみで戦うと、後手ではさすがに圧倒されてしまう。

しかしこちらが先手ならば…なかなかいい勝負になるので、是非シミュレーションしてみて欲しい。

ダメージレースの勉強に、ほんの少しだけなるかもね。ほんの少しだけ。

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2014/01/31 「軍勢の整列」


「起立、気を付け、礼、休め」といった一連の動作をやらなくなってから一体どれだけの月日が経ったのだろう。小学校の時、皆も朝礼などで経験したことがあるはずだ。

あれ、もしかしたら世代によっては違う方法で整列してたんかな?並びは背の順?あれって合理的ではあるけどほとんど身長変わらんやつとか曖昧すぎる判断基準で決められてたのが今振り返るとどうなんって思う部分は…はい、整列の思い出話はこんなところで。

列を整えるというのは大事なことだ。特にそれが大軍になればなるほど。統率をとるには、まずはそれを率いる者がしっかりと全体を把握する必要がある。

命令を行き渡らせるためにも整列は必要不可欠なものだ。それはマジックにおいても同じようで、整列するとボーナスが得られるようである。

この《軍勢の整列》はクリーチャー1体をタップすることで4点の回復が見込める。2マナでクリーチャー1体タップしてそれなら割高すぎるが、これがタップするのは何体でもOKとくれば話は別だ。

2・3・4・5とタップしていけば20点以上の超回復も見込めることだろう。クリーチャーをブロックに回すことで防げるダメージを、この回復の点数が大いに上回っているのならばタップするという隙を作る行為もそれほど危惧すべきものではない。

問題は「カードを1枚消費するだけの価値があるのか」ということである。あくまで個人的な価値観ではあるのだが、僕は緑は守るよりも攻めることに真価を発揮する色だと思っているし、デッキもそのように作成している。

その中にあって、回復するしか使い道がないカードというのはどうにも…という訳だ。回復は決して悪いことじゃない、場合によっては相手とのライフの差をつけるという意味では赤の火力のような働きをすることもあるだろう。

《原初の命令》や《スラーグ牙》は本当に愛用した1枚である。しかし整列に出来ることは回復オンリーなのだ。これでクリーチャーをタップするなら殴りかかりたいと思う。

しかし、これが多人数戦などに発展すれば話は別だ。統率者戦で《胞子の教祖、ゲイヴ》でズラズラとトークンを増やして次のターン殴りかかるぞという構えを取っておきながら、隣からくる《瀉血》が怖いので超回復しておこうというのは完璧な動きだ。トークン系のデッキには採用してみて欲しい1枚である。

ずっとツッコミたかったのが、整列というアクションがタップであること。マジックでは怠けたり睡眠状態になったりすることをタップ状態で表現するのに、その対極のアクションが同じ表現というのは面白い。もしかしたら整列の疲れでドッと疲労しているのかもしれない。


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2014/01/30 「ガラクの大軍」


「Horde」という単語がある。読みは「ホード」。古き時代には、この言葉がマジック用語として使われていた。聞き慣れない方も多い言葉かと思う。同じ意味合いの「Weenie」の方が広まったために消えてしまった言葉だ。

こちらの意味は「ウィニー」。白を中心とした軽量クリーチャーを並べる戦術であることは言うまでもない。最近ではこのウィニーという言葉もあまり聞かなくなってきた。カードデザインがウィニー全盛の時代と大きく変わってきたのもその一因だろう。「Horde」を聞かなくなるのも当たり前の話だ。

引っ張りに引っ張ったが、そろそろこの言葉の意味を明かそう。「大群」である。移動生活を送る遊牧民の一団や、大量発生したバッタなどを表現するときに用いられる。


《Garruk's Horde》というクリーチャー、直訳すれば「ガラクの大群」である。日本語の難しいところで、これで英語が表している「ガラクが所有している大群」という意味とは別に文字通り「ガラクの大群」と捉えることもできる。

あんな逞しく野性味満点のオッサンが同じ顔でウジャウジャと群れていては不気味と言う他ない。かと言って「ガラクに仕える生物の群れ」なんてカード名はちょっとしまらない。

という訳で、「Horde」を本来の意味である「大群」ではなく、意味合いも近く音としては同じである「大軍」に意訳したのではないだろうか。群ではなく軍となることで、ガラクがそれを率いていることがハッキリと伝わる。統率のとれた獣はさながら軍隊の如し、というわけだ。深読み?かもね。

カード自体は自身がまず巨大で、かつ後続展開の面でアドバンテージを稼がせてくれる。《紅蓮の達人、チャンドラ》と《チャンドラのフェニックス》は抜群の相性を誇る一方、《獣の統率者、ガラク》とこの大軍の間には微妙なすれ違いが生じているように思える。しかし、野性の力さえあれば些細なことはどうでも良いのだ。


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2014/01/29 「軍隊蟻」


「グンタイアリ」―――ハチ目アリ科グンタイアリ属に属する肉食性の強い盲目のアリの総称である。

彼らは文字通り「軍隊」である。群れは女王アリ・雄アリ・働きアリ・兵アリからなり、その数は数十万から数百万にも膨れ上がる。

彼らは他のアリと違って一か所に巣を作って定住する生活様式はとらない。常に地表を群れで移動し続け、その道中で発見した生物を手当たり次第に喰らい尽くす。その戦闘力はジャングルでも「最強」と呼ぶに相応しい。

南アメリカのジャングルなどで、昆虫や小動物が・時にはジャガーのような猛獣までもが一斉に1つの方角から逃げ出している様に遭遇することがあるらしい。そこで10分ほど待てば、この「死の波」とでも呼ぶべき行軍を拝むことが出来るだろう。

彼らは樹上や川面でさえ、持って生まれた完璧な統率力で適応する陣形を組んで踏破してしまうのだ。もはや生ける破壊神とさえ言えるだろう。


その破壊神をカード化したものがこの《軍隊蟻》だ。

このカードは自分の土地もろとも相手の土地を喰らうのである。

これを出したのが先手3ターン目なら、相手が土地を置いてターンを返す→自分は4枚目の土地を置いて4マナ使いつつ、《軍隊蟻》起動→相手は3枚目の土地を置いて…→その土地を蟻で割って…という風に一種の「ハメ」を行うことが出来るのだ。

ここに追加で《石の雨》《略奪》《なだれ乗り》、黒があるなら《Sinkhole》なんかも採用しちゃおう。徹底的に相手の土地を破壊して心をへし折ってしまえば良い。

この能力はインスタント・タイミングで起動できるのもポイントだ。

字面だけ見ていると良いことづくしの1枚だが、もちろんデメリットも有している。最大のそれは、クリーチャーであることだ。

クリーチャーだということは「召喚酔い」が避けられない。能力はタップを要する起動型能力であるため、使用するまでの間にラグが生じることになる。

この間に簡単に除去されてしまうことだって少なくない。相手の土地を今すぐに破壊しなければならない状況でコイツをトップしたらゲンナリすることだろう。

また、自分の土地も生け贄に捧げる必要がある点も無視は出来ない。単純に、自分が相手より土地を引かなかった時はジリ貧に陥ってしまうだろう。本物のグンタイアリは凶悪かつ特異な生体ゆえに飼育は不可能に近いだろう。《軍隊蟻》も飼いならすには相応の工夫が必要だ。


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2014/01/28 「スリヴァー軍団」


デカァァァァァいッ説明不要!!で終わる訳にもいかないので、早速紹介して行きたい。

スリヴァー達は現在第4世代まで誕生している、息の長い部族サイクルだ。その第3世代における伝説のスリヴァー枠がこの《スリヴァー軍団》である。

全ての始まりである偉大なる母親《スリヴァーの女王》、遺伝子操作の産物かはたまたミラーリの魔力が生んだ怪物か《スリヴァーの首領》、この前例にならって、このカードも5色5マナ7/7というスペックである。これからの伝説のスリヴァー達にもこの伝統は倣って欲しいものである。


スリヴァーといえば、ご存知の通り個々が持つ個性を群れで共有してより強い存在となる部族であり、群れることが彼らの強みである。我々の世界で言うところの「群体」と呼ばれる生態を持つ生物群のアッパーヴァージョンと言って良いだろう。


そんなスリヴァー達の伝説的な存在は、女王・首領共に共有能力は持っていないのがポイントである。

彼女らは、他のスリヴァーには共有できない(する必要がないと言った方がいいか)爆発的な繁殖・群れの統制といった能力を有しているからだ。

そんな先代の伝統をこのスリヴァーも引き継いでいるのかと思いきや、彼らはしっかりと共有能力を持っている。これはどういうことだろうか、伝統の放棄になるのだろうか?


背景ストーリーとカード名から考察すると、このカードの立ち位置が明確になる。《スリヴァー軍団》という名称から、単一の存在を指しているわけではないのは一目瞭然だ。

この「軍団」というのは、「次元の混乱」のストーリーにおいて、スカイシュラウドの森林地帯を襲撃し、そこを守護するフレイアリーズと戦った夥しい数のスリヴァーの群れのことだろう。

最終的にはフレイアリーズがその命を落とすほどの脅威の存在となった軍団は、それらすべてをひっくるめて1つの伝説的な怪物であるという解釈から、このようなカードになったのではないだろうか。


軍団員が増えれば増えるほど強くなる、これほどまでにスリヴァーを体現したカードはないだろう。これが場に出ているということはほぼゲームオーバーの証なのだ。


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2014/01/27 「アクロンの軍団兵」


発売が迫りつつある「神々の軍勢」。BORNをあえて「軍勢」と訳するのには何か重要な意味合いがあるのだろう。

今週はそれにならって軍勢・軍隊・軍団ウィークにしようと思う。ズラリと軍団が並ぶのもマジックの魅力だ。


で、いきなり《アクロンの軍団兵》である。出オチ担当でしかないが、熱く語っていきたいと思う。このクリーチャー、どマイナー中のどマイナーカードであったが、あることを転機に一部では有名な愛されネタキャラへと昇華されることになる。そのきっかけというのが「モミール・ベーシック」の登場だ。


GP静岡のリングイベント(参加者をその場で募る余興ですね)でも大好評だったこのフォーマットは、基本土地60枚のデッキとモミール・ヴィグのアバターを用いて戦うゲームだ。

マナを支払い手札を捨てれば、マジックの古今東西ありとあらゆるクリーチャーの中からそのマナコストに相当するクリーチャーがランダムで選ばれ場に出てくると言う、不確定要素オンリーのカジュアルフォーマットだ。

1マナなら《極楽鳥》、2マナなら《闇の腹心》といった連中が出てくるかもしれない(しカスしか出てこないかもしれない)。そうやってマナを伸ばしながら次第に大物同士の怪獣対決へとゲームは進んでいくのである。


8マナまでたどり着くと、いよいよクライマックスと言わんばかりの超大物が揃い踏みである。《グリセルブランド》《飢餓の声、ヴォリンクレックス》《空護りの掃討者》といったゲームを終わらせる強者、所謂「ボム(爆弾級のカード)」が住まう領域。

この8マナ域に潜んでいるのが「逆ボム」であるこの《アクロンの軍団兵》だ。こいつが出てしまうと、こいつとアーティファクトクリーチャーしか攻撃が出来なくなる。圧倒的優位な盤面でも、これを呼び出してしまうことで負けることが少なからずあるのだ。


当初は「軍団兵」という独自のクリーチャータイプを持っており、一時期はルールテキストも「軍団兵と…」と書かれていたこともあったが、後に軍団兵が廃止となり人間・兵士となる。さらには、人間と呼ぶには大きすぎたのか巨人に変更されたのだった。


パワーがタフネスを3以上上回り、白単色では最もパワーの大きいクリーチャーであるというレコードを持っている。持っているが、性能はハッキリ言ってカスである。

しかしそんなカスに活躍(?)の舞台が与えられたというのは誠に喜ばしい。ちなみに、中国語版では「Legionnaire」を「退役軍人」と誤訳してしまっている。これで退役なら現役時はパワー13くらいあったんじゃないだろうか。


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2014/01/25 「血と鉄の酒」


フードウィークの締めくくりにはお酒が良いだろう。
海産物のオードブル、ステーキ、オムレツ、シーフードスパゲティという流れできたコースの締めくくりにはこちらのワイン(英名がWine of ~だからね)を。

《血と鉄の酒》、9年物でございます…ってオゥエ~。イラストでこれを飲み干そうとしている兵士の表情から察するに、どう考えてもこれは「まずい」だろう。

血はわからなくもないが、鉄って何よ。鉄粉でも混ぜているのだろうか?材料・日本酒:新鮮な血液:鉄粉=2:2:1みたいな。我々では飲み干すどころか一口だけでこちらがダウンしてしまいかねない強烈な内容物だ。

カード自体は、最終決着専用兵器といったところ。4マナでどんなクリーチャーのパワーも倍にしてしまうが、ターン終了時にこの酒は空っぽになってしまう。むせあがるほどの強壮薬なのだろう。2杯ほどグビグビっとやれば驚異的な打撃力を得ることも可能だ。しかし、これ自体はなかなかの高級酒のようで、設置に3マナ・1杯やるごとに4マナと高くつく。

このカードのいいところは、置いておけるということだろう。1度しか使えないようなマナ基盤のデッキであれば《樫の力》ほどの威力がなければ採用するのも難しいレベルである。

しかし、これは3マナでとりあえず設置して、後は普通に戦闘を行っていれば対戦相手が計算しなければならないファクターが1つ増え、それによって何かしらの計算ミスを引き起こせる可能性があるということだ。そういったやりとりの果てに、生き残った1体を鼻血が溢れるほどにギラギラにさせてしまって決着をつければ良い。

はっきり言って、これを採用するならばちょっと弱いかなぐらいの装備品でも投入した方がマシなレベルのカードではある。

しかし、それだけで切り捨ててしまうには勿体ない。こういった味のあるカードを上手く使えた時の喜びとは、それだけで一杯やりたくなってしまうほどの何にも代えがたいものなのだ。


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2014/01/24 「クラーケンの幼子」


また我々の次元に存在しない食材をもってきて申し訳ない。いや、どこかにその昔船乗りたちにクラーケンと呼ばれた怪物は潜んでいるかもしれないが、とりあえず置いておこう。

フレイバーテキストではえらく苦労して調理される食材であることが記されているが、「その味は努力に値する」とのことなのでさぞ美味いのだろう。

イラストから見るに、殻つきのタコ、オウムガイ系の身なりをしている。さぞやプリッと、シコッとした食感で美味いのだろう。

我々の次元では、タコを食べる文化と食べない文化がある。マジックの世界では、少なくともゼンディカー人はクラーケンを食しているようだ。

これをセファリッド達が見たらどう思うのだろうか。またゼンディカー生まれでクラーケン信者の《荒ぶる波濤、キオーラ》はこの風習をどう思っていたのだろうか、興味は尽きない。

マジックの世界だって皆飯食って普通の生活送っているのである。クラーケン調理の様子など、日常光景を描いたコミックなんか読んでみたいものだ。

この美味しいクラーケンは、それ自体はバニラである。1マナ0/4と、軽くて堅い、壁として使うことが前提となるクリーチャーだ。

リミテッドでは、序盤は脆くダメージレースは飛行に頼ることになる青を支えてくれることだろう。別に防衛を持っている訳ではないので、その気になれば装備品などでサイズをあげてアタックできなくはない。ないよりマシというやつではあるが、無視はできない事実なので気を付けるべきだ。こいつに負けると精神的に「くる」ものがあるだろう。

これがいっちょまえに成長すれば、《目覚める深海、レクシャル》や《高潮のクラーケン》《深海のクラーケン》といった連中になるのだろう。「将来性」、良い言葉である。




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2014/01/23 「Chicken Egg」



「ニワトリの卵」である。そのまんま。現在、唯一の卵カードとなってしまった。

元は「アラビアンナイト」から存在する由緒正しきクリーチャーの系譜だったのが、皆「鳥」になったり「構築物」になったりで、もはや銀枠にしか残らないタイプとなってしまった。

残念なことではあるが、たしかに動物を「卵」で同じグループとして括ったりはしないだろう。マジックの他のカードで言えば《ありがたい老修道士》を「老人」というタイプにしていないのと同じ理屈になるだろう。納得の再編成である。


さて、この我々が普段食べている卵。マジックの世界においては、魔法の力をもってして巨大なニワトリが生まれてくるように仕向けることが可能なようだ。

ある種の品種改良とでも言えるものだろう。アップキープにダイスを振って6が出ればデッカイニワトリが孵ることになる。このトークン、巨人・ニワトリというわけのわからない種族になっているが、まとめて「ジャイアントチキン」ということでいいだろう。銀枠のこういうところを真剣に議論したって仕方がない。


それにしても、卵から孵るのがヒナではなくいきなりニワトリとは…ってあれか、卵が廃止された件で出てきた「老人」とかないのと一緒の話か。成長促進の魔法がうまくかかったということなのかもしれない。卵の中で目まぐるしいスピードで成長してパリーンと。

というか、さっき自分でそういうツッコミは無粋って言うたところやないのかい。いやいやわかっていてもツッコミをいれたくなるのがマジックのカードですし、それをしていくのが僕のこのコーナーでの仕事なんですよ。結論としては、「細けぇことはいいんだよ」ってことで。


よく「卵が先かニワトリが先か」という定番の議論ネタがあるが、マジックにおいては答えは出ている。このカードは《ルフ鳥の卵》のパロディーであり、それの収録されたエキスパンションは「アングルード」の遥か以前、冒頭でも触れた「アラビアンナイト」だ。マジックでは卵が先、でファイナルアンサー。




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2014/01/22 「狩り立てられたウンパス」


フードウィークと言いつつ、いきなり食べ物ちゃうやん!と思われるかもしれないが、フレイバーテキストには一頭仕留めると12人の人間を1か月養えると書かれており、これが食用のために狩り立てられていることがわかる。

おそらく、干し肉や塩漬け、ハムなんかにして保存するのであろう。ウンパスの見た目・特にその脚部から判断すると彼らは草食動物なのではないだろうか。

少なくとも肉を主食にしている動物ではなさそうなので、その肉は美味しいんじゃないかなと。かなり野性味は強そうなので、ヨモギや胡椒といった臭い消しは必須になることかと思われる。フライパンぐらいの大きさのガーリックステーキなんかにしても美味そうである。特に顔の周りの黄色い毛の部分が。まあこんな話はこれぐらいで。

このウンパス、デメリットはあるがマナレシオが非常に高い大型サイズのクリーチャーである。

これが場に出ると、対戦相手はクリーチャー限定の《実物提示教育》の恩恵を受けることが出来る。これがこのカードの焦点であり、例えば《引き裂かれし永劫、エムラクール》なんかが溢れ返っている環境では使うだけ損ではあるが、ノンクリーチャーに近いデッキや小粒ばかりの「スライ」を相手にする際は、4マナに見合わぬサイズで存分に役に立ってくれることだろう。メタゲームをしっかりと見抜く力が問われる1枚である。

これの一番の活躍は旧エクステンデッドでのvs「ネクロドネイト」時のコントロール。向こうは《ファイレクシアの抹消者》というアグレッシブサイドボードで攻めてくる。これに対抗するべく、じゃあこっちはそれよりデカいやつ出してやるよというプランである。これが立っているだけで抹消者は何体並んだところでピクリとも動けないだろう。

このカードデザインを開発はいたく気に入ったのだろう、後に「狩り立てられた」サイクルとしてリブートされることとなった。それらは相手にトークンが出るというデメリットであるため、ウンパスのようにメタを読むとかはないのだけれど。

そもそも「ウンパス」とはこのカードが作られたことで誕生した種族である。古きテレビゲーム「Hunt the Wumpus」が元になっている。このゲームで狩られていたウンパスという獣、おそらく開発中のニックネームだったものがそのまま製品に採用されたんじゃないだろうか。


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2014/01/21 「タラバガニ」



タラバガニ。日本の冬には欠かせない魚介類の代表種である。これなくして日本の年末年始は語れない。僕もこのお正月は奮発しましたよ。

焼きと蒸しでいただきましたが、どちらも身の旨味・甘みが凝縮されてフワッとしてホクホクで…あれ、マジックの話はどこへ。


マジックの世界での《タラバガニ》は我々の世界のトゲトゲしたそれとは大きく違った姿をしている。まあそもそもがサイズ4/5である。我々一般人に限りなく近い風貌の《志願民兵団》で1/2である。圧倒的なデカさと戦闘力には驚きを隠せないと同時に、これを1パイ仕留めるだけで一体何人前のかにすきが作れるのかと考えてしまう。


この巨大なカニは戦力として地上をガッチリ固めると同時に、相手の緑のクリーチャーをポイポイとライブラリートップに投げ返すくらいの剛腕の持ち主である。リミテッドで相手が緑を使っていれば、これほど頼もしい味方もいないだろう。時間稼ぎしている間に航空戦力で圧倒してしまえば良い。

ただし、相手が緑でなければ6マナ4/5バニラである。相手が緑であれば…とタラレバを言うぐらいなら初めからもっと戦力になるものを使おう。


そもそも構築で使うのであれば、同ブロックにはより有用な《冬眠》が存在しているのでまずはそれを優先すべきである。それでも《Homarid Shaman》と一緒に使って、甲殻類が緑の猛獣を圧倒するデッキを作りたいというコアなファン、そういうのは素晴らしい。その気持ちは大事にしてほしい。

このカードがタラバとなったのは英名が「King Crab」だったから。これを直訳すればタラバガニとなる。タラバというのは文字通り魚の鱈(タラ)がとれる場所でとれるためついた名前である。

背景の雰囲気もどこか南方チックであり、とても現実世界のタラバとは同列で扱われるものではない気がするが…しかしこの名前だったからこそ愛されカードになったのだろうな。カキ・カニと続いたというわけで、今週はフードウィークでいってみよう。


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2014/01/20 「巨大カキ」



いよいよ日本列島も冬の終盤といったところ。とにかく寒いが、冬ならではの美味しいものを食べられるのは良いことだ。

とくに、冬に本番を迎えるもので言えば牡蠣(カキ)。海のミルクとも言われるこの2枚貝、僕は冬と言えばこれだと思っている。

最近は某ウィルスの影響もあってか生食することができるものは限られてしまったが、それでも焼いてよし蒸してよしお鍋にいれてよしと、大車輪の活躍を見せる冬の味覚である。

マジックの世界にも牡蠣はしっかりと存在しているようだ。

この《巨大カキ》は、じっくりと対戦相手のクリーチャーを除去・無効化するシステムクリーチャーである。貝の成長は非常にゆっくりとしたものである。

少しずつ少しずつカルシウムを摂取して貝殻を大きくしていくのであるが、まるでその過程を見るかのごとくこのカードもゆっくりとした効果を持っている。

対戦相手のクリーチャーを1体タップして、カキ自身がタップである限り捉え続け、さらにその捕まっているクリーチャーはターンを迎えるごとに-1/-1カウンターが置かれて縮小していく。

このクリーチャーはカキのロックから解放されるとこのマイナス修正からも解き放たれる。これがどういうことか想像してみると、なかなかに恐ろしい事実が浮かび上がってくる。例をあげて《ゴブリンの先達》君に出演してもらおう。

ゴブリン君は《シヴの浅瀬》の道案内をしていた。その時、ある岩の割れ目に足を滑らせてしまう。

アイテテ…と身体を起こそうとしたところ、この岩が閉じてしまって足はガッチリと食われてしまったのだ。どうやらこの岩はカキだったらしい、己の身を守る自衛本能で殻を閉じてしまったのだ。

これは外せそうもない。途方に暮れているところに《容赦ない潮流》が襲ってくる。潮が満ちて、ゴブリン君は息が出来なくなり、最終的には溺死を…うーんこわっ。やめよやめよ。

現在唯一のクリーチャータイプ「カキ」の持ち主である。恐らく最初で最後であろう。というか、何故再編されなかったのだろうか。


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2014/01/18 「アーティのおせっかい」



最初にこのカードを見た時は「おせっかいって」と笑ってしまった。

「Meddling」は後に「翻弄する」「翻弄」と訳されている。
このカードも現代風に訳するならば「アーティの翻弄」となるのだろう。

しかし、ここが「おせっかい」となっていることで逆に忘れられることのない1枚となっている。

「アーティの翻弄」では「どのカードやっけ?」と記憶の底に埋もれてしまっていたことだろう。 このおせっかいがもたらすのは、呪文の遅延である。

本来その場で解決されるはずのものを一端脇にどけて、
遅延カウンターが全てどけられるまで封じておくことができるのだ。

これは実質的にシングルシンボルの扱いやすい打消し呪文として運用することになるだろう。

特に1ターンでも稼げればOKというデッキが使うことになる訳だが、 それがどういった盤面なのか考えてみよう。

クロックパーミッションなどで相手のライフを削りきるのに十分な盤面が完成している状態で、 相手が叩きつけてきた全体除去を打ち消せば、やっていることは《対抗呪文》であり《Time Walk》なのだ。

対コンボにおいても、お膳立て・土台作りをした上で何かをすることでコンボを達成させるデッキを相手にした場合にはその効果は劇的なものとなるだろう。

《ライオンの瞳のダイアモンド》を砕いてからの《冥府の教示者》をズラされると普通に打ち消されるよりも凹みそうだ。

まあそれだけなら、他の打消しでもいいじゃないかという話になるのだが…というか、
後に未来予知では挙動がほとんど同じでありながら2マナで使用した時の効果がより大きい《遅延》が作られたのでそっちを使えと言う話になるのであるが、

それでもこのおせっかいは実はそれらのカードに出来ない芸当が可能という時点で大いに勝っているのである。

それは、このカードのどこにも「打ち消す」と書かれていないから出来ること。

《遅延》を構えている時に叩きつけられたのが《至高の評決》《抹消》あるいは《魂の洞窟》経由の《原始のタイタン》であったなら…

それら「打ち消されない」呪文をおせっかいであれば対処できるのである。

この助言をおせっかいとは思わずに、是非一度検討して欲しいと思うのである。



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2014/01/17 「アロサウルス乗り」



「アロサウルス」というのは実在の恐竜であり、ジュラ紀後期に北アメリカに多く生息していたとみられる、全長8.5メートルにも達する大型の肉食恐竜である。
名の意味は「異なるトカゲ」。アロサウルスはマジックとゆかりのある恐竜で他に《Pygmy llosaurus》という個体が存在する。

このPygmy Allosaurus達は沸騰するように熱い血液をもって「アイスエイジ」の氷河期の世界でも生き抜いている。バルデュヴィアでは愛玩動物として・またソリを引くための家畜として飼育されているそうだ。

このカードで大事なのは、名前である。このカード、クリーチャータイプがよく見ればエルフ・戦士である。あれ、恐竜の要素は?恐竜は廃止されたんならせめてビーストは?「レギオン」とかにいた恐竜タイプのクリーチャーはビーストだったし…と、ここでもう一度言おう。大事なのは名前だ。

よく見て欲しい。あくまで《アロサウルス乗り》であって、「アロサウルスとアロサウルス乗り」ではないのだ。あくまでこのカードは、このアロサウルスの背にまたがり、それを乗りこなすことを生業としている、このエルフをカード化したものなのだ。たとえば「リシャーダの寿司屋」というクリーチャーがいたとして、それのイラストに巨大なマグロが描かれていても、タイプに「魚」が含まれていないことに文句を言う人はいないだろう。うん、ちょっと違うことを言っているのはわかっている。《灰塵の乗り手》が猫じゃないこととかの方がわかりやすいですね。「リシャーダの寿司屋」って言ってみたかっただけ。

このインパクトのある名前と、おもいっきり描かれているのにスルーされている恐竜と、そしてこれまた「微妙」としか言えない能力。これらが合わさると、カードとは人の記憶に残り続けるものとなるのだ。そもそもが土地が並んでいなければ弱いクリーチャーを、緑のカードを2枚も犠牲にして高速召喚することにどれだけの意味があるのだろうか?こういうツッコミどころをたくさん持っているカードを、僕は愛してやまないのである。


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2014/01/16 「クラキリン」



「クラキリン」。忘れようと思っても忘れられない言葉である。

食事中に・仕事中に・トイレで・風呂で・寝る前に、ふと「クラキリン」という言葉が湧いてきてしまうことがある。「クラキリン」とはなんなのか。

一体どういう意味があるのだろうか。あのちょっとグロテスクでキモかわいいイラストと共にこうした疑問が浮かび上がり、そして数秒で消える。

全ては中学生の頃、安売りしていたテンペストのスターターを買った時。《クラキリン》を引いたその時に始まる。

当時はまだまだルールをなんとか理解しつつ所々独自解釈して遊んでいた頃である。

マナを注げば注ぐほど大きくなるこの《クラキリン》。「埋葬(再生できない破壊)」以外で死ぬこともないこのクリーチャーは、最強生物に見えたのだ。

いつも遊んでいた仲間内でも「何これめっちゃ強いやん」と盛り上がったのを覚えている。こうして僕は「クラキリンデッキ」を作るに至ったのだ。

当時の、今のリミテッドデッキにもボッコボコにされそうな僕らのデッキでの対戦はグダりまくることが多く、土地が伸びきった盤面で叩きつける《クラキリン》はどう考えても強力であった。

しかし現実は…そうではなかった。手札に《クラキリン》ぐらいしか戦力ないがマナが伸びておらず、再生コストも含めて考えれば5マナで1/1しか展開できない。この盤面を経験した時に「あれ?これって《蠢く骸骨》の方が強いやん」という事実に気付いてしまったのだ。

たしかに、土地が12枚とか並んだゲームではそれこそ無双と呼ぶに相応しい怪物となってワームやら巨人やらを踏み潰していた。

しかし、毎回こいつをそんなサイズで運用できるわけではない。X呪文は爆発力こそ凄まじいが、基本的には割高なのである。

これに気付いたあたりで、仲間内では軽量クリーチャーによるビートダウンとそれへの対抗デッキが作られるようになり始めた。

《クラキリン》がその後僕のデッキに入ることはなかったが、《クラキリン》からしか学べない何かは、今でも残っている。


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2014/01/15 「Juzám Djinn」



「ジュザムジン」という響きは一度聴くと忘れられない(「ジャザム」と呼ぶこともあるが筆者としては「ジュザム」を推したい)。

マジックが題材なのに、何故かドッジボールのコートのような陣地で戦うアクションゲームになったゲームがあった。

その作中でこのパワフルなクリーチャーを呼ぶ時の「ジュザァムジンッ」というセリフが筆者には忘れられない。というわけで今日は最初期の黒の顔でもあった《Juzám Djinn》。

《Juzám Djinn》は「アラビアンナイト」発売当初は見向きもされなかったらしい。

「あなたのアップキープの開始時に、Juzam Djinnはあなたに1点のダメージを与える。」というデメリット能力しか持っていないこのジン。

「え、自分にダメージを与えるのか。使えね~」という反応を示したプレイヤーが多かったのだ。

これは現在でもマジックを始めたばかりのプレイヤーが自分にダメージを与えるカードを嫌うことと同じことである。当時はマジックプレイヤー全員がまだ「マジック初心者」だったのだから。

後に、各種Moxと《Black Lotus》や《暗黒の儀式》を活用して1ターン目にこのファッティを場に出す戦術が発見される。

早いターンで場に出てしまえば、自分が1点のダメージを受ける間にがら空きの対戦相手に5点のパンチを叩き込むことが出来る。1:5の交換ならば悪くない。これを連打など出来ればもう勝ったも同然ということが判明すると、その評価はうなぎ上りとなる。

後に多く使われることとなる自分がダメージを受ける(ライフを失う)強力カードの系譜…各種ダメージランドにフェッチランド、《苦花》《思考囲い》といった面々が生まれるに至ったのは、マジックプレイヤーが「多少のライフの損失は強い効果の代価として妥当である」ということを認識しているからである。

ライフの損失がただのデメリットでしかないと認知され続けていたら、今日のマジックのカードは全く違う姿となっているだろう。

これらのカードが生まれた裏には、ジュザムさんが1点の損失を恐れることなかれという教えを広めたからに他ならない。

「Juzám」とはアラビア語で「邪悪」という意味だそうだ。

邪悪ではあるが、正しいことも世の中にはあるってことだな。ちなみにコストは黒2マナじゃないよ!


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2014/01/14 「スラクジムンダール」



カードゲームにおいて、非常に重要なファクターの1つが「カード名」であると筆者は思っている。

カードの名前はインパクトがあり、カッコよくて、覚えやすい。あれ「デッキに何枚入れてる?あの○○○…」「え?○△△のこと?」「いやそうじゃなくて…」というやりとりはもどかしいにもほどがある。

というわけで、今週は「インパクトのある名前ウィーク」。デザイナー達のネーミングセンスが光る1枚を紹介して行きたいと思う。

《スラクジムンダール》は「アラーラ再誕」の神話レア・クリーチャーサイクルの1つであり、青黒赤の断片・グリクシスを代表する1枚だ。

発表された当初は、能力よりも何よりもまず、そのインパクトある名前に多くのプレイヤーが注目し、ネット上ではこのカード名をわざと間違えて表記するネタなどが流行り、同エキスパンションで最も目立った1枚となった。名前は大事なものである。

さて、カード自体はというと、7マナ6/6速攻+アタックする度に対戦相手のクリーチャーを生け贄に捧げさせる誘発型能力+対戦相手がクリーチャーを生け贄に捧げる度にサイズアップ、という完全に攻撃に特化した1枚となっている。

大体の場合が7マナ7/7速攻として運用できるだろう。リミテッドではアドバンテージを稼ぎながらライフの1/3をかっさらう大打撃が突然降ってくるので、これは脅威と言うほかない。

7/7を1対1で討ち取れるクリーチャーはそういないので、2体にブロックされて打ち取られたとしても1:3交換を行っている。

たとえ《アラーラの力》のようなコンバットトリックで討ち取られたとしても1:2交換なので上等だろう。相手がクリーチャーを生け贄に捧げれば誘発する能力は、クリーチャーを生け贄にすることがメカニズムの中心であるジャンドに対しては強烈なアンチテーゼである。ストーリーでもジャンドの氏族を皆殺しにしているのは納得がいく。

この名前はフレイバーテキストによると「血を赤く染める者」を意味する。この溢れ出る中2感もこのカードの魅力なのだ。




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2014/01/09 「移ろいの門」




その色の役割で出来ないことを無理にやろうとする試みカードがマジックには多数存在する。

結局、適正のないことをやるということは人生においてもマジックにおいても「高くつく」というのが世の常である。

Twitterでリクエストを募集した、その中の1枚である《移ろいの門》も…いや、そんなに割高じゃないっすよ。

設置4マナは軽くもないが重くもなく、起動コストに至っては1マナとタップで良いんだから安い方でしょ?それでクリーチャーをバウンス出来るんだから、これは安い買い物だよお客さん?とラース人に押し売りされてもノーと答えられる我々でありたいね。

たしかにどの色でもクリーチャーをバウンスできるなら非常に魅力的だが…まあ悪く言えばこれは欠陥商品であり、クリーチャーのコントローラーに1マナ払われるだけで無効化されてしまう。

これで相手のクリーチャーをはじきまくって所謂タイムウォーク理論がどうとかこうとかは考えない方が良い。ひらたく言えば「プロフェシー」で登場した「リスティック」呪文の1つである。その時点でお察しというものだ。

しかし、これを相手に向けるのでなければ話は大きく変わってくる。

毎ターン自軍のクリーチャーを1マナで戻し続けることができるという点は非常に有用であり、高評価である。

まず純粋に自軍を除去から守ることが出来る。手札に戻している時点で盤面から除去された、という事実にはかわらないが、リソースを失わないというのは何にも代えがたいことである。

また、このカード同期の桜である《ドルイドの誓い》との相性は素晴らしい。

これでクリーチャーの数を調節することで、毎ターン淀みなくオースが回転しクリーチャーを展開できるのだ。

実際に日本選手権98ではこのカードを採用した「緑白オース」がトップ8に2人も残っている。

《スパイクの飼育係》《堅牢な防衛隊》とクリーチャーとの相性も最高だ。

ストーリー的にも非常に重要な役割を持っており、伝説のアーティファクトでも問題のない存在である。

フレイバーテキストに書かれている「ベアリン」とは「バリン」のことである。この門が閉じてしまった時、アーテイとウェザーライト号クルーの運命も完全に分かたれてしまったのだ。




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2014/01/08 「司令官イーシャ」




続いてのリクエストは、いつも僕らが楽しんでいる背景ストーリーを日本語に翻訳してくださっているM. Wakatsukiさんのリクエストで《司令官イーシャ》。

翻訳への感謝の気持ちを込めて、早速いってみよう。

イーシャは4マナ2/4飛行という《ファイティング・ドレイク》級のスペック。
まずこの時点でリミテッドでは即戦力ラインではあるが、オマケにしてメインの能力が凄い。

「プロテクション(クリーチャー)」という素晴らしい回避能力・耐性を持っているのだ。
まず何がどうあってもブロックされることはないため、装備品やオーラの装着先としてはこの上ない。

そして防御面では、飛行も持っているため
ほとんどの生物をキャッチできる不死身の壁として相手クリーチャーの前に立ちはだかる。

これを突破できるのはトランプルだが、
タフネスが4あるため生半可なアタッカーはモジモジしてしまうことになるだろう。

威嚇・馬術・アンブロッカブル・スーパートランプル(ブロッカーを無視して本体に直接ダメージを与える能力)ぐらいなければ太刀打ちはできないだろう。

実際に、オデッセイ・ブロック構築では《不可思議》で飛行を得て
《物静かな思索》から連打されるワームトークンをキャッチする要員として注目された。

しかし、伝説のクリーチャーであったことがどうしてもネックであったため、多くの数が投入されて大活躍、とまではいかなかった。

逆にこのクリーチャーが伝説でなかったら確実に鉄壁を築くアーキタイプが誕生していたことだろう。

イーシャの前任者である《隊長補佐カーター》《ティーロ大隊長》。

彼らは虚栄心や狂信に溢れており、その結果力に飲まれて命を落とすことになる。
それは2体の能力にも現れている。

これに対して冷静・厳格で無益な争いを好まないイーシャ。
彼女の能力は、前任者達と照らし合わせても実に彼女らしい素敵なものだと言えるだろう。



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2014/01/07 「統一された意思」



さあ、今週は昨日に引き続き誰かのリクエストの1枚について語る「リクエストウィーク」というわけで、続いてのリクエストを紹介したいと思う。

「エルドラージ覚醒」から《統一された意思》。リクエストしてくれたのは…なんと、一緒にBIG MAGIC LIVEをやっている「関西のバーン神」ことリュウジだ。

GP静岡では風の様にスーッとドロップしたが、翌日のBM vs晴れる屋ではその鬱憤を晴らすかのように煽り倒していたのも記憶に新しい(まあ中島主税さんに負けたわけであるが)。そんなバーン神が、赤いカードでなく青いカウンターをリクエストとは面白いじゃないか。

このカードは、所謂「不確定カウンター」というものに分類される。

不確定カウンターとは、文字通り絶対に「打ち消す」カウンターと違い、諸条件を満たした場合にのみ呪文を打ち消すことが出来るカード達だ。

代表例が《マナ漏出》。相手が3マナ支払えなければ打消しという、後半土地が伸びきってからは役に立たない1枚ではあるが、《対抗呪文》と比べると要求される色マナが薄いため、使いやすさでは勝っている。

このグループはこういったカードが多く、この《統一された意思》もその例に漏れず。①Uで呪文の種類は問わずに打ち消せるが、相手よりも自軍のクリーチャーが多い場合に限るという条件付きだ。つまり、カウンターを最も用いるコントロールには向いていないということである。これはクロックパーミ的な運用を前提とした1枚なのだ。

スタンダードに存在した当時は、「吸血鬼」や「エルフ」といった、単色で面展開するデッキが存在していたのだが、これらのデッキが苦手としたのは《審判の日》や《紅蓮地獄》といった全体除去。

特に《紅蓮地獄》は2マナと軽いため、上述した《マナ漏出》では普通に3マナサッと払われて被弾してしまう。

このお悩みを完全に解消した1枚がこのカウンターだ。

シングルシンボルで解決になるのならば、色を足すのは容易い。

俗に言う《闇滑りの岸》《水没した地下墓地》といった優秀な土地や、《極楽鳥》がいたこともタッチで使うことを容易くしていた。

さらには「ゴブナイト」と呼ばれる赤のゴブリンとアーティファクトの超軽量ブン回り前提ビートダウンでも、《オパールのモックス》から出る青マナを用いて使われた。それぐらい、使い勝手の良いカウンターなのである。

モダンでも不意を突かれることがあるだろう。部族デッキに青い土地が見えたらご用心。


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2014/01/06 「深き刻の忍者」



あけまして、おめでとうございます。2014年が、マジックに・プレイヤーの皆にとって良い年であるように祈りつつ、本年最初のCard of the Dayいってみよう!

本年1発目は、GP静岡共同主催である「晴れる屋」オーナーにして日本のトッププロである斎藤友晴さんのリクエストにお応えして《深き刻の忍者》を紹介しよう。

このニンジャ、実にニンジャらしい完成度の高い1枚に仕上がっている。

4マナ2/2回避能力なしという悪いサイズながら、「忍術」で場に出ればなんと2マナという格安コース。

やはり忍者は忍術使ってこそでしょ。1ターン目に置かれたクロックからドロンと変身してすかさずパワー2が殴りかかる、それだけではなく、戦闘ダメージを与えることに成功すれば、潜入任務完了と相成り、秘密の巻物を持ち帰ってくるのだ。

友晴さんも言うように、2ターン目に殴りながら1枚ドローをもたらしてくれるクリーチャーというのは他に思いつかないレベルの離れ業である。

勿論、対戦相手もそれ以降は殴らせまいと動いてくるわけだが、それは巻物1ドローで得た潤沢な手札で対応すればよい。

除去、アタック、ドロー、打消し、アタック、ドロー…圧倒的な差をつけられた相手は、ライフがまだ残っていても投了してしまいそうになることだろう。これぞ、クロックパーミッションの申し子である。

この忍びの潜在能力に目をつけた城主・斎藤友晴は、白のウィニークリーチャーにこの忍者と青の打消し呪文を積んだ「スノウ・ストンピィ」を作成した。

白のカードを雪になぞらえたこのクロックパーミ、良いデッキではあったのだが《紅蓮地獄》というガンが環境に存在していた。

これを克服すべく、城主・斎藤友晴とその忍び衆は、白から赤と緑にサポート色を変更した。

これが「シー・ストンピィ」と呼ばれるデッキであり、《電解》《荒廃の思考》といったカードと忍者の相性の良さと緑が絡むことでの《紅蓮地獄》対策が合わさったことで、殿の天下統一の野望に繋がる好成績を収めることに成功したのだった。

「神河謀叛」発売キャンペーンでは、巫女さんに配られたというマジックの歴史でも唯一の経歴を持つ、結構表に出てくる忍びだ。


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2013/12/28 「冬の宝珠」



冬は強力無比な魔力を秘めた季節であり、ある種の神と言っても差支えないだろう。

この神の力を封じ込めたオーブがこの《冬の宝珠》。

この冬の持つ力を凝縮させたオーブのスイッチを入れれば、
周囲の大地はたちまち凍りつくことになる。

その冷気は、土地から立ち上るマナさえも凍結させてしまう。

着実に雪解けは訪れるものの、その支配力は絶対的だ。

「アルファ」に収録されたこのカードは、マジックの誇り高き第一期メンバーの1人である。

彼はその後「第5版」まで収録され、非常に多くのプレイヤーの息の根を止めてきた。

その後に数々の亜種を生み出したロック系置物の元祖にして、おそらく堂々たる最強のカードだろう。

まず、軽い。2マナである。

そして無色。運用が非常に簡単である。

このコストにしてこの能力!と驚かされるカードは数多くあるが、
このカードはそれらの中でも一際「壊れ」の雰囲気を醸し出している。

さあ、このカードの経歴を見てみよう。デッキと相方を紹介したい


プリズン(ホワイトトラッシュ):《氷の干渉器》

Black Ice:《Lake of the Dead》

Forgotten Orb:《記憶の欠落》《大クラゲ》

セニョールストンピィ(クレイジーグリーン):《クウィリーオン・レインジャー》

5CG:《知られざる楽園》《極楽鳥》

プロパオーブ:《プロパガンダ》《ハルマゲドン》

ゾンビプリズン:《ゾンビの横行》


うーむ、錚々たるメンバーだ。特に相性が良いのは、やはり同期の桜である《氷の干渉器》。

これでオーブの元起き上がった相手の1枚だけの土地を寝かせたり、
オーブでは縛れないクリーチャーを無効化しつつ、キーとなるアクション「スイッチOFF」を行うのだ。

古いルールでは常在型能力を持つアーテイファクトはタップ状態となるとその能力が一時的に働かなくなる。

これがスイッチをOFFにすると比喩されたのだ。

そう、冬の魔力は冬の魔力で制するに限る。

名前通りの《氷の干渉器》で相手のエンドにオーブのスイッチを切り、自分のターンはやりたい放題だったのだ。

2011年、この挙動にもついに雪解けが来てしまった。

僕らが若かりし頃、対戦相手にやられて覚えた、
このカードに書かれていない「裏ワザ」は、もう遠い遠い冬の思い出なのである。


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2013/12/27 「冬月台地」



冬の夜で言えば、冬の月はほんまに綺麗である。
特にスキー場なんかに行った時、ロッジの窓から見える光景。

白銀の雪が満月の青白い光を反射している様。

これに勝る光景は、なかなか見れるものではない。

思わず湯気が昇るコーヒーのマグカップを手に、テラスに出てみようかとガラス戸を開けて、すぐさま閉める。

一見穏やかな光景に見えて、極寒であることを忘れていたのだ。

自分のマヌケ加減に笑ってしまうと同時に、それだけ人を引き付ける魔力を持った冬の月の美しさに改めて息を飲む…

あ、ごめんごめん。《冬月台地》についての話だった。あまりにも書くことがないから、ついつい前置きが長くなってしまったというか。

この土地は…まず、イラストに風情があって良い。

冬月と言いながらも安易に月を描くのではなく、月自体は紫色の雲の向こうにあり、漏れ出る光の筋によって確実にそこにそれがある、と観る者に思わせるアーティストの演出には感動すら覚える。

そしてフレイバーテキスト。一体、何を言っているのだろう。

何かの例えか、なんとなくそれっぽいことを言いたかったのか。

英語では韻を踏んだものとなっておりより詩としての完成度は高いが、だからどうした。

何を言いたいのかわからないことには違いはない。

何がしたいのか、はっきり言ってみろコノヤロー。

カードとしての評価?いやそんなんいらんやろ?よく超絶劣化した《リシャーダの港》と言われるが、それでもまだまだ失礼な話やで。

劣化基本土地でも言い過ぎ。「カード未満」くらいの称号が丁度ええでしょ。

しかし逆の意味で、マジック20年の歴史において真冬の満月の如く燦然と輝く存在であることには違いなく、僕はデュアルランドなどと同等の敬意を持って接している。

いや、気持ちの問題であって扱いは違うよ。当たり前やん!



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2013/12/26 「Winter's Night」



冬の夜空は星がクッキリと見えるので、僕個人としては帰宅中に寒い寒いと思いながらも見上げたりするのが結構好きなんである。

こればっかりは他の季節では味わえないものだ。

今日はそんな文字通りの「冬の夜」こと《Winter's Night》を紹介しよう。

このワールドエンチャントは、氷雪土地から得ることの出来るマナを倍増させるというシンプルにして強力なマナブーストだ。

もちろん、3色であるとはいえ3マナでその能力は強力すぎるため、それら倍のマナを生み出した氷雪土地がアンタップするのは1回休みとなるというデメリット付きだ。

さて、これを見越しても3マナのカードで土地から出るマナが倍になるというのは凄いことだ。

実例をあげてみよう。

全てのターンに氷雪土地を安定して置けるという前提で考えれば、4ターン目以降に使用できるマナは4→5→6→7→8→9となり9ターン目までに使えるマナは合計で39。

これに対して《Winter's Night》を置いた場合は0→10→0→14→0→18となり43(フルタップのみ。4ターン目に2マナだけ使ったりすればまた変わってくる)。

と、実に3ターン止まっていても使えるマナの合計は増えるのだ。

つまりタップのターンを加味しても損はしておらず、5ターン目に10マナ、7ターン目に14マナが出るという爆発力の部分を丸ごと旨味として享受できるわけだ。これはオイシイ。

マナが瞬間的に増えること、そしてエンチャントであること。

これらを見るに、相性が良いカードは同ブロックに存在する《ジョークルホープス》そしてその系譜に名を連ねる《抹消》ではないだろうか。

これらを撃つためのマナも、撃った後のリカバリーも一瞬で達成してしまうこの冬の夜。

是非とも炬燵にみかんでぬくぬくと過ごしながら遊びたいものだ。



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2013/12/25 「冬の抱擁」



冬は厳しい。その厳しさは万物に対して平等である。
それを凌ぐ方法はあっても、覆す手立てはないのだ。

冬の前にはすべてのものが春を待つことを強いられる。

それは例え広大な大地であっても同様だ。大地はその母なる活動を抑制され、しばしの眠りにつくのだ。

はい、謎のポエムは無視していただいて。

緑の土地破壊カードの1つである《冬の抱擁》を紹介しよう。

今でも《酸のスライム》などが受け継いでいる緑のランデスの系譜の、初期型である。

《石の雨》と比べるとダブルシンボルである点・《略奪》と比べると土地しか壊せない点が劣って見えるが、これは当然のことである。

そもそも土地破壊の役割を担わされたのは赤であり、緑の立ち位置は2番手(黒より少し上)である。

にも拘わらず、マジック最初期には《Ice Storm》という色が違うだけの《石の雨》が存在したのだ。

これは再録するわけにはいかんでしょ。

今後の色の役割をハッキリさせるためにも差をつける必要があるというわけで、「テンペスト」にて赤はコモンに《石の雨》・緑と黒にはそのコモンに劣る《冬の抱擁》《涙の雨》というアンコモンを収録したのだ(いや、たぶんそうだと思う。たぶん)。

そんな噛ませ犬的ポジションにありながらも、このカードは普通に使える強カードとして《不毛の大地》と共に相手の土地を攻め立てたのだが。

このカードは色々とイレギュラーな1枚だ。

まず、日本語版初期では「冬の支配」というカード名で印刷されている。

これにはすぐに訂正が入り、正式な日本語名《冬の抱擁》が発表され、増刷分からこの表記に変更されている。

しかし、以降の翻訳テンプレートでは「抱擁」は「Embrace」という単語にあてられており、さらにはこのカードの「Grasp」には「掌握」があてられているのが現状である。

こうなってくると意外と《冬の支配》のままでも良かったのかもしれんねと。



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2013/12/24 「Winter's Chill」


寒い。ここ最近はめっきり冷え込んで、あぁいよいよ年末なのだなと気付かされる。

というわけで、今週は「冬」ウィーク。このコーナー、今年最後の一週間。是非最後までお付き合いください。

「冬の凍え」とでも訳すれば良いのだろうか。

この寒波、古いカードだけあってテキストがめちゃくちゃ長い。

これを見れば、最近のカードはすごくわかりやすくなっているのがわかるだろう。この青のインスタントの最新テキストは以下のものだ。

「Winter's Chillは戦闘中でブロック・クリーチャーが指定される前にのみ唱えられる。

Xはあなたがコントロールする氷雪土地の数より大きくすることはできない。

攻撃クリーチャーX体を対象とする。それらのクリーチャー1体につき、それのコントローラーは(1)か(2)を支払ってもよい。

そのプレイヤーがそうしなかった場合、そのクリーチャーを戦闘終了時に破壊する。

そのプレイヤーが(1)を支払った場合、この戦闘でそのクリーチャーに与えられるすべての戦闘ダメージと、そのクリーチャーによって与えられるすべての戦闘ダメージを軽減する。」

現代版テキストになってもなおややこしい、「オールドカードあるある」だ。

この呪文の解決を順に見て行けば、どういうことが起きるのかの理解につながると思うので見て行こう。

まず、あなたは自分がコントロールする氷雪土地の枚数以下の数のクリーチャーX体をターゲットにして青Xを支払う。

次に対戦相手は、それらのクリーチャー1体ずつにそれぞれ①か②を支払うか否かを実行する。

このマナの支払いは、防寒具代だと思ってほしい。②支払ってもらえたクリーチャーは分厚いコートにカイロを支給されて乗り切る。

①しか払ってもらえなかったクリーチャーはジャンパーだけでは凍えてしまって動けない。

何も支給されなかった哀れなヤツは凍死ということだ。

うーん、防寒はしてしすぎることはないよね。しっかり厚着しましょう。


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